夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯

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 翌朝マリアーヌは目を覚ました時、この世の終わりを感じていた。

(ど、ど、どうして私がラインハルト様の寝室に!? しかもベッドを占領しているわ……)

 恐る恐る辺りを見渡すと、ラインハルトがソファーで眠っている。

 失礼なことをしてしまったという焦りと、自分には魅力がないのだという小さな失望で居た堪れない。

「ラ、ラインハルト様……おはようございます」

 そっと声をかけるとラインハルトがぱちりと目を開けた。

「もう朝か……ゆっくり休めたか?」
「はい。あの、ベッドを使ってしまって申し訳ありません。記憶はないのですが、失礼なことをしてしまいました」

 マリアーヌの謝罪に、ラインハルトはくすくすと笑っていた。

「なぜ謝るんだ? ソファーで眠ってしまったマリアーヌをベッドまで運んだのは俺だ」
「そうだったのですか?」
「あぁ。理性を保っていた俺を褒めてほしいくらいだ」

 マリアーヌはカッと顔が熱くなった。

「お気遣いいただき、あ、ありがとう……ございます」
「ははは、どういたしまして。さて、今晩は晩餐会だ。忙しくなるが時間を見つけて休んでくれ」

 マリアーヌは「晩餐会」という単語で我に返ったため。

「そうだわ! ラインハルト様の服も私が選んでしまいました。お気に召すと良いのですが」
「マリアーヌが決めたなら何でも良い」
「そうですか……?」

(どうしてラインハルト様は出会ったばかりの私のことを、こんなにも信用しているの?)

 小さな疑問が浮かんたが、聞くことは出来なかった。

 気がつくと晩餐会の準備に追われて、あっという間に夜になっていた。




 パーティー会場である王城に到着すると、マリアーヌは感嘆の声を上げた。

「わぁ……とても広いですね」
「城に来るのは初めてか? カッセル伯爵とは?」

 ラインハルトは不思議そうに訪ねた。
 貴族達の近況報告を兼ねた晩餐会は、月に一度開催される。それなのに参加したことがないのか、と。

「あぁ、伯爵はいつも別の女性を連れて行ってましたから」

 マリアーヌの答えにラインハルトの表情が曇る。

「そんな顔をなさらないで。過ぎたことですから。今日はラインハルト様がエスコートしてくださるのでしょう?」

 そっと腕を差し出すと、ラインハルトは「そうだったな」と少しだけ表情を和らげる。
 そしてその場で跪いた。

「マリアーヌ、今日の貴女は紺のドレスが一段と美しさを際立たせている。是非俺とご一緒してくれませんか?」
「そこまでしろとは……もう、早く行きましょう」

 マリアーヌが笑い出すと、ラインハルトもつられるように微笑んだ。
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