罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

文字の大きさ
62 / 223
由奈の章 甘えたがりな義妹

触れられた手とときめく心

しおりを挟む
 バターを常温へと戻していると、由奈ちゃんは準備していたラッピングの袋を取り出す。

「じゃあ、焼いてる間にラッピングの準備しよ~っと」

「まだ焼いてもないのに?」

 由奈ちゃんの言葉に僕は思わず苦笑する。

「だって、楽しみなんだもん。お兄ちゃんが食べてくれるの、すっごく嬉しいから」

 由奈ちゃんは水色の袋を広げて、リボンを選び始める。  
 その姿が、なんだか……プレゼントを渡す準備をしてるみたいで、ちょっとだけ照れる。

「こほん……、それじゃあ混ぜていくよ」

「うん!お願いしますっ!」

 僕はボウルに常温に戻したバターと砂糖をいれると泡だて器で練っていく……。

「いい?バターはクリーム状になるまで混ぜるんだ」

「あたしもやる!」

「いいよ、やってご覧。」

「うん!見ててっ!」

 僕は由奈ちゃんにバターの入ったボウルを手渡す。
 しかし……。

「いっくよ~!えぇーーいっ!!」

 由奈ちゃんは泡だて器で勢いよくバターを混ぜ始めるとボウルから中身が飛び散り始める!

「うわ……っ!?ちょ……!由奈ちゃん……それは……!」

 飛び散ったバターが僕の服や顔へと付くとバターにより視界が遮られてしまった……。

「あ……あれ……?お兄ちゃんバターがなくな……きゃあぁぁーーー……!お……お兄ちゃんどうしたの……っ!?」

 由奈ちゃんは不思議そうな顔をして空になったボウルを持って僕の方へと振り向くと悲鳴を上げる。

 今の僕は顔中にバターがベッタリとついた怪人バター男と化していた……。

「……由奈ちゃん、そんなに勢いよく混ぜなくてもいいんだよ」

「お兄ちゃんごめん……!」

 由奈ちゃんがタオルで僕の顔を拭くとようやく前が見えるようになった……。

「ま…、まぁ……顔や服は洗えば落ちるから……」

 僕は苦笑して答えると、由奈ちゃんはシュンとして落ち込むと、目には薄っすらと涙が滲んでいた。

「お兄ちゃん、本当にごめんね……。はぁ……なんであたしってこんなにガサツなんだろう……」

「失敗は誰にでもあるよ、次はゆっくりでいいからしっかりと混ぜ込んでいこう」

「あ……、うんっ!」

 僕は由奈ちゃんの頭に手を置いて優しく撫でると彼女は沈んだ表情から一転、笑顔を向けてくれた。

 やっぱり由奈ちゃんは笑顔が似合うな……。


 再び常温に戻し、砂糖を入れたバターを由奈ちゃんはゆっくりと、そしてしっかりと混ぜていく……。

「お……お兄ちゃんこう……?」

「うん、いいよ。その調子。そこから交ぜて空気を含ませながら白っぽくなるまで混ぜるんだ」

「う……うん、分かった……」

 由奈かは真剣な表情でバターを混ぜると段段と白っぽく色が変わってくる……。
 
「お、由奈ちゃんそろそろいいよ。次は卵をいれるよ」

「ねえ、卵はそのまま入れちゃだめなの?」

「卵は溶き卵にして少しづつ入れてしっかり混ぜるよ」

「うん、分かった……」

 由奈ちゃんは溶き卵を入れるとしっかりと混ぜ込む……。

「……混ざったね、次は薄力粉を入れてその後またしっかりと混ぜていくよ」

 僕はふるいを手に取るとその中に薄力粉を入れ、バターの中に入れていく……。

「お兄ちゃん、なんでそのふるいを使うの?」

「これを使ったほうがダマにならなくていいんだよ」

「へぇ~……」

 薄力粉を入れると、僕はゴムベラを手に取り切るように混ぜていく。

「薄力粉を入れたらこうやって切るようにしっかりと混ぜるんだ」

「あたしにもやらせて!」

「うん、やってごらん」

 僕はヘラを由奈ちゃんへと手渡す、しかし……。

「あ……あれ……?お兄ちゃん、これ難しいよぉ~……」

「由奈ちゃん、ちょっといい?」

「え……?お兄ちゃん……?」

 僕はそっと後ろから由奈ちゃんの手に触れるとしっかりと混ぜていく。

「こう混ぜていくんだ」

「う……うん……」

 すると、いつもは元気な由奈ちゃんが少し顔を赤くして、それ以上何も言わなかった。

 疲れたのかな……?

「……よし、生地が出来たね。後はこのままラップに包んで1時間ほど休ませるよ」

「すぐに焼くんじゃないの?」

「休ませることも重要なんだよ」

「そっか~……、残念……」

 由奈ちゃんは、残念そうな顔をしながら頭の後ろで手を組むとリビングのソファへと向かった。


 ~サイドストーリー~


 ──由奈──


 あたしはソファへと座って、自分の手をじっと見つめる……。
 それはさっきまでお兄ちゃんの手が触れていた場所……。
 ただ手が触れていただけ……それだけなのに胸がドキドキする……。

 心なしか、お兄ちゃんが触れていたところが熱くなってるような気すら覚え、あたしはその手をそっと包み込むように自分の胸に押し当てると、心の中でお兄ちゃんの名前を呼ぶ……。

(彼方さん……)

 さっき手を触れられた時、少し体がビクってしちゃったし、顔を赤くなって黙っちゃってたけど……お兄ちゃんにあたしのドキドキバレちゃったかな……?

 バレちゃってたら恥ずかしい…。
 でも……バレててくれたら……ちょっとだけ嬉しいな……。

 胸の奥で、ドキドキが静かに続いていた。
 あたしはバレてほしい気持ちと、バレたくない気持ちの間で、そっと揺れていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

田舎に帰ったら従妹が驚くほど積極的になってた話

神谷 愛
恋愛
 久しぶりに帰った田舎には暫くあっていない従妹がいるはずだった。数年ぶりに帰るとそこにいたのは驚くほど可愛く、そして積極的に成長した従妹の姿だった。昔の従妹では考えられないほどの色気で迫ってくる従妹との数日の話。 二話毎六話完結。だいたい10時か22時更新、たぶん。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...