最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★オーベリー村、蜥蜴神編★

87:プルプルしながらブリブリ

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   コンコンコン

「ごめんください、どなたかいらっしゃいますか?」

   平屋の農家の扉をノックして、礼儀正しい言葉で声をかけるグレコ。

   家の周りには、小さな家庭菜園用の畑と、井戸と、放牧していたあの牛紛いな動物を入れる為の牛舎のような建物がある。
   干した藁や、牛のものであろう獣の匂いなど、牧場独特の匂いが辺りには漂っている。

   どうやら、この家の家主はかなり大きな体格の種族のようだ。
   家自体も大きいし、玄関の扉もとても大きくて、ドアノブは目一杯背伸びしてようやく手が届く、という感じ。
 ……といっても、俺は小さなピグモルだから、グレコとギンロは余裕だろうけどね。
   でも、エルフの村の石造りの家の扉にあるドアノブには、俺でも簡単に手が届いたから、少なくともここに住んでいるのは、エルフより背の高い種族に違いない。

「どちらさんかえ? エッホは今おらんがのぉ」

   中から、妙にしゃがれた高い声が返ってきた。
 どうやら相手はご年配の女性らしい。

「あ、あの……。私たち、旅をしている者なのですが……。此方に一晩、泊まらせて頂けませんか?」

   おぉグレコ……、ド直球な要求だな。
 さすがにそれは無理だろう、まだ顔も見ていないのだから、断られるに決まっている。
 そういう事は、ちゃんと目を見てお願いしないと。

「一晩? まぁ、部屋はあるが……、しかしのぉ……。金はあるのかえ??」

   おおぉ? いいのかえ??
 姿形も分からない相手にそんな事言うなんて、あまりに緊張感が無いのでは???
 しかも、お金を要求してくるなんて……、かなり肝が座っていらっしゃるご様子。

「あ、はい、いくらか手持ちはあります!」

   泊めてもらえるかも!? と思ったのであろう、グレコの声が弾む。

「金があるんなら、泊めてやってもええかのぉ」

 嗄れた声がそう言うと、何やら扉の向こう側からガチャガチャと、鍵を外す音が聞こえてきた。
 どうやら交渉は上手くいったらしい。
 グレコは小さくガッツポーズをし、ギンロもふっと表情を緩めた。

 俺も、良かったと安堵し……、いや、ちょっと待てよ。
 なんだろう、なんだか嫌な予感がするぞ。
 さすがにすんなり行き過ぎじゃないか?
 金があるなら泊めてやるって……、こっちの顔も人数も確認してないのに??
 こういう場合のストーリー展開は、ドアの向こうから現れたのは恐ろしい鬼婆でした! とかが相場じゃなかろうか。
 つまり、今から俺達は……、鬼婆に襲われるのではっ!?
 
 穏やかでは無い妄想を膨らまし、カタカタと小刻みに震え、身構える俺。
   すると、ギーっという鈍い摩擦音を立てながら、扉がゆっくりと開かれて、そこに現れたのは……

「ふむ、三人かえ。お前さんはエルフじゃな? そいで、その後ろの者たちは……??」

 おぉおっ!? 
 ま、まさかっ!??
 人間かっ!?!?

   扉の向こう側に立っているのは、大柄な、腰の曲がった老婆だ。
 決して太ってはいないのだが、横幅が結構あって、ガッチリとしている印象である。
 姿勢が悪いせいで身長が低く見えるが、腰を伸ばせばグレコよりも背が高そうだ。
 とてもカラフルな花柄のパッチワークの服を身に付けており、頭には大きな手編みの毛糸帽を被っている。
 そしてそのお顔は、かなり特徴のある豚っ鼻ではあるものの、シワシワながらも健康的なベージュ系の色合いの肌をしているからして、おそらく人間だと俺は推測した。

   うおぉ~、産まれて初めて見る人間!
   しかし残念、かなりのお婆さんだ!!
   できれば、初めて見る人間は、ピチピチでプリティーな十代の女の子が良かったぁ!!!

 と、心の中で、馬鹿なことを考えていると……
   
「我は獣人である。名はギンロと申す」

   ギンロが、慣れた口ぶりで自己紹介をした。

   なるほどな、さすがにフェンリルとは言えないもんな。
   言ったら絶対腰抜かすよ、このお婆さん。

「獣人かえ。して、そっちのちっこいのは?」

   あ……、どうも、ちっこいのです。

「僕はピグぉがっ!?!?」

   自己紹介しようとした俺の口を、突然グレコが両手で塞いだ。
 
 なんっ!?
   グレコ!??
 何すんのさっ!?!?

「この子は私の従魔です、名前はモッモ。そして私は、お察しの通りエルフで、名前はグレコです、どうぞよろしく」

 なんだかよく分からない事を言って、サラッと自己紹介をするグレコ。   

「ほおほお、なんとも賑やかな御一行様だえ。あまり広い部屋はねぇが、三人で一泊10000センスでどうだぁ? 夕餉も朝飯もつけるぞえ??」

   おお~! 一泊二食付き!?
   いいんじゃないのっ!??
   ……てかグレコ!!
 そろそろ手をどけてっ!!!

「あ、いいですか!? やったぁ♪」

「世話になり申す」

   今晩の寝床と夕食をゲットして喜ぶグレコと、礼儀正しくぺこりと首を垂れるギンロ。
   俺はと言うと……

   グレコぉっ! 手っ!! 手ぇ~!!!

   口を塞いだままのグレコの手からなんとか逃れようと、もがもがともがいていた。








   お婆さんの名前はシシ。
   孫息子のエッホという人と二人で、この牧場を経営しているという。
   で、そのエッホさんは、今は近くの村へ配達に行っているらしい。

   家に入ってすぐの部屋にあるテーブルで、シシ婆さんはいろいろと話してくれた。
   ここは乳牛の牧場で、飼育しているのはカウーという種類の家畜だとか、エッホは自慢の孫息子だとか、息子夫婦は遠くまで出稼ぎに行ってるとか、とかとか……

   とにかくあれだな、普段話し相手がいないから、突然現れた俺たちに何でもいいから話を聞いて欲しいっていう、老人特有の喋り方だなこりゃ。
   正直、話を聞いてるうちに眠くなったし、途中でもういいから~って思ったけど……
   夕食にと出してくれた、採れたて新鮮なカウーの牛乳で作ったシチューが絶品だったので許すっ!

「美味い……、美味い……、美味いなこれ……」

   食べながら、思わず声に出してしまう俺。
   ピグモルには、酪農とかいう習慣など無かったし、近くにそれらしき動物も生息していなかったので、牛乳を使った料理は産まれて初めて食べた。
 それがもう、美味しくて美味しくて……  

「ほっほっほっ。小せぇ~のに、ほんによぉ~食べるのぉ。お代わりはどうかえ?」

「おかわりっ!? 頂きます! ありがとうございます!!」

   シシ婆さんのお言葉に甘えて、俺は二杯もおかわりをもらったのだった。
 こうして今夜の夕食は、大大大満足で終わった。

   しかし、その後……

「う~ん、う~ん……」

 母屋から続く別棟にある、今は使われていない息子夫婦の寝室に通された俺は、ベッドの上で唸っていた。
   ベッドが二つしかないので、大きさ的にギンロとグレコがベッドを使い、俺はソファーで寝る予定だったのだが……
   急激な腹痛に襲われた俺に、ギンロがベッドを譲ってくれたのだ。

「モッモ、大丈夫?」

   グレコが苦笑いで俺を見ている。
 大丈夫だと返事をしたいところだが……、実際問題、あまり大丈夫では無いので何も言えない。

   産まれて初めての牛乳に、俺の胃はビックリしてしまったらしい。
 グルグルグルと、奇妙な音を立てる俺のプニプニお腹。
   さっきから何度もトイレに行っているのだが、まだ治まらない。
   
   せめて一杯だけなら大丈夫だったかも知れないけど、あまりに美味しくて、三杯も食べてしまったから……
   その代償はでかいぞっ!

「食当たりか?」

   おおギンロよ、そんな言葉を知っているのね。
   でも違うよ、これはおそらく、ただの食べ過ぎです。

「う~ん……、うっ!? くぅ~!!? もう一回トイレ行ってくる!!!」

   グレコとギンロを部屋に残し、母屋のトイレへとダッシュ!
   トイレは、非常にちゃんとした造りなのだが、人間用の大きさの、しかもボットン便所なので、便器に空いている穴がかなり大きくて、体の小さな俺にとっては危険極まりない。
 誤って落ちてしまえば最後、肥溜めの中へとダイブする事になる。
 片側の壁に手をついた変なポーズで、落ちないようにと細心の注意を払いながら、プルプルしながらブリブリする俺。
 どうやら下し切った俺のお腹は、グルグルと鳴るのをやめてくれた。

   あぁ……、旅って、本当に過酷……
   
 トイレを後にして、お腹をさすりながら、ヒタヒタと廊下を歩く俺。
   幾分かスッキリして、これでようやく寝られるかな? と思っていたら、俺の耳に誰かの話し声が聞こえてきた。   
   シシ婆さんの嗄れた声と、知らない男の低い声だ。
   扉の向こうの、薄暗い台所から聞こえてくる。

「……美味そうにのぉ。ちっこいのがよ」

   え? ちっこいのが?? 美味そう???

「そりゃ、おいも食べてみてぇのぉ」

   え? 食べる?? ……えっ???

   何やら不穏な空気を察した俺は、扉の隙間から、コッソリ中を覗いてみた。
 するとそこには……

「ひぃっ!?!?」

   俺の目に映ったのは、台所に立つシシ婆さんの後ろ姿と、その隣にいる、ギンロよりも背の高い、ゴリゴリマッチョな体格の誰かだ。
 そいつはシシ婆さんそっくりの豚っ鼻なのだが、なんと耳が人間のものでは無い。 
 茶色い髪の毛の間から覗く、三角に折れたその耳は、恐らく豚の耳……

 あああ……?
 あいつ、何者なんだ??
 ぶ、豚……、豚人間???
 それにしても、でかい……、でか過ぎだ。

   しかもその手には、俺の体の二倍以上はある刃渡りの、巨大な鎌が握られているではないか。
 
   あ、あんな巨大な鎌を、いったい何に使うんだ……????

   ガクブルガクブル

「おいは皮が嫌いだからの、しっかり剥いてくれな~」

「あいあい、しっかりな、丸裸に剥きますよぉ~て」

 暗がりでニヤニヤと笑い合う、シシ婆さんと巨体豚人間。

   ひっ!? ひぃいぃぃっ!??
   もしかして俺、喰われちゃうのぉっ!??? 
   皮を剥いて、丸裸にされちゃうのぉっ!????
   そっ、そんなの嫌だぁあぁぁ!!!!!
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