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第十六話:皇后の休日と小さな胎動
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結婚式から数ヶ月。 帝都は初夏の爽やかな風に包まれていた。
帝城の奥にある、私の執務室。 窓からは美しい庭園が見渡せるこの部屋で、私はいつものように書類と向き合っていた。
「……よし。これで南方の灌漑(かんがい)工事の予算案は完成ね」
私は満足げにペンを置き、凝り固まった肩を回した。 妊娠5ヶ月。 つわりの時期も終わり、体調は安定している。 お腹は服の上からでも少しわかるくらいにふっくらとしてきたが、動くのに支障はない。
「次は……北部の街道整備の進捗確認と、新しい貿易港の設計図チェックか」
私は次の書類の山に手を伸ばそうとした。 その時だった。
「――そこまでだ」
背後から、低い声が降ってきた。 同時に、私の手からヒョイっと書類が取り上げられる。
「ああっ! 返してください、ジークハルト様! あと少しで終わるんです!」
振り返ると、そこには眉間に皺を寄せた皇帝陛下が立っていた。 手には私の大事な書類を持ち、もう片方の手には温かいミルクの入ったマグカップを持っている。
「駄目だ。侍医から言われているだろう。『一日の執務は4時間まで』と。今日はもう5時間も机に向かっているぞ」
「たった1時間の超過ですわ。それに、今ここで私が確認しないと、現場の職人たちが困るのです」
「現場のことは宰相に任せろ。皇帝命令だ、強制終了」
彼は無慈悲に書類を自分の懐にしまい込み、代わりにマグカップを私の手に握らせた。
「ほら、飲め。カルシウムだ」
「……もう。過保護すぎます」
私は口を尖らせながらも、ミルクを一口飲んだ。 ほんのり甘い蜂蜜の味がする。 彼が自ら調合してくれたのだろう。
「過保護で結構。貴女は放っておくと、寝食を忘れて仕事に没頭するからな。……貴女の体は、もう貴女一人のものではないのだぞ?」
彼は私の椅子の横に膝をつき、膨らんだお腹を愛おしそうに撫でた。
「この子のためにも、母親は休まねばならん」
その言葉と、優しい手つきに、私の反論は封じ込められた。 確かに、彼の言う通りだ。 私の中には、小さな命が息づいている。 無理をして何かあったら、取り返しがつかない。
「……わかりました。降参です」
「よろしい。では、今日は『皇后の休日』とする。天気もいい、庭へ散歩に行こう」
彼は私をエスコートし、庭園へと連れ出した。
* * *
帝城の庭園は、今が見頃だった。 私の故郷である王国の花と、帝国の花が入り混じって植えられ、見たこともないような美しいコントラストを描いている。 これも、ジークハルト様が私のために庭師に命じて作らせたものだ。
私たちは木陰のベンチに座り、のんびりと風を感じていた。
「……不思議ですね」
私は木漏れ日を見上げながら呟いた。
「なにがだ?」
「こんな風に、平日の昼間から何もしないで座っているなんて。以前の私なら、罪悪感で押し潰されていたと思います」
王国にいた頃、私は「有能であること」だけが存在意義だった。 一分一秒でも無駄にすれば、レイモンド殿下に叱責され、父に失望される。 常に何かの成果を出し続けなければ、捨てられるという恐怖があった。
だから、妊娠中も働くつもりだった。 いや、むしろ「妊娠して働けなくなること」が怖かったのかもしれない。
「コーデリア」
ジークハルト様が私の肩を抱いた。
「貴女はもう、何も証明しなくていい。貴女がそこにいて、笑っていてくれるだけで、この国にとっては最大の利益だ」
「……利益、ですか?」
「ああ。皇后が幸せそうにしている国は栄える。貴女の笑顔は、どんな政策よりも民を安心させるんだ」
彼は私の頬にキスをした。
「それに、今の貴女は大仕事の最中だろう? 私たちの子供を育てるという、国家プロジェクトだ」
「ふふっ、そう言われると責任重大ですね」
「ああ。だから、今は全力でサボれ。私が許す」
彼の不器用な優しさが、心に沁みる。 そうか。 休むことも、今の私にとっては「仕事」なのか。
そう思えた瞬間、肩の力がふっと抜けた。 鳥のさえずり。 風が葉を揺らす音。 それらが鮮明に聞こえてくる。
世界は、こんなにも静かで、美しい場所だったのか。
その時だった。
ポコッ。
お腹の中で、何かが弾けたような感覚があった。
「……っ!?」
私は驚いて、お腹を押さえた。
「どうした!? 腹が痛いのか!?」
ジークハルト様が血相を変えて立ち上がる。
「い、いえ……違います。今……」
ポコッ、グニョ。
まただ。 今度ははっきりとわかった。 内側から、小さな手足で壁を蹴るような、愛らしい衝撃。
「……動いた」
「え?」
「動きました、ジークハルト様! 赤ちゃんが!」
「な、なんだって!?」
彼は慌てて私の前に跪き、お腹に耳を当てた。 その顔は真剣そのもので、まるで敵軍の足音を聞き分ける将軍のようだ。
シーンとした沈黙が流れる。
……ポコン。
「!!」
ジークハルト様が弾かれたように顔を上げた。 その赤い瞳が、見開かれている。
「う……動いた……! 今、確かに! 私の耳を蹴った!」
「ふふ、元気な子ですね」
「す、すごい……。本当に生きているんだな。ここに、命が……」
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。 氷の皇帝が、子供のように泣いている。 彼は震える手で私のお腹を抱きしめ、何度も何度もキスをした。
「ありがとう……。ありがとう、コーデリア」
「泣きすぎですよ、パパ」
私は彼の銀髪を優しく撫でた。 愛おしさが込み上げてくる。 この人は、きっと世界一の父親になる。 少し心配性で、涙もろくて、そして誰よりも家族を愛する父親に。
「早く会いたいな。男の子なら剣を教えよう。女の子なら……虫がつかないように私が全力でガードする」
「女の子だったら大変そうですね。お嫁に行けなくなってしまいますわ」
「行かせん! 一生城に置いておく!」
「困ったパパですねぇ」
私たちは顔を見合わせて笑った。 お腹の子も、それに呼応するようにポコポコと動いている。 まるで「パパ、泣かないで」と慰めているようだ。
幸せだった。 書類の山を片付けた達成感も素晴らしいけれど、こうして愛する人と小さな命の鼓動を感じる時間は、何にも代えがたい至福だった。
「……ねえ、ジークハルト様」
「ん?」
「私、今、すごく幸せです。……王国を追い出されて、本当に良かった」
これは本心だった。 もしあのまま王国にいて、レイモンド殿下と結婚していたら。 私はきっと、子供ができても「跡継ぎ」としてしか見てもらえず、こんな風に夫婦でお腹を撫で合う時間なんて持てなかっただろう。 仕事に追われ、心身をすり減らし、冷え切った家庭で枯れていったに違いない。
「……そう言ってもらえると、私を振った王国の神に感謝したくなるな」
ジークハルト様は私の手を強く握った。
「約束する。この幸せを、死ぬまで守り抜くと。貴女と、この子を、何があっても」
「はい。信じています」
風が吹き抜け、花びらが私たちの周りを舞った。 それはまるで、生まれてくる新しい命を祝福するフラワーシャワーのようだった。
* * *
その日の夜。 寝室にて。
「……というわけで、ここを少し改良したいと思うの」
私はベッドの上で、隠し持っていたメモ帳を広げていた。 昼間、庭で思いついた「国立託児所」のアイデアだ。 働く女性たちが安心して子供を預けられる施設。 自分が出産を控えているからこそ、その必要性を痛感していた。
「おい」
お風呂上がりで髪を拭いていたジークハルト様が、呆れ顔で立っていた。
「寝る前まで仕事の話か? 今日は休日だと言っただろう」
「でも、いいアイデアなんです! これを実現すれば、帝国の女性の労働参加率が上がって、経済効果が……」
「はいはい、わかった。話は聞く」
彼はベッドに入り込み、私からメモ帳を取り上げると、サイドテーブルに置いた。 そして、私を後ろから抱きしめる。
「だが、その前にやることがあるだろう?」
「やること?」
「おやすみのキスと……子供への読み聞かせだ」
彼はどこからか、絵本を取り出した。 『勇者と賢いお姫様』というタイトルの、子供向けの物語だ。
「え、もう用意していたのですか?」
「教育は早い方がいいと聞いた。胎教というやつだ」
彼は大真面目な顔で絵本を開き、読み始めた。
「むかしむかし、あるところに、とても強くてハンサムな皇帝がいました……」
「ちょっと、タイトルと違いますよ?」
「いいんだ。主役は私だからな。そして、彼には世界一賢くて美しいお嫁さんがいました……」
彼は私の耳元で、優しい低音ボイスで物語を語り始めた。 内容はかなり脚色されていて、完全に私たちの話になっていたけれど。
お腹の赤ちゃんも、静かに聞いているようだった。 心地よいリズム。 愛に満ちた空間。
私は彼の腕の中で、幸せなまどろみに包まれていった。
(ああ……明日もきっと、いい日になる)
そう確信しながら、私は目を閉じた。
帝国の「賢皇后」は、今日も愛され、守られ、そして新しい命と共に明日への希望を紡いでいる。 その平穏な日々は、かつて彼女を捨てた者たちが決して手に入れられない、黄金の輝きに満ちていた。
帝城の奥にある、私の執務室。 窓からは美しい庭園が見渡せるこの部屋で、私はいつものように書類と向き合っていた。
「……よし。これで南方の灌漑(かんがい)工事の予算案は完成ね」
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「次は……北部の街道整備の進捗確認と、新しい貿易港の設計図チェックか」
私は次の書類の山に手を伸ばそうとした。 その時だった。
「――そこまでだ」
背後から、低い声が降ってきた。 同時に、私の手からヒョイっと書類が取り上げられる。
「ああっ! 返してください、ジークハルト様! あと少しで終わるんです!」
振り返ると、そこには眉間に皺を寄せた皇帝陛下が立っていた。 手には私の大事な書類を持ち、もう片方の手には温かいミルクの入ったマグカップを持っている。
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私は口を尖らせながらも、ミルクを一口飲んだ。 ほんのり甘い蜂蜜の味がする。 彼が自ら調合してくれたのだろう。
「過保護で結構。貴女は放っておくと、寝食を忘れて仕事に没頭するからな。……貴女の体は、もう貴女一人のものではないのだぞ?」
彼は私の椅子の横に膝をつき、膨らんだお腹を愛おしそうに撫でた。
「この子のためにも、母親は休まねばならん」
その言葉と、優しい手つきに、私の反論は封じ込められた。 確かに、彼の言う通りだ。 私の中には、小さな命が息づいている。 無理をして何かあったら、取り返しがつかない。
「……わかりました。降参です」
「よろしい。では、今日は『皇后の休日』とする。天気もいい、庭へ散歩に行こう」
彼は私をエスコートし、庭園へと連れ出した。
* * *
帝城の庭園は、今が見頃だった。 私の故郷である王国の花と、帝国の花が入り混じって植えられ、見たこともないような美しいコントラストを描いている。 これも、ジークハルト様が私のために庭師に命じて作らせたものだ。
私たちは木陰のベンチに座り、のんびりと風を感じていた。
「……不思議ですね」
私は木漏れ日を見上げながら呟いた。
「なにがだ?」
「こんな風に、平日の昼間から何もしないで座っているなんて。以前の私なら、罪悪感で押し潰されていたと思います」
王国にいた頃、私は「有能であること」だけが存在意義だった。 一分一秒でも無駄にすれば、レイモンド殿下に叱責され、父に失望される。 常に何かの成果を出し続けなければ、捨てられるという恐怖があった。
だから、妊娠中も働くつもりだった。 いや、むしろ「妊娠して働けなくなること」が怖かったのかもしれない。
「コーデリア」
ジークハルト様が私の肩を抱いた。
「貴女はもう、何も証明しなくていい。貴女がそこにいて、笑っていてくれるだけで、この国にとっては最大の利益だ」
「……利益、ですか?」
「ああ。皇后が幸せそうにしている国は栄える。貴女の笑顔は、どんな政策よりも民を安心させるんだ」
彼は私の頬にキスをした。
「それに、今の貴女は大仕事の最中だろう? 私たちの子供を育てるという、国家プロジェクトだ」
「ふふっ、そう言われると責任重大ですね」
「ああ。だから、今は全力でサボれ。私が許す」
彼の不器用な優しさが、心に沁みる。 そうか。 休むことも、今の私にとっては「仕事」なのか。
そう思えた瞬間、肩の力がふっと抜けた。 鳥のさえずり。 風が葉を揺らす音。 それらが鮮明に聞こえてくる。
世界は、こんなにも静かで、美しい場所だったのか。
その時だった。
ポコッ。
お腹の中で、何かが弾けたような感覚があった。
「……っ!?」
私は驚いて、お腹を押さえた。
「どうした!? 腹が痛いのか!?」
ジークハルト様が血相を変えて立ち上がる。
「い、いえ……違います。今……」
ポコッ、グニョ。
まただ。 今度ははっきりとわかった。 内側から、小さな手足で壁を蹴るような、愛らしい衝撃。
「……動いた」
「え?」
「動きました、ジークハルト様! 赤ちゃんが!」
「な、なんだって!?」
彼は慌てて私の前に跪き、お腹に耳を当てた。 その顔は真剣そのもので、まるで敵軍の足音を聞き分ける将軍のようだ。
シーンとした沈黙が流れる。
……ポコン。
「!!」
ジークハルト様が弾かれたように顔を上げた。 その赤い瞳が、見開かれている。
「う……動いた……! 今、確かに! 私の耳を蹴った!」
「ふふ、元気な子ですね」
「す、すごい……。本当に生きているんだな。ここに、命が……」
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。 氷の皇帝が、子供のように泣いている。 彼は震える手で私のお腹を抱きしめ、何度も何度もキスをした。
「ありがとう……。ありがとう、コーデリア」
「泣きすぎですよ、パパ」
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「早く会いたいな。男の子なら剣を教えよう。女の子なら……虫がつかないように私が全力でガードする」
「女の子だったら大変そうですね。お嫁に行けなくなってしまいますわ」
「行かせん! 一生城に置いておく!」
「困ったパパですねぇ」
私たちは顔を見合わせて笑った。 お腹の子も、それに呼応するようにポコポコと動いている。 まるで「パパ、泣かないで」と慰めているようだ。
幸せだった。 書類の山を片付けた達成感も素晴らしいけれど、こうして愛する人と小さな命の鼓動を感じる時間は、何にも代えがたい至福だった。
「……ねえ、ジークハルト様」
「ん?」
「私、今、すごく幸せです。……王国を追い出されて、本当に良かった」
これは本心だった。 もしあのまま王国にいて、レイモンド殿下と結婚していたら。 私はきっと、子供ができても「跡継ぎ」としてしか見てもらえず、こんな風に夫婦でお腹を撫で合う時間なんて持てなかっただろう。 仕事に追われ、心身をすり減らし、冷え切った家庭で枯れていったに違いない。
「……そう言ってもらえると、私を振った王国の神に感謝したくなるな」
ジークハルト様は私の手を強く握った。
「約束する。この幸せを、死ぬまで守り抜くと。貴女と、この子を、何があっても」
「はい。信じています」
風が吹き抜け、花びらが私たちの周りを舞った。 それはまるで、生まれてくる新しい命を祝福するフラワーシャワーのようだった。
* * *
その日の夜。 寝室にて。
「……というわけで、ここを少し改良したいと思うの」
私はベッドの上で、隠し持っていたメモ帳を広げていた。 昼間、庭で思いついた「国立託児所」のアイデアだ。 働く女性たちが安心して子供を預けられる施設。 自分が出産を控えているからこそ、その必要性を痛感していた。
「おい」
お風呂上がりで髪を拭いていたジークハルト様が、呆れ顔で立っていた。
「寝る前まで仕事の話か? 今日は休日だと言っただろう」
「でも、いいアイデアなんです! これを実現すれば、帝国の女性の労働参加率が上がって、経済効果が……」
「はいはい、わかった。話は聞く」
彼はベッドに入り込み、私からメモ帳を取り上げると、サイドテーブルに置いた。 そして、私を後ろから抱きしめる。
「だが、その前にやることがあるだろう?」
「やること?」
「おやすみのキスと……子供への読み聞かせだ」
彼はどこからか、絵本を取り出した。 『勇者と賢いお姫様』というタイトルの、子供向けの物語だ。
「え、もう用意していたのですか?」
「教育は早い方がいいと聞いた。胎教というやつだ」
彼は大真面目な顔で絵本を開き、読み始めた。
「むかしむかし、あるところに、とても強くてハンサムな皇帝がいました……」
「ちょっと、タイトルと違いますよ?」
「いいんだ。主役は私だからな。そして、彼には世界一賢くて美しいお嫁さんがいました……」
彼は私の耳元で、優しい低音ボイスで物語を語り始めた。 内容はかなり脚色されていて、完全に私たちの話になっていたけれど。
お腹の赤ちゃんも、静かに聞いているようだった。 心地よいリズム。 愛に満ちた空間。
私は彼の腕の中で、幸せなまどろみに包まれていった。
(ああ……明日もきっと、いい日になる)
そう確信しながら、私は目を閉じた。
帝国の「賢皇后」は、今日も愛され、守られ、そして新しい命と共に明日への希望を紡いでいる。 その平穏な日々は、かつて彼女を捨てた者たちが決して手に入れられない、黄金の輝きに満ちていた。
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