罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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亜希の章 ツンデレな同居人

寝不足の代償は恋の証……?

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 ──亜希──


 修学旅行二日目。  
 私たちはバスに揺られながら、青の洞窟へ向かっていた。

 窓の外には青い海が広がっていて、風が心地よく吹き抜ける。

 この日は自由行動となっており、私たちの班は青の洞窟へとスキューバ体験をすべく船が出る港へと向かっていた。

 しかし、彼方は隣の席で、ぼんやりと窓の外を眺めながらなぜか眠そうに目をこすっていた。

「彼方……眠そうだけどどうしたの……?」

「うん……昨日高藤の怪談のせいで眠れなくて……ふあ……」

 私の問いに彼方は答えると本当に眠そうに欠伸をしていた。

「ねえ、もしよかったら私にもたれかかって少し寝る……?」

「うん……ありがとう……」

 私は自分の肩を指さすと彼方はなぜか肩ではなく私の太ももへとポスンと頭を置く。

「え……?ちょ……!」

 私はすぐに彼方を起こそうとするも、もう寝てしまったのか、寝息を立てている彼方に私は諦めるとそのまま彼の寝顔を見つめる。

 私はそっと彼方の頭を撫でていると後ろの席から視線を感じた。

「膝枕……」

 私は後ろを振り向くとそこには瀬玲奈と柊さんの姿があった  

「お~っと、これは彼氏の特権ですね~♪今の感想はどうですか?彼女の亜希さん?」

「ちょ……!見ないでよ!」

 瀬玲奈のからかうような声に私は顔を真っ赤にしながら、彼方の寝顔を守るように視線をそらした。

「御堂君寝てるの……?」

「うん、昨日高藤の怪談話で寝れなかったみたいで……」

 デジカメで私と彼方の写真を撮りながら問う柊さんに私は答えた。

 もうデジカメの事でツッコむのも疲れたわ……。

「亜希の太もも、ゲットだぜ~!」

 瀬玲奈は彼方の言葉を代弁するかのようにニヤニヤと笑みを浮かべると、まるで実況のようにスマホを構えた。

「ちょっと!撮らないでよ!」

「いや~これは記録に残すべきでしょ?青春の一ページってやつ!」

「……記録は大事」

 柊さんは無表情のまま、シャッターを切った。

 私は顔を真っ赤にしながら、彼方の寝顔を守るように手を添える。
 彼方は、そんな騒ぎの中でもまったく起きる気配がない。

「……無防備すぎるでしょ」

 私は小声で呟く。  
 でも、彼方の寝顔は本当に穏やかで、なんだか見ているだけで心が落ち着く。

「ねえ亜希、御堂君の寝顔って……ちょっと可愛いよね?」

「……う、うん……まあ……」。

 バスはゆっくりと港へ向かって進んでいく。  
 窓の外には、青い海と白い雲。  
 そして、私の膝の上には彼方……。

「ふふっ、素直になった~」

 瀬玲奈が笑うと、柊さんも「……いい雰囲気」とぽつりと呟いたの寝息と、少しだけ重たいぬくもり。

 ……この時間が、ずっと続けばいいのに。

 そんなことを思ってしまうくらい、私は今、幸せだった。

 ……と、その時彼方は体を動かすと私の脚の付け根へと頭を置いていた。

「――っ!?」

 私は突然のことで声にならない声をあげる……!

「おぉ~……、御堂君、亜希のデルタゾーンがいいんだって♪」

「……御堂君大胆」

 その様子に瀬玲奈はニヤニヤとした笑みを浮かべ、柊さんに至ってはいつの間にかスマホに持ち替え動画を撮っていた。

「そう言う柊さんは何してるのよ……!」

「……記録は大事」

 ……あっそ。

 もう呆れてものも言えない……。

 と、その時彼方が頭をもぞもぞと動かすと私は思わず体をピクっと跳ねる。

「ん……!」

 私は思わず声を漏らすと、彼方はまるで頭の定位置を確かめるかのようにもぞもぞと動くと私の付け根にぴたりと頭を落ち着けた。

「ちょ……!そこはダメ……!」

 私は慌てて彼方の肩を押そうとするも、彼は完全に夢の中らしく、ふにゃりとした寝息を漏らすだけだった。

「……御堂君、完全に“ここが定位置”って認識してるね」

 瀬玲奈がニヤニヤしながら実況を続ける。

「さっきの風原さんの声、色っぽかった……。なんならスキューバで二人きりにさせてあげようか……?」

 柊さんが静かに言ったその一言に、私は思わず吹き出しそうになる。

「いやいやいや……!柊さんまで何言ってるのよ!」

「大丈夫、そこは記録しない……」

「な……何言ってるのよ……!」

 もうツッコミが追いつかない。  
 でも、彼方の寝顔はあまりにも穏やかで、怒る気にもなれなかった。

 彼方の髪に指先が触れるたび、くすぐったいような、くすぐられるような気持ちになる。  
 バスの揺れが心地よくて、彼方の体温がじんわりと伝わってくる。

 ……こんなふうに、彼方が私に甘えてくれるのって、なんだか嬉しい。


「……港、もうすぐだよ」

 バスがホテルを出発したから1時間ほど経った頃、柊さんが窓の外を見ながらぽつりと呟いた。

 私は彼方の肩をそっと揺らす。

「彼方……起きて。もうすぐ着くよ」

「ん……うん……」

 彼方はゆっくりと目を開けると、ぼんやりとした目であたりを見回したかと思うと再び私の脚の付け根で眠りへと落ちる……。

「え……?ちょっと……!彼方……っ!?」

 彼方は再び規則正しい寝息を立て始め夢の世界へと行ってしまう……。

「……風原さんの膝枕に御堂君は抗えない」

「彼女の特権ってやつ?」

 私は2人からの冷やかしを受けながら彼方の肩を揺すって起こそうとするも一向に起きない……!

「ちょ……!彼方……起きて……起きてってば……!」

「亜希……好き……」

「んな……っ!?」

 彼方の寝言に、私の顔は一気に熱くなる。

「ふふふ~、青春ですねぇ~♪」

 瀬玲奈が後で茶化すように言うと、「……今のは撮り損ねた。御堂君、もう一回言って」と柊さんはスマホを構えながら、さらっと無茶振りを放つ。

「ちょっと!彼方!起きて!起きてよ……!」

「亜希……愛してるよ……むにゃ……」

 私は必死になって彼方を起こそうとするも、何を勘違いしたのか彼方は寝言でとんでもないことを言い出した!

「……御堂君ナイス、今のは動画に撮れた」

「ちょっと!消してってば!」

「……検討する」

 ……絶対消さない気でしょ、それ!

 結局、彼方が起きたのは私が瀬玲奈と柊さんに、散々冷やかされたあとだった。  
 でも、彼方の寝顔があまりにも穏やかで、なんだか許してしまう自分がいた。
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