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第2話 氷の皇帝の乱入
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時が止まったかのような静寂。 王都の中央広場を埋め尽くしていた数万の群衆、壇上の王族、そして断罪の準備を整えていた処刑人たち。その場にいるすべての人間が、呼吸を忘れ、目の前の光景に釘付けになっていた。
上空を旋回する巨大な黒い飛竜(ワイバーン)の群れ。 そして、私の目の前に降り立った、敵国ガルガディアの皇帝、ジークハルト・ヴォルフ・ドラグーン。
漆黒の軍服に身を包んだ彼は、まるで夜そのものを纏っているようだった。 背筋が凍るほどの冷気と、圧倒的な魔力の波動が彼を中心に渦巻いている。 私の頬に触れた彼の手袋越しに伝わる体温だけが、この非現実的な状況の中で唯一の「現実」だった。
「き、貴様……っ! ジークハルトだと!? な、なぜ敵国の皇帝が、たった一人でこんなところに!」
沈黙を破ったのは、アルフォンス王子のヒステリックな絶叫だった。 彼は玉座の陰から顔だけを出し、震える指をこちらに向けている。その顔色は蒼白で、脂汗が滲んでいた。 無理もない。 ジークハルト皇帝といえば、数年前に即位するやいなや、周辺諸国をその武力と魔道技術で瞬く間に併合した「覇王」だ。平和ボケした我が国の王子など、彼にとっては道端の石ころ以下の存在だろう。
ジークハルトは、私に触れていた手をゆっくりと離すと、鬱陶しそうに肩越しに王子を振り返った。
「一人、か。……ふん、貴様らの相手など、私一人でも過剰戦力なのだがな」
彼が軽く足を踏み鳴らす。 ただそれだけの動作で、ドォンッ! という衝撃音が広場を叩いた。 目に見えない重圧が波紋のように広がり、槍を構えようとしていた衛兵たちが、次々と膝から崩れ落ちていく。 魔法ではない。 ただの「威圧」だ。 純粋な生物としての格の違いが、本能的な恐怖となって彼らの体を縛り付けているのだ。
「ひっ、あ、あう……っ!」
王子が奇妙な声を上げて腰を抜かし、その拍子に被っていた王冠がカランコロンと無様に転がり落ちた。隣にいたマリアも、白目を剥いて失神している。 あまりにも無様で、滑稽な光景。 数分前まで、私はこの男たちに殺されかけていたのかと思うと、恐怖よりも先に虚しさがこみ上げてきた。
ジークハルトは興味を失ったように視線を戻し、再び私を見下ろした。 その氷のような瞳が、私の全身を観察するように動く。 汚れたドレス。乱れた髪。頬についた腐った野菜の欠片。そして、手首に食い込んだ荒縄。
彼のエッジの効いた眉が、ピクリと動いた。 一瞬だけ、周囲の気温がさらに下がった気がした。
「……不愉快だ」
彼が低く呟く。 その言葉が誰に向けられたものなのか、私には分からなかった。汚い私に向けられたものなのか、それとも。
彼は腰の剣を抜き放った。 銀色の閃光が走る。 私は反射的に身を竦めたが、痛みはなかった。 パラリ、と背後の荒縄が切断され、地面に落ちる音だけが聞こえた。
自由になった両手を、私は呆然と見つめる。 真っ赤に腫れ上がり、血が滲んだ手首。 ジークハルトは剣を鞘に納めると、躊躇なく私の手を取った。そして、懐から真っ白なハンカチを取り出し、傷口にそっと当てた。
「痛むか」
短く、しかし驚くほど優しい問いかけ。 私は言葉が出なかった。 敵国の皇帝。冷酷無慈悲な氷の魔人。 そう聞かされていた人物が、なぜこんなにも丁寧に、まるで壊れ物を扱うように私に触れるのか。 腐敗臭がするはずの私に、顔をしかめることもなく。
「な、なぜ……」
乾いた唇から、ようやく声が漏れた。
「なぜ、私を? 私は横領の罪で処刑される女です。国を裏切った悪女です。そんな私を助けて、何の得が……」
私の問いに、ジークハルトは鼻で笑った。 嘲笑ではない。どこか楽しげな、少年のような笑みだった。
「悪女? 横領? くだらん。そんな三文芝居の脚本など、どうでもいい」
彼は立ち上がり、私に向かって手を差し伸べた。 逆光を浴びて、その姿が神々しいほどに輝いて見える。
「私が欲しいのは、貴様の『罪』ではない。貴様の『脳』だ」 「……え?」 「その頭脳。その演算能力。そして、何よりその『魔力管理』のスキル。……我が帝国には、それが必要なのだ」
脳? スキル? 予想外の言葉に、私は瞬きを繰り返す。 彼は私の手を取り、強引に立たせた。長期間の監禁と疲労で足がもつれる。 倒れそうになった私の体を、太い腕がしっかりと支えた。 ふわり、と体が宙に浮く。 いわゆる「お姫様抱っこ」というやつだった。
「きゃっ!?」 「掴まっていろ。舌を噛むぞ」
悲鳴を上げる間もなく、ジークハルトは地面を蹴った。 風の魔術だろうか。 爆発的な加速と共に、私たちは一瞬で上空へと舞い上がった。
「ま、待て! 逃がすな! 魔導砲だ! 撃ち落とせぇぇぇッ!」
遥か下界で、正気を取り戻した王子が絶叫しているのが聞こえる。 王城の尖塔に設置された防衛用の魔導砲が、こちらに照準を合わせようと動き出した。 しかし、遅い。
上空で待機していた黒い飛竜が、主の帰還に合わせて滑空してくる。 ジークハルトは空中で軽やかに身を翻すと、その飛竜の背中に着地した。 揺れ一つない、完璧な着地だった。
彼は私を飛竜の鞍の前に座らせると、自らはその後ろに跨り、私の体をマントで包み込むようにして手綱を握った。 背中から伝わる彼の体温と、鼓動。 男性とこれほど密着したのは初めてで、心臓が早鐘を打つ。
「来るぞ。しっかりと捕まっていろ」
彼の警告と同時に、下から魔力の光弾が放たれた。 ヒュン、ヒュン、と空を切る音。 しかし、それらは私たちの乗る飛竜に届くことすらなく、見えない壁に弾かれて霧散した。
「無駄だ。……我が国の対魔障壁(アンチ・マジック・シェル)の構成式を、貴様らの旧式な魔導砲で貫けるはずがない」
ジークハルトは冷たく言い放つと、片手を王城の方へ向けた。 何か攻撃をするつもりなのか。 私は息を呑んだ。
「――餞別(せんべつ)だ。受け取っておけ」
彼が指を鳴らす。 パチン、という乾いた音が響いた瞬間。 王城の上空に展開されていた巨大な防御結界が、ガラス細工のように粉々に砕け散った。
ガシャァァァァァァァァンッ!!
空から光の欠片が降り注ぐ。 結界の崩壊音は雷鳴のように轟き、王都中の人々を恐怖の底に突き落とした。 攻撃ではない。 ただ、結界の維持システム(私が構築したものだ!)の核となる部分に、ほんの少し魔力干渉を行って、自壊させたのだ。
「なっ……!?」
私は絶句した。 あの結界は、何重にもプロテクトを掛けた最高傑作だったはずだ。それを、指パッチン一つで? いや、違う。 彼は力任せに破壊したのではない。 結界の構造を瞬時に理解し、最も脆弱な一点を突いたのだ。 それは、私のスキルである「最適化」を、逆方向に利用したような神業だった。
「さあ、帰るぞ」
ジークハルトが手綱を引く。 飛竜が翼を大きく広げ、空気を叩いた。 強烈なGが体にかかる。 私たちは矢のような速度で、北の空へと飛び立った。
眼下に見える王都が、みるみるうちに小さくなっていく。 処刑台のある広場。 私が青春を捧げた王城。 そして、豆粒のように小さくなった王子や民衆たち。
彼らはきっと、今頃パニックに陥っているだろう。 防御結界を失った王都は、丸裸も同然だ。 だが、不思議と同情心は湧かなかった。 むしろ、胸の奥にあった重い鉛が消え失せ、清々しい風が吹き抜けていくような感覚があった。
(ああ、私……本当に、離れるんだ)
涙は出なかった。 ただ、強い風が頬を叩き、過去を洗い流していくようだった。
しばらくの間、私たちは雲海の上を飛んでいた。 高度が上がるにつれ、気温は急激に下がっていく。 飛竜の飛行速度は凄まじく、本来なら呼吸すら困難なはずだ。 しかし、私の周囲には風も寒さも感じなかった。 見れば、薄い青色の膜が、私とジークハルトを包み込んでいる。
「風除けと保温の結界だ。……貴様の体は弱っている。無理はするな」
耳元で、彼がぶっきらぼうに言った。 その声の響きに、私はふと我に返った。
「あの……皇帝陛下」 「ジークハルトでいい。あるいは『ジーク』と呼べ」 「そ、そんな恐れ多いことはできません! ジークハルト陛下……その、なぜ私なのですか?」
私はずっと抱えていた疑問を口にした。 風鳴りの中でも、声は驚くほどクリアに届いた。
「先ほど、私の『脳』や『スキル』が必要だと仰いました。ですが、私はただの伯爵令嬢……いえ、元公爵令嬢です。魔力も少なく、派手な魔法は使えません。私ができることなんて、地味な計算と調整くらいで……」
「それがいいのだ」
ジークハルトは即答した。 彼は前を向いたまま、淡々と語り始めた。
「私は以前から、貴国の防衛システムに違和感を抱いていた。貴国の魔導技術は三流だ。魔力の使い方も粗雑で、無駄が多い。……だが、王城周辺のシステムだけは違った」
彼の言葉に、私はドキリとした。
「結界の維持コスト、地下水路の浄化サイクル、魔導兵器の冷却効率。……どれも異常な数値だった。理論上の限界値を超えて最適化されていたのだ。まるで、神が数式をいじったかのようにな」
「そ、それは……私が、予算が足りなくて、無理やり調整しただけで……」
「それが『異常』だと言っている。……我が国の魔導師たちに同じことができるか? 答えは否だ。彼らは火力には優れているが、繊細なリソース管理(リソース・マネジメント)ができない。燃費を無視して大技を放つことしか能がない馬鹿どもだ」
彼は吐き捨てるように言ったが、その声には確かな敬意が含まれていた。
「私は調べさせた。誰がこの『奇跡的な調整』を行っているのかを。……そして、その正体が、表舞台には決して出てこない一人の令嬢だと突き止めた」
スパイを使っていたのか。 敵国の皇帝に、自分の仕事を見られていたなんて。 王子すら気づかなかった私の仕事を、遠く離れた敵国の主が評価していたという事実は、なんとも皮肉で、そして胸が締め付けられるほど嬉しかった。
「一週間前だ。貴国の王城システムの効率が、突然ガクンと落ちたのは」
ジークハルトが言った。
「結界の強度は三割減。照明の輝度は乱れ、魔導具の故障率が跳ね上がった。……そのタイミングは、貴様が『横領の罪』で地下牢に繋がれた日と一致する」
「……気づいて、いたのですか」
「当然だ。貴様という『要(かなめ)』が抜けたのだからな。……あの国は、貴様一人の犠牲の上で成り立っていた砂上の楼閣だったということだ」
彼は手綱を握る手に力を込めた。
「リーゼロッテ。私は貴様を買いに来た」
彼は真っ直ぐな言葉を投げかけてきた。
「我が帝国ガルガディアは、急速な軍事拡大により、慢性的な魔力不足(エネルギー・クライシス)に陥っている。領土は増えたが、それを維持するシステムが追いついていない。……このままでは、帝国は自らの重みで潰れる」
帝国の意外な内情。 最強の軍事国家が、エネルギー問題に悩んでいるなんて初耳だった。
「私には力がある。敵を粉砕する力はな。だが、国を治め、維持し、潤滑に回す力がない。……私には、貴様が必要なのだ」
必要。 その言葉が、私の乾いた心に染み渡っていく。 アルフォンス王子は言った。「お前は不要だ」と。 けれど、この世界で最も恐ろしいとされる皇帝は言った。「お前が必要だ」と。
「私の下で働け。契約だ」
ジークハルトは振り返り、私の瞳を覗き込んだ。
「待遇は保証する。給与は貴国時代の百倍……いや、言い値で払おう。衣食住は最高級のものを用意する。休みも週に二日は必ず取らせる。残業代もしっかり出す。……どうだ?」
「えっ……?」
あまりに現実的で、そして破格すぎる条件に、私はポカンと口を開けた。 週休二日? 残業代? そんな言葉、あのブラックな王城勤務時代には聞いたこともなかった。
「あ、愛人……とかでは、ないのですか?」 「は? 何を言っている」
ジークハルトは心底不思議そうな顔をした。
「私は『魔導技師』としての貴様を求めているのだ。……もちろん、貴様が望むなら、それ以上の関係も吝(やぶさ)かではないが」
彼は少しだけ視線を逸らし、耳を赤くした。 え、今なんて? 聞き返す間もなく、彼は咳払いをして話題を戻した。
「と、とにかく! これは雇用契約だ。貴様には拒否権はない……と言いたいところだが、嫌ならここで突き落とすしかないな」 「や、やります! 働かせてください!」
私は即答した。 突き落とされるのが怖いからではない。 自分の能力を正当に評価し、必要としてくれる場所があるなら、そこに行ってみたいと思ったからだ。
「……そうか。ならば、契約成立だ」
ジークハルトは満足げに頷くと、口元を緩めた。 その時だった。 不意に、彼の表情が苦痛に歪んだ。
「ぐっ……ぅ……!」
呻き声と共に、彼の体が大きく傾いた。 飛竜が驚いてバランスを崩す。
「ジークハルト様!?」
私は慌てて彼の体を支えた。 触れた彼の体は、先ほどまでの温かさが嘘のように、高熱を発していた。 いや、熱ではない。 これは――魔力だ。 皮膚の下で、桁外れの魔力が暴走し、彼の肉体を内側から焼き焦がそうとしている。
「触れるな……っ! 移るぞ……!」
彼は私を突き放そうとしたが、その力は弱々しかった。 顔色は土気色になり、額には玉のような脂汗が浮かんでいる。 氷の皇帝と恐れられる彼が、こんなにも苦しんでいるなんて。
(魔力過多症(マナ・オーバーロード)……?)
私はすぐに察した。 強大すぎる魔力を持つ者が陥る、致死性の病。 自身の魔力を制御しきれず、常に全身を焼かれるような激痛に苛まれるという。 彼は、この痛みに耐えながら、あんな涼しい顔で私の前に現れ、王子たちを威圧していたのか。
「じっとしていてください!」
私は迷わず、彼の手を強く握り返した。 そして、目を閉じて意識を集中する。
私のスキル『魔力循環の最適化』は、機械や結界だけが対象ではない。 魔力が流れるものなら、人体だって調整できる。
(流れが見える……。なんて乱暴で、激しい奔流なの)
彼の中の魔力は、まるで嵐の海だった。 出口を求めて暴れまわる膨大なエネルギー。 私はその流れに、そっと自分の魔力を寄り添わせた。 せき止められている水門を開き、曲がりくねった水路を真っ直ぐにし、濁った流れを濾過していくイメージ。
循環させなさい。 留めるのではなく、回すのです。 心臓から指先へ。指先から大気へ。そしてまた、大地から足元へ。
「……ぁ……」
ジークハルトの口から、安堵の吐息が漏れた。 強張っていた筋肉が弛緩し、苦痛に歪んでいた表情が穏やかなものへと変わっていく。 暴走していた魔力が、私の誘導に従って、静かな大河の流れのように整い始めたのだ。
「……凄い。痛みが、消えた……」
彼は信じられないものを見るような目で、私を見つめた。 その瞳は、熱に潤み、どこか縋るような弱さを秘めていた。
「子供の頃から、片時も消えなかった焼けるような痛みが……嘘のように……」
彼は私の手を両手で包み込み、額に押し当てた。
「やはり、貴様だ。……貴様だけが、私の呪いを解ける」
それは、雇用主としての言葉を超えた、魂の叫びのように聞こえた。 私は、胸の奥が熱くなるのを感じた。 誰かに必要とされること。 誰かの苦痛を取り除くことができること。 それが、こんなにも満たされる感覚だなんて知らなかった。
「……もう大丈夫です、陛下。私が調整(チューニング)しましたから」
私が微笑むと、彼はハッとしたように顔を上げた。 そして、気まずそうに視線を逸らし、
「……礼を言う。それと、だからジークでいいと言っているだろう」
と、少しぶっきらぼうに言った。 その耳が、先ほどよりもさらに赤くなっているのを見て、私は小さく吹き出してしまった。
前方に見えてきたのは、険しい山脈の向こうに広がる、黒鉄の摩天楼。 煙突から蒸気が上がり、魔導列車が走る、機械と魔法が融合した巨大都市。 軍事帝国ガルガディアの帝都だ。
あそこが、私の新しい職場。 そして、この不器用で最強な皇帝との、新しい生活が始まる場所。
「着くぞ。……歓迎しよう、リーゼロッテ。私の国へ」
ジークハルトの言葉と共に、飛竜は速度を落とし、鋼鉄の都へと降下を開始した。 私はもう、後ろを振り返らなかった。 今さら国には戻らない。 ここが、私の生きる場所なのだから。
上空を旋回する巨大な黒い飛竜(ワイバーン)の群れ。 そして、私の目の前に降り立った、敵国ガルガディアの皇帝、ジークハルト・ヴォルフ・ドラグーン。
漆黒の軍服に身を包んだ彼は、まるで夜そのものを纏っているようだった。 背筋が凍るほどの冷気と、圧倒的な魔力の波動が彼を中心に渦巻いている。 私の頬に触れた彼の手袋越しに伝わる体温だけが、この非現実的な状況の中で唯一の「現実」だった。
「き、貴様……っ! ジークハルトだと!? な、なぜ敵国の皇帝が、たった一人でこんなところに!」
沈黙を破ったのは、アルフォンス王子のヒステリックな絶叫だった。 彼は玉座の陰から顔だけを出し、震える指をこちらに向けている。その顔色は蒼白で、脂汗が滲んでいた。 無理もない。 ジークハルト皇帝といえば、数年前に即位するやいなや、周辺諸国をその武力と魔道技術で瞬く間に併合した「覇王」だ。平和ボケした我が国の王子など、彼にとっては道端の石ころ以下の存在だろう。
ジークハルトは、私に触れていた手をゆっくりと離すと、鬱陶しそうに肩越しに王子を振り返った。
「一人、か。……ふん、貴様らの相手など、私一人でも過剰戦力なのだがな」
彼が軽く足を踏み鳴らす。 ただそれだけの動作で、ドォンッ! という衝撃音が広場を叩いた。 目に見えない重圧が波紋のように広がり、槍を構えようとしていた衛兵たちが、次々と膝から崩れ落ちていく。 魔法ではない。 ただの「威圧」だ。 純粋な生物としての格の違いが、本能的な恐怖となって彼らの体を縛り付けているのだ。
「ひっ、あ、あう……っ!」
王子が奇妙な声を上げて腰を抜かし、その拍子に被っていた王冠がカランコロンと無様に転がり落ちた。隣にいたマリアも、白目を剥いて失神している。 あまりにも無様で、滑稽な光景。 数分前まで、私はこの男たちに殺されかけていたのかと思うと、恐怖よりも先に虚しさがこみ上げてきた。
ジークハルトは興味を失ったように視線を戻し、再び私を見下ろした。 その氷のような瞳が、私の全身を観察するように動く。 汚れたドレス。乱れた髪。頬についた腐った野菜の欠片。そして、手首に食い込んだ荒縄。
彼のエッジの効いた眉が、ピクリと動いた。 一瞬だけ、周囲の気温がさらに下がった気がした。
「……不愉快だ」
彼が低く呟く。 その言葉が誰に向けられたものなのか、私には分からなかった。汚い私に向けられたものなのか、それとも。
彼は腰の剣を抜き放った。 銀色の閃光が走る。 私は反射的に身を竦めたが、痛みはなかった。 パラリ、と背後の荒縄が切断され、地面に落ちる音だけが聞こえた。
自由になった両手を、私は呆然と見つめる。 真っ赤に腫れ上がり、血が滲んだ手首。 ジークハルトは剣を鞘に納めると、躊躇なく私の手を取った。そして、懐から真っ白なハンカチを取り出し、傷口にそっと当てた。
「痛むか」
短く、しかし驚くほど優しい問いかけ。 私は言葉が出なかった。 敵国の皇帝。冷酷無慈悲な氷の魔人。 そう聞かされていた人物が、なぜこんなにも丁寧に、まるで壊れ物を扱うように私に触れるのか。 腐敗臭がするはずの私に、顔をしかめることもなく。
「な、なぜ……」
乾いた唇から、ようやく声が漏れた。
「なぜ、私を? 私は横領の罪で処刑される女です。国を裏切った悪女です。そんな私を助けて、何の得が……」
私の問いに、ジークハルトは鼻で笑った。 嘲笑ではない。どこか楽しげな、少年のような笑みだった。
「悪女? 横領? くだらん。そんな三文芝居の脚本など、どうでもいい」
彼は立ち上がり、私に向かって手を差し伸べた。 逆光を浴びて、その姿が神々しいほどに輝いて見える。
「私が欲しいのは、貴様の『罪』ではない。貴様の『脳』だ」 「……え?」 「その頭脳。その演算能力。そして、何よりその『魔力管理』のスキル。……我が帝国には、それが必要なのだ」
脳? スキル? 予想外の言葉に、私は瞬きを繰り返す。 彼は私の手を取り、強引に立たせた。長期間の監禁と疲労で足がもつれる。 倒れそうになった私の体を、太い腕がしっかりと支えた。 ふわり、と体が宙に浮く。 いわゆる「お姫様抱っこ」というやつだった。
「きゃっ!?」 「掴まっていろ。舌を噛むぞ」
悲鳴を上げる間もなく、ジークハルトは地面を蹴った。 風の魔術だろうか。 爆発的な加速と共に、私たちは一瞬で上空へと舞い上がった。
「ま、待て! 逃がすな! 魔導砲だ! 撃ち落とせぇぇぇッ!」
遥か下界で、正気を取り戻した王子が絶叫しているのが聞こえる。 王城の尖塔に設置された防衛用の魔導砲が、こちらに照準を合わせようと動き出した。 しかし、遅い。
上空で待機していた黒い飛竜が、主の帰還に合わせて滑空してくる。 ジークハルトは空中で軽やかに身を翻すと、その飛竜の背中に着地した。 揺れ一つない、完璧な着地だった。
彼は私を飛竜の鞍の前に座らせると、自らはその後ろに跨り、私の体をマントで包み込むようにして手綱を握った。 背中から伝わる彼の体温と、鼓動。 男性とこれほど密着したのは初めてで、心臓が早鐘を打つ。
「来るぞ。しっかりと捕まっていろ」
彼の警告と同時に、下から魔力の光弾が放たれた。 ヒュン、ヒュン、と空を切る音。 しかし、それらは私たちの乗る飛竜に届くことすらなく、見えない壁に弾かれて霧散した。
「無駄だ。……我が国の対魔障壁(アンチ・マジック・シェル)の構成式を、貴様らの旧式な魔導砲で貫けるはずがない」
ジークハルトは冷たく言い放つと、片手を王城の方へ向けた。 何か攻撃をするつもりなのか。 私は息を呑んだ。
「――餞別(せんべつ)だ。受け取っておけ」
彼が指を鳴らす。 パチン、という乾いた音が響いた瞬間。 王城の上空に展開されていた巨大な防御結界が、ガラス細工のように粉々に砕け散った。
ガシャァァァァァァァァンッ!!
空から光の欠片が降り注ぐ。 結界の崩壊音は雷鳴のように轟き、王都中の人々を恐怖の底に突き落とした。 攻撃ではない。 ただ、結界の維持システム(私が構築したものだ!)の核となる部分に、ほんの少し魔力干渉を行って、自壊させたのだ。
「なっ……!?」
私は絶句した。 あの結界は、何重にもプロテクトを掛けた最高傑作だったはずだ。それを、指パッチン一つで? いや、違う。 彼は力任せに破壊したのではない。 結界の構造を瞬時に理解し、最も脆弱な一点を突いたのだ。 それは、私のスキルである「最適化」を、逆方向に利用したような神業だった。
「さあ、帰るぞ」
ジークハルトが手綱を引く。 飛竜が翼を大きく広げ、空気を叩いた。 強烈なGが体にかかる。 私たちは矢のような速度で、北の空へと飛び立った。
眼下に見える王都が、みるみるうちに小さくなっていく。 処刑台のある広場。 私が青春を捧げた王城。 そして、豆粒のように小さくなった王子や民衆たち。
彼らはきっと、今頃パニックに陥っているだろう。 防御結界を失った王都は、丸裸も同然だ。 だが、不思議と同情心は湧かなかった。 むしろ、胸の奥にあった重い鉛が消え失せ、清々しい風が吹き抜けていくような感覚があった。
(ああ、私……本当に、離れるんだ)
涙は出なかった。 ただ、強い風が頬を叩き、過去を洗い流していくようだった。
しばらくの間、私たちは雲海の上を飛んでいた。 高度が上がるにつれ、気温は急激に下がっていく。 飛竜の飛行速度は凄まじく、本来なら呼吸すら困難なはずだ。 しかし、私の周囲には風も寒さも感じなかった。 見れば、薄い青色の膜が、私とジークハルトを包み込んでいる。
「風除けと保温の結界だ。……貴様の体は弱っている。無理はするな」
耳元で、彼がぶっきらぼうに言った。 その声の響きに、私はふと我に返った。
「あの……皇帝陛下」 「ジークハルトでいい。あるいは『ジーク』と呼べ」 「そ、そんな恐れ多いことはできません! ジークハルト陛下……その、なぜ私なのですか?」
私はずっと抱えていた疑問を口にした。 風鳴りの中でも、声は驚くほどクリアに届いた。
「先ほど、私の『脳』や『スキル』が必要だと仰いました。ですが、私はただの伯爵令嬢……いえ、元公爵令嬢です。魔力も少なく、派手な魔法は使えません。私ができることなんて、地味な計算と調整くらいで……」
「それがいいのだ」
ジークハルトは即答した。 彼は前を向いたまま、淡々と語り始めた。
「私は以前から、貴国の防衛システムに違和感を抱いていた。貴国の魔導技術は三流だ。魔力の使い方も粗雑で、無駄が多い。……だが、王城周辺のシステムだけは違った」
彼の言葉に、私はドキリとした。
「結界の維持コスト、地下水路の浄化サイクル、魔導兵器の冷却効率。……どれも異常な数値だった。理論上の限界値を超えて最適化されていたのだ。まるで、神が数式をいじったかのようにな」
「そ、それは……私が、予算が足りなくて、無理やり調整しただけで……」
「それが『異常』だと言っている。……我が国の魔導師たちに同じことができるか? 答えは否だ。彼らは火力には優れているが、繊細なリソース管理(リソース・マネジメント)ができない。燃費を無視して大技を放つことしか能がない馬鹿どもだ」
彼は吐き捨てるように言ったが、その声には確かな敬意が含まれていた。
「私は調べさせた。誰がこの『奇跡的な調整』を行っているのかを。……そして、その正体が、表舞台には決して出てこない一人の令嬢だと突き止めた」
スパイを使っていたのか。 敵国の皇帝に、自分の仕事を見られていたなんて。 王子すら気づかなかった私の仕事を、遠く離れた敵国の主が評価していたという事実は、なんとも皮肉で、そして胸が締め付けられるほど嬉しかった。
「一週間前だ。貴国の王城システムの効率が、突然ガクンと落ちたのは」
ジークハルトが言った。
「結界の強度は三割減。照明の輝度は乱れ、魔導具の故障率が跳ね上がった。……そのタイミングは、貴様が『横領の罪』で地下牢に繋がれた日と一致する」
「……気づいて、いたのですか」
「当然だ。貴様という『要(かなめ)』が抜けたのだからな。……あの国は、貴様一人の犠牲の上で成り立っていた砂上の楼閣だったということだ」
彼は手綱を握る手に力を込めた。
「リーゼロッテ。私は貴様を買いに来た」
彼は真っ直ぐな言葉を投げかけてきた。
「我が帝国ガルガディアは、急速な軍事拡大により、慢性的な魔力不足(エネルギー・クライシス)に陥っている。領土は増えたが、それを維持するシステムが追いついていない。……このままでは、帝国は自らの重みで潰れる」
帝国の意外な内情。 最強の軍事国家が、エネルギー問題に悩んでいるなんて初耳だった。
「私には力がある。敵を粉砕する力はな。だが、国を治め、維持し、潤滑に回す力がない。……私には、貴様が必要なのだ」
必要。 その言葉が、私の乾いた心に染み渡っていく。 アルフォンス王子は言った。「お前は不要だ」と。 けれど、この世界で最も恐ろしいとされる皇帝は言った。「お前が必要だ」と。
「私の下で働け。契約だ」
ジークハルトは振り返り、私の瞳を覗き込んだ。
「待遇は保証する。給与は貴国時代の百倍……いや、言い値で払おう。衣食住は最高級のものを用意する。休みも週に二日は必ず取らせる。残業代もしっかり出す。……どうだ?」
「えっ……?」
あまりに現実的で、そして破格すぎる条件に、私はポカンと口を開けた。 週休二日? 残業代? そんな言葉、あのブラックな王城勤務時代には聞いたこともなかった。
「あ、愛人……とかでは、ないのですか?」 「は? 何を言っている」
ジークハルトは心底不思議そうな顔をした。
「私は『魔導技師』としての貴様を求めているのだ。……もちろん、貴様が望むなら、それ以上の関係も吝(やぶさ)かではないが」
彼は少しだけ視線を逸らし、耳を赤くした。 え、今なんて? 聞き返す間もなく、彼は咳払いをして話題を戻した。
「と、とにかく! これは雇用契約だ。貴様には拒否権はない……と言いたいところだが、嫌ならここで突き落とすしかないな」 「や、やります! 働かせてください!」
私は即答した。 突き落とされるのが怖いからではない。 自分の能力を正当に評価し、必要としてくれる場所があるなら、そこに行ってみたいと思ったからだ。
「……そうか。ならば、契約成立だ」
ジークハルトは満足げに頷くと、口元を緩めた。 その時だった。 不意に、彼の表情が苦痛に歪んだ。
「ぐっ……ぅ……!」
呻き声と共に、彼の体が大きく傾いた。 飛竜が驚いてバランスを崩す。
「ジークハルト様!?」
私は慌てて彼の体を支えた。 触れた彼の体は、先ほどまでの温かさが嘘のように、高熱を発していた。 いや、熱ではない。 これは――魔力だ。 皮膚の下で、桁外れの魔力が暴走し、彼の肉体を内側から焼き焦がそうとしている。
「触れるな……っ! 移るぞ……!」
彼は私を突き放そうとしたが、その力は弱々しかった。 顔色は土気色になり、額には玉のような脂汗が浮かんでいる。 氷の皇帝と恐れられる彼が、こんなにも苦しんでいるなんて。
(魔力過多症(マナ・オーバーロード)……?)
私はすぐに察した。 強大すぎる魔力を持つ者が陥る、致死性の病。 自身の魔力を制御しきれず、常に全身を焼かれるような激痛に苛まれるという。 彼は、この痛みに耐えながら、あんな涼しい顔で私の前に現れ、王子たちを威圧していたのか。
「じっとしていてください!」
私は迷わず、彼の手を強く握り返した。 そして、目を閉じて意識を集中する。
私のスキル『魔力循環の最適化』は、機械や結界だけが対象ではない。 魔力が流れるものなら、人体だって調整できる。
(流れが見える……。なんて乱暴で、激しい奔流なの)
彼の中の魔力は、まるで嵐の海だった。 出口を求めて暴れまわる膨大なエネルギー。 私はその流れに、そっと自分の魔力を寄り添わせた。 せき止められている水門を開き、曲がりくねった水路を真っ直ぐにし、濁った流れを濾過していくイメージ。
循環させなさい。 留めるのではなく、回すのです。 心臓から指先へ。指先から大気へ。そしてまた、大地から足元へ。
「……ぁ……」
ジークハルトの口から、安堵の吐息が漏れた。 強張っていた筋肉が弛緩し、苦痛に歪んでいた表情が穏やかなものへと変わっていく。 暴走していた魔力が、私の誘導に従って、静かな大河の流れのように整い始めたのだ。
「……凄い。痛みが、消えた……」
彼は信じられないものを見るような目で、私を見つめた。 その瞳は、熱に潤み、どこか縋るような弱さを秘めていた。
「子供の頃から、片時も消えなかった焼けるような痛みが……嘘のように……」
彼は私の手を両手で包み込み、額に押し当てた。
「やはり、貴様だ。……貴様だけが、私の呪いを解ける」
それは、雇用主としての言葉を超えた、魂の叫びのように聞こえた。 私は、胸の奥が熱くなるのを感じた。 誰かに必要とされること。 誰かの苦痛を取り除くことができること。 それが、こんなにも満たされる感覚だなんて知らなかった。
「……もう大丈夫です、陛下。私が調整(チューニング)しましたから」
私が微笑むと、彼はハッとしたように顔を上げた。 そして、気まずそうに視線を逸らし、
「……礼を言う。それと、だからジークでいいと言っているだろう」
と、少しぶっきらぼうに言った。 その耳が、先ほどよりもさらに赤くなっているのを見て、私は小さく吹き出してしまった。
前方に見えてきたのは、険しい山脈の向こうに広がる、黒鉄の摩天楼。 煙突から蒸気が上がり、魔導列車が走る、機械と魔法が融合した巨大都市。 軍事帝国ガルガディアの帝都だ。
あそこが、私の新しい職場。 そして、この不器用で最強な皇帝との、新しい生活が始まる場所。
「着くぞ。……歓迎しよう、リーゼロッテ。私の国へ」
ジークハルトの言葉と共に、飛竜は速度を落とし、鋼鉄の都へと降下を開始した。 私はもう、後ろを振り返らなかった。 今さら国には戻らない。 ここが、私の生きる場所なのだから。
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