罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

由奈のクッキーと亜希の静かな敗北宣言

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 クッキーの生地を寝かせて1時間ほどが立った頃、由奈ちゃんは僕に教わりながら生地を伸ばしていた。

「ねえ、お兄ちゃん。生地の厚さはこのくらい?」

 僕は由奈ちゃんの問いに、生地を触って確かめる……。

「うん、いいね。なら次は型抜きを使って好きな形にしていこう」

「うん!じゃあ、お兄ちゃんのはこのハート型の型抜きでやるね!」

「……任せるよ」

 本気でハート型にする気なの……?
 まさか、出来上がったあとに「あ~んして!」とか言わないよね……?

 僕はなんとなく一抹の不安を覚えながらも型抜きでクッキーの形を作っていく。

「お兄ちゃん!型抜きが終わったよ!」

「よし、ならオーブンのトレーにクッキングシートを敷いてから焼いていこう」

「うん!」

 トレーにクッキーを並べると、オーブンを予熱させてからクッキーを焼いていく……。


 そして待つこと約15分ほど……クッキーの美味しそうな匂いと共にオーブンのタイマーが鳴る。  
 由奈ちゃんが焼きたてのクッキーを取り出すと、甘い香りがふわっと広がり、キッチンの空気が一気に柔らかくなる。

「できた~っ!お兄ちゃん、味見してみて!」

「え……今?」

「うん、今!あたしが作ったんだから、ちゃんと食べて!」

 由奈ちゃんはハート型のクッキーをひとつ手に取り、僕の口元へと差し出してくる。

「……あーん、して?」

「……由奈ちゃん、それは流石に恥ずかしいって」

 や……やっぱりーーー……っ!?
 嫌な予感というか、不安が的中した!

「だめ!罰ゲームだと思って、あーんして!」

 由奈ちゃんの笑顔に、僕は何も言えなくなってしまった。  
 ……この子の“罰ゲーム”って言葉、なんだかずるい。

「……あーん」

 僕は言われるがまま大人しく口を開ける……。

 ふと、リビングの入口から視線を感じた僕はそこへと目を向けると、亜希の姿があった……!

「……彼方、何してるの?」

 亜希の冷ややかな視線が僕に突き刺さる……!

「い……いや……、それはその……」

 僕は目を泳がせながら思わず由奈ちゃんへと目を向ける。

「あ、お姉ちゃん!お兄ちゃんにクッキーの作り方を教わってたの!それで、出来たからあたしの手料理第一号の味見をお兄ちゃんにしてもらおうと思ってたところだよ!」

「……あっそ、何かいい匂いがしてると思ったらクッキーを作ってたのね」

「お姉ちゃんもたべる?」

「そうね、折角だし貰うわ」

「あ、でもハート型のはお兄ちゃんのだからね……!」

「はいはい……」

 亜希は軽くため息をつきながら丸型のクッキーを口へと運ぶ。

「お姉ちゃんどう?」

「……うん、中々美味しいわね」

「やったーっ!お兄ちゃん!大成功だってっ!」

 由奈ちゃんは笑顔を向けながら僕へと抱きついてくる。

「ちょ……!由奈ちゃん……っ!?」

「というわけで……お兄ちゃんにもあたしのクッキー食べてほしいな……♪」

 由奈ちゃんはそう言うと僕の口へとクッキーを入れ込んでくる。

「え……?ちょ……むぐ……!」

 僕は言われるがままに口を開けて、由奈ちゃんのクッキーを受け取る。  
 甘くて、少しだけ形は崩れてるけど、それがなんだか由奈ちゃんらしくて……すごく美味しかった。

「どう?美味しい?」

「……うん。由奈ちゃんらしい味がする」

「えへへ~、それって褒めてる?」

「……たぶん、褒めてる」

 由奈ちゃんは満足そうに笑って、僕の腕にそっと抱きついてくる。

「お兄ちゃん、今日はありがとう。あたし、もっと料理上手になるね」

「……うん。いつでも教えるよ」

 由奈ちゃんの笑顔が、焼きたてのクッキーよりも甘くて、僕は少しだけ目をそらした。

 ……ほんと、嵐みたいな子だな。  
 でも——その嵐に、気がつけば心地よく巻き込まれていく自分がいる。


 ~サイドストーリー~


 ──亜希──


 私は由奈が作ったと言うクッキーを食べながら二人のやり取りをどこか面白くない気持ちで眺めていた。

(あの顔、まるで恋する女の子じゃない。由奈ってあんな顔するんだ……。しかも彼方は変にデレデレしちゃって……!ああそうですか、二人はそういう関係なんですか……)

 つまり、私は由奈に負けた……そういう事だ。

 変に由奈から彼方を奪ってそれが原因で姉妹の仲が崩れるのも嫌だから、ここは大人しく引き下がるとするわ……。

(あ~あ……、私も最初から由奈みたいに素直になれたらなぁ~……)

 私は、未練を抱えたまま心の中でそっと呟く。
 そして、由奈のクッキーを静かに口へ運んだ。
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