家族から虐げられた令嬢は冷血伯爵に嫁がされる〜売り飛ばされた先で温かい家庭を築きます〜

香木陽灯

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王家の思惑

 婚約を公表するパーティーの日はあっという間にやってきた。

 ナタリアは招待したい人などいなかったため、クロードの知り合いに婚約を報告する意味合いが強いパーティーだった。

 それでも王族が出席するだろうと噂を聞きつけた大勢の貴族から、是非招待してくれと熱望されていた。

「本当は全て断りたかったのだが……」

「仕方がありませんわ。国王からも広く招待するように念を押されたのでしょう?」

 クロードは苦々しく文句を言っていたが、国王の命とあれば断ることなど出来ない。

 パーティー会場はナタリアの想像以上に人が溢れていた。




「クロード、久しぶりだな。本当に結婚するなんて驚いたよ」

 挨拶も済ませ皆が歓談し始めた時、クロードに親しげに話しかけてきた人物がいた。

「……そちらの要望に応えただけなのに、驚かないでください」

(随分と親しそうね。クロード様もそれほど嫌がっていないようだし。……なんだか周囲の視線が集まっている気がするわ)

 ナタリアが失礼にならない程度に相手を観察していると、クロードが彼をナタリアに紹介した。

「もう知っていると思うが彼はクロイ、第一王子だ」

「お会いできて光栄です、クロイ様。ナタリアと申します」

(第一王子だったのね……小さい頃に一度見たきりだから気づかなかった)

 ナタリアは慌てているのを悟られないように、出来るだけ冷静に挨拶をした。不敬だと思われたらクロードに迷惑をかけてしまうからだ。

「よろしくナタリア。君には渡すものがあるんだ」

「渡すものですか?」

「クロードと結婚したら、王家から褒美が出るって聞いたことない? はい、これ。他の品物はヴィルト家に届けさせたから安心して」

 そう言ってクロイがナタリアに手渡したのは、一目で非常に高価だと分かる華美な髪飾りだった。

「う、受け取れません! 恐れ多いです……それに、クロード様と結婚するのは褒美のためではありませんから」

(クロード様は褒美の噂はデタラメだと言っていたじゃない!)

 ナタリアは訳が分からず、クロードに視線を送る。

「ん? あぁ、褒美の話は本当だよ。前はあの二人を追い返すためにデタラメだと言ったんだ。受け取っておけば良い。君に恩を売っておきたいんだろうし」

 そうだろ? とクロードがクロイに尋ねると、クロイは苦笑しながら頷いた。

「そうだよ。ナタリア、君がこれを受け取ってくれないと僕が困るな。クロードに何か依頼する時、君から説得してもらうかもしれないし」

(つまり王家からの命令にクロードが渋った時、私に協力させようってこと?)

「……クロード様は正しい命令ならば受けるし、間違っているならば断るはずです。私が説得することはありませんよ」

 ナタリアはそう言った後に、大変失礼な物言いだったことに気がついた。

 しかしクロイは怒るどころか、嬉しそうに笑っていた。

「本当に良い娘をもらったんだね、クロード。少し羨ましいくらいだ。……ナタリア、これは単純なプレゼントだと思って受け取って。君の言う通り、クロードはこれくらいじゃ王家に媚びたりしないだろう?」

「えっと……」

 ナタリアが受け取るべきか悩んだ一瞬、後ろから聞き覚えのある声がした。

「お姉様が受け取りにくいならば、グラミリアン家の者として私が受け取りますわ!」
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