罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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亜希の章 ツンデレな同居人

開幕!迷路型おばけ屋敷

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 学園祭当日……開催前の熱気に包まれていた2年B組の教室の中心で、高藤はクラスメイトたちに特殊メイクを施すと高笑いを上げていた。

「ふはははは……!どうだ見よ!これが俺の特殊メイク術だっ!」

 いつも見慣れたクラスの人たちの顔が吸血鬼、ゾンビ、和風な幽霊、ミイラ男にさらにはまるで美術館の展示物かと思うほど、無機質で不気味な“マネキン顔”にされた人までいた。

「ちょ……!これが俺かよ……っ!」

「きゃーーーっ!ちょっと瀬玲奈……!あんたその顔でいきなり現れないでよ……っ!?」

 その特殊メイクにお化けとなった自分の顔をみた人や友達の顔を見て悲鳴を上げる人が何人もいた。

 かくゆう僕も吸血鬼にされ、亜希はなぜかミイラ女……。
 体操服の上から包帯をグルグルにまかれ、その下には青白くメイクを施された亜希の顔が見える。

 何ていうか……夜中にこの格好で亜希が現れたらマジでビビる……。

「彼方……、吸血鬼だからって私に噛みつかないでよ……?」

「そ……そう言う亜希こそその格好でいきなり現れたら僕失神するよ……っ!?」

 でも吸血鬼だから亜希に噛み付く……か……。
 僕は思わず亜希のうなじへと目をやるとゴクリと喉を鳴らす……。

(……いやいやいや、何考えてるんだ僕はっ!)  

 顔が熱くなるのを感じて、慌てて視線を逸らした。

「……確かにこのメイクの完成度はすごい。それで、高藤くんは何をするの?」

「ふふふ……、俺か?俺は……外で客引きでもしてくるさ、さらばだっ!」

 口裂け女となっている柊さんが高藤へと問うと奴は煙玉のようなものを使うと文字通り姿を消した!

「……高藤くんが逃げた」

 いや、柊さん!そんな呑気なこと言ってる場合じゃないから……っ!

 それにしても高藤のやつ……やることだけやって逃げるなんて……っ!

「と……兎に角みんな配置について!学園祭が始まるわよ……!」

 亜希の声でみんな配置へと着くといよいよ学園祭が始まった。


 教室の中は、もうすっかり“異世界”だった。  
 ベニヤ板で作られた迷路の壁には、血の手形や不気味な絵が描かれ、窓をふさぐ暗幕がゆらゆらと揺れ、教室全体がまるで異世界に飲み込まれたようだった。

 おまけにオドロオドロしいBGMが流れ、トドメと言わんばかりにドライアイスの煙が床を覆う。

 これが本当に学園祭レベルなのかと思わなくもないがこれも全ては高藤のアイデアによるもの。
 当の本人は得体のしれない奴なのだけど、こういうところは凄いやつだと思わなくもない。

 ……しかし、その本人は脱走しているわけだけど。

「それにしても、本当になんか物々しい雰囲気ね……」

「そ……そうだね……」

 亜希の言葉に僕は彼女から目を逸らしながら答える……。

「……なんで彼方は私から目を逸らすわけ?」

 亜希はジト目で僕を睨むけど、それは単純に高藤の施した特殊メイクが怖いから……。

 僕は亜希と共に迷路の真ん中あたりにある行き止まりでお客さんが来るのを待ち構えていた。
 何でも同じ西洋妖怪として行き止まりに配置されている棺で待機している。

 高藤の案では迷路の行き止まりに僕たちお化けが潜み、間違って入ってきた人を驚かせる……そう言う設定らしい。
 勿論正解の道を辿ればお化けとは出くわさずに普通にゴール出来る。

 僕としては折角驚かす側としているのだから誰か来て欲しいような気もするし、亜希と二人っきりになれているこの空間を邪魔されたくないので誰も来てほしくないような気もする……。

『それでは、これより青葉ケ丘学園による学園祭を開始しますっ!』

「お客さん入りまーす!」

 そしてスピーカーから聞こえてくる学園祭の開始を知らせるアナウンスとともに早速誰かが僕たちの出し物へと入ってきたようだ。

 しかし……。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー……っ!!」

「う……うわぁぁぁぁぁぁーーーーーー……っ!?」

「お……お助けーーーーー……っ!!」

 始まってすぐに多くの人の悲鳴が聞こえてくる……!

 確か……最初に待ち構えているのは柊さんの口裂け女だったかな……?

 この薄暗い室内で柊さんが「私ってきれい……?これでも……?」なんていいながら迫ってきたら確かに怖いような気がする……。

 そしてそのうち誰かがここに来るかもしれない……そんな緊張感に包まれながら僕は棺へと隠れて息を潜めた……。
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