苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~

泉南佳那

文字の大きさ
94 / 117
第7章 パーティー、そして

しおりを挟む
「お父様はその後、お変わりはございませんか」
「ええ、あの日は問題なかったのだけれどね。昨日、また軽い発作を起こしたものだから、今は入院しているわ」

「ぼくも昨日見舞いに行ったけれど、元気そうだったよ」
「まあ、念のための入院だから。でも、何と言っても高齢なので、大事を取ったほうがいいとお医者様に言われて」

 お見舞いに行きたいと申し出たけれど、その必要はないとふたりに言われた。
「会長が退院してから、ちゃんと席を設けるから心配しなくて大丈夫だよ」

「まあ、それにしても、壱子ちゃん、綺麗なお嬢さんになったわね。子供のころもお人形さんみたいに可愛かったけれど」

「すみません。わたしは宗太さんのお母さんのこと、あまり覚えていなくて……」

「あなたはまだ小学生だったものね。でも、なんと言っても、宗太の初恋のお相手ですからね。わたしはよーく覚えているわよ」
 
 宗太さんのお母さんはにっこり笑った。

 ああ、この笑顔。
 宗太さんの笑顔はお母さん譲りなんだ。

「ごきげんよう、エリカさん」
 篠崎先生がソファーから立ち上がって、声をかけてくれた。
 神谷先生も手にしていた湯呑を茶托に置き、会釈をしてくれた。

「では、先生方は、今回のこと、ご存知だったんですか」

「ええ、もちろん」
 おふたりは顔を見合わせて微笑んだ。

「喜代さんに、宗太さんの花嫁候補のエリカさんのお見立てをお願いされていたの、実は」

 篠崎先生は宗太さんのお母さんに話しかけた。
「喜代さん、ご安心なさいな。エリカさんはとても素直で前向きな女性よ。きっと息子さんの素晴らしいパートナーになるわ」

 篠崎先生がわたしに優しい眼差しを向けた。
「それにしても、はじめにお会いしたときも綺麗なお嬢さんとは思っていたけれど、ますます美しさに磨きがかかったみたいね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

強引な初彼と10年ぶりの再会

矢簑芽衣
恋愛
葛城ほのかは、高校生の時に初めて付き合った彼氏・高坂玲からキスをされて逃げ出した過去がある。高坂とはそれっきりになってしまい、以来誰とも付き合うことなくほのかは26歳になっていた。そんなある日、ほのかの職場に高坂がやって来る。10年ぶりに再会する2人。高坂はほのかを翻弄していく……。

家政婦の代理派遣をしたら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
このご時世、いつ仕事がクビになるか分からない。社内の派遣社員が一斉にクビを告げられた。天音もそんな1人だった。同じ派遣社員として働くマリナが土日だけの派遣を掛け持ちしていたが、次の派遣先が土日出勤の為、代わりに働いてくれる子を探していると言う。次の仕事が決まっていなかったから天音はその派遣を引き受ける事にした。あの、家政婦って聞いたんですけど?それって、家政婦のお仕事ですか!? 強面の雇い主(京極 樹)に溺愛されていくお話しです。

紡織師アネモネは、恋する騎士の心に留まれない

当麻月菜
恋愛
人が持つ記憶や、叶えられなかった願いや祈りをそっくりそのまま他人の心に伝えることができる不思議な術を使うアネモネは、一人立ちしてまだ1年とちょっとの新米紡織師。 今回のお仕事は、とある事情でややこしい家庭で生まれ育った侯爵家当主であるアニスに、お祖父様の記憶を届けること。 けれどアニスはそれを拒み、遠路はるばるやって来たアネモネを屋敷から摘み出す始末。 途方に暮れるアネモネだけれど、ひょんなことからアニスの護衛騎士ソレールに拾われ、これまた成り行きで彼の家に居候させてもらうことに。 同じ時間を共有する二人は、ごく自然に惹かれていく。けれど互いに伝えることができない秘密を抱えているせいで、あと一歩が踏み出せなくて……。 これは新米紡織師のアネモネが、お仕事を通してちょっとだけ落ち込んだり、成長したりするお話。 あるいは期間限定の泡沫のような恋のおはなし。 ※小説家になろう様にも、重複投稿しています。

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

俺を好きになるな、お前を愛していない、極道の目覚めた独占欲

ラヴ KAZU
恋愛
父親の会社が倒産の危機にさらされる一人娘の加子。 男を知らずに三十六年間生きてきた。 父親の会社の危機を救う代わりに結婚を強要してきた林田。 加子はひょうんなことから知り合った極道三国蓮也に一目惚れをする。 林田にはじめてを捧げたくない加子は、蓮也と一夜を共にする。 そして、蓮也への想いが諦められない加子は蓮也のマンションで暮らすことになった。 蓮也は極悪非道のヤクザの組長、危険な男の毒に侵される加子。 果たして加子は蓮也との未来を手にすることが出来るのか。 そして、蓮也は加子を愛せるのか。

お見合いに代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
綾美は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、お見合いの代理出席をする為にホテルへ向かったのだが、そこにいたのは!?

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

処理中です...