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近づく距離
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「なっ……! そんなことを話したのか?」
「はい! クロード様が領民想いで、高い能力をお持ちだとお聞きしました」
「……」
嬉々として話すナタリアは、クロードが気まずそうにしていることに気がついていない。
「今回の結婚は、領民の皆様が祝福してくださると知って……あの、クロード様?」
ナタリアは、黙り込んでしまったクロードの顔を覗き込んだ。
それに気がついたクロードは、ふっと顔をそむけてしまう。
(あ、クロード様のお耳が赤い……もしかして照れているのかしら? 可愛らしい)
いつもと違うクロードの一面を見たナタリアは、なんとも言えない気持ちになり思わずクロードの手を取った。
「私はとても嬉しかったのです。今回の結婚のこと、私は誰にも祝福されないと思っていました。でも実際は、大勢の人々が喜んでくださって……全部クロード様の人徳のおかげです。ありがとうございます」
きゅっと握った手に力を込めると、ようやくクロードはナタリアの顔を見た。
クロードは顔を赤らめたまま、嬉しそうに笑った。
「……ここに住む人達は、心が広くて気さくな人が多いんだ。僕はこの土地と領民が好きだ。ナタリアも好きになってくれると嬉しい」
「もちろんです。早くこの地に馴染んで皆さんのことをよく知りたいです!」
「そうか、では今度時間を作って皆に挨拶する機会を設けよう」
「ありがとうございます!」
その後もナタリアとクロードは、結婚披露パーティーについての話や、領地についての話で盛り上がった。
一時間程経った頃、予想以上にクロードとの会話が弾んだことに舞い上がったナタリアは、つい口をすべらせてしまった。
「結婚という問題も解決しますし、東の国との交渉はきっと上手くいきますわ」
「君がなぜそのことを? ポールに聞いたのか?」
「あっ……はい。なぜクロード様が結婚を急いだのかと尋ねたら……。申し訳ありません、直接クロード様にうかがうべきでしたね」
あまりに深刻な顔をするクロードに、ナタリアは慌てて謝った。
「いや、構わない。初日はあまり話す暇もなかったから。……申し訳ない。ナタリアを利用するような形になってしまった」
クロードは、立ち上がって頭を深々と下げた。
ナタリアもつられるように立ち上がって頭を下げる。
「そんな……それは私も同じです。家を出るためにクロード様との結婚を利用したのですから。正直、結婚出来るなら誰でも良いと思っていました。でも、今はクロード様で良かったと思います」
「ありがとう。僕も相手がナタリアで良かった」
顔を上げた二人は、顔を見合わせて笑い合った。
「クロード様、私達また謝ってましたね」
「本当にな」
そうして、また笑い合うのだった。
「はい! クロード様が領民想いで、高い能力をお持ちだとお聞きしました」
「……」
嬉々として話すナタリアは、クロードが気まずそうにしていることに気がついていない。
「今回の結婚は、領民の皆様が祝福してくださると知って……あの、クロード様?」
ナタリアは、黙り込んでしまったクロードの顔を覗き込んだ。
それに気がついたクロードは、ふっと顔をそむけてしまう。
(あ、クロード様のお耳が赤い……もしかして照れているのかしら? 可愛らしい)
いつもと違うクロードの一面を見たナタリアは、なんとも言えない気持ちになり思わずクロードの手を取った。
「私はとても嬉しかったのです。今回の結婚のこと、私は誰にも祝福されないと思っていました。でも実際は、大勢の人々が喜んでくださって……全部クロード様の人徳のおかげです。ありがとうございます」
きゅっと握った手に力を込めると、ようやくクロードはナタリアの顔を見た。
クロードは顔を赤らめたまま、嬉しそうに笑った。
「……ここに住む人達は、心が広くて気さくな人が多いんだ。僕はこの土地と領民が好きだ。ナタリアも好きになってくれると嬉しい」
「もちろんです。早くこの地に馴染んで皆さんのことをよく知りたいです!」
「そうか、では今度時間を作って皆に挨拶する機会を設けよう」
「ありがとうございます!」
その後もナタリアとクロードは、結婚披露パーティーについての話や、領地についての話で盛り上がった。
一時間程経った頃、予想以上にクロードとの会話が弾んだことに舞い上がったナタリアは、つい口をすべらせてしまった。
「結婚という問題も解決しますし、東の国との交渉はきっと上手くいきますわ」
「君がなぜそのことを? ポールに聞いたのか?」
「あっ……はい。なぜクロード様が結婚を急いだのかと尋ねたら……。申し訳ありません、直接クロード様にうかがうべきでしたね」
あまりに深刻な顔をするクロードに、ナタリアは慌てて謝った。
「いや、構わない。初日はあまり話す暇もなかったから。……申し訳ない。ナタリアを利用するような形になってしまった」
クロードは、立ち上がって頭を深々と下げた。
ナタリアもつられるように立ち上がって頭を下げる。
「そんな……それは私も同じです。家を出るためにクロード様との結婚を利用したのですから。正直、結婚出来るなら誰でも良いと思っていました。でも、今はクロード様で良かったと思います」
「ありがとう。僕も相手がナタリアで良かった」
顔を上げた二人は、顔を見合わせて笑い合った。
「クロード様、私達また謝ってましたね」
「本当にな」
そうして、また笑い合うのだった。
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