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二人の距離
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「ねえ 夢ちゃん、最近繭の帰りが遅くない? 部活が忙しいのかしら?」
夕食の準備をしながら母親が読書中の夢に話しかけた。
「さあ そうなんじゃないの?ほらなんとかって美術展に作品出品するらしいから…」
読書の手を止めて心配性の母に姉の様子を話した。
「そうなの? 繭ったら近頃 学校の様子も全く話してくれないし、…部活ならしょうがないわね」
実際はそんな単純ではない事を妹の夢は姉から聴かされていた。
賢明な夢は敢えて両親を心配させたくなかった。
1月のある日。
両親はいきなり繭から内部進学を辞退して湘山工業高校デザイン学科に進学希望を出したと打ち明けるられた。
湘山工業高校 県内でも悪い噂ばかりが耳に聴こえてくる高校だった。
両親は娘に有無を言わさず大反対した。
既に受験申し込みは娘の一存で湘山工業高校に提出されている。
県内有数の進学校である聖女学館と偏差値30台の高校。
受験せずとも合格は目に見えている。
両親は何故 学校から未然に相談の連絡が無かったのか?
疑問に思って担任に連絡を取った。
自由 自立 独立心を建学のモットーとするミッションスクール。
担任は本人の意思を尊重した 何より湘山工業高校の美術教育は素晴らしく毎年芸大生を排出している事、繭の美術の才能を伸ばすには良い学校である事を説明された。
また入学辞退も可能 その場合は内部進学の道も確保しているので心配は要らないと付け加えられた。
受験後に親子で話し合ってはどうかと助言があった。
両親は本人の自主性を尊重する事にした。
「これも 神の思し召しならば 私達が決定する問題ではない。本人の決定を見守って行こうか」
▱▱▱▱▱
4月 双子の姉妹は生まれて初めて離れて
過ごす事になった。
妹の夢は聖女学館高等部進学
姉の繭は湘山工業高校へ進学した。
初登校の日
夢は小高い山の中腹にある県立湘山工業高校の正門に向かって坂道を登っていた。
正門近くになって 学ラン姿の尖った学生
派手な化粧をした女子がたむろしている。
その間を少数派の真面目そうな学生が正門を潜っていく。その一団の後ろにくっついて繭も俯き加減に正門を超えようとした時
「あの、後ろの一年さ 聖女から来たんだってぇ」
女子の甲高い声。
登校中の生徒 たむろしていた生徒達の視線が一斉に繭に注がれた。
繭は知らぬふりを通して正門へ進むが
「ちょっと シカトぉー? 度胸あるじゃん」
女子の絡んでくる声
繭は一瞬 身震いするほど萎縮し身体が縮こまる。
「お嬢さまー ちょっと俺達の懺悔聴いてよー」
男子生徒がからかう。
回りの生徒は繭を見捨てて校内に入っていき
校門で立っていた生徒指導の教師も
「おい、お前達予鈴がなるぞ さっさと入れっ!」と連中に注意はするが繭を救う気は無い。
生徒達は教師の注意など聴くに及ばずの態度で繭へのからかいはエスカレートしそうな
様子を見学していた三年生が、ヒョイっと現れた。
「と、飛島さんっ」
たむろしていた男女がガタイの大きな三年生をそう呼んだ。
「お前ら 相変わらず暇食いつぶしてんなぁ
女の子からかってる暇あるなら 働け!バイトしろっ 馬鹿どもがっ!」
飛島と呼ばれた三年生は、
「まーゆちゃん 柊ちゃん今日サボりだから
さぁ すぐ教室行きな 授業終わるころ見計らって迎えに行くって、伝言」
「こらー 飛島ぁー早く入れぇ!」
5分前の予鈴が当たりの林間に響き渡る。
▱▱▱
あの八幡画材の絵画教室の日以来
繭は八幡画材二階のアトリエに日参するようになっていた。
創作も部活でする事は無く、二階アトリエで教室の生徒(ほとんどシニア)に混じって
筆を取っていた。
繭の気になっている 町田柊士は 予兆なく突然現れて 巨大なキャンバスに向かって絵の具を塗り重ねていく。
柊士に遭遇した日は繭も筆が進む。
ある日の午後
学校帰りに立ち寄って二階の階段を駆け上がると 町田柊士が床の上に寝転がって天井を凝視していた。
足音で繭に視線を向けた町田柊士は
「おチビさん、 今日はどうした?」
滅多に出会うことのない町田柊士から気安く声をかけられた。
「ちょっと、気になって…描きたそうかなって…」
少し照れながら繭が答えた。
「よしっ ちょっと見せてみろっ」
町田は俊敏な身のこなしで飛び上がるように立ち上がって 繭の作品がどれか 見繕いだした。
「あ、 あのぉ ソレ」
繭の指し示す指の先に
イーゼルに乗った6号キャンパスボードがあった。
「ふーん 」
長身の町田は精一杯腰を曲げ 繭の絵をあらゆる角度から観察した。
繭の心臓の鼓動が早くなり 緊張と恥ずかしさで呼吸すら浅くなる。
「 なかなかいいねぇ~ だけど致命的な欠点みーつけっ!」
「は、はい、お願いします。ご指導ください」
ここにきて 両親から教育された敬語が飛び出して、
町田は クククっと笑い声を噛み殺した。
繭は至って真剣な眼差しで彼を見る。
沈黙のあと
「デッサン不足! それにつきる。絵の具はまだ早すぎ もしもっと上手く描きたいなら
今から半年はひたすらデッサン!」
繭のせっかちな気性は見抜かれていた。
▱▱▱
それからの二人は
時々会って デッサンの評価と手解きを柊士から受けるようになった。
夕食の準備をしながら母親が読書中の夢に話しかけた。
「さあ そうなんじゃないの?ほらなんとかって美術展に作品出品するらしいから…」
読書の手を止めて心配性の母に姉の様子を話した。
「そうなの? 繭ったら近頃 学校の様子も全く話してくれないし、…部活ならしょうがないわね」
実際はそんな単純ではない事を妹の夢は姉から聴かされていた。
賢明な夢は敢えて両親を心配させたくなかった。
1月のある日。
両親はいきなり繭から内部進学を辞退して湘山工業高校デザイン学科に進学希望を出したと打ち明けるられた。
湘山工業高校 県内でも悪い噂ばかりが耳に聴こえてくる高校だった。
両親は娘に有無を言わさず大反対した。
既に受験申し込みは娘の一存で湘山工業高校に提出されている。
県内有数の進学校である聖女学館と偏差値30台の高校。
受験せずとも合格は目に見えている。
両親は何故 学校から未然に相談の連絡が無かったのか?
疑問に思って担任に連絡を取った。
自由 自立 独立心を建学のモットーとするミッションスクール。
担任は本人の意思を尊重した 何より湘山工業高校の美術教育は素晴らしく毎年芸大生を排出している事、繭の美術の才能を伸ばすには良い学校である事を説明された。
また入学辞退も可能 その場合は内部進学の道も確保しているので心配は要らないと付け加えられた。
受験後に親子で話し合ってはどうかと助言があった。
両親は本人の自主性を尊重する事にした。
「これも 神の思し召しならば 私達が決定する問題ではない。本人の決定を見守って行こうか」
▱▱▱▱▱
4月 双子の姉妹は生まれて初めて離れて
過ごす事になった。
妹の夢は聖女学館高等部進学
姉の繭は湘山工業高校へ進学した。
初登校の日
夢は小高い山の中腹にある県立湘山工業高校の正門に向かって坂道を登っていた。
正門近くになって 学ラン姿の尖った学生
派手な化粧をした女子がたむろしている。
その間を少数派の真面目そうな学生が正門を潜っていく。その一団の後ろにくっついて繭も俯き加減に正門を超えようとした時
「あの、後ろの一年さ 聖女から来たんだってぇ」
女子の甲高い声。
登校中の生徒 たむろしていた生徒達の視線が一斉に繭に注がれた。
繭は知らぬふりを通して正門へ進むが
「ちょっと シカトぉー? 度胸あるじゃん」
女子の絡んでくる声
繭は一瞬 身震いするほど萎縮し身体が縮こまる。
「お嬢さまー ちょっと俺達の懺悔聴いてよー」
男子生徒がからかう。
回りの生徒は繭を見捨てて校内に入っていき
校門で立っていた生徒指導の教師も
「おい、お前達予鈴がなるぞ さっさと入れっ!」と連中に注意はするが繭を救う気は無い。
生徒達は教師の注意など聴くに及ばずの態度で繭へのからかいはエスカレートしそうな
様子を見学していた三年生が、ヒョイっと現れた。
「と、飛島さんっ」
たむろしていた男女がガタイの大きな三年生をそう呼んだ。
「お前ら 相変わらず暇食いつぶしてんなぁ
女の子からかってる暇あるなら 働け!バイトしろっ 馬鹿どもがっ!」
飛島と呼ばれた三年生は、
「まーゆちゃん 柊ちゃん今日サボりだから
さぁ すぐ教室行きな 授業終わるころ見計らって迎えに行くって、伝言」
「こらー 飛島ぁー早く入れぇ!」
5分前の予鈴が当たりの林間に響き渡る。
▱▱▱
あの八幡画材の絵画教室の日以来
繭は八幡画材二階のアトリエに日参するようになっていた。
創作も部活でする事は無く、二階アトリエで教室の生徒(ほとんどシニア)に混じって
筆を取っていた。
繭の気になっている 町田柊士は 予兆なく突然現れて 巨大なキャンバスに向かって絵の具を塗り重ねていく。
柊士に遭遇した日は繭も筆が進む。
ある日の午後
学校帰りに立ち寄って二階の階段を駆け上がると 町田柊士が床の上に寝転がって天井を凝視していた。
足音で繭に視線を向けた町田柊士は
「おチビさん、 今日はどうした?」
滅多に出会うことのない町田柊士から気安く声をかけられた。
「ちょっと、気になって…描きたそうかなって…」
少し照れながら繭が答えた。
「よしっ ちょっと見せてみろっ」
町田は俊敏な身のこなしで飛び上がるように立ち上がって 繭の作品がどれか 見繕いだした。
「あ、 あのぉ ソレ」
繭の指し示す指の先に
イーゼルに乗った6号キャンパスボードがあった。
「ふーん 」
長身の町田は精一杯腰を曲げ 繭の絵をあらゆる角度から観察した。
繭の心臓の鼓動が早くなり 緊張と恥ずかしさで呼吸すら浅くなる。
「 なかなかいいねぇ~ だけど致命的な欠点みーつけっ!」
「は、はい、お願いします。ご指導ください」
ここにきて 両親から教育された敬語が飛び出して、
町田は クククっと笑い声を噛み殺した。
繭は至って真剣な眼差しで彼を見る。
沈黙のあと
「デッサン不足! それにつきる。絵の具はまだ早すぎ もしもっと上手く描きたいなら
今から半年はひたすらデッサン!」
繭のせっかちな気性は見抜かれていた。
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時々会って デッサンの評価と手解きを柊士から受けるようになった。
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