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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長
ミレイの涙と彼方の怒り
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放課後、僕は如月先輩とバスに乗り、被害者側の学校——黒井学園へ向かった。
「すみません、私は青葉ケ丘の生徒会長、如月・ミレイ・柚葉とその同行者ですが、岸破生徒会長はいらっしゃいますか?」
「お話は伺っております、岸破君は生徒会室にいますよ、どうぞこちらへ」
如月先輩は黒井学園の事務室で用件を伝えると、事務員の方の案内で生徒会室を目指す。
この学園は今時珍しい学ランにセーラ服が制服らしく、黒井学園の生徒たちの視線が、僕たちを刺すように突き刺さってくる。
その視線は決して友好的なものではなく、むしろ敵意にも似たものだった。
「……如月先輩、明らかに敵意を向けられていますね」
僕は息を呑みながら小声で如月先輩に話しかける。
「……仕方ない。こちらは加害者側だ。敵意を向けられるのも当然というものだ。黒井学園の岸破生徒会長にはミレイたちが行くということは伝えてある、そこでミレイが謝罪を行うから御堂は黙っていてくれ」
「わかりました」
僕は如月先輩の言葉に頷く。
先輩は黒井学園の生徒からの敵意にも似た視線を浴びながらも如月先輩は堂々と歩いていた。
でも、その背中は頼もしく見える一方——少しだけ、震えているようにも見えた。
事務員の方の後をついていくと、生徒会室と書かれた教室へとやってきた。
僕が息を呑んだ瞬間、如月先輩は扉をノックした。
すると、中から男性の声が聞こえてくる。
しかし、その声はとても歓迎されているものではなかった。
「青葉ケ丘学園の生徒会長、如月・ミレイ・柚葉です」
「……どうぞ」
「失礼します」
如月先輩の後に続いて僕も生徒会室に入ると、そこには腕組みをして立っている一人の男子生徒の姿があった。
腕には「生徒会長」と書かれた腕章がつけられており、彼がここの生徒会長なのだということが分かる。
「岸破生徒会長、この度は本校の生徒がそちらの生徒に対して暴力を振るってしまったこと、誠に申し訳ありませんでした」
如月先輩は深々と頭を下げると僕もそれにならって頭を下げる。
しかし、岸破生徒会長は腕組みを解くことなく、むしろ上から睨みつけるような視線で如月先輩を睨んでいた。
見た目にして身長は180センチは下らないだろう、体格のいい相手の前に140センチほどしかない如月先輩がさらに小さく見える。
「……そちらの生徒から暴行を受けた者はウチの生徒会の1年だ。聞けば加害者はそちらの生徒会の3年だと聞く。青葉ケ丘学園はいきなり他校の1年に手を挙げるような学校なのか?それとも、ウチに何か恨みでも?」
「……申し訳ありません。弁明の余地もございません」
相手の威圧に対し如月先輩はただただ平謝りをする……。
僕はなぜ先輩がここまで言われないといけないのか……それがとても悔しく、そして何もできない自分が腹立たしかった。
「ふん!第一女が生徒会長をしているからダメなのだ!女は感情的で、判断も甘い。責任を取る覚悟なんて、あるわけがない。そんな“お飾り”がトップに立つから、組織が腐るんだ!」
岸破生徒会長の言葉に、如月先輩の肩がわずかに震えた。
その背中は、堂々としているようで——どこか、ひとりで耐えているようにも見えた。
僕は頭を下げたまま、横目で彼女の顔を覗き見る。
目には、こらえきれない涙が滲んでいた。
それを見た時、僕の中で何かが音を立てて弾けた。
如月先輩がどんな気持ちで……どれだけ真摯に謝罪しているか、僕は知っている。
それなのに、性別を理由に否定するなんて!
「……やめろ」
「あ……?」
気がつけば僕は低い声で相手を睨んでいた。
でも、それは僕の中にある怒りの芯だった。
「やめろと言ったんだ……!お前に如月先輩の何が分かるって言うんだ!何も知らないやつが偉そうに言うなっ!」
「御堂、黙っていろ」
如月先輩の声が、僕の怒りを遮った。
その瞳は、静かに、でも確かに僕を制していた。
しかし、僕はもう止まらない……止まれなかった。
「先輩!僕はもう我慢できませんっ!そもそも性別を理由に誰かを否定するのがお前のやり方なのかっ!?そんなのは間違ってる!」
「貴様……何者だ?」
「僕は生徒会の仮メンバー、御堂彼方だ!」
岸破生徒会長は青筋を立てながら睨んでくるも僕は一向に引かない。
「仮メンバーが口を出すとはな。ずいぶんと自由な生徒会だな!」
「御堂……!」
如月先輩は僕の名を呼ぶと、静かに首を振った。
「……申し訳ありません。彼はまだ正式なメンバーではありません。発言は個人のものとして受け取ってください」
如月先輩の言葉に岸破生徒会長は鼻で笑った。
「個人の発言?ならば、個人の責任も取れるんだろうな。……青葉ケ丘の生徒会は、ずいぶんと甘いようだ、これだから女はダメなんだっ!」
その言葉に、僕は一歩前に出ようとしたが、先輩はそっと手を伸ばし、僕の腕を止めた。
「……御堂、ありがとう。だが、ここは私が話す」
「いえ!僕は先輩を守るためにここに来たんですっ!」
僕は先輩の前に一歩踏み出し、岸破生徒会長の視線を遮るように立った。
と、その時だった……!
「ははははは……!よくぞ言った、堂々たる啖呵ではないか御堂!」
突然、背後から響いた声。
振り返ると、そこには高藤が立っていた。
その笑みは場の空気を一変させるほどの存在感を放っていた。
「すみません、私は青葉ケ丘の生徒会長、如月・ミレイ・柚葉とその同行者ですが、岸破生徒会長はいらっしゃいますか?」
「お話は伺っております、岸破君は生徒会室にいますよ、どうぞこちらへ」
如月先輩は黒井学園の事務室で用件を伝えると、事務員の方の案内で生徒会室を目指す。
この学園は今時珍しい学ランにセーラ服が制服らしく、黒井学園の生徒たちの視線が、僕たちを刺すように突き刺さってくる。
その視線は決して友好的なものではなく、むしろ敵意にも似たものだった。
「……如月先輩、明らかに敵意を向けられていますね」
僕は息を呑みながら小声で如月先輩に話しかける。
「……仕方ない。こちらは加害者側だ。敵意を向けられるのも当然というものだ。黒井学園の岸破生徒会長にはミレイたちが行くということは伝えてある、そこでミレイが謝罪を行うから御堂は黙っていてくれ」
「わかりました」
僕は如月先輩の言葉に頷く。
先輩は黒井学園の生徒からの敵意にも似た視線を浴びながらも如月先輩は堂々と歩いていた。
でも、その背中は頼もしく見える一方——少しだけ、震えているようにも見えた。
事務員の方の後をついていくと、生徒会室と書かれた教室へとやってきた。
僕が息を呑んだ瞬間、如月先輩は扉をノックした。
すると、中から男性の声が聞こえてくる。
しかし、その声はとても歓迎されているものではなかった。
「青葉ケ丘学園の生徒会長、如月・ミレイ・柚葉です」
「……どうぞ」
「失礼します」
如月先輩の後に続いて僕も生徒会室に入ると、そこには腕組みをして立っている一人の男子生徒の姿があった。
腕には「生徒会長」と書かれた腕章がつけられており、彼がここの生徒会長なのだということが分かる。
「岸破生徒会長、この度は本校の生徒がそちらの生徒に対して暴力を振るってしまったこと、誠に申し訳ありませんでした」
如月先輩は深々と頭を下げると僕もそれにならって頭を下げる。
しかし、岸破生徒会長は腕組みを解くことなく、むしろ上から睨みつけるような視線で如月先輩を睨んでいた。
見た目にして身長は180センチは下らないだろう、体格のいい相手の前に140センチほどしかない如月先輩がさらに小さく見える。
「……そちらの生徒から暴行を受けた者はウチの生徒会の1年だ。聞けば加害者はそちらの生徒会の3年だと聞く。青葉ケ丘学園はいきなり他校の1年に手を挙げるような学校なのか?それとも、ウチに何か恨みでも?」
「……申し訳ありません。弁明の余地もございません」
相手の威圧に対し如月先輩はただただ平謝りをする……。
僕はなぜ先輩がここまで言われないといけないのか……それがとても悔しく、そして何もできない自分が腹立たしかった。
「ふん!第一女が生徒会長をしているからダメなのだ!女は感情的で、判断も甘い。責任を取る覚悟なんて、あるわけがない。そんな“お飾り”がトップに立つから、組織が腐るんだ!」
岸破生徒会長の言葉に、如月先輩の肩がわずかに震えた。
その背中は、堂々としているようで——どこか、ひとりで耐えているようにも見えた。
僕は頭を下げたまま、横目で彼女の顔を覗き見る。
目には、こらえきれない涙が滲んでいた。
それを見た時、僕の中で何かが音を立てて弾けた。
如月先輩がどんな気持ちで……どれだけ真摯に謝罪しているか、僕は知っている。
それなのに、性別を理由に否定するなんて!
「……やめろ」
「あ……?」
気がつけば僕は低い声で相手を睨んでいた。
でも、それは僕の中にある怒りの芯だった。
「やめろと言ったんだ……!お前に如月先輩の何が分かるって言うんだ!何も知らないやつが偉そうに言うなっ!」
「御堂、黙っていろ」
如月先輩の声が、僕の怒りを遮った。
その瞳は、静かに、でも確かに僕を制していた。
しかし、僕はもう止まらない……止まれなかった。
「先輩!僕はもう我慢できませんっ!そもそも性別を理由に誰かを否定するのがお前のやり方なのかっ!?そんなのは間違ってる!」
「貴様……何者だ?」
「僕は生徒会の仮メンバー、御堂彼方だ!」
岸破生徒会長は青筋を立てながら睨んでくるも僕は一向に引かない。
「仮メンバーが口を出すとはな。ずいぶんと自由な生徒会だな!」
「御堂……!」
如月先輩は僕の名を呼ぶと、静かに首を振った。
「……申し訳ありません。彼はまだ正式なメンバーではありません。発言は個人のものとして受け取ってください」
如月先輩の言葉に岸破生徒会長は鼻で笑った。
「個人の発言?ならば、個人の責任も取れるんだろうな。……青葉ケ丘の生徒会は、ずいぶんと甘いようだ、これだから女はダメなんだっ!」
その言葉に、僕は一歩前に出ようとしたが、先輩はそっと手を伸ばし、僕の腕を止めた。
「……御堂、ありがとう。だが、ここは私が話す」
「いえ!僕は先輩を守るためにここに来たんですっ!」
僕は先輩の前に一歩踏み出し、岸破生徒会長の視線を遮るように立った。
と、その時だった……!
「ははははは……!よくぞ言った、堂々たる啖呵ではないか御堂!」
突然、背後から響いた声。
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