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第28話 武士の誇りと名誉
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スタミナ源○風たれのおかわりが無い事に絶望している料理長をよそに僕は詳しく味について尋ねてみた。
「料理長…… 申し訳ないが感想を聞かせてもらえるかい?」
体をプルプルと震わせ、虚ろな目をしながら料理長は
「アレク様…… 大変美味しゅうございました……」
「それだけかい? なんかこう、こうしたら美味しくなるとか無いの?」
「ありませぬ…… この世の終わりでございマッスル……」
――ダメだ。この料理長は! 僕に絶望の姿を見せつつ、狙ったかのようにピンポイントでボケを入れて来やがる!
それでもスタミナ源○風たれの高みに近付く為に、僕は続ける。
「僕としては生姜の風味がまだ足りないような気がするんだ。今回、使える生姜が足りなくてパンチの効いたタレが出来なかったのはしょうがないけど、もう少し生姜があれば、もっと良い物が出来たはずなんだが……」
料理長に次回の改良点について提案をしたが、
「ブフッ。ワッハハハハ ヒーヒー 助けてー 笑い死ぬー 腹がよじれるぅー アレク様もうやめてぇー 苦しいぃ~ ダメだ。ツボに入っちまったー おしっこがチビるぅ~! あっ、漏れた!」
突然、料理長が笑いだし苦しそうに転がり始めた。
「えっ!? 何? 僕、何か変な事とでも言ったかい?」
僕が心配になり料理長に聞いた。
「生姜が無くてしょうがない! しょうがないけど生姜があれば! なんと言うユーモア溢れるブラックジョークなんだ! さすがはアレク様。この料理長も脱帽ですわい。ワッハハハハ ヒーヒー 苦しい~」
「……………………」
人が笑い転げるところを初めて見た。
――僕はギャグもダジャレも言った覚えはないし。ましてやブラックジョークも言った覚えもないのに…… この料理長は狂ってやがる! コイツもヤベェヤツだったのか? ここは本当に乙女ゲーム『プリスト』の世界なのか疑いたくなる…… この世界はヤベェヤツが多すぎる……
「いや~ アレク様には参りました。まさか、ここまでお笑いのセンスがあるとは。グヒヒヒヒ マジでツボに入りやがった。ブフッ」
料理長は立ち上がったが、まだ笑い足りないようだ。
――なんなんだろう。この虚しさは……
今日は、この料理長は役に立たないと判断し、明日にでもまたタレ作りをしようと決めた。
僕はぐったりしながら寝室に戻った。
「折角の試作1号が、まさかの一気飲みされるとは思ってもみなかったよ」
最近、どうも独り言が多くなっている。学園に入学してからヤベェヤツの遭遇率が高すぎて、もしかしたら僕もいつの間にかヤベェヤツに感化され、ヤベェヤツになってしまったのでは…… 今は考えるのはやめよう……
――翌日
「アレク様お時間です。起きて下さい」
「ん~」
僕が眠りから覚めると朝の日差しが部屋一面に注がれていた。
「やっと目を覚ましましたか」
そこには珍しく、専属メイドのアリシアが立っていた。
「あっ、アリシア。おはよう」
僕が眠い目をこすりながら挨拶をすると、
「おはようじゃありませんよ。いつまでも寝てるんですか! ボヤボヤしているとサンペータ様がお迎えに来ますよ」
僕の朝は早い。基本的にはアリシアが起こしに来る前には着替えを済ましている。だからアリシアに起こされることはないのだ。それがアリシアに起こされるまで寝ているとは情けない…… もう腹を切るしかないな……
僕は正座に座り直し、短刀を握りしめた。
「私に起こされたくらいで切腹ですか!?」
アリシアは必死に僕を止めようとしたが、
「止めてくれるなアリシア。僕には武士としての誇りがある。専属メイドに起こされるなど武士の恥。武士の情けと思い止めないでくれ」
切腹は武士の名誉。僕の名誉を護る為に切腹をするのだ。
「そんなくだらない事してないで、早く準備をしてください。本当に遅刻しちゃいますよ」
「もうそんな時間? 早くしないとサンペータが来てしまう」
僕は早急に切腹を取り止め、急ぎ学園へ行く準備を始めた。
「アレク様」
「はい、なんでしょう?」
アリシアは僕のお気に入りの短刀を手に持ち、切先をさわっていた。
「この短刀、おもちゃじゃないですか?」
切先を押すと刃が柄に収納される構造の子供のおもちゃだ。
「なぜ、それを?」
僕が驚き、狼狽えていると、、
「16にもなって、こんなおもちゃを持っているなんて、お子さまですか? 遊び終わったら、おもちゃ箱に片付けて下さいね」
アリシアから辛辣な言葉が返ってきた。
「――はい…… すぐに片付けます……」
「料理長…… 申し訳ないが感想を聞かせてもらえるかい?」
体をプルプルと震わせ、虚ろな目をしながら料理長は
「アレク様…… 大変美味しゅうございました……」
「それだけかい? なんかこう、こうしたら美味しくなるとか無いの?」
「ありませぬ…… この世の終わりでございマッスル……」
――ダメだ。この料理長は! 僕に絶望の姿を見せつつ、狙ったかのようにピンポイントでボケを入れて来やがる!
それでもスタミナ源○風たれの高みに近付く為に、僕は続ける。
「僕としては生姜の風味がまだ足りないような気がするんだ。今回、使える生姜が足りなくてパンチの効いたタレが出来なかったのはしょうがないけど、もう少し生姜があれば、もっと良い物が出来たはずなんだが……」
料理長に次回の改良点について提案をしたが、
「ブフッ。ワッハハハハ ヒーヒー 助けてー 笑い死ぬー 腹がよじれるぅー アレク様もうやめてぇー 苦しいぃ~ ダメだ。ツボに入っちまったー おしっこがチビるぅ~! あっ、漏れた!」
突然、料理長が笑いだし苦しそうに転がり始めた。
「えっ!? 何? 僕、何か変な事とでも言ったかい?」
僕が心配になり料理長に聞いた。
「生姜が無くてしょうがない! しょうがないけど生姜があれば! なんと言うユーモア溢れるブラックジョークなんだ! さすがはアレク様。この料理長も脱帽ですわい。ワッハハハハ ヒーヒー 苦しい~」
「……………………」
人が笑い転げるところを初めて見た。
――僕はギャグもダジャレも言った覚えはないし。ましてやブラックジョークも言った覚えもないのに…… この料理長は狂ってやがる! コイツもヤベェヤツだったのか? ここは本当に乙女ゲーム『プリスト』の世界なのか疑いたくなる…… この世界はヤベェヤツが多すぎる……
「いや~ アレク様には参りました。まさか、ここまでお笑いのセンスがあるとは。グヒヒヒヒ マジでツボに入りやがった。ブフッ」
料理長は立ち上がったが、まだ笑い足りないようだ。
――なんなんだろう。この虚しさは……
今日は、この料理長は役に立たないと判断し、明日にでもまたタレ作りをしようと決めた。
僕はぐったりしながら寝室に戻った。
「折角の試作1号が、まさかの一気飲みされるとは思ってもみなかったよ」
最近、どうも独り言が多くなっている。学園に入学してからヤベェヤツの遭遇率が高すぎて、もしかしたら僕もいつの間にかヤベェヤツに感化され、ヤベェヤツになってしまったのでは…… 今は考えるのはやめよう……
――翌日
「アレク様お時間です。起きて下さい」
「ん~」
僕が眠りから覚めると朝の日差しが部屋一面に注がれていた。
「やっと目を覚ましましたか」
そこには珍しく、専属メイドのアリシアが立っていた。
「あっ、アリシア。おはよう」
僕が眠い目をこすりながら挨拶をすると、
「おはようじゃありませんよ。いつまでも寝てるんですか! ボヤボヤしているとサンペータ様がお迎えに来ますよ」
僕の朝は早い。基本的にはアリシアが起こしに来る前には着替えを済ましている。だからアリシアに起こされることはないのだ。それがアリシアに起こされるまで寝ているとは情けない…… もう腹を切るしかないな……
僕は正座に座り直し、短刀を握りしめた。
「私に起こされたくらいで切腹ですか!?」
アリシアは必死に僕を止めようとしたが、
「止めてくれるなアリシア。僕には武士としての誇りがある。専属メイドに起こされるなど武士の恥。武士の情けと思い止めないでくれ」
切腹は武士の名誉。僕の名誉を護る為に切腹をするのだ。
「そんなくだらない事してないで、早く準備をしてください。本当に遅刻しちゃいますよ」
「もうそんな時間? 早くしないとサンペータが来てしまう」
僕は早急に切腹を取り止め、急ぎ学園へ行く準備を始めた。
「アレク様」
「はい、なんでしょう?」
アリシアは僕のお気に入りの短刀を手に持ち、切先をさわっていた。
「この短刀、おもちゃじゃないですか?」
切先を押すと刃が柄に収納される構造の子供のおもちゃだ。
「なぜ、それを?」
僕が驚き、狼狽えていると、、
「16にもなって、こんなおもちゃを持っているなんて、お子さまですか? 遊び終わったら、おもちゃ箱に片付けて下さいね」
アリシアから辛辣な言葉が返ってきた。
「――はい…… すぐに片付けます……」
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