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領民たちの想い

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 数日後にはクロードが手配した仕立て屋がやってきた。

「ナタリア様、このあたりのデザインはいかがでしょう? 体型がお綺麗ですから、よくお似合いになりますよ」

「そ、そうですか? えっと、ではそのような雰囲気で……」

(やっぱりドレスなんてよく分からないわ……)

 ナタリア密やかにため息をついた。

 仕立て屋はそんなナタリアの様子には気がつかず、楽しそうにデザインを決めていく。

「クロード様のご結婚は、私達も楽しみにしておりましたのよ。領民は皆、お祝いムード一色です。私も精一杯素敵なドレスをお作りしますね」 

 仕立て屋があまりにも嬉しそう話すので、ナタリアはつい不思議そうに呟いてしまった。

「クロード様は、皆から愛されているのですね……?」

 呟いてから失礼なことを言ってしまったと慌てて口をつぐんだが、すでに遅かった。

 仕立て屋はナタリアの発言に気分を害した様子もなく、カラカラと笑った。

「お貴族様たちには色々言われているようですが……私達は皆、クロード様が好きですよ。こんなに領民想いな領主は他にいませんから」

(てっきり領民にも恐れられているのだとばかり思っていたけれど……)

 仕立て屋の話や表情から、クロードが本当に慕われていることは明らかだった。
 
 クロードが領民達に慕われているからこそ結束が強固なものとなり、領民だけで隣国からの襲撃を防げたのだろう。

「噂がひとり歩きをしていただけなのですね。クロード様は本当優しい方ですもの」

 ナタリアがそう言うと、仕立て屋は自分が褒められたかのように喜んだ。

「そうなんです! でもクロード様は優しいだけじゃありませんよ。外交や戦争における戦術を立てる能力に優れているんです。そのおかげでこの地は平和に過ごせているのですよ」

(そうか、だから王に重用されているのね……それを知らない他の貴族から、色々と噂が流れているんだわ)

 ナタリアはクロードが冷血伯爵と呼ばれる所以を、ようやく理解した気がした。

「さて、ドレスのデザインはこちらで決定ですかね。採寸も終わりましたし、後は完成をお待ちください。おめでたい日に相応しいドレスを仕立ててきますよ」

「よろしくお願いします」




 仕立て屋が帰った後、ナタリアはクロードの部屋を訪れた。仕立て屋の話を聞いていたら、クロードに会いたくなったのだ。

「クロード様、少しだけよろしいでしょうか」

「何かあったのか? ちょうど休憩するところだから大丈夫だ」

 クロード急にやってきたナタリアに驚きながらも、快くナタリアを迎え入れた。

「ちょっとお話ししたくて……今日、ドレスのデザインを選んだんです。仕立て屋さんがとても素敵なデザインにしてくださいました」

「そうか。出来上がるのが楽しみだな」

「はい! それと、仕立て屋さんはクロード様がいかに素晴らしいかを話してくださいました」
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