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亜希の章 ツンデレな同居人
怪談と恋バナと……
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食事を済ませたあと、部屋へと戻ってきた僕たちはなぜか高藤の提案で怪談話をすることとなった……。
「これはな……俺の親戚が瀬山市の離島に住んでて、そいつから聞いた話なんだが……」
高藤はそう切り出すと真剣な眼差しで語り始める……。
ある夜、修学旅行で泊まった海沿いの民宿。
夜中になると、海から“潮鳴り”のような音が聞こえてくる。
それは波の音じゃない。まるで誰かが、海の底から這い上がってくるような、ぐぅ……ぐぅ……という低い音……。
そして、午前2時ちょうどになると、廊下に足音が響く……でもそれは、三つの足音なんだ。
トン……トン……ズズ……。
まるで、片足を引きずっているような音。
その音が部屋の前で止まると、扉の隙間から海水がじわじわと染み出してくる。
そして、誰かが囁くんだ。
「……三人目は、まだか……?」
その部屋に泊まっていたのは、三人組の男子……。
翌朝、真ん中に寝ていたやつだけが、布団の中でびしょ濡れになっていた。
しかも、足首には海藻が巻きついていた……。
翌晩、同じ民宿に泊まった別の三人組。
前日の話を聞いていた彼らは、怖がりながらも「どうせ作り話だろ」と笑っていた。
でも——午前2時。
また、あの音が聞こえてきた。
トン……トン……ズズ……。
足音は、確かに三つ。
そして、部屋の前で止まると、扉の隙間から海水がじわじわと染み出してきた。
そのとき、部屋の電気が一瞬だけ消えた。
真っ暗な中で、誰かが囁いた。
「……三人目は、もう来た」
電気が戻ったとき、真ん中に寝ていた男子は——いなかった。
布団は濡れていて、足元には海藻が絡まっていた。
でも、彼の姿はどこにもなかった。
警察が捜索したが、見つかったのは民宿のすぐ裏にある岩場で打ち上げられていた制服の上着だけだった。
そして、そのポケットには——
“潮鳴りの夜、三人目は選ばれる”と書かれた紙切れが入っていたんだ。
高藤は語り終えると、ニヤリと笑って僕たちを見渡した。
「で、今夜この部屋に泊まってるのは……俺、真壁、御堂の三人だな」
「おい、やめろよ高藤……!」
「ふふふ……真ん中に寝るのは誰だ?」
僕と悠人は思わず顔を見合わせる。
「ぼ……僕、端っこがいい……!」
「いや、俺も端がいい……!」
「ははは……!冗談だ、真ん中も何もベッドが両端に置かれているから真ん中はない。だが……一人だけ二段ベッドを使うことになるわけだが……どうする……?」
「ちょ……待って高藤……!」
「お……俺はこっちのベッドをもらうからな……!」
「あ……!ズルい……!」
悠人はそれだけを言い残すと高藤と共に左手側のベッドを早々に占拠する……。
結局右側の二段ベッドを一人で使う羽目になった僕は高藤の会談が怖くて中々寝れなかったのだった……。
~サイドストーリー~
──亜希──
夕食を終えて部屋に戻った私と柊さんと瀬玲奈の三人は、ベッドや座布団に適当に腰を下ろしながら恋バナに花を咲かせていた。
「ねえ、みおっちは好きな男子とかいないの?」
「……今はいない」
瀬玲奈に話を振られた柊さんはグレーのブックカバーの本を読みながら、ページをめくる手も止めずに答えた。
「"今は"って事は前はいた感じ?」
「……秘密。そう言う早乙女さんはどうなの?」
柊さんはなぜか私へと目をやったかと思うと、瀬玲奈へと話を振る。
「ウチも特にはいないかなぁ~……、強いて言えば御堂君はいいなとはおもうけどねぇ~……」
「な……!だ……、だめ……!彼方は私のなの……!」
「あはははは……!わかってるって、それで……亜希は実際御堂君とはどこまで進んでる感じ……?」
「それはわたしも気になる……」
瀬玲奈がニヤニヤしながら詰め寄ってくると、柊さんも本を閉じて無言で近づいてくる……。
私は座ったまま、じりじりと後ずさるしかなかった。
「い……いいでしょ別に……!」
私は座りながら後ずさるも二人はジリジリと迫ってきていた。
「この中で彼氏がいるのは亜希だけだからね……」
「わたしも気になる……。キスは……済ませてた。写真に残ってる……」
柊さんはそう言うとデジカメを操作し、水族館のイルカの水槽の前で彼方キスをしている写真を見てさせてくる。
「一体いつの間に撮ってたのよ……!」
「記録は大事……」
「みおっち、ナ~イス!さて、問題はこの後……亜希は御堂君とのアレはもう済ませたのかなぁ~……?」
瀬玲奈がニヤニヤとしながら私に顔を近付ける。
「な……何よアレって……」
「男女の間でアレと言えば一つしかない……。頭に“セ”がつく、あの四文字……2番目には小さい"ッ"も入る……」
柊さんは指を四本立てて私の方へと向けてくる。
「そゆこと~!さあ、消灯までまだ時間あるし?洗いざらい話してもらおうか、亜希♪」
「え……いや……いやぁぁぁぁぁーーー……!」
この後私は二人によって彼方との関係を洗いざらい白状させられたのだった……。
「これはな……俺の親戚が瀬山市の離島に住んでて、そいつから聞いた話なんだが……」
高藤はそう切り出すと真剣な眼差しで語り始める……。
ある夜、修学旅行で泊まった海沿いの民宿。
夜中になると、海から“潮鳴り”のような音が聞こえてくる。
それは波の音じゃない。まるで誰かが、海の底から這い上がってくるような、ぐぅ……ぐぅ……という低い音……。
そして、午前2時ちょうどになると、廊下に足音が響く……でもそれは、三つの足音なんだ。
トン……トン……ズズ……。
まるで、片足を引きずっているような音。
その音が部屋の前で止まると、扉の隙間から海水がじわじわと染み出してくる。
そして、誰かが囁くんだ。
「……三人目は、まだか……?」
その部屋に泊まっていたのは、三人組の男子……。
翌朝、真ん中に寝ていたやつだけが、布団の中でびしょ濡れになっていた。
しかも、足首には海藻が巻きついていた……。
翌晩、同じ民宿に泊まった別の三人組。
前日の話を聞いていた彼らは、怖がりながらも「どうせ作り話だろ」と笑っていた。
でも——午前2時。
また、あの音が聞こえてきた。
トン……トン……ズズ……。
足音は、確かに三つ。
そして、部屋の前で止まると、扉の隙間から海水がじわじわと染み出してきた。
そのとき、部屋の電気が一瞬だけ消えた。
真っ暗な中で、誰かが囁いた。
「……三人目は、もう来た」
電気が戻ったとき、真ん中に寝ていた男子は——いなかった。
布団は濡れていて、足元には海藻が絡まっていた。
でも、彼の姿はどこにもなかった。
警察が捜索したが、見つかったのは民宿のすぐ裏にある岩場で打ち上げられていた制服の上着だけだった。
そして、そのポケットには——
“潮鳴りの夜、三人目は選ばれる”と書かれた紙切れが入っていたんだ。
高藤は語り終えると、ニヤリと笑って僕たちを見渡した。
「で、今夜この部屋に泊まってるのは……俺、真壁、御堂の三人だな」
「おい、やめろよ高藤……!」
「ふふふ……真ん中に寝るのは誰だ?」
僕と悠人は思わず顔を見合わせる。
「ぼ……僕、端っこがいい……!」
「いや、俺も端がいい……!」
「ははは……!冗談だ、真ん中も何もベッドが両端に置かれているから真ん中はない。だが……一人だけ二段ベッドを使うことになるわけだが……どうする……?」
「ちょ……待って高藤……!」
「お……俺はこっちのベッドをもらうからな……!」
「あ……!ズルい……!」
悠人はそれだけを言い残すと高藤と共に左手側のベッドを早々に占拠する……。
結局右側の二段ベッドを一人で使う羽目になった僕は高藤の会談が怖くて中々寝れなかったのだった……。
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夕食を終えて部屋に戻った私と柊さんと瀬玲奈の三人は、ベッドや座布団に適当に腰を下ろしながら恋バナに花を咲かせていた。
「ねえ、みおっちは好きな男子とかいないの?」
「……今はいない」
瀬玲奈に話を振られた柊さんはグレーのブックカバーの本を読みながら、ページをめくる手も止めずに答えた。
「"今は"って事は前はいた感じ?」
「……秘密。そう言う早乙女さんはどうなの?」
柊さんはなぜか私へと目をやったかと思うと、瀬玲奈へと話を振る。
「ウチも特にはいないかなぁ~……、強いて言えば御堂君はいいなとはおもうけどねぇ~……」
「な……!だ……、だめ……!彼方は私のなの……!」
「あはははは……!わかってるって、それで……亜希は実際御堂君とはどこまで進んでる感じ……?」
「それはわたしも気になる……」
瀬玲奈がニヤニヤしながら詰め寄ってくると、柊さんも本を閉じて無言で近づいてくる……。
私は座ったまま、じりじりと後ずさるしかなかった。
「い……いいでしょ別に……!」
私は座りながら後ずさるも二人はジリジリと迫ってきていた。
「この中で彼氏がいるのは亜希だけだからね……」
「わたしも気になる……。キスは……済ませてた。写真に残ってる……」
柊さんはそう言うとデジカメを操作し、水族館のイルカの水槽の前で彼方キスをしている写真を見てさせてくる。
「一体いつの間に撮ってたのよ……!」
「記録は大事……」
「みおっち、ナ~イス!さて、問題はこの後……亜希は御堂君とのアレはもう済ませたのかなぁ~……?」
瀬玲奈がニヤニヤとしながら私に顔を近付ける。
「な……何よアレって……」
「男女の間でアレと言えば一つしかない……。頭に“セ”がつく、あの四文字……2番目には小さい"ッ"も入る……」
柊さんは指を四本立てて私の方へと向けてくる。
「そゆこと~!さあ、消灯までまだ時間あるし?洗いざらい話してもらおうか、亜希♪」
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