ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

文字の大きさ
138 / 148

第138話 新たな決意と願い

しおりを挟む
『ドサッ』

僕は最大究極魔法と新・究極魔法の発動で辛うじて意識はあるものの、魔力の欠乏と疲労感で、その場に倒れ込んでしまった。

「アレク! 大丈夫!」

「アレク兄様!」

メアリーとクリスが駆け寄り、抱き起こしてくれた。

「ヘ、ヘヘヘヘ。ちょっと無理をしちゃったかな。テヘペロ」

「もう! ホントにバカなんだから!」

「アレク兄様。アホの中のタコ!」


――クリスさん。何を言ってるのか意味が分からないのですが?


「でも、メアリー達がグランプロスに来てくれて助かったよ」

「そうなの?」

「デヘヘヘ」

メアリーとクリスは、はにかんだ顔で答えた。

「もしメアリー達が王都に居たら大変な事になっていたかもしれない」

「私達にルナール達を殺した疑いが掛けられたかもしれないってこと?」


――さすが、天才軍師のメアリーだ。自分の置かれている状況を把握できている。


「そう、一夜にして卒業したばかりの令嬢達が4人も同時に亡くなるんだ。しかも全員がファンクラブに所属していたとあったら、間違いなく4人と仲が良かったメアリーとクリスに世間は疑惑を向けるだろう。嫉妬からの仲間割れによる殺人だと」

「まあ、そう見られても仕方ない状況だしね」

メアリーはポツリと呟いた。

「しかし、メアリーとクリスは遠く離れたグランプロスの地にいる。実行犯にはなり得ない。主犯格だとしても、医者や魔道師はさっきも言った通り、突然死か自然死としか判断出来ないだろう。しかも証人として父上や母上だ。事実上の嫌疑は掛けられる事は無いと思うが、一般市民は面白いおかしく疑惑の噂を立てるだろう。それは、僕も同じ事が言えるが、僕達がフロンガスターに居ない以上、噂は噂でしかない」

「「……………………」」

二人は黙り込み、やがて

「みんなが望んで日本へ帰りたいと願った以上、私はどんな嫌な噂を立てられても大丈夫よ。真実を知っている2人がいれば平気よ」

メアリーの目からは強い覚悟を感じた。

「私も大丈夫! みんなが無事に日本に帰れるなら我慢する!」

クリスもまだ12歳だというのに大人顔負けの言葉だった。

「二人ともすまないが、そろそろ僕も限界のようだ。数日経てば意識が戻ると思うが、あとの事はよろしく頼む……」

「ええ、あとの事は任せておいて、クリスと二人で何とかするから今はゆっくり休んで」

メアリーは僕を安心させるかのように優しい言葉を掛けてくれた。

「アレク兄様、寝てる間にチューしたり、おでこに『大王』とか書かないから安心して」

「そこは…… 『にく』『ちゅう』『こめ』のどれかだろ! 本来なら米国べいこくの『べい』と言うところだが、あえて『こめ』と言うあたりが最高に笑いのツボだろ? わかる? この高度な笑いを!」


――お笑いの頂点を目指す者として、鉄板ネタを外す事は絶対に許さない!


「アレク。あなた王様になるんでしょ。別に大王でも良いじゃない?」

「イヤ、駄目だ! 鉄板ネタを外すわけにはいかない!」

「ふぅ~ ホントに男の子の拘りって私にはわからないわ。しかも最高の笑いとか。ねぇ、わかるクリス?」

「私もわからない。わかっていることは、男の器量が小さなところとおとこの値打ちが無いのがアレクお兄様の短所だってことだけ」


――おい、クリス! 中二病重症患者のお前だけには言われたくない!


『ふぅ~』

「アレク、何タメ息ついてるの」

メアリーはちょっとムカついた顔で僕の顔を見ていた。


――あの二人は、ヒロイン達を死に追いやってしまった僕の罪悪感を少しでも感じさせないようにおちゃらけてくれているのだろう。その意味では僕自身も救われる。本来ならば二人とも僕より辛いはずなのに…… そうだと信じたい。もし違っていたのなら、人としてどうかしているぞ。


「二人ともありがとう。あとの事は頼んだよ」

「な、何を急に言ってるのよ! ポンコツ大王!」

「アレクお兄様がお礼を言うなんて信じられない! 器も含めて、全てが小さい男なのに!」

「……………………」


――コイツら。最後の最後まで……


そして、だんだんと意識が薄れていく。


――ルナール、マリア、フローラ、ミレーユ。キミ達の幸せを心から願っているよ…… アイスキー、ユリアラ…… 僕の判断はこれでよかったんだよな?…… 天国で僕の事を見てたら僕を思いっきり褒めてくれ…… もし、僕のざまぁが上手く行かなかったら、アイツらをざまぁに導いてやってほしい。アイスキー、ユリアラどうか頼む……


ヒロイン達との別れと願いを胸に、僕は意識を手放したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

処理中です...