62 / 187
由奈の章 甘えたがりな義妹
触れられた手とときめく心
しおりを挟む
バターを常温へと戻していると、由奈ちゃんは準備していたラッピングの袋を取り出す。
「じゃあ、焼いてる間にラッピングの準備しよ~っと」
「まだ焼いてもないのに?」
由奈ちゃんの言葉に僕は思わず苦笑する。
「だって、楽しみなんだもん。お兄ちゃんが食べてくれるの、すっごく嬉しいから」
由奈ちゃんは水色の袋を広げて、リボンを選び始める。
その姿が、なんだか……プレゼントを渡す準備をしてるみたいで、ちょっとだけ照れる。
「こほん……、それじゃあ混ぜていくよ」
「うん!お願いしますっ!」
僕はボウルに常温に戻したバターと砂糖をいれると泡だて器で練っていく……。
「いい?バターはクリーム状になるまで混ぜるんだ」
「あたしもやる!」
「いいよ、やってご覧。」
「うん!見ててっ!」
僕は由奈ちゃんにバターの入ったボウルを手渡す。
しかし……。
「いっくよ~!えぇーーいっ!!」
由奈ちゃんは泡だて器で勢いよくバターを混ぜ始めるとボウルから中身が飛び散り始める!
「うわ……っ!?ちょ……!由奈ちゃん……それは……!」
飛び散ったバターが僕の服や顔へと付くとバターにより視界が遮られてしまった……。
「あ……あれ……?お兄ちゃんバターがなくな……きゃあぁぁーーー……!お……お兄ちゃんどうしたの……っ!?」
由奈ちゃんは不思議そうな顔をして空になったボウルを持って僕の方へと振り向くと悲鳴を上げる。
今の僕は顔中にバターがベッタリとついた怪人バター男と化していた……。
「……由奈ちゃん、そんなに勢いよく混ぜなくてもいいんだよ」
「お兄ちゃんごめん……!」
由奈ちゃんがタオルで僕の顔を拭くとようやく前が見えるようになった……。
「ま…、まぁ……顔や服は洗えば落ちるから……」
僕は苦笑して答えると、由奈ちゃんはシュンとして落ち込むと、目には薄っすらと涙が滲んでいた。
「お兄ちゃん、本当にごめんね……。はぁ……なんであたしってこんなにガサツなんだろう……」
「失敗は誰にでもあるよ、次はゆっくりでいいからしっかりと混ぜ込んでいこう」
「あ……、うんっ!」
僕は由奈ちゃんの頭に手を置いて優しく撫でると彼女は沈んだ表情から一転、笑顔を向けてくれた。
やっぱり由奈ちゃんは笑顔が似合うな……。
再び常温に戻し、砂糖を入れたバターを由奈ちゃんはゆっくりと、そしてしっかりと混ぜていく……。
「お……お兄ちゃんこう……?」
「うん、いいよ。その調子。そこから交ぜて空気を含ませながら白っぽくなるまで混ぜるんだ」
「う……うん、分かった……」
由奈かは真剣な表情でバターを混ぜると段段と白っぽく色が変わってくる……。
「お、由奈ちゃんそろそろいいよ。次は卵をいれるよ」
「ねえ、卵はそのまま入れちゃだめなの?」
「卵は溶き卵にして少しづつ入れてしっかり混ぜるよ」
「うん、分かった……」
由奈ちゃんは溶き卵を入れるとしっかりと混ぜ込む……。
「……混ざったね、次は薄力粉を入れてその後またしっかりと混ぜていくよ」
僕はふるいを手に取るとその中に薄力粉を入れ、バターの中に入れていく……。
「お兄ちゃん、なんでそのふるいを使うの?」
「これを使ったほうがダマにならなくていいんだよ」
「へぇ~……」
薄力粉を入れると、僕はゴムベラを手に取り切るように混ぜていく。
「薄力粉を入れたらこうやって切るようにしっかりと混ぜるんだ」
「あたしにもやらせて!」
「うん、やってごらん」
僕はヘラを由奈ちゃんへと手渡す、しかし……。
「あ……あれ……?お兄ちゃん、これ難しいよぉ~……」
「由奈ちゃん、ちょっといい?」
「え……?お兄ちゃん……?」
僕はそっと後ろから由奈ちゃんの手に触れるとしっかりと混ぜていく。
「こう混ぜていくんだ」
「う……うん……」
すると、いつもは元気な由奈ちゃんが少し顔を赤くして、それ以上何も言わなかった。
疲れたのかな……?
「……よし、生地が出来たね。後はこのままラップに包んで1時間ほど休ませるよ」
「すぐに焼くんじゃないの?」
「休ませることも重要なんだよ」
「そっか~……、残念……」
由奈ちゃんは、残念そうな顔をしながら頭の後ろで手を組むとリビングのソファへと向かった。
~サイドストーリー~
──由奈──
あたしはソファへと座って、自分の手をじっと見つめる……。
それはさっきまでお兄ちゃんの手が触れていた場所……。
ただ手が触れていただけ……それだけなのに胸がドキドキする……。
心なしか、お兄ちゃんが触れていたところが熱くなってるような気すら覚え、あたしはその手をそっと包み込むように自分の胸に押し当てると、心の中でお兄ちゃんの名前を呼ぶ……。
(彼方さん……)
さっき手を触れられた時、少し体がビクってしちゃったし、顔を赤くなって黙っちゃってたけど……お兄ちゃんにあたしのドキドキバレちゃったかな……?
バレちゃってたら恥ずかしい…。
でも……バレててくれたら……ちょっとだけ嬉しいな……。
胸の奥で、ドキドキが静かに続いていた。
あたしはバレてほしい気持ちと、バレたくない気持ちの間で、そっと揺れていた。
「じゃあ、焼いてる間にラッピングの準備しよ~っと」
「まだ焼いてもないのに?」
由奈ちゃんの言葉に僕は思わず苦笑する。
「だって、楽しみなんだもん。お兄ちゃんが食べてくれるの、すっごく嬉しいから」
由奈ちゃんは水色の袋を広げて、リボンを選び始める。
その姿が、なんだか……プレゼントを渡す準備をしてるみたいで、ちょっとだけ照れる。
「こほん……、それじゃあ混ぜていくよ」
「うん!お願いしますっ!」
僕はボウルに常温に戻したバターと砂糖をいれると泡だて器で練っていく……。
「いい?バターはクリーム状になるまで混ぜるんだ」
「あたしもやる!」
「いいよ、やってご覧。」
「うん!見ててっ!」
僕は由奈ちゃんにバターの入ったボウルを手渡す。
しかし……。
「いっくよ~!えぇーーいっ!!」
由奈ちゃんは泡だて器で勢いよくバターを混ぜ始めるとボウルから中身が飛び散り始める!
「うわ……っ!?ちょ……!由奈ちゃん……それは……!」
飛び散ったバターが僕の服や顔へと付くとバターにより視界が遮られてしまった……。
「あ……あれ……?お兄ちゃんバターがなくな……きゃあぁぁーーー……!お……お兄ちゃんどうしたの……っ!?」
由奈ちゃんは不思議そうな顔をして空になったボウルを持って僕の方へと振り向くと悲鳴を上げる。
今の僕は顔中にバターがベッタリとついた怪人バター男と化していた……。
「……由奈ちゃん、そんなに勢いよく混ぜなくてもいいんだよ」
「お兄ちゃんごめん……!」
由奈ちゃんがタオルで僕の顔を拭くとようやく前が見えるようになった……。
「ま…、まぁ……顔や服は洗えば落ちるから……」
僕は苦笑して答えると、由奈ちゃんはシュンとして落ち込むと、目には薄っすらと涙が滲んでいた。
「お兄ちゃん、本当にごめんね……。はぁ……なんであたしってこんなにガサツなんだろう……」
「失敗は誰にでもあるよ、次はゆっくりでいいからしっかりと混ぜ込んでいこう」
「あ……、うんっ!」
僕は由奈ちゃんの頭に手を置いて優しく撫でると彼女は沈んだ表情から一転、笑顔を向けてくれた。
やっぱり由奈ちゃんは笑顔が似合うな……。
再び常温に戻し、砂糖を入れたバターを由奈ちゃんはゆっくりと、そしてしっかりと混ぜていく……。
「お……お兄ちゃんこう……?」
「うん、いいよ。その調子。そこから交ぜて空気を含ませながら白っぽくなるまで混ぜるんだ」
「う……うん、分かった……」
由奈かは真剣な表情でバターを混ぜると段段と白っぽく色が変わってくる……。
「お、由奈ちゃんそろそろいいよ。次は卵をいれるよ」
「ねえ、卵はそのまま入れちゃだめなの?」
「卵は溶き卵にして少しづつ入れてしっかり混ぜるよ」
「うん、分かった……」
由奈ちゃんは溶き卵を入れるとしっかりと混ぜ込む……。
「……混ざったね、次は薄力粉を入れてその後またしっかりと混ぜていくよ」
僕はふるいを手に取るとその中に薄力粉を入れ、バターの中に入れていく……。
「お兄ちゃん、なんでそのふるいを使うの?」
「これを使ったほうがダマにならなくていいんだよ」
「へぇ~……」
薄力粉を入れると、僕はゴムベラを手に取り切るように混ぜていく。
「薄力粉を入れたらこうやって切るようにしっかりと混ぜるんだ」
「あたしにもやらせて!」
「うん、やってごらん」
僕はヘラを由奈ちゃんへと手渡す、しかし……。
「あ……あれ……?お兄ちゃん、これ難しいよぉ~……」
「由奈ちゃん、ちょっといい?」
「え……?お兄ちゃん……?」
僕はそっと後ろから由奈ちゃんの手に触れるとしっかりと混ぜていく。
「こう混ぜていくんだ」
「う……うん……」
すると、いつもは元気な由奈ちゃんが少し顔を赤くして、それ以上何も言わなかった。
疲れたのかな……?
「……よし、生地が出来たね。後はこのままラップに包んで1時間ほど休ませるよ」
「すぐに焼くんじゃないの?」
「休ませることも重要なんだよ」
「そっか~……、残念……」
由奈ちゃんは、残念そうな顔をしながら頭の後ろで手を組むとリビングのソファへと向かった。
~サイドストーリー~
──由奈──
あたしはソファへと座って、自分の手をじっと見つめる……。
それはさっきまでお兄ちゃんの手が触れていた場所……。
ただ手が触れていただけ……それだけなのに胸がドキドキする……。
心なしか、お兄ちゃんが触れていたところが熱くなってるような気すら覚え、あたしはその手をそっと包み込むように自分の胸に押し当てると、心の中でお兄ちゃんの名前を呼ぶ……。
(彼方さん……)
さっき手を触れられた時、少し体がビクってしちゃったし、顔を赤くなって黙っちゃってたけど……お兄ちゃんにあたしのドキドキバレちゃったかな……?
バレちゃってたら恥ずかしい…。
でも……バレててくれたら……ちょっとだけ嬉しいな……。
胸の奥で、ドキドキが静かに続いていた。
あたしはバレてほしい気持ちと、バレたくない気持ちの間で、そっと揺れていた。
20
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。
しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。
ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。
桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしています。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる