夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯

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 晩餐会の会場ではたくさんの貴族たちが談笑している。

 そこには当然シャルル・カッセル伯爵もいた。
 彼はマリアーヌを見て驚いたような顔をしていたが、すぐにニヤニヤと笑みを浮かべながら近づいてきた。

「マリアーヌ! お前随分と見違えたな。それに、本当に公爵と結婚したんだってな。俺に感謝しろよ」
「カッセル伯爵……」

 マリアーヌが顔をしかめると、ラインハルトが前に出た。

「これはこれは伯爵、お元気そうでなによりだ。その元気がいつまでも続くことを祈ってますよ」

 威圧的に言い放つと、マリアーヌを連れてその場を離れた。

「ラインハルト様? あの態度は……」
「しばらくあいつには近づかないように」

 離縁したばかりの相手と話していると、周りから変に注目を浴びる。
 ラインハルトなりの気遣いなのだろうとマリアーヌは納得した。

「お気遣いありがとうございます」


 その後、ラインハルトに連れられて何人かの貴族と挨拶を交わした。
 皆はなぜか興味深そうにマリアーヌを見た後、ラインハルトを見てギョッとするような表情をするのだった。

「なんだか皆様が、ラインハルト様を見て不思議なお顔をしていますよ?」
「気にするな。結婚したのが珍しいのだろう。秘密裏に動く仕事ばかりしているせいか、冷酷公爵とか言われているからな」
「全然冷酷ではないのに……皆知らないんですね」

 ラインハルトは少し目を丸くした。
 そして彼が何かを言いかけた時、後ろから「ベイガー、久しいな」と明るい声が聞こえてきた。

「陛下、書面では頻繁に挨拶を交わしているではありませんか」
「直接会わねば寂しいではないか! ほほぉ……これが噂のベイガー夫人だな。会場でも一際目をひく美しさだ」

 国王がニコニコとマリアーヌを見つめる。
 マリアーヌは完璧な礼をした。

「お初にお目にかかります。マリアーヌと申します」
「うむ。しっかりしたご夫人がいるから公爵家は安泰だな。これからも公爵を支えてやってくれ」
「恐れ入ります」 
「ははは、カッセル伯爵は実に惜しい人材を手放したものだ」

 カッセル伯爵。
 その言葉にラインハルトの雰囲気が変わった。

「陛下、例の件の証拠が集まりました」
「丁度良い。皆にも報告しようじゃないか」

 国王も人当たりの良い雰囲気だったのが鋭く変化した。

「皆、聞け」

 国王のよく響く声が会場中に響き渡る。

「今日この場には、貴族として相応しくない者がいる」

 不穏な言葉に会場がざわめき立つ。

「その者は国に納めるべき税を着服し、私腹を肥やしている。そうだろう? シャルル・カッセル」

 名指しをされたシャルルは青い顔で呆然と立ち尽くしていた。
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