132 / 398
第六章
第114話 装備の強化
しおりを挟む「へぇ、ソレはすごいね! ケイドルヴァは迷宮碑があるダンジョンに潜るのは初めてなんだ。今からワクワクが止まらないよ!」
問題である、二つのパーティーについての情報を聞き終わった信也達は、その後も引き続き『リノイの果てなき地平』のメンバーと話を続けていた。
どうやら《クッタルヴァ遺跡群》には迷宮碑はなかったようだが、GランクからDランクの魔物が出てくるというダンジョンの話は、信也達にとっても好奇心をそそられるものだった。
しかも、彼らは《クッタルヴァ遺跡群》の守護者――どうやらCランクの魔物だったらしい――をも撃破し、迷宮攻略を成し遂げたという話だ。
冒険者としても、ダンジョン探索者としても、先達者である彼らの話は、今後の信也達にとっても重要なものとなるだろう。
「へぇ、アレってそんな効果があったのか」
信也が感心したような声を発した。
前回の探索で入手したアイテムの中でも、用途が分からなかったモノ。
その内の一部のアイテムの効果について、『リノイの果てなき地平』から情報を得る事が出来たのだ。
その一部のアイテムとは、例の薄い青色をした、内部に星のマークが含まれている球の事だ。
それと、北条達が宝箱から入手した謎のスクロール。
これら二種類のアイテムは密接な関係にあるものらしい。
「にしても、装備強化なんてほんとゲームっぽいよなあ」
龍之介がポロッとそう口をこぼしたように、これらのアイテムは装備を強化する為に必要なアイテムのようだ。
まず、強化そのものには、〈ゼラゴダスクロール〉という名前だったらしい、北条たちが入手したスクロールを使う。
〈ゼラゴダスクロール〉による強化は、同一の装備に対して複数回重ねる事が可能で、二回までは問題なく強化することができる。
ただし、三回目以降は失敗する可能性があるようで、なんと失敗してしまった場合は装備が蒸発して無くなってしまうらしい。
これは強化を重ねるにつれて、蒸発する可能性も高くなるようで、その蒸発する確率を減らしてくれるのが、あの青い星の球である〈スターボール〉という事だ。
星の数によって名称が変わり、そのまま〈ワンスターボール〉、〈ツースターボール〉といった名前が付けられていて、最高が〈スリースターボール〉となる。
とはいえ、最高レベルの〈スリースターボール〉を使っても確実に成功する訳ではないらしい。
三回目の強化程度ならほぼ成功するようだが、五回目位になると失敗する事もあるようだ。〈ワンスターボール〉ならより失敗確率も高いだろう。
なお成功、失敗問わず、一度使用した〈スターボール〉は中身の星が抜け落ちてしまい、二度と使用する事ができなくなる。
また、〈ゼラゴダスクロール〉では幾ら〈スターボール〉を使おうと、最高で五回までしか強化できないようで、それ以上強化する場合には〈ゼラゴダスクロール〉の上位アイテムである〈オリムンドスクロール〉というものが必要だ。
この上位スクロールは、〈スターボール〉なしでも確実に五回まで強化が可能で、六回目からは蒸発の危険はあるものの、更に強化する事が可能になる。
といっても、大抵は六~七回位で強化をやめる事が多いのだが、中には九回まで強化に成功した例もある。
しかし、大事な装備が蒸発する危険性があるので、そこまで試す者は少ない。
ただし、〈オリムンドスクロール〉の更に上位。
最高位の強化スクロールである〈ビスクスクロール〉を使用すると、確実に九回目までの強化ができるようになるらしい。
だが、大きなオークションで稀に出品されるレベルの希少なアイテムの上、五回目まで〈オリムンドスクロール〉で安全に強化したとしても、九回強化するには残り四回――四枚もの〈ビスクスクロール〉が必要になる。
国の至宝であるとか、曰くのある聖剣や魔剣などといったものならともかく、そこいらの装備にそんな金をつぎ込む道理はない。
……遥か昔、どこでも売ってるような〈アタム〉と呼ばれるメイスを九回強化したという、物好きな男がいたらしいが、これは稀なケースだろう。
他にも、〈スターボール〉の強化補正に掛けて強化してみたものの、あえなく蒸発してしまった、という逸話はそこいらに転がっている。
「その一番凄いっちゅう、なんちゃらスクロールは、九回までしか強化できないのか?」
話を聞いていた龍之介が気になった事を訪ねる。
確かに三段階ある強化スクロールの仕様的にみると、失敗の可能性は出てくるだろうが〈ビスクスクロール〉で十回以上強化が出来ても不思議ではない。
「いや、〈ビスクスクロール〉を使っても十回以上の強化はできないみたいだよ。つまり強化限界は九回までって事だね」
〈ゼラゴダスクロール〉が二回まで安全で最大五回まで、〈オリムンドスクロール〉が五回まで安全で最大九回まで。
となれば、その上位アイテムとなれば十回以上強化できても不思議ではない筈だが、どうやらそれは出来ないらしい。
魔法使いであるケイドルヴァは、『リノイの果てなき地平』の中でも好奇心が強く、博識だ。
その彼が今まで得た情報の中には、十回以上の強化というものはなかったようだ。
「へぇ……。でも、うちらには特に今んとこ強化するような装備なんて――」
そこまで口にして何か思い浮かんだのか、北条の方を見ながら龍之介が叫んだ。
「あっ! オッサンの使ってる、あの炎のハルバードにはいいかもなっ!」
龍之介の言うように、確かにそれもアリだろう。
一緒に入っていた宝箱には、〈ゼラゴダスクロール〉が三枚も入っていたのだ。
しかし、北条はその提案には乗り気ではないようで、
「あーー、別に今の所火力不足を感じている訳でもないし、今後どれだけ強化スクロールを入手できるかもわからんからなぁ。防具にだって使えるようだし、今は保留だぁ」
防具に使う場合は強化の対象は鎧、兜、籠手、盾、ブーツなどとなり、アクセサリー類は強化はできない。
それと、武器防具問わず、特殊な能力のある装備はその特殊能力も若干ずつ強化されていくらしい。
そういう意味でも、北条の炎のハルバード強化は悪くない選択ではあるのだが……。
「強化スクロールや〈スターボール〉に関しては、ダンジョン内の宝箱か、極稀に魔物からのドロップで出ることがあるぞ。とはいえ、確率はそんなに高いものではないし、ドロップする魔物も限られているので、ドロップしない魔物を幾ら倒してもドロップする事はない」
なんでも『クッタルヴァ遺跡群』では、ポイズンシェロブという蜘蛛型の魔物が、極稀に〈ゼラゴダスクロール〉をドロップするらしく、積極的に冒険者によって狩られているらしい。
〈スターボール〉に関しては、基本どの魔物も落とすらしいが、やはりその確率は低い。ランクの高い魔物の方が落としやすい傾向はあるようだが……。
「なるほど。今までは探索メインでやってきたが、その内ドロップなども気にして潜る事もありそうだな」
〈ゼラゴダスクロール〉だけではなく、他にも各種素材や装備そのものをドロップする魔物もいるようで、そういったものを目当てに特定の階層に潜り続けるのは、ダンジョン探索ではよくある事だ。
その後も彼らとの話は続いた。
既にシグルドにも伝わっているだろうが、実際潜る事になるダンジョンの情報を伝えたり、魔法やスキルの話題に花を咲かせたり。
花といえば、ダンジョン内で入手した謎の種子については、流石に口で説明しただけではケイドルヴァも正体は分からないようだ。
実は、すでに由里香が『女寮』の傍に一粒植えてみたので、とりあえずはそれで様子見といった所だ。
それから少しするとシグルドもテントまで戻ってきたが、もう充分話していたので信也達はその場をお暇する事にした。
「色々とありがとなぁ。お互いダンジョンに潜るので、会う機会は減るかもしれんがぁ、今後ともよろしくぅ」
こうして北条の挨拶と共に、異邦人達は寄り道もせずに帰宅するのだった。
0
あなたにおすすめの小説
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~
スィグトーネ
ファンタジー
年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。
それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。
そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。
異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。
彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。
どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。
※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。
※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる