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ほどけぬ糸なら切っちまえ by 黒崎ヒカル
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ユミがサブルームに消えた広い寝室。ダウンライトの照度を上げる。
さてと、何時だ‥
ヘッドボードのデジタル時計は10時を過ぎた表示。
帰るとするか‥‥
脱ぎ捨てた 下着 上着 ネクタイを落ちている順に着て最後に靴下を履く。
【帰ります。また来月お会いしましょう。大楠】
ユミのスマホがダイニングテーブルでブルブルと振動している。
…見るわけないか、
大手町から東京メトロ東西線で中野にでる。中野から中央線に乗り換えた。
常にトップセールスを誇る営業マンでも相手を自分のペースに巻き込めない強者に四苦八苦している。
ちょっと‥アプローチ変えてみるか、
大楠波彦の場合落ち込むのはほんのいっとき。直ぐにまた思考をポジティブに変えていく。
駅から徒歩15分の好立地な住宅街に波彦と妻共同名義の家がある。
遠巻きに自分の家に近づくと、
あれ?電気消し忘れ? あ いや自動だ、
‥‥ 帰って来たのか?
波彦の歩幅は自然と大きく やがて小走りで自宅前に着くと、掃き出し窓のシャッターが上がったまま 中の人影が外から見えた。
「た、ただいまぁ!」
予想通り玄関扉は施錠されていなかった。
「ただいまぁ 帰ってたのか?」
玄関から廊下を数歩移動してリビングのドアを開けた。
義父さん‥‥‥
「波彦君、すまんな 留守に勝手に上がり込んで‥」
「とんでも無いっ 私こそ、仕事にかまけて連絡も滞りまして、申し訳ありません」
波彦は義父に深く御辞儀をする。
「あ、紹介するよ、今回の件で娘の代理人をお願いしたABC合同弁護士事務所の友里先生です」
義父の横でノートPCをタイピングしているショートカットの女性弁護士。
「この度は お世話になります」
波彦が弁護士に向かい再び頭を深く下げた。
弁護士はPCから目を離し、立ち上がると波彦の前まで歩み寄り名刺を差し出し
「こちらこそ、よろしくお願いします。大楠さんがお忙しいようでしたら、大楠さんの代理人もご紹介いたしますよ‥」
‥は? 営業ですか‥弁護士先生、
離婚調停の代理人なんて、楽勝って感じで?
「ご親切、痛み入ります」
「2人とも立ってないで 座ったらどうだ‥」
「はいっ 義父さん‥‥
はぁ!っ、ええっ え~!」
「先輩っ やっと気づいてくれました?」
「仮屋園?」
「ご無沙汰してます 大楠先輩っ」
「‥義父さん、すみませんっ、、つい 学生気分で先生を呼び捨ててしまいました。」
‥なっ、つう隠し球!!
「あははは、想定済みだ 先生にお願いする方が話しが早いと思ってな、」
何のことやら?
「萩原専務、私の方から大楠さんに説明しても?」
「あー先生‥よろしくお願いします」
ふ~ん、娘の不倫が離婚の直接原因だから穏便に済ませたいって魂胆か‥‥面倒っちいなぁ‥離婚届けくらい直ぐハンコ押すのにぃ~
「大楠さん、離婚の申し出は原因を作った萩原さんの娘さんにあるのはあきらかなのですが、これからの娘さんの人生の汚点にならないよう大楠さんにご協力頂きたいと望まれているんですよ」
「‥‥」
波彦はもっともだと頷きながら、
臍で茶沸かすってwww
「義父さん、ご心配は無用ですよ、離婚について、私からは一切何も申し立てする事は無いので‥‥」
「それは、本心から言ってるのか? 波彦君」
本心だっつうの!
「失礼ながら、大楠さんの素行調査をさせていただきました。」
ぎょえっ、、、、、、、
わざとらしく驚きの表情を工夫したが、
白井ユミの姿が目の前で揺ら揺らと現れた。
「義父さん‥‥」
「すまん この通りだ 」
「あー、頭を上げて下さいよぉ ちょっとびっくりしただけですから、、、ん、気にしないでくださいっ」
「私も、この歳まで一部上場の製薬会社でたたき上げの営業マンを35年間だ、35年 ここで、この大事な時期に (もう直ぐ株主総会と役員改選がござりやす)足元を掬われるわけにはいかないのだよ、‥君もわかるだろ?」
わかってますって! 足なんか引っ張ったりしませんよ
義父さん‥‥ご安心下さい、、、
「勿論ですよ、私達営業が骨身惜しまず顧客開拓すればこそ、会社が成り立つと言うものです。」
「ところで、友里先生、私の素行に何か義父の足を引っ張る要素でも!」
‥白井ユミを出されたら‥アウト
「ええ、御座いません、ただ」
な、何 仮屋園?
「はい 何か?」
斜向かいに腰をおろす義父が身を乗り出す。
友里弁護士は手元にある資料に目を通しながら、
「先日 渋谷◯丁目〇〇番地のマンション駐車場から大楠さんが女性を伴って出てきた所を目撃された方がいらっしゃるのですが‥」
え~それ? 汚ねぇなぁ‥っくぅぅ
マジか、嫁‥か⁈ 男か‥クズじゃんか!
嫁の方が男とイチャついてマンションに入っていく所だったと
仮屋園に言うべきか?‥
義父は密告が自分の娘と知っているのか?
‥‥ん、ん、まっいいか、!
「確かに 出てきました。ゲノム研究所の岩井先生があのマンションにお住まいで‥」
「えっ 岩井教授が⁈」
先に喰いついてきたのは 義父だった。
「ええ、覚えていらっしゃいますか?国立最先端医化学研究開発センターの新発見の記者発表会見を‥?」
文系バリバリの仮屋園には興味薄な話題か、、、シシシ
「ああ! 白井博士の新発見 特許は折半 センターに協力、出資した関連企業や大学がゲノム情報を自由に使えるって!」
「ええ 、義父さん‥」
「それが‥何故、、?」
「私が同行していた女性は白井センター長ですよ」
「えっ!ええっ、、、えーーー!」
「白井博士‥と、言うと、、あの話題の?」
友里弁護士も引き気味に喰いついた。
「波彦君 いったいどんな事情で‥‥」
「義父さん、友里先生‥それこそ機密中の機密、国家プロジェクトの命運がかかってます。 私の口からは何ともお話しできませんが、一つ言える事は 岩井先生に頼まれた仕事だったのです」
‥‥ぅん、機密じゃ無いけど、、、
まぁ、いいか‥
「い、岩井教授っ‥‥気難しい御仁と部下から聴かされてはいたが、まさか、君が‥先生とそこまで親しいとは‥」
萩原専務は、しまった と 字駄々踏んだ。
離婚の回避を娘に説得すべきだったと‥
白井ユミとの関係はバレずにやり過ごせた波彦の機転。
多少の罪悪感はあったものの、彼女を私的なスキャンダルに巻き込むわけにはいかないと、保護本能からでた咄嗟の出まかせだった。
仮屋園が弁護士とはな‥
相変わらず才色堅持か‥‥
友里‥嫁ぎ先の苗字、、まっ どんな経緯で代理人になったとしても好都合だ。
※【才色堅持】作者造語の四文字熟語 この場限りです。
「次長、友里さんと言う方から電話が入ってます。」
仮屋園?‥‥
「取り次いでくれ‥」
「もしもしぃ‥ おう、うん あははは、いゃーびっくりしたよ、、、それを言うなよ、 お前 職務忘れてるぞっ! えー、うん うん、そうだなぁ‥皆は元気か? ふーん、ああ、いいけど‥そうだなぁ‥8時ごろなら‥わかったよ じゃあ‥‥後ほど‥」
話しって‥何だ?
卒業してから8年か‥
後輩弁護士に八重洲口のBホテル東京のカウンターバーに呼び出された波彦は、書類の整理を週明けに残して指定されたバーに向かった。
‥呼び出した場所が今話題のホテルバーって、さすがABC法律事務所の弁護士 ‥かっこいい クク
雰囲気良かったら先生誘ってやろっ
エレベーターで40階。
インフォメーションスタッフがバーまでわざわざ案内してくれた。
おお~超高層階 眺めもいいじゃないか‥
ボーナス出たら先生と‥ 泊まり‥もいいな~
会えない時間が愛を育む典型的思考のパターン。
薄暗いカウンターバーの狭い空間。計算され尽くした間接照明の配置が大人の社交場としての雰囲気をさらに演出する。
この感じ‥確か大ヒットした映画の場面にあったな‥
カウンターチェアに軽く腰掛けていた女性がこちらを振り向くと‥
ククク‥やば、ニヤけてくる
あの女(ひと)スレンダーだがおっぱいデカいし、スタイルだって上々‥ タイトなカクテルドレス姿‥ うぅ、、早く逢いたいっ
あの女は‥‥‥この時間もキイロショウジョウバエの短い一生に白衣を羽織って懸命に尽くしていた。
「先輩っ ここ、ここ!」
無邪気に合図する後輩弁護士が波彦を現実に引き戻す。
「おっ あゝ 待たせてごめんな‥」
後輩弁護士はテーブル席に腰掛けていた。
「座って、座ってぇ」
「髪の毛切ったんだ? 気づかず、悪かったな‥」
「ええ、、あっ 荻原さんとご一緒して伺った時?」
「お~ん、そう‥」
髪は短いが雰囲気は昔のままだな‥
「あの時は、仕事モードだし、交渉相手が先輩って、、これは運命だって思ったら 緊張はんぱなかったの‥‥」
歳相応な笑い小皺がいいじゃないか、‥
「せっせんぱいっ 何ですか?ジロジロ見て‥」
「あっ いゃ、かわらねぇな‥と」
「そうですかぁ‥ 喜んでいいのなかぁ? 成長してないとかwww」
「いやいや、成長してるだろっ! まさかのまさかだよ。カーリーが弁護士だなんて、マジ びっくりしたわ」
「えー本当ですかぁ! 成長しましたか? 私 」
手に持ったワイングラスを口元に運ぶ仕草一つ、大人になったなぁと波彦は、関心する。
「それに 随分と色っぽくなって、やっぱ女は結婚すると違うなぁ‥」
〝失礼致します。お客様‥お飲み物はいかがいたしましょう?〟
「あ、ウーロン茶で‥」
「ええっ 先輩も呑んでください、今夜成長したカーリーがご馳走しますから、」
〝 ‥‥ 〟
「あ、ウーロン茶で、」
〝かしこまりました。〟
「馬鹿っ お前 昔っから酒癖悪いだろうが、誰が飲み会の後、家まで送り届けたか わかっているか?」
‥仮屋園はサークルのマスコットだったからな、
「え~誰かさん‥でしたね!」
「それで、酔っ払わないうちに 話せよ 相談って?」
離婚の件ならさっさと進めて早期に終わらせたいと彼女に頼むつもりでいた。
「‥あの大人になったので、今だから先輩に話さないと、‥」
照度を落とした電球色のダウンライトと足元の間接照明ではっきりした仮屋園の顔色がわからないが、
何か、心配事か‥
「カーリー、何でも言いなよ‥俺で役に立つなら‥‥」
「先輩でないと‥ダメなんです‥‥」
「らしく無いぞ、 だから 言えって!」
「せ、せんぱいっ、、、好きですっ、、ずっとすきでしたっ」
ええ~えーー!ぐわわん、、、嘘っ、やめろっ!
急に汗が吹き出してきた。
波彦は焦りを見せないように 必死で取り繕いウーロン茶のグラスを口元に持って行くが 微かに震えている。
「あー やっと言えました、スッキリ!」
後輩弁護士は告白の自己満足に浸って波彦の動転ぶりに気がついていなかった。
やばい やばい まじ、何とか、回避せねば、、、
「カーリー、旦那の居る身で それ問題あるぞ 」
いいから、落ち着け 俺、、
「えっ? ‥ 旦那さん?」
「苗字が友里って ‥」
波彦は手にしたウーロン茶をゴクっと一口流し込む。
「ああ、うちの両親、熟年離婚して‥今私、母と暮らしていて 母の実家の苗字が 友里 なんですょ!」
未だに 独身って
マズイ マズイ だめなやつだよ、、
「先輩、先輩って昔から 自己肯定感低く無いですか?」
「そ、そうか? そうでもないと、、自分じゃ思ってるが‥」
「だって、先輩 アタシ達の中ではダントツの憧れだったんですよ!
テレビ小説の五代友厚役の俳優に瓜二つって 陰で先輩の事五代さまって、もう 先輩が卒業された後 女子会で皆んな大泣きしたんですよ」
‥嘘だー モテなかったぞっー
心臓打ってるっ 打ってる 打ってる、、
「カーリー、ちょっと待って‥話しは後 どうも最近 近いんだ‥‥」
波彦はトイレに逃げ込んだ。
あ〝~っ 焦った、、、、 何言い出すんだっ
やめてくれっ、、、 ムリ ムリ ムリ
焦った姿‥気づかれたか⁈ 、、、このままずらかるか? いや 嫁と離婚成立させなきゃ どうもこうも身動きとれない‥
カーリーの意識を別に向ける‥か、
酔わせて さっさと送り届けるか‥
なんなんだよ‥ごちゃごちゃと
男性トイレのアメニティも全てBブランド
ペーパータオルで流れる冷や汗を拭き取ってもゴワゴワ感が全く無い。しかもいい香り‥
その香りを深く嗅ぐ。
サンダルウッドか、鎮静効果のあるやつ‥
鏡に映る自分の顔を改めて凝視した。
【貴方 鼻 整形した?】
【綺麗だから、非の打ち所がない整った鼻。】
波彦は鏡に顔を近づけ 鼻に触れてみた。
白井ユミの褒め言葉を思いだした。
あー彼女に逢いたい‥
「ごめん、お待たせ‥‥どうも最近 頻尿気味でさ‥」
わざわざ雰囲気をぶち壊すひと言。
「先輩、仕事がハード過ぎるんじゃないですか、萩原さんは 先輩が
常にトップセールスの位置を入社以来キープしてるって、だから娘さんが 別れたいって泣きついてきた時は かなりご立腹だったみたいですよ‥」
「おい、そんなクライアントの個人情報話していいのか?」
後輩弁護士はアルコールも手伝って口も滑らかになっている。
「ええ、あとは先輩が納得する条件だけですから、先輩には全く非がない離婚申立てです。‥ま、正確には申立ても何も、家裁通してもいないですから、話し合いです。」
彼女は大きめのワイングラスをゆるゆると手の平で転がすように揺らしながら話す。
「俺の条件?‥」
条件などない‥自由にしてくれれば彼女と
‥
「そうです‥何かないですか?」
「お前に、言っていいのか‥嫁の代理人だからな、うかつな事も話せないし‥」
「せんぱ~い、それは無いでしょ? ずーっと先輩の事が好きで、恋愛しても 先輩の顔がチラつくと‥いっぺんに白けて‥別れるを繰り返してきたんですよ!」
「‥それは 俺に関係ないお前の感情だろ?」
「せんぱ~い‥」
「さあ お開き、帰るぞ お前酔ってるわ‥」、
「せんぱーい って ねぇ、、離婚が成立したら、私と付き合って下さいっ、」
絶対ムリ。
「はい、岩井です‥」
‥‥‥
「大楠君っ その節は君のおかげでユミも酷い目に遭わずに済んだ、ありがとうございます。本当 助かりました。」
〝先生 その事はもう忘れてください どうって事ないです、それより何処かに 離婚問題に詳しい弁護士さんのお知り合いいませんか?〟
「大楠君‥君 ‥‥ 僕が離婚経験した者だからか?」
〝 ‥‥‥ ‥‥‥ ‥‥ 〟
「えっ、それは‥‥あ、あ、あ、あー!」
〝せっ先生 どうかしたんですか?〟
波彦は、離婚の代理人弁護士が必要な理由を岩井に話した。
するといきなり岩井が素っ頓狂な声を張り上げた。
「あ、そ、そのなぁ‥実はなぁ‥‥‥‥」
〝‥‥そうですか‥‥、全く無防備な嫁で、先生にまで見られていたんですか‥〟
波彦は江ノ電に揺られて 海岸沿いの鎌倉高校前駅で下車した。
岩井から手渡された連絡住所。
相当な年寄り弁護士らしいが離婚問題に、関したら負け無しらしいと岩井がその幅広い人脈で探し出してくれた。
ありがたいが、‥別に揉めていない、ただ相手弁護士が面倒くさい女だから 出来るだけ接触したくなかった、ただそれだけだったのに、何やら国宝級の重鎮と、
あー、もー またややこしいなぁ‥
あの夜は、友里弁護士はBホテル東京でタクシーを用意してもらい押し返すように乗車させた。
俺‥女難の年廻りかな‥
離婚しようとしている妻の弁護士から告られる災難。
普通 振られたら平常心で仕事できるか?
いいや 俺ならムリだ‥
波彦が弁護士事務所に連絡を入れると、何やら料理旅館の一室が事務所らしく、千◯屋のメロンを手土産にタクシーを拾った。
〝鎌倉駅より 鎌倉高校前からタクシーが最短らしいよ 〟
「先生、その弁護士先生は 岩井先生とどんな関係って言うか どんなつてで‥?」
〝あー、僕とか ユミの恩師の御尊父らしいんだ‥法学部の教授に訊いたから確かな御仁らしいよ〟
「恩師のお父さん? ですか?」
〝そう! ついでに、恩師は千◯屋のメロンか、叙◯苑の焼肉重 松がお好きなんだよ まぁ この季節なら メロンかな〟
いやいや どう考えても弁護士先生の好みが手土産でしょ?
何故に先生の恩師の好みが手土産なんだか…
頭のいい人の思考がよめねぇ~
鎌倉高校駅前から タクシーだと15分ほど走った所に手入れのいきどどいた竹林が周辺に広がっていた。
その中を進むこと数分で 御料理旅館の立て看板、その下によく見ないとわからない手書きで 綾野法律相談 と書いてある。
大丈夫かなぁ‥ 何か怪しい‥
闇弁護士とか‥ え~まさか 弁護士資格停止喰らったとかじゃ無いよなぁ‥あー、岩井先生に相談したのが間違いだった‥
波彦は手書き文字を見ただけで気分が萎えてきた。
「女将さーん、先生にお客様でーす!」
入り口は一つしかない。由緒ただしそうな和風割烹の店構え‥
「先生って お父さん? それともヒカルさん?」
‥何やら奥の方から声が聞こえてくる。
雰囲気のいい旅館だなあ‥掃除も行き届いているし、何より竹林の中の隠れ家的で‥
ボーナス出たら こっちに先生連れてくるかな‥
「カヲルさん 僕のお客さんだから、僕の部屋にお通ししてください。」
「あら 貴方 お珍しい‥久方ぶりのお客様‥」
奥の方から 話し声が筒抜けじゃん…
は?な、何言ったぁ? 今の何?久しぶり
嘘でしょ、、
「ええ お母さん 僕のお客さんでもあるんですよ~」
「あら ヒカルさん そうなの?」
「お待たせ致しました。どうぞご案内いたします」
波彦は着物を着た若い仲居さんに 案内されて 何やらお茶の間風居間を突っ切った。
な、何このファミリー感 嘘だろ~
ジロジロ見るわけにはいかないが、男が3人 女が2人 確か赤ちゃんもいた‥
もう‥帰りたいっ、、、
それでも、通された部屋は さすがに三方が天井まで届く書棚でぎっしりと本やファイルが積み重ねられていた。
重厚感ある大きな木の机。足元はペルシャ絨毯敷で、傍に対面式のソファが設えてあった。
出迎えてくれた人は歳の頃なら80ちかそうな ずんぐりした白髪のおじいちゃんだった。
「まぁ そこにお座りください。私こういう経歴の者です」
名刺を手渡され、ソファに腰掛けろと促されそれに従う。
「ご存知とは思いますが、ご相談30分毎に5000円の相談料が発生します。宜しいですか?」
「あっ、はい」
見かけは何処にでもいる爺さんだが 滑舌はなめらかでよく通る声と明瞭な語り口だった。
波彦は手元の名刺に視線を落とした。
うわぁ 高等検察局部長検事? 検事正‥
すげ~経歴
「あ、あの これ つまらない物ですが お口に合うか‥」
‥手筈どおり千◯屋のメロン(35,000円也)
「それは‥ご丁寧に、おおー コレは上等な… ありがとうございます‥
おーい カヲルさーん お土産頂戴しましたよー」
‥やっぱ‥ ムリ
「失礼致します。粗茶ですが、どうぞ」
音も立てずに入室してきたのは上品な美しいおばあちゃん。
「あらっ まぁ 千◯屋さんのぉ、メロン!」
「お口にあいますか‥」
時間がどんどん過ぎてゆく‥
「はい、息子の大好物でございますの、‥‥少々お待ち下さいませ」
美しいおばあちゃんが退室したので、早速本題と思った矢先、
背の高い イケオジ風の男性が入ってきた。
「いやぁ いらっしゃい、悪いなぁ 高かったでしょ? 岩井も、白井も元気でやってますか?出来の悪い奴らで‥
特に白井 っくぅ気が利かない、融通きかない おまけに ブ…あっ おっと女性の容姿は好みの問題ですな アハハハ
聴かなかった事にしてください。
岩井は、まあ 毎年必ず挨拶状送ってくるんでね 私も何かとね 裏から応援してるんですよ 何せ 2人共ね 人付き合いからっきしでして 貴方にもご迷惑をお掛けしてるかもしれませんね、私があいつらに代わって先に詫びときます。」
で、出来悪い、、、え~っ、ブ…ス
って言いたかった とか
な、何者⁈だ この人
「ダッド! ダーッ ジュンちゃん見ててって言ったのに!すぐ目を離すんだから! 孫の世話も安心してたのめないじゃん! ダダァ‼️」
は、は、 おじいちゃん?
「あ すみません💦 孫を見てろって 娘がね‥ぎゃあぎゃ煩くて、義父さん、こちら僕の、教え子が世話になっているんで、今日の相談料はロハでお願いしますよ 」
‥‥凄っ 怖っ
波彦の相談は一を聴いて十を知るの諺の如く瞬間で終わった。
「今後は私が相手代理人と詰めていくので、大楠さんの所に問い合わせはありません。私の方からは決め事について大楠さんの判断をメールで仰ぐ事にします。そう時間もかからないでしょう」
「ありがとうございます、あの料金は?」
「あー ヒカル君もああいってますし、千◯屋のメロンで 先払いと言う事にしましょう」
こっちの弁護士おじいちゃんはまさに好々爺そのものだが
あっちは 関わっちゃダメ系 かも
「それでは、あまりに 先生に申し訳ない」
「いいんですよ 弁護士稼業だってボケ防止でしてるようなものだから‥さあ あまりお引き留しても都内までお帰りが大変だから、」
「ありがとうございました」
「ところで、大楠さん、貴方もう次のお相手いらっしゃるでしょう?」
ええっ!
「あー そう驚かなくても、、、いやぁね、 長年 検察で刑事事件ばかり担当してきたので 秘密を隠し持ってる人、すぐわかるんですな‥」
「ええ!凄い! 私の何で それが?」
「お~ん、ま、勘ですかね、」
こっちも怖っ
さてと、何時だ‥
ヘッドボードのデジタル時計は10時を過ぎた表示。
帰るとするか‥‥
脱ぎ捨てた 下着 上着 ネクタイを落ちている順に着て最後に靴下を履く。
【帰ります。また来月お会いしましょう。大楠】
ユミのスマホがダイニングテーブルでブルブルと振動している。
…見るわけないか、
大手町から東京メトロ東西線で中野にでる。中野から中央線に乗り換えた。
常にトップセールスを誇る営業マンでも相手を自分のペースに巻き込めない強者に四苦八苦している。
ちょっと‥アプローチ変えてみるか、
大楠波彦の場合落ち込むのはほんのいっとき。直ぐにまた思考をポジティブに変えていく。
駅から徒歩15分の好立地な住宅街に波彦と妻共同名義の家がある。
遠巻きに自分の家に近づくと、
あれ?電気消し忘れ? あ いや自動だ、
‥‥ 帰って来たのか?
波彦の歩幅は自然と大きく やがて小走りで自宅前に着くと、掃き出し窓のシャッターが上がったまま 中の人影が外から見えた。
「た、ただいまぁ!」
予想通り玄関扉は施錠されていなかった。
「ただいまぁ 帰ってたのか?」
玄関から廊下を数歩移動してリビングのドアを開けた。
義父さん‥‥‥
「波彦君、すまんな 留守に勝手に上がり込んで‥」
「とんでも無いっ 私こそ、仕事にかまけて連絡も滞りまして、申し訳ありません」
波彦は義父に深く御辞儀をする。
「あ、紹介するよ、今回の件で娘の代理人をお願いしたABC合同弁護士事務所の友里先生です」
義父の横でノートPCをタイピングしているショートカットの女性弁護士。
「この度は お世話になります」
波彦が弁護士に向かい再び頭を深く下げた。
弁護士はPCから目を離し、立ち上がると波彦の前まで歩み寄り名刺を差し出し
「こちらこそ、よろしくお願いします。大楠さんがお忙しいようでしたら、大楠さんの代理人もご紹介いたしますよ‥」
‥は? 営業ですか‥弁護士先生、
離婚調停の代理人なんて、楽勝って感じで?
「ご親切、痛み入ります」
「2人とも立ってないで 座ったらどうだ‥」
「はいっ 義父さん‥‥
はぁ!っ、ええっ え~!」
「先輩っ やっと気づいてくれました?」
「仮屋園?」
「ご無沙汰してます 大楠先輩っ」
「‥義父さん、すみませんっ、、つい 学生気分で先生を呼び捨ててしまいました。」
‥なっ、つう隠し球!!
「あははは、想定済みだ 先生にお願いする方が話しが早いと思ってな、」
何のことやら?
「萩原専務、私の方から大楠さんに説明しても?」
「あー先生‥よろしくお願いします」
ふ~ん、娘の不倫が離婚の直接原因だから穏便に済ませたいって魂胆か‥‥面倒っちいなぁ‥離婚届けくらい直ぐハンコ押すのにぃ~
「大楠さん、離婚の申し出は原因を作った萩原さんの娘さんにあるのはあきらかなのですが、これからの娘さんの人生の汚点にならないよう大楠さんにご協力頂きたいと望まれているんですよ」
「‥‥」
波彦はもっともだと頷きながら、
臍で茶沸かすってwww
「義父さん、ご心配は無用ですよ、離婚について、私からは一切何も申し立てする事は無いので‥‥」
「それは、本心から言ってるのか? 波彦君」
本心だっつうの!
「失礼ながら、大楠さんの素行調査をさせていただきました。」
ぎょえっ、、、、、、、
わざとらしく驚きの表情を工夫したが、
白井ユミの姿が目の前で揺ら揺らと現れた。
「義父さん‥‥」
「すまん この通りだ 」
「あー、頭を上げて下さいよぉ ちょっとびっくりしただけですから、、、ん、気にしないでくださいっ」
「私も、この歳まで一部上場の製薬会社でたたき上げの営業マンを35年間だ、35年 ここで、この大事な時期に (もう直ぐ株主総会と役員改選がござりやす)足元を掬われるわけにはいかないのだよ、‥君もわかるだろ?」
わかってますって! 足なんか引っ張ったりしませんよ
義父さん‥‥ご安心下さい、、、
「勿論ですよ、私達営業が骨身惜しまず顧客開拓すればこそ、会社が成り立つと言うものです。」
「ところで、友里先生、私の素行に何か義父の足を引っ張る要素でも!」
‥白井ユミを出されたら‥アウト
「ええ、御座いません、ただ」
な、何 仮屋園?
「はい 何か?」
斜向かいに腰をおろす義父が身を乗り出す。
友里弁護士は手元にある資料に目を通しながら、
「先日 渋谷◯丁目〇〇番地のマンション駐車場から大楠さんが女性を伴って出てきた所を目撃された方がいらっしゃるのですが‥」
え~それ? 汚ねぇなぁ‥っくぅぅ
マジか、嫁‥か⁈ 男か‥クズじゃんか!
嫁の方が男とイチャついてマンションに入っていく所だったと
仮屋園に言うべきか?‥
義父は密告が自分の娘と知っているのか?
‥‥ん、ん、まっいいか、!
「確かに 出てきました。ゲノム研究所の岩井先生があのマンションにお住まいで‥」
「えっ 岩井教授が⁈」
先に喰いついてきたのは 義父だった。
「ええ、覚えていらっしゃいますか?国立最先端医化学研究開発センターの新発見の記者発表会見を‥?」
文系バリバリの仮屋園には興味薄な話題か、、、シシシ
「ああ! 白井博士の新発見 特許は折半 センターに協力、出資した関連企業や大学がゲノム情報を自由に使えるって!」
「ええ 、義父さん‥」
「それが‥何故、、?」
「私が同行していた女性は白井センター長ですよ」
「えっ!ええっ、、、えーーー!」
「白井博士‥と、言うと、、あの話題の?」
友里弁護士も引き気味に喰いついた。
「波彦君 いったいどんな事情で‥‥」
「義父さん、友里先生‥それこそ機密中の機密、国家プロジェクトの命運がかかってます。 私の口からは何ともお話しできませんが、一つ言える事は 岩井先生に頼まれた仕事だったのです」
‥‥ぅん、機密じゃ無いけど、、、
まぁ、いいか‥
「い、岩井教授っ‥‥気難しい御仁と部下から聴かされてはいたが、まさか、君が‥先生とそこまで親しいとは‥」
萩原専務は、しまった と 字駄々踏んだ。
離婚の回避を娘に説得すべきだったと‥
白井ユミとの関係はバレずにやり過ごせた波彦の機転。
多少の罪悪感はあったものの、彼女を私的なスキャンダルに巻き込むわけにはいかないと、保護本能からでた咄嗟の出まかせだった。
仮屋園が弁護士とはな‥
相変わらず才色堅持か‥‥
友里‥嫁ぎ先の苗字、、まっ どんな経緯で代理人になったとしても好都合だ。
※【才色堅持】作者造語の四文字熟語 この場限りです。
「次長、友里さんと言う方から電話が入ってます。」
仮屋園?‥‥
「取り次いでくれ‥」
「もしもしぃ‥ おう、うん あははは、いゃーびっくりしたよ、、、それを言うなよ、 お前 職務忘れてるぞっ! えー、うん うん、そうだなぁ‥皆は元気か? ふーん、ああ、いいけど‥そうだなぁ‥8時ごろなら‥わかったよ じゃあ‥‥後ほど‥」
話しって‥何だ?
卒業してから8年か‥
後輩弁護士に八重洲口のBホテル東京のカウンターバーに呼び出された波彦は、書類の整理を週明けに残して指定されたバーに向かった。
‥呼び出した場所が今話題のホテルバーって、さすがABC法律事務所の弁護士 ‥かっこいい クク
雰囲気良かったら先生誘ってやろっ
エレベーターで40階。
インフォメーションスタッフがバーまでわざわざ案内してくれた。
おお~超高層階 眺めもいいじゃないか‥
ボーナス出たら先生と‥ 泊まり‥もいいな~
会えない時間が愛を育む典型的思考のパターン。
薄暗いカウンターバーの狭い空間。計算され尽くした間接照明の配置が大人の社交場としての雰囲気をさらに演出する。
この感じ‥確か大ヒットした映画の場面にあったな‥
カウンターチェアに軽く腰掛けていた女性がこちらを振り向くと‥
ククク‥やば、ニヤけてくる
あの女(ひと)スレンダーだがおっぱいデカいし、スタイルだって上々‥ タイトなカクテルドレス姿‥ うぅ、、早く逢いたいっ
あの女は‥‥‥この時間もキイロショウジョウバエの短い一生に白衣を羽織って懸命に尽くしていた。
「先輩っ ここ、ここ!」
無邪気に合図する後輩弁護士が波彦を現実に引き戻す。
「おっ あゝ 待たせてごめんな‥」
後輩弁護士はテーブル席に腰掛けていた。
「座って、座ってぇ」
「髪の毛切ったんだ? 気づかず、悪かったな‥」
「ええ、、あっ 荻原さんとご一緒して伺った時?」
「お~ん、そう‥」
髪は短いが雰囲気は昔のままだな‥
「あの時は、仕事モードだし、交渉相手が先輩って、、これは運命だって思ったら 緊張はんぱなかったの‥‥」
歳相応な笑い小皺がいいじゃないか、‥
「せっせんぱいっ 何ですか?ジロジロ見て‥」
「あっ いゃ、かわらねぇな‥と」
「そうですかぁ‥ 喜んでいいのなかぁ? 成長してないとかwww」
「いやいや、成長してるだろっ! まさかのまさかだよ。カーリーが弁護士だなんて、マジ びっくりしたわ」
「えー本当ですかぁ! 成長しましたか? 私 」
手に持ったワイングラスを口元に運ぶ仕草一つ、大人になったなぁと波彦は、関心する。
「それに 随分と色っぽくなって、やっぱ女は結婚すると違うなぁ‥」
〝失礼致します。お客様‥お飲み物はいかがいたしましょう?〟
「あ、ウーロン茶で‥」
「ええっ 先輩も呑んでください、今夜成長したカーリーがご馳走しますから、」
〝 ‥‥ 〟
「あ、ウーロン茶で、」
〝かしこまりました。〟
「馬鹿っ お前 昔っから酒癖悪いだろうが、誰が飲み会の後、家まで送り届けたか わかっているか?」
‥仮屋園はサークルのマスコットだったからな、
「え~誰かさん‥でしたね!」
「それで、酔っ払わないうちに 話せよ 相談って?」
離婚の件ならさっさと進めて早期に終わらせたいと彼女に頼むつもりでいた。
「‥あの大人になったので、今だから先輩に話さないと、‥」
照度を落とした電球色のダウンライトと足元の間接照明ではっきりした仮屋園の顔色がわからないが、
何か、心配事か‥
「カーリー、何でも言いなよ‥俺で役に立つなら‥‥」
「先輩でないと‥ダメなんです‥‥」
「らしく無いぞ、 だから 言えって!」
「せ、せんぱいっ、、、好きですっ、、ずっとすきでしたっ」
ええ~えーー!ぐわわん、、、嘘っ、やめろっ!
急に汗が吹き出してきた。
波彦は焦りを見せないように 必死で取り繕いウーロン茶のグラスを口元に持って行くが 微かに震えている。
「あー やっと言えました、スッキリ!」
後輩弁護士は告白の自己満足に浸って波彦の動転ぶりに気がついていなかった。
やばい やばい まじ、何とか、回避せねば、、、
「カーリー、旦那の居る身で それ問題あるぞ 」
いいから、落ち着け 俺、、
「えっ? ‥ 旦那さん?」
「苗字が友里って ‥」
波彦は手にしたウーロン茶をゴクっと一口流し込む。
「ああ、うちの両親、熟年離婚して‥今私、母と暮らしていて 母の実家の苗字が 友里 なんですょ!」
未だに 独身って
マズイ マズイ だめなやつだよ、、
「先輩、先輩って昔から 自己肯定感低く無いですか?」
「そ、そうか? そうでもないと、、自分じゃ思ってるが‥」
「だって、先輩 アタシ達の中ではダントツの憧れだったんですよ!
テレビ小説の五代友厚役の俳優に瓜二つって 陰で先輩の事五代さまって、もう 先輩が卒業された後 女子会で皆んな大泣きしたんですよ」
‥嘘だー モテなかったぞっー
心臓打ってるっ 打ってる 打ってる、、
「カーリー、ちょっと待って‥話しは後 どうも最近 近いんだ‥‥」
波彦はトイレに逃げ込んだ。
あ〝~っ 焦った、、、、 何言い出すんだっ
やめてくれっ、、、 ムリ ムリ ムリ
焦った姿‥気づかれたか⁈ 、、、このままずらかるか? いや 嫁と離婚成立させなきゃ どうもこうも身動きとれない‥
カーリーの意識を別に向ける‥か、
酔わせて さっさと送り届けるか‥
なんなんだよ‥ごちゃごちゃと
男性トイレのアメニティも全てBブランド
ペーパータオルで流れる冷や汗を拭き取ってもゴワゴワ感が全く無い。しかもいい香り‥
その香りを深く嗅ぐ。
サンダルウッドか、鎮静効果のあるやつ‥
鏡に映る自分の顔を改めて凝視した。
【貴方 鼻 整形した?】
【綺麗だから、非の打ち所がない整った鼻。】
波彦は鏡に顔を近づけ 鼻に触れてみた。
白井ユミの褒め言葉を思いだした。
あー彼女に逢いたい‥
「ごめん、お待たせ‥‥どうも最近 頻尿気味でさ‥」
わざわざ雰囲気をぶち壊すひと言。
「先輩、仕事がハード過ぎるんじゃないですか、萩原さんは 先輩が
常にトップセールスの位置を入社以来キープしてるって、だから娘さんが 別れたいって泣きついてきた時は かなりご立腹だったみたいですよ‥」
「おい、そんなクライアントの個人情報話していいのか?」
後輩弁護士はアルコールも手伝って口も滑らかになっている。
「ええ、あとは先輩が納得する条件だけですから、先輩には全く非がない離婚申立てです。‥ま、正確には申立ても何も、家裁通してもいないですから、話し合いです。」
彼女は大きめのワイングラスをゆるゆると手の平で転がすように揺らしながら話す。
「俺の条件?‥」
条件などない‥自由にしてくれれば彼女と
‥
「そうです‥何かないですか?」
「お前に、言っていいのか‥嫁の代理人だからな、うかつな事も話せないし‥」
「せんぱ~い、それは無いでしょ? ずーっと先輩の事が好きで、恋愛しても 先輩の顔がチラつくと‥いっぺんに白けて‥別れるを繰り返してきたんですよ!」
「‥それは 俺に関係ないお前の感情だろ?」
「せんぱ~い‥」
「さあ お開き、帰るぞ お前酔ってるわ‥」、
「せんぱーい って ねぇ、、離婚が成立したら、私と付き合って下さいっ、」
絶対ムリ。
「はい、岩井です‥」
‥‥‥
「大楠君っ その節は君のおかげでユミも酷い目に遭わずに済んだ、ありがとうございます。本当 助かりました。」
〝先生 その事はもう忘れてください どうって事ないです、それより何処かに 離婚問題に詳しい弁護士さんのお知り合いいませんか?〟
「大楠君‥君 ‥‥ 僕が離婚経験した者だからか?」
〝 ‥‥‥ ‥‥‥ ‥‥ 〟
「えっ、それは‥‥あ、あ、あ、あー!」
〝せっ先生 どうかしたんですか?〟
波彦は、離婚の代理人弁護士が必要な理由を岩井に話した。
するといきなり岩井が素っ頓狂な声を張り上げた。
「あ、そ、そのなぁ‥実はなぁ‥‥‥‥」
〝‥‥そうですか‥‥、全く無防備な嫁で、先生にまで見られていたんですか‥〟
波彦は江ノ電に揺られて 海岸沿いの鎌倉高校前駅で下車した。
岩井から手渡された連絡住所。
相当な年寄り弁護士らしいが離婚問題に、関したら負け無しらしいと岩井がその幅広い人脈で探し出してくれた。
ありがたいが、‥別に揉めていない、ただ相手弁護士が面倒くさい女だから 出来るだけ接触したくなかった、ただそれだけだったのに、何やら国宝級の重鎮と、
あー、もー またややこしいなぁ‥
あの夜は、友里弁護士はBホテル東京でタクシーを用意してもらい押し返すように乗車させた。
俺‥女難の年廻りかな‥
離婚しようとしている妻の弁護士から告られる災難。
普通 振られたら平常心で仕事できるか?
いいや 俺ならムリだ‥
波彦が弁護士事務所に連絡を入れると、何やら料理旅館の一室が事務所らしく、千◯屋のメロンを手土産にタクシーを拾った。
〝鎌倉駅より 鎌倉高校前からタクシーが最短らしいよ 〟
「先生、その弁護士先生は 岩井先生とどんな関係って言うか どんなつてで‥?」
〝あー、僕とか ユミの恩師の御尊父らしいんだ‥法学部の教授に訊いたから確かな御仁らしいよ〟
「恩師のお父さん? ですか?」
〝そう! ついでに、恩師は千◯屋のメロンか、叙◯苑の焼肉重 松がお好きなんだよ まぁ この季節なら メロンかな〟
いやいや どう考えても弁護士先生の好みが手土産でしょ?
何故に先生の恩師の好みが手土産なんだか…
頭のいい人の思考がよめねぇ~
鎌倉高校駅前から タクシーだと15分ほど走った所に手入れのいきどどいた竹林が周辺に広がっていた。
その中を進むこと数分で 御料理旅館の立て看板、その下によく見ないとわからない手書きで 綾野法律相談 と書いてある。
大丈夫かなぁ‥ 何か怪しい‥
闇弁護士とか‥ え~まさか 弁護士資格停止喰らったとかじゃ無いよなぁ‥あー、岩井先生に相談したのが間違いだった‥
波彦は手書き文字を見ただけで気分が萎えてきた。
「女将さーん、先生にお客様でーす!」
入り口は一つしかない。由緒ただしそうな和風割烹の店構え‥
「先生って お父さん? それともヒカルさん?」
‥何やら奥の方から声が聞こえてくる。
雰囲気のいい旅館だなあ‥掃除も行き届いているし、何より竹林の中の隠れ家的で‥
ボーナス出たら こっちに先生連れてくるかな‥
「カヲルさん 僕のお客さんだから、僕の部屋にお通ししてください。」
「あら 貴方 お珍しい‥久方ぶりのお客様‥」
奥の方から 話し声が筒抜けじゃん…
は?な、何言ったぁ? 今の何?久しぶり
嘘でしょ、、
「ええ お母さん 僕のお客さんでもあるんですよ~」
「あら ヒカルさん そうなの?」
「お待たせ致しました。どうぞご案内いたします」
波彦は着物を着た若い仲居さんに 案内されて 何やらお茶の間風居間を突っ切った。
な、何このファミリー感 嘘だろ~
ジロジロ見るわけにはいかないが、男が3人 女が2人 確か赤ちゃんもいた‥
もう‥帰りたいっ、、、
それでも、通された部屋は さすがに三方が天井まで届く書棚でぎっしりと本やファイルが積み重ねられていた。
重厚感ある大きな木の机。足元はペルシャ絨毯敷で、傍に対面式のソファが設えてあった。
出迎えてくれた人は歳の頃なら80ちかそうな ずんぐりした白髪のおじいちゃんだった。
「まぁ そこにお座りください。私こういう経歴の者です」
名刺を手渡され、ソファに腰掛けろと促されそれに従う。
「ご存知とは思いますが、ご相談30分毎に5000円の相談料が発生します。宜しいですか?」
「あっ、はい」
見かけは何処にでもいる爺さんだが 滑舌はなめらかでよく通る声と明瞭な語り口だった。
波彦は手元の名刺に視線を落とした。
うわぁ 高等検察局部長検事? 検事正‥
すげ~経歴
「あ、あの これ つまらない物ですが お口に合うか‥」
‥手筈どおり千◯屋のメロン(35,000円也)
「それは‥ご丁寧に、おおー コレは上等な… ありがとうございます‥
おーい カヲルさーん お土産頂戴しましたよー」
‥やっぱ‥ ムリ
「失礼致します。粗茶ですが、どうぞ」
音も立てずに入室してきたのは上品な美しいおばあちゃん。
「あらっ まぁ 千◯屋さんのぉ、メロン!」
「お口にあいますか‥」
時間がどんどん過ぎてゆく‥
「はい、息子の大好物でございますの、‥‥少々お待ち下さいませ」
美しいおばあちゃんが退室したので、早速本題と思った矢先、
背の高い イケオジ風の男性が入ってきた。
「いやぁ いらっしゃい、悪いなぁ 高かったでしょ? 岩井も、白井も元気でやってますか?出来の悪い奴らで‥
特に白井 っくぅ気が利かない、融通きかない おまけに ブ…あっ おっと女性の容姿は好みの問題ですな アハハハ
聴かなかった事にしてください。
岩井は、まあ 毎年必ず挨拶状送ってくるんでね 私も何かとね 裏から応援してるんですよ 何せ 2人共ね 人付き合いからっきしでして 貴方にもご迷惑をお掛けしてるかもしれませんね、私があいつらに代わって先に詫びときます。」
で、出来悪い、、、え~っ、ブ…ス
って言いたかった とか
な、何者⁈だ この人
「ダッド! ダーッ ジュンちゃん見ててって言ったのに!すぐ目を離すんだから! 孫の世話も安心してたのめないじゃん! ダダァ‼️」
は、は、 おじいちゃん?
「あ すみません💦 孫を見てろって 娘がね‥ぎゃあぎゃ煩くて、義父さん、こちら僕の、教え子が世話になっているんで、今日の相談料はロハでお願いしますよ 」
‥‥凄っ 怖っ
波彦の相談は一を聴いて十を知るの諺の如く瞬間で終わった。
「今後は私が相手代理人と詰めていくので、大楠さんの所に問い合わせはありません。私の方からは決め事について大楠さんの判断をメールで仰ぐ事にします。そう時間もかからないでしょう」
「ありがとうございます、あの料金は?」
「あー ヒカル君もああいってますし、千◯屋のメロンで 先払いと言う事にしましょう」
こっちの弁護士おじいちゃんはまさに好々爺そのものだが
あっちは 関わっちゃダメ系 かも
「それでは、あまりに 先生に申し訳ない」
「いいんですよ 弁護士稼業だってボケ防止でしてるようなものだから‥さあ あまりお引き留しても都内までお帰りが大変だから、」
「ありがとうございました」
「ところで、大楠さん、貴方もう次のお相手いらっしゃるでしょう?」
ええっ!
「あー そう驚かなくても、、、いやぁね、 長年 検察で刑事事件ばかり担当してきたので 秘密を隠し持ってる人、すぐわかるんですな‥」
「ええ!凄い! 私の何で それが?」
「お~ん、ま、勘ですかね、」
こっちも怖っ
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