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557 鍛治神とエルフの王
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少しだけ時間は戻り、エルフの王の住む城の上⋯上空に浮かぶのは
『鍛冶神様、準備は整いました』
〖ああ。いよいよだな〗
マントをはためかせ、鎧をまとった鍛冶神。手には鍛冶神らしく巨大な斧、バトルアックス。普段愛用のハルバートにしなかったのは
〖あいつら自慢の悪趣味な城を、目の前でぶち壊してやるには、無骨なコイツのほうが効果的だろう〗ニヤリ
と、言うことらしい。
〖俺も行きたい!むしろ俺が行く!〗
と、ごねていた武神に見せつけていた。
武神は
〖はああっ⋯分かったよ。ならせめて俺の部隊も連れてけ。油断はするな。相手は屑のエルフ共だが、厄介なのはお前が作ったあの『鎧』かもしれんぞ〗
でっかい溜息をつきながら、鍛冶神に自分が鍛えた部隊を連れて行けと進言した。無骨な言い方しか出来ないが、一応、鍛冶神を心配しているのだ。
〖分かったよ。力を借りるとしよう〗
〖まあ、馬鹿力なら俺と並ぶお前だ。心配はしてないけどな!ふんっ〗
そんな言い方をする武神の後ろで、今回同行する部隊の隊長が苦笑いしている。
〖第一部隊の隊長か?お前たちは主神の護衛担当だろ?〗
なんでそんな奴が同行すんだよ?
『はい。その主神様からのご命令です。〖鍛冶神ちゃんを助けてあげて。何気に責任感じて落ち込んでるからさ〗だそうですよ』くすくす
〖まったく、あの主神は⋯。悪いな、巻き込んじまって〗
『いえいえ。私たちも久々に暴れられますからね。むしろ感謝しておりますよ』ニヤリ
〖そうかよ〗
まったく、主神の周りには何で曲者ばっかり集まるんだ?
〖まあ、よろしく頼むな〗
『はい。必ずや、お力になりましょう』
〖いいか!?くれぐれも油断するなよ!?武器も予備を用意しとけよ!?鍛冶神なんだから、武器は腐るほど持ってるだろ!?〗
〖俺の武器は腐らないぞ?〗むっ
〖そういう意味じゃねえ!〗
『くくくっ』
という、やり取りもあり
〖そんじゃ、まず挨拶代わりに一発いくか。離れてろよ〗
鍛冶神が武器を振りかぶると
『おお、凄まじい覇気ですね』
『魔力を集めてるわけじゃないのに、鍛冶神様が光ってますね』
『魔力を温存⋯というより、使うまでもないのでしょうね』
第一部隊の面々がザワついているが、心の中で思うことは一つ
さすが、武神様の脳筋仲間!
大概、失礼⋯
〖お前ら、心の中で言いたい放題だな?覚えてろ⋯よっ!〗
しかもバレてるし⋯
ズバーンっ!
ドガーンッ!ぐしゃあ
『『『『『おおっ』』』』』
『流石ですね。鍛冶神様。城が真っ二つですね』
さすが、武神様の脳筋仲間!
〖お前らな、脳筋脳筋言うんじゃねぇよ〗
『言ってませんよ。思ってるだけです』にっこり
〖いい度胸だな。おい〗
やっぱり曲者だな。
『それより鍛冶神様、派手になさりましたが、救出する者たちは無事なのでしょうね?』
〖ああ。心配ねぇよ。幸いというかなんと言うか、鎧と同じ部屋にいるみたいだからな〗
『そうですか。それなら良いのです』
〖良し、じゃあ行くか。あいつらもようやく起きてきたみたいだからな。しっかり教えてやれよ〗
割れた城の中からわらわらと出てくるエルフたち。
かつて美しき種族と謳われたエルフたちだが、出てくるのは欲に染った醜い者たち。
『かしこまりました。本物の絶望を教えて差し上げましょう』にっこり
〖ハハハ。頼んだぞ。誰一人落ちるなよ〗
『当然です。誰一人、かすり傷すらおいませんからご安心を。ですよね?』
『『『『『はっ!』』』』』ビシッ!
〖そうかよ〗
こいつら、本当に暴れたくて仕方ないって顔してやがるな。それだけこいつらも腹に据えかねてるってことか。なら⋯
〖そんじゃ、突撃!〗
思う存分、暴れて来い!
『『『『『『はっ!』』』』』』
地上から魔法が飛んでくる中、そんなモノ、ものともせず城を破壊しながら王の元へ向かう鍛冶神と隊長。部下は四方に散らばり、始末をしていく。神からも、精霊や妖精からも見放されたエルフの魔法など痛くも痒くもない。
時折、強力な魔法が飛んでくるが、それは魔道具に頼ったもの。
使ってる本人がどうかと言えば⋯
ドカッ
『子供以下ですね』
かす同然。
そして、城の奥では
『な、なんだ何が起こっているのだ!?宰相!急げ!金目の物を掻き集めろ!』
『王よ、あなたも動いてください!』
『なんだと!?このクズが!はやくしろ!』
『なっ!くっ⋯もう我慢できません!おひとりでどうぞ!私はもう知りません!』
『な、なんだと!?』
国民を捨て、逃げようとする王と宰相が言い争いをしていると
『醜いですね』ズバッ
『かはっ』どさっ
『な!?』
隊長の剣が、一太刀で宰相の命を奪った。
『な、何者だ!?』
〖やれやれ、お前が今のエルフの王か?エルフと言うよりオークだろうが。いつの間に種族を変えたんだ?〗
ぶくぶくに膨れ上がった体に脂ぎった顔。身体中に纏ったごてごてとした装飾品。その姿は誰よりも醜い⋯
〖ふんっ。悪趣味極まりないな〗ぶんっ
ガラガラガラガラっ
『本当ですね。何もかもが醜い』
シャッ
ズッ⋯ズドーン
『な、何だ貴様らはと聞いている!答えろ!下賎が』ドカッ
『ガハッ』
〖お前、それ、そこにあった花瓶か?〗
『ええ。こんな醜いもの私の剣が穢れますからね。かといって拳でいけば拳が穢れますから』
〖そうか⋯まあ、気持ちはわかるな〗
壁は剣で切ったのにな。コイツは壁以下ってことだな。
『く、クソっ儂はエルフの王だぞ!タダで済むと思うなよ!』
唾を飛ばしながら怒鳴りつけるエルフの王
〖ああ?城も無い、家臣もいない。それのどこが王だ?〗ぶんっ
ぐしゃっ
『何だと!?だからお前らは誰なんっ⋯』
『鍛冶神様』
『⋯っな』ぱくぱく
〖おう。終わったか?〗
『はい。鍛冶神様。この城、悪趣味ですね。調度品、魔道具などの一切合切は破壊しました』
『攻撃してきたエルフは全て制圧しました。あ、隠れて武器を構えてたヤツらもですね』
『あとの隠れてるつもりのヤツらには、五体満足でこれから起こることを味わってもらおうと、あえてそのままに』
『あ、ちゃんと武器や魔道具は無力化してますよ』
『な⋯』ぱくぱく
〖さすが、第一部隊、いい性格してるな〗くくっ
さっきまで喚き散らしていたオークもどきが静かになったぞ。まあ、また騒ぎ出すだろうがな。
『ありがとうございます』
『それ以外はどうしましたか?』
『はい。隊長。捉えられていた魔物や妖精たちは解放しております』
『奴隷にされていた獣人も同じく』
『ただ、酷い状態の者も多く、早い治療が必要かと』
『あとは、例の部屋とコイツですね』
『⋯⋯っ』
一斉に睨みつけられたエルフの王は、口を開けてだらだらと脂汗をかいている。
〖さて、俺が誰かだっけな?〗
『違いますよ。鍛冶神様。下賎な誰か?だそうですよ』
〖そうだったな。下賎な誰かは名乗らなくてもいいか?〗
『そうですね。でも名乗った方がよろしいのではないですか?これから絶望を味わってもらうためにも』
〖そうだったな。俺は鍛冶神だ。俺がかつてのエルフの正統な王と共に作ったものを返してもらいに来た。貴様の様な紛い物の王には必要ないものだろ?〗
『な、なぜ、神が?なぜ⋯鍛冶神であれば我らの祖先と繋がりがあったはず。それがなぜ⋯』
〖うるせえよ〗
『うるさいですね』ずばっ
〖あっ〗
『え?』ずるっぐしゃ
『ああああっあ、脚が~』
〖お前、剣が穢れるんじゃなかったのかよ〗
『そうでしたね。ですが、鍛冶神様を前にして跪くことすら忘れていたようでしたので、思い出させて差し上げようかと』
〖そうかよ⋯〗
えげつねぇな。
『ああああっ』
『ですが、更に煩くなったようですね。どうしましょうか?』
『隊長、救出した獣人達の中には手や足を奪われた者もおりました』
『耳を落とされ、目を潰され、喉を潰されている者もおりました』
『魔物や妖精たちも酷い有様でした』
『コイツも同じ様にしてやれば、黙るのではないですか?』
次々と仕事を終え集まる隊員たちから報告が上がる。
『ふむ。そうですね』
『や、やめ⋯』グサッ
『ギャーっ うぐっ』
『だから煩いですよ。私としたことがうっかりしてましたね。初めからこうすれば剣を穢すこともありませんでしたね』しゅっ
〖ははは〗
剣に付いた血を払いながら、氷魔法で、手を床に串刺しにしやがった。ついでに口も凍らせたか?
『なぜ、自分が他者にしたことを自分はされないと考えているのですかね?エルフとはいつからこの様に愚かしくなったのか。ああ、もはやエルフではないのでしたか?』
『⋯んぐぐっ』
何か言いたそうだな。まあ、ろくな事じゃないだろうが。
〖まあ、エルフもどきは今日をもって終わりを迎えるんだ。だいぶ数は減ってしまうが、これからは正統なエルフのみになるはずだからな〗
『んぐっ』
何やら目に力が戻ったな。コイツ
〖ん?何を勘違いしてるんだ?似非エルフが。お前、自分がエルフだとまだ勘違いしてるのか?〗
『⋯っ』
なに、目を見開いてショックを受けてやがる?
〖まあ、一応、エルフの王を騙っていたお前に教えてやろう。お前たちにはこれから神罰が下る。お前たち似非エルフは全員この世界から消える。もちろん転生も叶わぬ〗
『⋯っ』
まだ信じられないか?
〖お前たちはやりすぎた。神が気付かぬとでも思ったか?思い上がりも甚だしいな。精霊殺しに、同族殺し。有りもしない聖域に攻め入るため、あの鎧を傀儡にしようとしたのだろう?〗
『⋯⋯っ』ガタガタ
お前たちが聖域の存在を知ることは許さん。せいぜい有りもしないものの為に、滅びの道を進んだと思って消えるがいい。
『鍛冶神様、何か言いたそうですよ?どう致しますか?』
〖そうだな。最後に一言くらい聞いてやるか。その後は、お前たちが見たことと同じ様にしてやれ。ああ、片耳、片目は残してやれよ。自分たちの最後を見たいだろうからな〗
『かしこまりました』
『⋯っ た、助けてくれっ何でもするし、何でもやるっ』がくがく
〖貴様、この期に及んで⋯っ〗
『やはり、塞ぎますか?』
〖そうだな⋯〗
『わ、儂は確かに教えられたんだ!聖域にいけば精霊樹はまた儂の物になり、世界を治められると!く、黒づくめの占星術師にっ』
何だと?全員の動きが一瞬止まった。いや、止まっている場合ではない。
〖黒づくめ?エルフではないのか?〗
どういうことだ?まさか⋯
落ち着け。気取られるな。情報を聞き出すんだ。
『違う!ある日ふらっと現れて消えたんだ!だが、確かに奴の持つ水晶には映し出されたんだ!精霊樹が!』
〖⋯いいように騙されたな。この地に聖域など存在しない〗
まさか、裏でヤツが?
『そんなはずはない!ヤツは確かに言ったんだ!『愛し子の鎧を使え。それと共に聖域に攻めいれば必ず成功する。鎧は神が作った物、それさえあれば聖域に阻まれることなく入れるはずだ』と、だから儂はっ!そうだ、ヤツを探してくれっ!黒づくめの不気味なヤツだ!隠してるようだったが、儂は見た!顔半分真っ黒な痣に塗りつぶされたようだった!どこに消えたかは分からないがっ』
〖黙れ。戯れ言はそこまでだ。隊長〗
『畏まりました』
『⋯っ』がたがたっ
隊長に再びエルフの王の口を閉じさせる。
まさか、ヤツが?再び実態を取り戻し動き出したのか?
いや、考えるのは後だ。今、やるべきは主神の望み通り、エルフに本当の絶望を与えること。こいつらに一部の隙も見せてはならない。どうせこれ以上の情報は引き出せまい。
〖隊長、行くぞ〗バサッ
『畏まりました。貴方たち、あとは任せましたよ』
『『『『はっ!』』』』ビシッ
今は一刻もはやく鎧の元へ⋯
『鍛冶神様、準備は整いました』
〖ああ。いよいよだな〗
マントをはためかせ、鎧をまとった鍛冶神。手には鍛冶神らしく巨大な斧、バトルアックス。普段愛用のハルバートにしなかったのは
〖あいつら自慢の悪趣味な城を、目の前でぶち壊してやるには、無骨なコイツのほうが効果的だろう〗ニヤリ
と、言うことらしい。
〖俺も行きたい!むしろ俺が行く!〗
と、ごねていた武神に見せつけていた。
武神は
〖はああっ⋯分かったよ。ならせめて俺の部隊も連れてけ。油断はするな。相手は屑のエルフ共だが、厄介なのはお前が作ったあの『鎧』かもしれんぞ〗
でっかい溜息をつきながら、鍛冶神に自分が鍛えた部隊を連れて行けと進言した。無骨な言い方しか出来ないが、一応、鍛冶神を心配しているのだ。
〖分かったよ。力を借りるとしよう〗
〖まあ、馬鹿力なら俺と並ぶお前だ。心配はしてないけどな!ふんっ〗
そんな言い方をする武神の後ろで、今回同行する部隊の隊長が苦笑いしている。
〖第一部隊の隊長か?お前たちは主神の護衛担当だろ?〗
なんでそんな奴が同行すんだよ?
『はい。その主神様からのご命令です。〖鍛冶神ちゃんを助けてあげて。何気に責任感じて落ち込んでるからさ〗だそうですよ』くすくす
〖まったく、あの主神は⋯。悪いな、巻き込んじまって〗
『いえいえ。私たちも久々に暴れられますからね。むしろ感謝しておりますよ』ニヤリ
〖そうかよ〗
まったく、主神の周りには何で曲者ばっかり集まるんだ?
〖まあ、よろしく頼むな〗
『はい。必ずや、お力になりましょう』
〖いいか!?くれぐれも油断するなよ!?武器も予備を用意しとけよ!?鍛冶神なんだから、武器は腐るほど持ってるだろ!?〗
〖俺の武器は腐らないぞ?〗むっ
〖そういう意味じゃねえ!〗
『くくくっ』
という、やり取りもあり
〖そんじゃ、まず挨拶代わりに一発いくか。離れてろよ〗
鍛冶神が武器を振りかぶると
『おお、凄まじい覇気ですね』
『魔力を集めてるわけじゃないのに、鍛冶神様が光ってますね』
『魔力を温存⋯というより、使うまでもないのでしょうね』
第一部隊の面々がザワついているが、心の中で思うことは一つ
さすが、武神様の脳筋仲間!
大概、失礼⋯
〖お前ら、心の中で言いたい放題だな?覚えてろ⋯よっ!〗
しかもバレてるし⋯
ズバーンっ!
ドガーンッ!ぐしゃあ
『『『『『おおっ』』』』』
『流石ですね。鍛冶神様。城が真っ二つですね』
さすが、武神様の脳筋仲間!
〖お前らな、脳筋脳筋言うんじゃねぇよ〗
『言ってませんよ。思ってるだけです』にっこり
〖いい度胸だな。おい〗
やっぱり曲者だな。
『それより鍛冶神様、派手になさりましたが、救出する者たちは無事なのでしょうね?』
〖ああ。心配ねぇよ。幸いというかなんと言うか、鎧と同じ部屋にいるみたいだからな〗
『そうですか。それなら良いのです』
〖良し、じゃあ行くか。あいつらもようやく起きてきたみたいだからな。しっかり教えてやれよ〗
割れた城の中からわらわらと出てくるエルフたち。
かつて美しき種族と謳われたエルフたちだが、出てくるのは欲に染った醜い者たち。
『かしこまりました。本物の絶望を教えて差し上げましょう』にっこり
〖ハハハ。頼んだぞ。誰一人落ちるなよ〗
『当然です。誰一人、かすり傷すらおいませんからご安心を。ですよね?』
『『『『『はっ!』』』』』ビシッ!
〖そうかよ〗
こいつら、本当に暴れたくて仕方ないって顔してやがるな。それだけこいつらも腹に据えかねてるってことか。なら⋯
〖そんじゃ、突撃!〗
思う存分、暴れて来い!
『『『『『『はっ!』』』』』』
地上から魔法が飛んでくる中、そんなモノ、ものともせず城を破壊しながら王の元へ向かう鍛冶神と隊長。部下は四方に散らばり、始末をしていく。神からも、精霊や妖精からも見放されたエルフの魔法など痛くも痒くもない。
時折、強力な魔法が飛んでくるが、それは魔道具に頼ったもの。
使ってる本人がどうかと言えば⋯
ドカッ
『子供以下ですね』
かす同然。
そして、城の奥では
『な、なんだ何が起こっているのだ!?宰相!急げ!金目の物を掻き集めろ!』
『王よ、あなたも動いてください!』
『なんだと!?このクズが!はやくしろ!』
『なっ!くっ⋯もう我慢できません!おひとりでどうぞ!私はもう知りません!』
『な、なんだと!?』
国民を捨て、逃げようとする王と宰相が言い争いをしていると
『醜いですね』ズバッ
『かはっ』どさっ
『な!?』
隊長の剣が、一太刀で宰相の命を奪った。
『な、何者だ!?』
〖やれやれ、お前が今のエルフの王か?エルフと言うよりオークだろうが。いつの間に種族を変えたんだ?〗
ぶくぶくに膨れ上がった体に脂ぎった顔。身体中に纏ったごてごてとした装飾品。その姿は誰よりも醜い⋯
〖ふんっ。悪趣味極まりないな〗ぶんっ
ガラガラガラガラっ
『本当ですね。何もかもが醜い』
シャッ
ズッ⋯ズドーン
『な、何だ貴様らはと聞いている!答えろ!下賎が』ドカッ
『ガハッ』
〖お前、それ、そこにあった花瓶か?〗
『ええ。こんな醜いもの私の剣が穢れますからね。かといって拳でいけば拳が穢れますから』
〖そうか⋯まあ、気持ちはわかるな〗
壁は剣で切ったのにな。コイツは壁以下ってことだな。
『く、クソっ儂はエルフの王だぞ!タダで済むと思うなよ!』
唾を飛ばしながら怒鳴りつけるエルフの王
〖ああ?城も無い、家臣もいない。それのどこが王だ?〗ぶんっ
ぐしゃっ
『何だと!?だからお前らは誰なんっ⋯』
『鍛冶神様』
『⋯っな』ぱくぱく
〖おう。終わったか?〗
『はい。鍛冶神様。この城、悪趣味ですね。調度品、魔道具などの一切合切は破壊しました』
『攻撃してきたエルフは全て制圧しました。あ、隠れて武器を構えてたヤツらもですね』
『あとの隠れてるつもりのヤツらには、五体満足でこれから起こることを味わってもらおうと、あえてそのままに』
『あ、ちゃんと武器や魔道具は無力化してますよ』
『な⋯』ぱくぱく
〖さすが、第一部隊、いい性格してるな〗くくっ
さっきまで喚き散らしていたオークもどきが静かになったぞ。まあ、また騒ぎ出すだろうがな。
『ありがとうございます』
『それ以外はどうしましたか?』
『はい。隊長。捉えられていた魔物や妖精たちは解放しております』
『奴隷にされていた獣人も同じく』
『ただ、酷い状態の者も多く、早い治療が必要かと』
『あとは、例の部屋とコイツですね』
『⋯⋯っ』
一斉に睨みつけられたエルフの王は、口を開けてだらだらと脂汗をかいている。
〖さて、俺が誰かだっけな?〗
『違いますよ。鍛冶神様。下賎な誰か?だそうですよ』
〖そうだったな。下賎な誰かは名乗らなくてもいいか?〗
『そうですね。でも名乗った方がよろしいのではないですか?これから絶望を味わってもらうためにも』
〖そうだったな。俺は鍛冶神だ。俺がかつてのエルフの正統な王と共に作ったものを返してもらいに来た。貴様の様な紛い物の王には必要ないものだろ?〗
『な、なぜ、神が?なぜ⋯鍛冶神であれば我らの祖先と繋がりがあったはず。それがなぜ⋯』
〖うるせえよ〗
『うるさいですね』ずばっ
〖あっ〗
『え?』ずるっぐしゃ
『ああああっあ、脚が~』
〖お前、剣が穢れるんじゃなかったのかよ〗
『そうでしたね。ですが、鍛冶神様を前にして跪くことすら忘れていたようでしたので、思い出させて差し上げようかと』
〖そうかよ⋯〗
えげつねぇな。
『ああああっ』
『ですが、更に煩くなったようですね。どうしましょうか?』
『隊長、救出した獣人達の中には手や足を奪われた者もおりました』
『耳を落とされ、目を潰され、喉を潰されている者もおりました』
『魔物や妖精たちも酷い有様でした』
『コイツも同じ様にしてやれば、黙るのではないですか?』
次々と仕事を終え集まる隊員たちから報告が上がる。
『ふむ。そうですね』
『や、やめ⋯』グサッ
『ギャーっ うぐっ』
『だから煩いですよ。私としたことがうっかりしてましたね。初めからこうすれば剣を穢すこともありませんでしたね』しゅっ
〖ははは〗
剣に付いた血を払いながら、氷魔法で、手を床に串刺しにしやがった。ついでに口も凍らせたか?
『なぜ、自分が他者にしたことを自分はされないと考えているのですかね?エルフとはいつからこの様に愚かしくなったのか。ああ、もはやエルフではないのでしたか?』
『⋯んぐぐっ』
何か言いたそうだな。まあ、ろくな事じゃないだろうが。
〖まあ、エルフもどきは今日をもって終わりを迎えるんだ。だいぶ数は減ってしまうが、これからは正統なエルフのみになるはずだからな〗
『んぐっ』
何やら目に力が戻ったな。コイツ
〖ん?何を勘違いしてるんだ?似非エルフが。お前、自分がエルフだとまだ勘違いしてるのか?〗
『⋯っ』
なに、目を見開いてショックを受けてやがる?
〖まあ、一応、エルフの王を騙っていたお前に教えてやろう。お前たちにはこれから神罰が下る。お前たち似非エルフは全員この世界から消える。もちろん転生も叶わぬ〗
『⋯っ』
まだ信じられないか?
〖お前たちはやりすぎた。神が気付かぬとでも思ったか?思い上がりも甚だしいな。精霊殺しに、同族殺し。有りもしない聖域に攻め入るため、あの鎧を傀儡にしようとしたのだろう?〗
『⋯⋯っ』ガタガタ
お前たちが聖域の存在を知ることは許さん。せいぜい有りもしないものの為に、滅びの道を進んだと思って消えるがいい。
『鍛冶神様、何か言いたそうですよ?どう致しますか?』
〖そうだな。最後に一言くらい聞いてやるか。その後は、お前たちが見たことと同じ様にしてやれ。ああ、片耳、片目は残してやれよ。自分たちの最後を見たいだろうからな〗
『かしこまりました』
『⋯っ た、助けてくれっ何でもするし、何でもやるっ』がくがく
〖貴様、この期に及んで⋯っ〗
『やはり、塞ぎますか?』
〖そうだな⋯〗
『わ、儂は確かに教えられたんだ!聖域にいけば精霊樹はまた儂の物になり、世界を治められると!く、黒づくめの占星術師にっ』
何だと?全員の動きが一瞬止まった。いや、止まっている場合ではない。
〖黒づくめ?エルフではないのか?〗
どういうことだ?まさか⋯
落ち着け。気取られるな。情報を聞き出すんだ。
『違う!ある日ふらっと現れて消えたんだ!だが、確かに奴の持つ水晶には映し出されたんだ!精霊樹が!』
〖⋯いいように騙されたな。この地に聖域など存在しない〗
まさか、裏でヤツが?
『そんなはずはない!ヤツは確かに言ったんだ!『愛し子の鎧を使え。それと共に聖域に攻めいれば必ず成功する。鎧は神が作った物、それさえあれば聖域に阻まれることなく入れるはずだ』と、だから儂はっ!そうだ、ヤツを探してくれっ!黒づくめの不気味なヤツだ!隠してるようだったが、儂は見た!顔半分真っ黒な痣に塗りつぶされたようだった!どこに消えたかは分からないがっ』
〖黙れ。戯れ言はそこまでだ。隊長〗
『畏まりました』
『⋯っ』がたがたっ
隊長に再びエルフの王の口を閉じさせる。
まさか、ヤツが?再び実態を取り戻し動き出したのか?
いや、考えるのは後だ。今、やるべきは主神の望み通り、エルフに本当の絶望を与えること。こいつらに一部の隙も見せてはならない。どうせこれ以上の情報は引き出せまい。
〖隊長、行くぞ〗バサッ
『畏まりました。貴方たち、あとは任せましたよ』
『『『『はっ!』』』』ビシッ
今は一刻もはやく鎧の元へ⋯
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バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
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