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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長
公私混同進行中
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学園祭が終わり、生徒会室では収支報告や各種まとめの作業が進められていた。
「今年の学園祭の利益は昨年を大きく上回る見込みよ。特にミスコンの収入が大きく、全体の半数を占めているわね」
姫野先輩が暫定の収支報告書を読み上げていく。
どうやらミスコンでは来場者から入場料を徴収していたようで、予想以上の収益が出たらしい。
「なるほど、しかしミスコンの件は、来年度以降の扱いを検討する必要がある。特に参加者の心理的負担は無視できない。ミレイが実際そうだったからな」
姫野先輩の報告を聞き、柚葉先輩は腕組みをして頷く。
まあ、そこまではいいのだけど、問題は柚葉先輩が座っている場所にある。
「今年の学園祭は前年を大きく上回る成功を収めたとは言え、今回も高藤の暴走を止められなかった生徒会の責任は大きいと言わざるをせない。それより……なぜ御堂は膝の上に姉さんを乗せているんだ?」
イオリはメガネをクイッと上げると僕を睨んでくる。
「そ……それは僕に言われても……」
柚葉先輩が座っている場所……それは僕の膝の上だった!
身長の低い柚葉先輩はそこまで重くはないのだけど、周囲からの視線は痛い……。
「律、ミレイは彼方と恋人同士となり結ばれたんだ、ならば何の問題もないはずだ」
柚葉先輩は笑顔で自信満々に答えるも、そういう問題じゃないと思うのは僕だけじゃないはず。
「ほう、ミスコンが終わってから姉さんと御堂の姿が見えないと思っていたら、お楽しみだったというわけか」
イオリの鋭い視線が僕を射抜く!
「お楽しみって……そんな、僕たちは別に……!」
僕は慌てて否定するけれど、柚葉先輩は僕の膝の上でふふっと笑う。
「彼方、否定する必要はない。事実なんだから。ミレイの心も体も、もう彼方のものだ!」
(柚葉先輩、余計なこと言わないでくださいっ!)
僕は冷や汗を流しながら周囲を見渡す。
生徒会室の空気が一瞬凍りつき、春野さんは苦笑しながら静かにペンを置いた。
姫野先輩は眉をひそめ、ため息をつく。
「……ミレイ、いくらなんでも公私混同は避けるべきよ。恋人関係そのものを否定する理由はないけど、問題は“場の空気”よ」
「そうだな。姉さん、御堂の膝の上は流石に“場の空気”に反していると言わざるを得ない」
イオリの言葉に、柚葉は少しだけ考える素振りを見せたあと、すっと立ち上がる。
「……わかった。じゃあ、彼方の隣に座る」
柚葉先輩は渋々僕の隣に座ったかと思うと、そっと僕の手を握ってきた。
膝の上よりはマシかもしれないけど、相変わらず距離が近い。
「……律、これならいいか?」
「……まあ、許容範囲だ」
イオリは渋々頷くと、報告書に目を戻す。
でも、僕の耳元で柚葉が小さく囁いた。
「彼方、膝の上……意外と居心地よかったぞ」
「柚葉先輩、そういうことは今言わないでください……!」
僕は顔を赤くしながら、資料に目を落とす。
でも、視界の端で柚葉先輩が微笑んでいるのが見えた。
(……この先輩、絶対わざとだ)
「御堂……二人の関係にとやかく言う気はないが、姉さんを泣かせるようなことがあれば——僕が黙っていないからな」
「はは……、ははは……覚えておくよ」
僕が乾いた笑みを浮かべていると、柚葉先輩が僕の肩に軽く頭を預けてきた。
「律、お前にも祝福してもらいたいものだな」
「……まあ、ひとまずはおめでとうと言っておこう」
イオリはそれだけ言うと、再び報告書に目を通し始める。
僕は肩の力を抜きながら思う。
(……やっぱり、大変な人に捕まったかも)
そう思う反面、肩に感じる柚葉先輩の重さと温かさに幸せを感じていた。
「では、今年の反省を踏まえて来年の方針についてだが……」
会長である柚葉先輩が使い物にならないと判断したのか、副会長であるイオリの進行により会議はその後も続いていく。
生徒会室には、微妙な空気と甘酸っぱい雰囲気が漂っていた。
そして僕と柚葉に向けられる、生暖かい視線がじわじわと刺さってくる。
「今年の学園祭の利益は昨年を大きく上回る見込みよ。特にミスコンの収入が大きく、全体の半数を占めているわね」
姫野先輩が暫定の収支報告書を読み上げていく。
どうやらミスコンでは来場者から入場料を徴収していたようで、予想以上の収益が出たらしい。
「なるほど、しかしミスコンの件は、来年度以降の扱いを検討する必要がある。特に参加者の心理的負担は無視できない。ミレイが実際そうだったからな」
姫野先輩の報告を聞き、柚葉先輩は腕組みをして頷く。
まあ、そこまではいいのだけど、問題は柚葉先輩が座っている場所にある。
「今年の学園祭は前年を大きく上回る成功を収めたとは言え、今回も高藤の暴走を止められなかった生徒会の責任は大きいと言わざるをせない。それより……なぜ御堂は膝の上に姉さんを乗せているんだ?」
イオリはメガネをクイッと上げると僕を睨んでくる。
「そ……それは僕に言われても……」
柚葉先輩が座っている場所……それは僕の膝の上だった!
身長の低い柚葉先輩はそこまで重くはないのだけど、周囲からの視線は痛い……。
「律、ミレイは彼方と恋人同士となり結ばれたんだ、ならば何の問題もないはずだ」
柚葉先輩は笑顔で自信満々に答えるも、そういう問題じゃないと思うのは僕だけじゃないはず。
「ほう、ミスコンが終わってから姉さんと御堂の姿が見えないと思っていたら、お楽しみだったというわけか」
イオリの鋭い視線が僕を射抜く!
「お楽しみって……そんな、僕たちは別に……!」
僕は慌てて否定するけれど、柚葉先輩は僕の膝の上でふふっと笑う。
「彼方、否定する必要はない。事実なんだから。ミレイの心も体も、もう彼方のものだ!」
(柚葉先輩、余計なこと言わないでくださいっ!)
僕は冷や汗を流しながら周囲を見渡す。
生徒会室の空気が一瞬凍りつき、春野さんは苦笑しながら静かにペンを置いた。
姫野先輩は眉をひそめ、ため息をつく。
「……ミレイ、いくらなんでも公私混同は避けるべきよ。恋人関係そのものを否定する理由はないけど、問題は“場の空気”よ」
「そうだな。姉さん、御堂の膝の上は流石に“場の空気”に反していると言わざるを得ない」
イオリの言葉に、柚葉は少しだけ考える素振りを見せたあと、すっと立ち上がる。
「……わかった。じゃあ、彼方の隣に座る」
柚葉先輩は渋々僕の隣に座ったかと思うと、そっと僕の手を握ってきた。
膝の上よりはマシかもしれないけど、相変わらず距離が近い。
「……律、これならいいか?」
「……まあ、許容範囲だ」
イオリは渋々頷くと、報告書に目を戻す。
でも、僕の耳元で柚葉が小さく囁いた。
「彼方、膝の上……意外と居心地よかったぞ」
「柚葉先輩、そういうことは今言わないでください……!」
僕は顔を赤くしながら、資料に目を落とす。
でも、視界の端で柚葉先輩が微笑んでいるのが見えた。
(……この先輩、絶対わざとだ)
「御堂……二人の関係にとやかく言う気はないが、姉さんを泣かせるようなことがあれば——僕が黙っていないからな」
「はは……、ははは……覚えておくよ」
僕が乾いた笑みを浮かべていると、柚葉先輩が僕の肩に軽く頭を預けてきた。
「律、お前にも祝福してもらいたいものだな」
「……まあ、ひとまずはおめでとうと言っておこう」
イオリはそれだけ言うと、再び報告書に目を通し始める。
僕は肩の力を抜きながら思う。
(……やっぱり、大変な人に捕まったかも)
そう思う反面、肩に感じる柚葉先輩の重さと温かさに幸せを感じていた。
「では、今年の反省を踏まえて来年の方針についてだが……」
会長である柚葉先輩が使い物にならないと判断したのか、副会長であるイオリの進行により会議はその後も続いていく。
生徒会室には、微妙な空気と甘酸っぱい雰囲気が漂っていた。
そして僕と柚葉に向けられる、生暖かい視線がじわじわと刺さってくる。
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