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気になる女
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あのレセプションの翌日 白井ユミはアメリカに戻って行った。
あの夜の事が 波彦の頭から消えない。
あれからもう数ヶ月… 経つと云うのに
岩井博士の在籍する研究室は大楠波彦の得意先で定期的な資材発注を承っている。 営業先回りでこの研究室を訪れては、白井ユミの強烈な個性を想い出し妄想が尽きない。
それは 彼女の喜悦した表情であったり 元夫岩井博士との夜の営みだったり 自ら彼女に覆い被さり激しく蹂躙している様だったり…
その夜は 1人で自慰に耽り 何度も達する。
白井ユミがアメリカに帰った後 日本に残ってT大学で特別講義を依頼されたハー◯ードゲノム研究院のエドモンド上級研究員と飲食を共にする機会があった。
そして 彼がゲイだと知った。
エドモンド自身からカミングアウトされ 付き合って欲しいと告白されたのだった。
どこまでも 俺を馬鹿にする白井ユミ
エドモンドに脈ありみたいな事を匂わせたのか…白井ユミ
T大学の特別講義は 白井ユミに依頼があった事、ユミ自ら エドモンド上級研究員をT大学に紹介し講師を彼に譲ってユミは高飛び…
全てをカオスに導いて 早速と日本から消えた女
とことん 俺を馬鹿にして…
「波彦 今年は何処か温泉にでも行かない?」
結婚を前提に同棲している彼女。大学からの付き合いで彼女は銀行に就職し今も勤めている。
彼女なりの夢が 結婚したあとは 東京郊外の一軒家で子育てに専念する専業主婦になる事 普段から聞かされている夢に向かって彼女は貯蓄に励み 俺にも マイホーム購入できる資金の為働けと叱咤激励してくる。
それを負担と考えた事もなく 彼女の喜ぶ顔が見たくてどんな修羅場もかいくぐり トップセールスを維持してきた。
26歳にして 年収はもうすぐ大台に乗る…
ここに来て 大楠波彦は急に彼女との未来が想像できなくなってきた。元来優しい気性の波彦は同棲が三年を超える彼女を悲しませたく無い一心で 彼女に尽くし、話しも合わせていたが、 あの日をさかいに 波彦の価値観が日を追って崩壊していく。
「ねぇ 波彦君 聴いてる? 」
彼女は甲斐甲斐しく日曜日の手作りブランチを用意していた。
「あー うん 聴いてる 温泉だろ?」
スクランブルエッグ レタス 茹でたソーセージ 三角形に切られたトースト2枚とコーヒーの入ったマグを全て乗せたプレートを運んできた彼女。
ピンク色のエプロン姿もよく似合う。
朝寝坊して 目覚めると可愛い嫁が ブランチを用意しながら 夏季休暇の温泉旅行の計画を楽しげに語る、
理想的な新婚夫婦 マイホーム購入の資金も着々と溜まりごく普通に通勤圏内の郊外の住宅地で新築物件を探す…
頑張って働いてきた甲斐があるはずだった。
モヤモヤとした波彦の心の中を知らない彼女は ニコニコと笑顔を振りまきながら パジャマ姿でベッドに座り込む波彦にまとわりつく。
まるで 子猫がグルーミングをねだるように…
冷徹な視線を向けてくる瘦せて血色の悪いおばさん研究者
決して感情的にならず、笑顔らしい笑顔も出さず口をついて出る言葉は鋭く尖っている。
彼女が 可愛らしい 女らしい と形容された頃があったのか?
ゲイをカミングアウトした エドモンドは彼女について、パーフェクトなレディ と形容した。
どこが? きつね目の古いタイプの日本人女性顔
どこをどう褒めれば パーフェクトと形容できるのか?
せいぜい スレンダーなスタイル
手のひらに 数ヶ月前だと言うのに ユミを払いのけた時の柔らかな肉の感触が残っている。
腹の贅肉? それとも…
「波彦っ! 聴いてるのぉ! さっきからずーっと上の空じゃん、」
「あっ! ごめん 悪りぃ ちょっと仕事でさぁ やらかした事が気になって…」
「何 何やらかしたの ? 大丈夫なの? 何でも私に言ってよね
私だって銀行でそれなりにキャリア積んでるんだから 波彦の役にだってたつと思うよ…」
彼女の慰め 励ましの言葉も虚しく雑音となって聴き流してしまう。
ごめん 今はむり
「愛美 悪い 今から しくった研究室の先生に謝りに行ってくるわ
会ってくれるかわからないけど 君との未来がかかってるから!」
嘘 嘘だよ 愛美 見破ってくれ!頼むっ
「波彦君 … わかった! 無理しないで
ダメでもしょうがないよ 相手は他人だから 」
「ごめんな 心配させて 」
俺は 闇雲にこの場から離れたいと思った。
岩井先生に連絡してみた。
ゲイで白井ユミに1番近い人間はエドモンド上級研究員だが 既に帰国して久しい。
白井ユミ どんな女だ
生い立ちは? 家族は? 岩井先生との馴れ初めは!
あー 岩井先生 出てくれ 電話に 出て
〝はい もしもーし?〟
「ぃ 岩井先生ですか? お休みの何処申しわけありません。大楠です。」
〝あーはい、はい どうしたの? 珍しいね 大楠君が僕に直接電話かけてくるなんて …〟
「少し、プライベートで 先生に聴いていただきたい事がありまして、」
〝お、おいおい、尋常じゃないなぁ 借金の申し入れなら無理だから〟
「先生ぇ…それは無いですぅ 酷いなぁ… そんな事は今後も一切無いとお約束します。 ただ 人生の先輩として…アドバイスがほしいと言うか…」
〝はっはぁ~ なるほどねー 結婚とかそう言う類いかなぁ?〟
「…」
〝図星か‼️ いいよ 面白そうだから 会おうじゃないか…
岩井先生は 明け透けに自宅の住所を俺に教えてくれた。
渋谷区青山の高級住宅街…
三階建て低層マンションのエントランスで 岩井先生の部屋番号を教えて貰った通りに数字をプッシュした。
先生の部屋の前のモニターインターフォンに顔を近づけてブザーを押す。
「大楠です、」
オートロックのドアが開いた。
「やぁ いらっしゃい 」
玄関前で 岩井先生が待っていた。
「どうぞ どうぞ お入りなさいよ」
「凄い高級な所にお住まいで…」
「えー そうですか? 結構大学の先生方も住んでましてね、ここも医学部の先生の持家ですよ 今その先生 海外の大学で仕事されているので 僕が借りてるって訳です ここだけの話し タダみたいに安く借りているんですよ!」
「はぁ… タダって … メゾネットですか?」
さすが 高級住宅街 建物自体は1980年代の古い代物らしいが中は半端なくモダンで広々とした間取りだった。
「そう 変わってるよね 2階がここ 階段降りると寝室と風呂 まあ細かい仕切りが無いからその分光熱費半端なくかかるけど、家賃が安いし 大学に近いから 独身者には助かってますよ」
ここで2人は結婚生活 送っていたのかな…
リビングも相当の広さで 立派なリビングソファが中央に配置されている。
「テキトーに座ってよ ビールにする? あー ちょっと昼間からはやめよか? コーヒー入れるわ」
「先生 お構いなく 私が無理に押しかけてきたので…」
岩井先生は テキパキとコーヒーをたてて 目の前に焼き菓子まで用意してもてなしてくれる。
L字方向にお互い腰掛けたが 波彦からなかなか話しを切り出せなかった。
「ここさ、家具付きなんだよ っく 臨床医って儲かるんだなぁ 俺たち基礎はからっきしよ 君のようなやり手のセールスマンとお近づきになって企業からの援助頼りなんだから… まあ ノーベル賞でも取ったり特許がヒットすれば 別格なんだろうけど…」
「はぁ ここは臨床医の先生の持ち家ですか? 凄いですね 今でも億は下らないんじゃないですか? 」
「君も 結婚を考えているんだろ?マイホームは都内じゃ夢の夢だからねぇ」
「僕が払う年間の家賃より 固定資産税の方が数倍高いだろうな…
でも その先生は手放さないみたいだよ 帰国の予定も無いのにねぇ 結構な事だよ、」
「ところで、 相談って? 結婚破綻者の僕のアドバイスって役立つの?」
波彦は、急に俯いた。
その様子は 尋常ではなさそうで 岩井は黙って波彦から話し出すのを待つ事にした。
「先生…先生はここで白井先生と新婚生活をおくられてたんですか?」
「えっ いきなり予想外のアプローチだなぁ…
いゃぁ まいったなぁ … そうくるか…
いゃ 実は…お恥ずかしいが、彼女と入籍した時はお互い文無しでさ、彼女は高田馬場 僕は大学近くのオンボロアパート暮らしよ
だから マイホームとか無縁 お互いのアパートを行き来してたかな…」
「 新婚生活は? では何処で…」
「ええっ 新婚生活かぁ アッチの方?」
「いえっ いえっ そ、そんな事は…」
波彦の慌てふためき様は ドンピシャの気になるところだと確信した岩井は、
「大楠君 彼女と夜の生活はうまくいってる?」
「あ、えっ まぁ…それなりには…」
「彼女とセックスについては まぁ彼女の意見も聴かないと公平じゃ無いよなぁ… 一緒に住む家は無くても ヤル事はさ 何処でもできるしな… 例えば研究室とかさー」
「えっえー! そっそれは 職場って事ですよねぇ?」
「ああ 彼女さ キイロショウジョウバエのゲノム研究してるだろ?昆虫の生殖行動も逐一記録するわけよ…のべつまくなしに発情しているとか 何かの規則に則って自分のDNAを繋ぐ行動をするとかさ、で何か発見したりすると もうそれは大変で…」
「なっ 何が大変なんですか? 研究論文作成とか 」
「違う 違う 察しろよ 大楠くーん 」
えっ えっ 「興奮する とか…?」
「アタリっ!」
「どっ どんな感じで ? 凄いって
? ど どんな…」
…… やばい 勃起しそう
「あー ダメダメ ここからは 彼女のプライバシー侵害だと思う。君が結婚相手もなく 虚しい独身者なら 僕から言うのもなんだが ユミに紹介したいくらいな 好青年だよ!君は」
「先生 酔ってますか? 何を言っているんですか?」
「いや マジだ 彼女が男性不審になった原因はおそらく僕だから…」
それは …「クラークに手を出してしまったと言う…アレですか?」
「ギョッ…何で知ってるの? 僕 話したっけ?」
「言え あのレセプションの帰り 白井先生が岩井先生のした事を何げに話していましたよ… たった一回の過ちで 好き合っている者同士でも破綻するんだなぁ…と」
「そうか アイツしらっと 根に持ってるんだなぁ」
「同じ男だから わかるよな 大楠君。俺だってヤリテェって時があるのさ でもね 女は違う…嫌 ユミは違う。男の欲求不満何て ショウジョウバエの観察に比べたら些細な現象なんだよ。
ユミに言わせりゃ 自分で処理できるだろって…
ショウジョウバエは相手がいないと優秀な子孫は残せないって理論」
「つまり 私達は 蝿より下 と?」
「まぁ そう… 確かに彼女はショウジョウバエつまり 学名
ドロソフィラメラノガスターのおかげで ハー◯ードのフェローだし有力な製薬会社や医薬総合商社がパトロンになって今や押しも押されもせぬゲノム研究の第一人者になっちゃた訳よ それに引き換え
僕ときたら 自己処理如きに我慢ならずにハニートラップにまんまと引っかかった…」
「ハニートラップ‼️」
「そう… 酷い目に遭った…」
産業スパイって 事⁈
「そう ついあの…それでアジアの某国が欲しがっていた研究結果の一部をついピロトークで…」
「せっ先生 そっそれは 先生の研究成果ですよね?」
岩井は黙り込んだ。
う… 酷いことに なるわ…
白井ユミ…いろいろあるんだ…
「岩井先生 すみません、思い出したくも無い事を話させてしまいました。 本当にごめんなさい。でも 過ぎてしまった事ですよね?
さもなきゃ あの日 あんなに仲良く言い合う事なんてできませんよ!」
「そこが ユミの凄い何処なんだよ 当事者なのに その結果をすぐに論文発表して母校から特許申請して某国が活用出来なくしたんだ。そりゃ早かったよ。そしてすぐさま 違うアプローチで新しいゲノム新薬開発の手掛かりを掴んだんだ。結果 ハー◯ード マサ◯ーセ◯工科大学 オッ◯◯◯ードなど名だたる大学からフェロー招請が来て
「離婚よ」と、一言で アメリカだよ」
うう、男前… かっこよすぎて…感動する
結局のところ エドモンドが言う
パーフェクトな女って事か…
仕事はできる 金儲けもできる セックスも相当なテクニシャンって
あと残るとしたら 見かけ? 外観は…
外見なんて 〝あばたもエクボ〟
欠点さえ 愛おしい…
彼女に踏み躙られてみたい …
彼女を泣かせてみたい…
「岩井先生っ 謝ります。そして告白しますっ」
「えっ 何 急に どうしたの?」
「私 今日先生に 相談に来たのは 結婚の事では無いのです。
実は三年程同棲している女性が居て そろそろ結婚を考えていた矢先に出逢ってはいけない女性に出遭ってしまった… その女(ひと)が強烈すぎて それ以来 寝ても覚めても頭から彼女が離れない。しかも その女(ひと)は私が今まで出会った女性では最低最悪…悪魔のような 掴みどころが無い酷い女…」
「 ユミちゃん か? 」
波彦はコクリと頷いた。
「随分と酷い印象なのに 、好きだと?」
「はい 抱きたい セックスしたい ずっと一緒に居たい」
「わぁ ! 大楠君 君 今 営業マンの殻取っ払っちゃったんだー
そうなんだ… 困ったけど 応援もしたい気分かな、ユミには 男は俺みたいなクズばかりじゃ無い事を知って欲しいし…」
「嫌 先生 俺 めちゃくちゃクズです…」
あの夜の事が 波彦の頭から消えない。
あれからもう数ヶ月… 経つと云うのに
岩井博士の在籍する研究室は大楠波彦の得意先で定期的な資材発注を承っている。 営業先回りでこの研究室を訪れては、白井ユミの強烈な個性を想い出し妄想が尽きない。
それは 彼女の喜悦した表情であったり 元夫岩井博士との夜の営みだったり 自ら彼女に覆い被さり激しく蹂躙している様だったり…
その夜は 1人で自慰に耽り 何度も達する。
白井ユミがアメリカに帰った後 日本に残ってT大学で特別講義を依頼されたハー◯ードゲノム研究院のエドモンド上級研究員と飲食を共にする機会があった。
そして 彼がゲイだと知った。
エドモンド自身からカミングアウトされ 付き合って欲しいと告白されたのだった。
どこまでも 俺を馬鹿にする白井ユミ
エドモンドに脈ありみたいな事を匂わせたのか…白井ユミ
T大学の特別講義は 白井ユミに依頼があった事、ユミ自ら エドモンド上級研究員をT大学に紹介し講師を彼に譲ってユミは高飛び…
全てをカオスに導いて 早速と日本から消えた女
とことん 俺を馬鹿にして…
「波彦 今年は何処か温泉にでも行かない?」
結婚を前提に同棲している彼女。大学からの付き合いで彼女は銀行に就職し今も勤めている。
彼女なりの夢が 結婚したあとは 東京郊外の一軒家で子育てに専念する専業主婦になる事 普段から聞かされている夢に向かって彼女は貯蓄に励み 俺にも マイホーム購入できる資金の為働けと叱咤激励してくる。
それを負担と考えた事もなく 彼女の喜ぶ顔が見たくてどんな修羅場もかいくぐり トップセールスを維持してきた。
26歳にして 年収はもうすぐ大台に乗る…
ここに来て 大楠波彦は急に彼女との未来が想像できなくなってきた。元来優しい気性の波彦は同棲が三年を超える彼女を悲しませたく無い一心で 彼女に尽くし、話しも合わせていたが、 あの日をさかいに 波彦の価値観が日を追って崩壊していく。
「ねぇ 波彦君 聴いてる? 」
彼女は甲斐甲斐しく日曜日の手作りブランチを用意していた。
「あー うん 聴いてる 温泉だろ?」
スクランブルエッグ レタス 茹でたソーセージ 三角形に切られたトースト2枚とコーヒーの入ったマグを全て乗せたプレートを運んできた彼女。
ピンク色のエプロン姿もよく似合う。
朝寝坊して 目覚めると可愛い嫁が ブランチを用意しながら 夏季休暇の温泉旅行の計画を楽しげに語る、
理想的な新婚夫婦 マイホーム購入の資金も着々と溜まりごく普通に通勤圏内の郊外の住宅地で新築物件を探す…
頑張って働いてきた甲斐があるはずだった。
モヤモヤとした波彦の心の中を知らない彼女は ニコニコと笑顔を振りまきながら パジャマ姿でベッドに座り込む波彦にまとわりつく。
まるで 子猫がグルーミングをねだるように…
冷徹な視線を向けてくる瘦せて血色の悪いおばさん研究者
決して感情的にならず、笑顔らしい笑顔も出さず口をついて出る言葉は鋭く尖っている。
彼女が 可愛らしい 女らしい と形容された頃があったのか?
ゲイをカミングアウトした エドモンドは彼女について、パーフェクトなレディ と形容した。
どこが? きつね目の古いタイプの日本人女性顔
どこをどう褒めれば パーフェクトと形容できるのか?
せいぜい スレンダーなスタイル
手のひらに 数ヶ月前だと言うのに ユミを払いのけた時の柔らかな肉の感触が残っている。
腹の贅肉? それとも…
「波彦っ! 聴いてるのぉ! さっきからずーっと上の空じゃん、」
「あっ! ごめん 悪りぃ ちょっと仕事でさぁ やらかした事が気になって…」
「何 何やらかしたの ? 大丈夫なの? 何でも私に言ってよね
私だって銀行でそれなりにキャリア積んでるんだから 波彦の役にだってたつと思うよ…」
彼女の慰め 励ましの言葉も虚しく雑音となって聴き流してしまう。
ごめん 今はむり
「愛美 悪い 今から しくった研究室の先生に謝りに行ってくるわ
会ってくれるかわからないけど 君との未来がかかってるから!」
嘘 嘘だよ 愛美 見破ってくれ!頼むっ
「波彦君 … わかった! 無理しないで
ダメでもしょうがないよ 相手は他人だから 」
「ごめんな 心配させて 」
俺は 闇雲にこの場から離れたいと思った。
岩井先生に連絡してみた。
ゲイで白井ユミに1番近い人間はエドモンド上級研究員だが 既に帰国して久しい。
白井ユミ どんな女だ
生い立ちは? 家族は? 岩井先生との馴れ初めは!
あー 岩井先生 出てくれ 電話に 出て
〝はい もしもーし?〟
「ぃ 岩井先生ですか? お休みの何処申しわけありません。大楠です。」
〝あーはい、はい どうしたの? 珍しいね 大楠君が僕に直接電話かけてくるなんて …〟
「少し、プライベートで 先生に聴いていただきたい事がありまして、」
〝お、おいおい、尋常じゃないなぁ 借金の申し入れなら無理だから〟
「先生ぇ…それは無いですぅ 酷いなぁ… そんな事は今後も一切無いとお約束します。 ただ 人生の先輩として…アドバイスがほしいと言うか…」
〝はっはぁ~ なるほどねー 結婚とかそう言う類いかなぁ?〟
「…」
〝図星か‼️ いいよ 面白そうだから 会おうじゃないか…
岩井先生は 明け透けに自宅の住所を俺に教えてくれた。
渋谷区青山の高級住宅街…
三階建て低層マンションのエントランスで 岩井先生の部屋番号を教えて貰った通りに数字をプッシュした。
先生の部屋の前のモニターインターフォンに顔を近づけてブザーを押す。
「大楠です、」
オートロックのドアが開いた。
「やぁ いらっしゃい 」
玄関前で 岩井先生が待っていた。
「どうぞ どうぞ お入りなさいよ」
「凄い高級な所にお住まいで…」
「えー そうですか? 結構大学の先生方も住んでましてね、ここも医学部の先生の持家ですよ 今その先生 海外の大学で仕事されているので 僕が借りてるって訳です ここだけの話し タダみたいに安く借りているんですよ!」
「はぁ… タダって … メゾネットですか?」
さすが 高級住宅街 建物自体は1980年代の古い代物らしいが中は半端なくモダンで広々とした間取りだった。
「そう 変わってるよね 2階がここ 階段降りると寝室と風呂 まあ細かい仕切りが無いからその分光熱費半端なくかかるけど、家賃が安いし 大学に近いから 独身者には助かってますよ」
ここで2人は結婚生活 送っていたのかな…
リビングも相当の広さで 立派なリビングソファが中央に配置されている。
「テキトーに座ってよ ビールにする? あー ちょっと昼間からはやめよか? コーヒー入れるわ」
「先生 お構いなく 私が無理に押しかけてきたので…」
岩井先生は テキパキとコーヒーをたてて 目の前に焼き菓子まで用意してもてなしてくれる。
L字方向にお互い腰掛けたが 波彦からなかなか話しを切り出せなかった。
「ここさ、家具付きなんだよ っく 臨床医って儲かるんだなぁ 俺たち基礎はからっきしよ 君のようなやり手のセールスマンとお近づきになって企業からの援助頼りなんだから… まあ ノーベル賞でも取ったり特許がヒットすれば 別格なんだろうけど…」
「はぁ ここは臨床医の先生の持ち家ですか? 凄いですね 今でも億は下らないんじゃないですか? 」
「君も 結婚を考えているんだろ?マイホームは都内じゃ夢の夢だからねぇ」
「僕が払う年間の家賃より 固定資産税の方が数倍高いだろうな…
でも その先生は手放さないみたいだよ 帰国の予定も無いのにねぇ 結構な事だよ、」
「ところで、 相談って? 結婚破綻者の僕のアドバイスって役立つの?」
波彦は、急に俯いた。
その様子は 尋常ではなさそうで 岩井は黙って波彦から話し出すのを待つ事にした。
「先生…先生はここで白井先生と新婚生活をおくられてたんですか?」
「えっ いきなり予想外のアプローチだなぁ…
いゃぁ まいったなぁ … そうくるか…
いゃ 実は…お恥ずかしいが、彼女と入籍した時はお互い文無しでさ、彼女は高田馬場 僕は大学近くのオンボロアパート暮らしよ
だから マイホームとか無縁 お互いのアパートを行き来してたかな…」
「 新婚生活は? では何処で…」
「ええっ 新婚生活かぁ アッチの方?」
「いえっ いえっ そ、そんな事は…」
波彦の慌てふためき様は ドンピシャの気になるところだと確信した岩井は、
「大楠君 彼女と夜の生活はうまくいってる?」
「あ、えっ まぁ…それなりには…」
「彼女とセックスについては まぁ彼女の意見も聴かないと公平じゃ無いよなぁ… 一緒に住む家は無くても ヤル事はさ 何処でもできるしな… 例えば研究室とかさー」
「えっえー! そっそれは 職場って事ですよねぇ?」
「ああ 彼女さ キイロショウジョウバエのゲノム研究してるだろ?昆虫の生殖行動も逐一記録するわけよ…のべつまくなしに発情しているとか 何かの規則に則って自分のDNAを繋ぐ行動をするとかさ、で何か発見したりすると もうそれは大変で…」
「なっ 何が大変なんですか? 研究論文作成とか 」
「違う 違う 察しろよ 大楠くーん 」
えっ えっ 「興奮する とか…?」
「アタリっ!」
「どっ どんな感じで ? 凄いって
? ど どんな…」
…… やばい 勃起しそう
「あー ダメダメ ここからは 彼女のプライバシー侵害だと思う。君が結婚相手もなく 虚しい独身者なら 僕から言うのもなんだが ユミに紹介したいくらいな 好青年だよ!君は」
「先生 酔ってますか? 何を言っているんですか?」
「いや マジだ 彼女が男性不審になった原因はおそらく僕だから…」
それは …「クラークに手を出してしまったと言う…アレですか?」
「ギョッ…何で知ってるの? 僕 話したっけ?」
「言え あのレセプションの帰り 白井先生が岩井先生のした事を何げに話していましたよ… たった一回の過ちで 好き合っている者同士でも破綻するんだなぁ…と」
「そうか アイツしらっと 根に持ってるんだなぁ」
「同じ男だから わかるよな 大楠君。俺だってヤリテェって時があるのさ でもね 女は違う…嫌 ユミは違う。男の欲求不満何て ショウジョウバエの観察に比べたら些細な現象なんだよ。
ユミに言わせりゃ 自分で処理できるだろって…
ショウジョウバエは相手がいないと優秀な子孫は残せないって理論」
「つまり 私達は 蝿より下 と?」
「まぁ そう… 確かに彼女はショウジョウバエつまり 学名
ドロソフィラメラノガスターのおかげで ハー◯ードのフェローだし有力な製薬会社や医薬総合商社がパトロンになって今や押しも押されもせぬゲノム研究の第一人者になっちゃた訳よ それに引き換え
僕ときたら 自己処理如きに我慢ならずにハニートラップにまんまと引っかかった…」
「ハニートラップ‼️」
「そう… 酷い目に遭った…」
産業スパイって 事⁈
「そう ついあの…それでアジアの某国が欲しがっていた研究結果の一部をついピロトークで…」
「せっ先生 そっそれは 先生の研究成果ですよね?」
岩井は黙り込んだ。
う… 酷いことに なるわ…
白井ユミ…いろいろあるんだ…
「岩井先生 すみません、思い出したくも無い事を話させてしまいました。 本当にごめんなさい。でも 過ぎてしまった事ですよね?
さもなきゃ あの日 あんなに仲良く言い合う事なんてできませんよ!」
「そこが ユミの凄い何処なんだよ 当事者なのに その結果をすぐに論文発表して母校から特許申請して某国が活用出来なくしたんだ。そりゃ早かったよ。そしてすぐさま 違うアプローチで新しいゲノム新薬開発の手掛かりを掴んだんだ。結果 ハー◯ード マサ◯ーセ◯工科大学 オッ◯◯◯ードなど名だたる大学からフェロー招請が来て
「離婚よ」と、一言で アメリカだよ」
うう、男前… かっこよすぎて…感動する
結局のところ エドモンドが言う
パーフェクトな女って事か…
仕事はできる 金儲けもできる セックスも相当なテクニシャンって
あと残るとしたら 見かけ? 外観は…
外見なんて 〝あばたもエクボ〟
欠点さえ 愛おしい…
彼女に踏み躙られてみたい …
彼女を泣かせてみたい…
「岩井先生っ 謝ります。そして告白しますっ」
「えっ 何 急に どうしたの?」
「私 今日先生に 相談に来たのは 結婚の事では無いのです。
実は三年程同棲している女性が居て そろそろ結婚を考えていた矢先に出逢ってはいけない女性に出遭ってしまった… その女(ひと)が強烈すぎて それ以来 寝ても覚めても頭から彼女が離れない。しかも その女(ひと)は私が今まで出会った女性では最低最悪…悪魔のような 掴みどころが無い酷い女…」
「 ユミちゃん か? 」
波彦はコクリと頷いた。
「随分と酷い印象なのに 、好きだと?」
「はい 抱きたい セックスしたい ずっと一緒に居たい」
「わぁ ! 大楠君 君 今 営業マンの殻取っ払っちゃったんだー
そうなんだ… 困ったけど 応援もしたい気分かな、ユミには 男は俺みたいなクズばかりじゃ無い事を知って欲しいし…」
「嫌 先生 俺 めちゃくちゃクズです…」
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