異世界に流されて…!?

藤城満定

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 取り敢えずゴブリンが持っていた木製の棍棒四本と短剣一本を回収しておこうとしゃがんだ時、棍棒で武装していたゴブリンの腰にもう一本の短剣がある事に気付いた。
 …これも回収しておこう。
 佐伯真奈美、篠原美津子、藤原沙織に棍棒を一本ずつ渡して、自分は棍棒と短剣を一本ずつ装備した。
 ゴブリンも一応、短剣の鞘は持っていたようで、腰のベルトから鞘を外して短剣を収める。
 そして一分でも早くその場から離れようとしたら、美津子が悲鳴を上げた。
 新しいバケモノでも現れたかと短剣を抜き放って構えると、美津子がある一点を指差している。そのとは、ゴブリンの死骸があった場所だった。しかしそこには絶対にあるはずのゴブリンの死骸が無くなっていた。
 その代わりに赤黒い小さな石が五個と小さなコインが落ちていた。
 鑑定スキルで調べると、

 『ゴブリンの魔石=大銅貨一枚』
 『大銅貨=千円』

 とあった。
 ふむ。
 魔石は有名なので良く知っているが、価値としては一個で大銅貨一枚の値打ちがあるようで、だったら大銅貨は一個で幾らなのかと思ったら、どうやら一枚で千円の価値があるようだ。
 つまり、魔石が五個と大銅貨が五枚あるので、合わせて大銅貨十枚。日本円にして一万円になるようだ。
 こんなバケモノがいるような森の中で何の役に立つのかは分からないが、将来のためを思えば回収しておいて損はないだろう。
 景太郎は魔石と大銅貨を収納ストレージの中に放り込んだ。

「佐伯さん、篠原さん、藤原さん。取り敢えず別の場所に移ろう。ここにいたら他のバケモノに襲われるかもしれないから。良いかな?」

 三人はコクコクと頷いて、景太郎の後ろについて歩き始めた。
 とは言え、景太郎だってどこに向かえばいいのかなんて分かるはずもないのだが、なるべく陽の光りが強いほうへと向かっている。
 こんな森の中で安全な場所があるとは思えないけど、少しでも明るくて開けた場所に移動すれば不安と混乱を鎮める事ができるかもしれないと考えたからだ。
 暫く歩くと、思ったとおりに開けた場所に出た。
 そこには、

「おっきな湖だね!!」

 佐伯真奈美が驚くくらい大きな湖があった。
 湖は底がみえるくらいに澄んでいて、湖面は陽の明かりを受けてキラキラと輝いている。
 辺りには一際大きな大木が枝をこれでもかと言わんばかりに広げていて、鮮やかな緑色の葉っぱの下にはたくさんの赤い果物が実っていた。

「ねえねえ、あの赤い果物って食べられるのかな?」

 篠原美津子が聞いてくるので鑑定スキルを使うと、

 【鑑定】

 『アポーの実。食べると体力と魔力の回復が早くなる。皮ごと食べられて、程よい酸味と甘味がある。食用果実である上、水に漬け込んで十日もすれば果実酒になる』

 と分かった。
 アポーの実…アップル…林檎か。
 林檎の果実酒、林檎酒は飲みやすいって聞いた事があるな。

「アポーの実だよ。林檎の事だね」
「「「『林檎!?』」」」

 佐伯真奈美、篠原美津子、藤原沙織の声が大きく重なった。

「食べてもいいのかな?」

 と聞かれても、それは景太郎の所有物じゃないので困るんだが、全部を食べ尽くすんじゃなかったら別に構わないんしゃないかと思う。
 頷くと、三人は競ってアポーの捥ぎ取った。

「はい、これ」

 佐伯真奈美がアポーの実を差し出す。

「ん?」
「宮間くんのだよ」
「え?俺の!?」
「うん。宮間くんの分だよ」

 例えアポーの実だとしても、母親以外の女性から物を貰うのは初めてだったので驚いていたら、三人とも笑顔で頷いた。

「あ、ありがとう?」
「「「『どういたしまして!!』」」」

 気圧されながら齧ると、

「う、美味い!!」

 マジで美味かった。
 スーパーで売ってるのよりも遥かに美味しかった。
 真奈美も美津子も沙織も口々に「美味しい!」を連呼している。
 あんまり美味しかったので、ついつい二個目に手が伸びてしまったのは許してほしいところだ。

 ぐぅぅぅ~…。

 誰かのお腹が鳴った。
 アポーの実…林檎を二個も食べたのにお腹が空いたのか。
 見ると、紗織が顔を真っ赤に染めているので、お腹の虫が鳴ったのは紗織のようだ。
 とは言え、誰も食べ物を持っていないし、周りにはアポーの実以外の食べ物は見当たらない。
 太陽は少し西に傾いている。
 これは少しでも早く食料と寝床を確保しないと色々とマズい事になりそうだ。幸いな事に飲料水は湖の水を煮沸させれば飲めない事もないだろう。しかし、食べ物となるとそう簡単に手に入るとは思えない。
 さっきみたいにゴブリンのようなバケモノがいるような森だ。下手をするとまた戦わないといけなくなるかもしれない。となると、当然ながら命が危険に晒される。
 さっきは不意打ちが効いたから何とかなったけど、正面から戦えばどうなるか分からない。
 武器は短剣と棍棒だ。怪我で済めば不幸中の幸いだが、もしかすると…、

「–––ツッッ!?」

 想像しただけで鳥肌が立ち、嫌な汗が滲み出てきた。
 
(ど、どうしたらいいんだ!?)

 焦りに焦りまくる景太郎を見て真奈美達が不安そうな顔をしている。
 それに気付いた景太郎はゾッとするのを無理矢理押し込めてニコッと笑ってみせた。

(お、俺が不安になると、皆んなも不安になる。男だろ。しっかりしろ!!)

 自分で自分を勇気づけようとして、フと気が付いた。

(そう言えば、俺のスキルに『異世界ショッピング』ってあったよな?)

 ステータス画面をタップして調べると、何と異世界、つまり日本は勿論、世界中のネットショップで『ショッピングポイント(SP)』で買い物ができるというスキルらしい。
 今のSPは10,000Pで、1Pが百円で、このスキルだとアメリカ$のレートが1$=百円になっている。円高で不況の世の中では考えられないレート額だなと、知らない何か(神様?)に感謝した。
 まずは寝床なんだが…。
 SPが10,000Pという事は百万円だ。
 五人分のテントや寝袋、毛布に枕、半年分の着替え用の衣類に飲食料品、炊事グッズにその他諸々を購入するには何と8,000P(八十万円)も消費する事に。それに加えて武器の類いも必要になるんだけど、残高は2,000P(二十万円)。
 色々考えて購入する事にしたのは、マチェット(山刀)+バトルアックス(手斧)+狩猟用パチンコ(500発スチール玉付き)を四組。値段は1,200P(十二万円)。残高は800P(八万円)。これはいざという時の為に貯めておこう。

「佐伯さん、篠原さん、藤原さん。ちょっと手伝ってもらえますか?」

 呼びかけると、

「どうしたの?」

 とやってきた。

「今から生活するためのアレコレの設置を手伝ってほしいんですよ」
「生活のアレコレって…どこにあるの?」
「それは今から買いますよ。それ!ポチポチポチッとな!!」

 ドドドドッと音を立てて生活物資のアレコレが目の前に現れたので、真奈美達は悲鳴をあげて、ちょっと後退りした。

「こ、こ、コレって…どうやって!?」
「フッフッフ。これは俺のスキルなんですよ!!」
「「「『スキル!!??』」」」
「はい!」

 スキルと聞いて真奈美達はとても驚いたようだが、奈津美だけは「やっぱり」と呟いている。

「宮間くん。つまりはなのね?」
「はい。じゃなかったら色々と納得できるでしょう?」
「そうね。むしろ納得せざるを得ないってとこね」

 頭によぎったのは、さっきのゴブリンのようなバケモノの事だろう。

「ねえ、宮間く…メンドい。ケイくんで良いわよね?私にも何かのスキルはあるのかしら?そういうのは分からない?」
「できますよ。【鑑定】……ああ、成る程ですね」
「あるの!?どんなスキルなの!?」

 めちゃくちゃ喰いついてくる奈津美にちょっとだけ引きながら言う。

「篠原さん達のスキルは『生活魔法』ですね」
「「「『魔法!!??』」」」

 これには真奈美と紗織も喰いついた。

「生活魔法って言うのは、火をつけたり、水を出したり、汚れを落としたり、光の玉を浮かべたりする事ができます」

 景太郎の説明に、

「まさしくってわけね」

 奈津美は納得したようだが、真奈美と紗織は少し落ち込んでいる。
 どうやら景太郎のスキルと自分達のスキルの差に落ち込んでいるようだ。
 まあ、だからと言って景太郎に何ができるわけもない。
 スキルがほしければ、ゴブリンみたいなバケモノと戦って習得するしかないだろう。

(俺のスキルは反則みたいなモンだからな)

 苦笑いを浮かべるしかなかった。
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