罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

由奈のウインクと彼方の理性の限界

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 四時限目が始まる少し前……僕はそれなりに整った身なりをして青葉ケ丘学園の付属中学へとやって来た。

(ここに来るのも2年ぶりか……)

 どこか懐かしさを感じながら辺りを見渡すと廊下ではしゃぎ回る多くの中学生たちとその保護者たちの姿が見える。

(えぇ~と……、由奈ちゃんのクラスは……と……)

 僕は記憶を頼りに3年C組のクラスを探すこと数分……、僕は目的の教室へと入ると、すでに何人かの保護者が教室の後方に立っていた。

 教室の空気は、どこか緊張と期待が入り混じっていて、僕はそっと空いているスペースに立つ。

(……由奈ちゃん、どこに)

 教室の前方、窓際の席に座る由奈ちゃんを見つけた瞬間、彼女が僕に気づいて、ぱっと顔を輝かせると僕に抱きついてきた!

「お兄ちゃん来てくれたんだっ!」

 由奈ちゃんが勢いよく抱きついてきた瞬間、僕の胸は跳ねるように高鳴った。

(ちょ……由奈ちゃん……それ、今ここで……!?)

  周囲の視線が一斉に僕に突き刺さる……。
 恥ずかしさと、由奈ちゃんの体温と、理性の限界が一気に押し寄せてくる。

「由奈ちゃん……っ!?」

 そして、周囲からは保護者と由奈ちゃんのクラスメイトの視線が僕に集まる。

「え?あの人が由奈ちゃんがいつも言っているお兄さんなの?」

「うん!そうだよっ!いいでしょっ!」

「へえ~、素敵なお兄さんだね!」

(は……恥ずかしい……)

 しかし、それとは別に男子からはなぜか敵意にも似た眼差しを向けられるも、由奈ちゃんは周囲からの視線を気にすることなく満面の笑みで抱きついたまま囁く。

「お兄ちゃん……今日あたし頑張るからみててね♪」

 耳の直ぐ側で聞こえてくる彼女の声に僕はドキっとしてしまう。

「ゆ……由奈ちゃん……、ここ学校だから……」

 僕はそっと由奈ちゃんの肩へと手を添えて離そうとするとチャイムが聞こえてくる。

「あ……チャイム……。それじゃあお兄ちゃん見ててね♪」

 由奈ちゃんは小さく手を振ると自分の席へと向かっていった。  
 僕には、由奈ちゃんのその仕草が、好きな人に見ていてほしいと願う“恋する少女”にしか見えなかった。

(僕……、授業参観に来たんじゃなくて、照れさせられに来たみたいだよ……)

 僕は胸をドキドキとさせながら席へと向かう由奈ちゃんの背中を見つめる。


 授業が始まると、先生が黒板に向かって話し始める。  
 由奈ちゃんは真面目にノートを取っているけれど、ちらちらと僕の方を見てくる。

 そして、先生に当てられた瞬間——

「えっ……あ、はいっ……!」

 由奈ちゃんは慌てて立ち上がり、僕の方を一瞬見てから答えると、その顔は少し赤く染まるも、答え終わった由奈ちゃんは僕にだけこっそりウインクを送ってくる。

(それ……、反則だよ……)

  僕の胸はまた跳ねて、視線が彼女から離せなくなる。

(僕はもう……由奈ちゃんを妹として見れなくなっている……)

 もう限界だった……。
 僕は由奈ちゃんを一人の女の子としてしか見れなくなってしまっていた……。


 ◆◆◆


 授業が終わると、由奈ちゃんが駆け寄ってくる。

「お兄ちゃん……来てくれてありがとう……!ねえ、あたしの発表見ててくれたっ!?」

 そう言って、由奈ちゃんは僕の腕にそっと抱きついてくる。  
 その距離の近さにもう僕の理性は限界を超えていた……。

「うん、もちろん見てたよ」

 しかし、僕は今すぐ抱きしめたい気持ちを僅かに残った理性を総動員させてどうにかこらえる……。

「え~、では10分の休憩を挟んだあと、生徒と保護者の方々を交えて三者面談を始めたいと思います」

「……え?」

 僕の脳内に、先生の言葉がゆっくりと再生される。

(三者面談……?今から……?僕も……?)

 由奈ちゃんは、にこにこしながら僕の腕にしがみついている。

(由奈ちゃん……、まさか……これ、わざと……!?)

 状況が理解できず僕の目は点になる……。

 ど……どういうこと……っ!?
 そんなの聞いないよ……っ!?

 僕の動揺を他所に、三者面談の準備が進められていたのだった……。
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