チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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二章 冒険者の少女

カナ対ディン

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 ディンさんに向かって走り出した私は一気にその距離を縮めていく。
 こんな凄腕の冒険者相手にどう戦えばいいかなんて全く検討もつかない。

 でも、ただ突っ立って相手の出方を窺うのは多分得策じゃない……。

 なら、ここは攻めるしか無い……っ!

「はっ!」

 ディンさんに向けて木剣を振り下ろす……が、涼しい顔をしていとも容易く避けられる。

「やっ!」

 木剣を振り下ろした勢いをそのままに体を横に回転させて薙ぎ払いを放つも、これもあっさりと距離を取られ避けられる。

 ならこれで……!

「はあっ!」

 ならばと突きを繰り出すも、横に避けられた。
 予想はしていたけど、全然当たらない……。

 私の攻撃を木剣で防ぐくらいはするのかと思ったけど、それすらして来ない。

「く……!」

 どう攻めればいいのか分からない……。
 どこをどう攻撃しても間違いなく避けられる……。

 少し攻撃しただけで私とディンさんとの実力差は想像よりも大きいことを痛感させられる。

「なかなかいい連続攻撃だな、だがもう終わりか?なら今度は俺から行かせてもらうぜっ!」

 今度はディンさんが木剣を振り下ろす!
 しかし、その剣筋が早すぎて見えない……!

「うぁ……っ!?」

 ディンさんの木剣が私の左の鎖骨のあたりを直撃し、当たった所が鉄の胸当てを着ている箇所とは言え、かなりの衝撃と痛みが身体を走る!

 木剣が胸当ての金属部分に当たったからまだいいけど、もし胸当てが無ければ一撃で骨が折れていただろう……。

「く……っ!」

 木剣が当たった所を右手で抑え、左手で木剣を構える。

「ほう、一撃で倒れなかったのは褒めてやるぜ。俺に一撃でも当てられたらカナの勝ちでいいぜ」

 当てられたらって言うけど……、当てられそうな気が全くしない。

「どうした……?来ないのか?ならまた行くぜっ!」

 今度は木剣を横に振り払ってくる!
 防御……?いや、回避……っ!だめ……!間に合わない……っ!

「ぐあ……っ!!」

 今度は木剣が私の右腕に直撃し、腕から鈍い音が聞こえ激痛が走る……!

 どうやら右腕が折れてしまったようだ……!

「おいおい……!今の骨折れただろ……っ!?ディンもう少し手加減してやれよ……っ!?カナちゃんも無理せずに今日はこれで止めておいたほうがいいんじゃないのか……っ!?」

「アルトさん……、私はまだやれます……!それに……、無茶でもしないと強くなれませんよね……?」

 アルトさんの言葉に冷や汗を流しながら精一杯の強がりで返すと、折れた自分の右腕に治癒魔法ヒールをかける。

 折れた骨が治ったかどうかは分からないけど、少なくとも激痛は引いた。

「ま、カナの言うことはもっともだな。ならまだ行くぜっ!」

 ディンさんは私の強がりにニヤリと笑みを浮かべると走り出し、突きを繰り出してきた。

 避ける……っ!?どこに……!後ろ……?いや横に……っ!

「遅いっ!」

「かは……っ!?」

 ディンさんの木剣の突きが私の胸に突き刺さる!

 鉄の胸当てを着ていたからダメージは軽減こそされたが、突きの衝撃で後へと突き飛ばされ、地面を転がり仰向けの体勢で倒れた。

「う……うぅ……!」

 痛む身体に鞭打ちながらどうにか身体を起こすといつの間にか私のすぐ前にディンさんが立っていた。

「お前は反応速度が遅い。そして、判断も遅い。判断が遅いからなおさら反応も遅くなる。変に頭で考えず、瞬時に判断するんだ。まだ続けるのなら立ってみせろ。それとも、今日はもうおしまいにするか……?」

「いえ……、まだです……!まだやれます……っ!」

 どうにか立ち上がると、木剣を上に構えてディンさんへと斬り掛かった。

 しかし……。

「ボディががら空きだっ!それでは腹を斬ってくれと言っているものだっ!!」

「ぐは……っ!?」

 ディンさんの木剣が私のお腹を直撃する。

 剣身による斬り払いなので突きよりはマシだけどそれでも防具がない部分なのでかなりの痛みを感じる。

 私は痛みに悶絶しながらお腹を手で押さえていた。

「なぜ攻撃が当たらないのか教えてやろう。それは、カナの攻撃が遅いからだ。攻撃が遅ければ相手にすぐ避けられてしまう。そして、無駄に大振りだ」

「くぅ……、なら……!はあっ!」

 スピードが遅いというならこれなら……!

 私は立ち上がるとディンさんへと飛びかかったっ!これなら落下速度も加わって少しは早くなるはず……っ!

「甘い!」

「がは……っ!」

 しかし、いとも簡単に避けられ、逆に胸当ての背中部分に攻撃を受ける。

 そして、その衝撃で前に倒れ込むように地面へと叩きつけられた。

「考え方は悪くはない……が、大振りな攻撃は隙を生むだけだ。それに飛び込み斬りはスピードは早くはなるが、剣筋が読まれやすい」

「はあ……!はあ……っ!」

「どうした?もうおしまいか?無理なら今日はこれで終わりにするが……?」

 防具越しに木剣で叩きつけられた背中の所がズキズキと痛む……。

 正直に言うともう終わりにしたい。
 体中が悲鳴を上げているためこのまま倒れてゆっくりと休みたい……。

 しかし、私の負けず嫌いな性格がそれを許してはくれなかった。

 木剣を握る手に力を込める……。
 今なら隙ができている……!チャンスは……今だっ!

「まだまだ……っ!はあ……っ!!」

 残り僅かな力で体を起こし、身体を捻りながら木剣を薙ぎ払った。

「……っと!今のは危なかったぜ……!」

 私の放った攻撃はディンさんには当たらなかったが、初めて防御させることは出来た。

「はあ……!はあ……!はあ……っ!初めて……防御させられた……!」

「ああ、中々良い攻撃だ。相手の不意や隙を付くのは重要だ。だが、残念ながら俺には当たらなかったな……」

「すぐに……当ててみせますよ……っ!」

 もう気力しか残っていない……。
 立っているのもやっとな筈なのに力が湧いてくる。

「はあぁぁぁぁーーーーっ!」

 渾身の力を込めてディンさんへと剣を振るった。

「はっ!」

 しかし、私の木剣はディンさんの剣によって呆気なく弾き飛ばされてしまった。

「ぐ……あ……っ!」

 そして、私はディンさんに鳩尾へ木剣の柄での当身を受け、気を失った……。


 ◆◆◆


「ん……んぅぅ……。」

 あれから何時間経ったろう……、気がつけば冒険者ギルドの私が借りている部屋のベッドの上で寝かされていた。

 そして、傷もセーラさんが癒やしてくれたのか、回復していた。

 負けた……。

 実力差から考えれば当然の結果なのだが、目から涙が滲んでくる。
 悔しかった……。 

 勝てないと分かっていても、まぐれでもいいから一回は当てたかった……っ!

「私は……、ディンさんに勝ちたい……!」

 私は闘志を燃やしながら明日へと備えるのだった……。
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