私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
37 / 378

37話 街を見て周るのでございます!

しおりを挟む

「えーっ!? 本当にアイリスちゃんは食べなくて良いの?」


 ロモンちゃんは、夕飯を食べるために来た飯屋の前で、私にそう訊いてきた。
 私は食べなくても良いんだ。
 お金の無駄遣いをさせるわけにはいかないからね。


【はい、私は基本、食事はひつようありませんので】
「だめ? 食べようよー、いっしょに…ね?」


 リンネちゃんが私の腕にしがみつき、首をかしげてくるのが可愛らしいが、ダメなものはダメ。
 私の食費は浮かせないとね。


【いいえ、お金は大切です。私が食べなければおよそ550ストンも節約できます。魔物である私より、お二人には……】
「いいもん、お金よりアイリスちゃんの方が大切だもん! アイリスちゃんは私達の家族だよ!」
「そうだよ、それにアイリスちゃんは今日初めて城下町に来たんだし、食べるべきだよ」


 ぐぬぬ……お金より大切だとか、家族だとか言われるとなぁ……。
 嬉しくて涙が出そう。
 しょうがない、今日だけ……今日だけね?


【……そこまで言われるのなら仕方ありませんね。今回だけですよ?】
「うん!」
「さ、入ろ入ろ」


 二人に手を引かれ、私達が入ったお店は、主に女性が多い。
 料理もオシャレで、内装も花や目に優しく光る魔法で灯した明かりが実に女性の心をくすぐってるって言える。
 私も女だし、こういう店は好きだ。
 じつに二人らしい趣味の店をチョイスしたものだね。


「何名様でしょうか?」


 この店のスタッフであろう女性が、私達の元に寄ってきて、人数を訊いてきた。
 ここら辺は日本と同じなんだね。

 もっとも、その女性のナプキンを巻いてる頭からはまるでコアラのような耳が見えてるんだけど___。


「二人です! あの…仲魔は一緒に食事できますか?」


 リンネちゃんは手でチョキを作り、顔の横に添え、私が一緒に食事できるか訊いている。


「それでしたら、こちらへどうぞ~」


 そう、コアラ耳のスタッフの後についていくと、この世界の言葉で『仲魔席』と書かれたプレートが下げられている席に案内された。


「ではごゆっくり」


 コアラ耳のスタッフはメニューを置いて行ってしまった。


「何食べようかぁ…」
「うーん……アイリスちゃんは何食べたい?」
【そうですね……】


 私は小石視点を駆使し、他の客が食べている料理を見てみる。
 ダークエルフの女の人が食べている、煮込みハンバーグみたいな料理は…うーん、今の気分じゃないな。
 小金持ちそうなおばあさんが食べている、麺物…いや、違うなぁ…。
 ビキニアーマーの女の人が食べているのは……おっ! 丸い生地の上に野菜や薄切り肉がちりばめられた料理だ。ピザに似てるんだ。
 これにしよう。

 確か、この世界ではランパスというらしい。
 シーフードのランパスにしようかな。


【私はシーフードのランパスにしようと思います】
「あ! ランパスか、いいね。じゃあぼくはチーズのランパスにしようかな」
「それじゃあ私はトマトのランパスにしよっと。ねぇ、3分の1ずつにして3人で分けない?」
「ぼくはそのつもりだったよ?」
【私もです】


 メニューが決まったから、私達は店員さんを呼んで注文をした。
 だいたい15分くらいして、私達全員のランパスは届く。
 この店はどうやら最初から食べやすい大きさに切ってあるタイプみたいで、ピザカッターならぬランパスカッターはついてなかった。

 それぞれのランパスを3人で分け合う。


「「いっただっきまーす!」」
【いただきます】


 私はシーフードのランパスを一枚口の中に入れた。
 魚介類の海の風味が口の中に広がって美味しい。


「うーん……やっぱりアイリスちゃんのご飯の方が美味しいかも……」
「そだね、確かに美味しいんだけどね…アイリスちゃんの料理はやっぱり、お店より美味しんだね」
 

 そう言ってくれるのは本当に嬉しい。
 料理を作る甲斐があるってものだよ。


【…それでは明日からは私がいつも通り、私がお作りしましょうか? あの宿には簡易的ですが部屋に台所もありますし】
「うん! お願いできるかな?」
「わぁい!」


 その後、私達はものの8分ほどでランパスを食べ終わった。
 私もこの娘達に感化されて、食べるのが速くなったんだ。
 3人分の代金1760ストンを払い、この小洒落たお店を出た。

 本当は帰りに買い物をしたかったんだけど、夕方の5時半には市場はだいたいしまっちゃう。
 冒険の店とギルドは1日中やってるらしいんだけどね。

 今は6時半。
 諦めた方がいいね。

 ちなみに、この世界には『鮮度が落ちる』とか『腐る』とかっていう心配はいらない。
 それもこれも、あの例の袋のおかげ。
 容量が見た目よりも多い上に、入れた物の時間が止まるというおかしい性能のくせに、一家に一袋、冷蔵庫感覚であるんだ。
 スペーカウという、家畜の魔物の皮で作られてるんだよ。

 ゆえに、この世界には干物や塩漬けとかいう食文化がない……と、思いきやそんなことはない。
 ハムやベーコンはあるからね。
 なんせ、そのスペーカウの家畜化に成功したのが今から30年前の事らしく、その前にはちゃんと塩漬けとかがあったんだって。

 スペーカウの皮により、物の流通がより盛んになったことを、この世界の近代歴史書曰く、『第3次ロジスティック革命』って言うらしい。
 
 つまりはウォルクおじいさんは、私と孫達に冷蔵庫をプレゼントしたみたいなものなんだよ。
 
 そうこうしているうちに、宿屋『花の香』に戻ってきた。
 そしてお風呂に入る。
 宿のお風呂は広かったから、私達3人で入っても少し窮屈になる程度なんだ。

 脱衣所でなんのためらいもなく服を脱ぎ捨てる二人。
 いつ見ても、歳相応の少し痩せ型であり、そのスベスベの肌のお身体は、とてもおふつくしいです。
 眼福、眼福。


「ふぃ~…気持ち良い。明日からお仕事、がんばろーね!」
「そうだねぇ…まずはランクを上げて、受けられる依頼をふやしたいねぇ……ね、アイリスちゃん」


 お風呂がいい感じに狭く、密着しているお二人の身体がスベスベで、触れ心地がとても良いのです。
 おじいさんの家の時は、一人一人、バスタブにはローテーションで入ってたから…。
 こう、今なら太ももとか、お尻とか揉んでも気づかれないんじゃ_____。


「ねぇ、アイリスちゃん? 聞いてた?」
【ひゃいっ!? あ、いえ。申し訳ございません】
「あはは、『ひゃいっ!?』だってー。可愛い」


 危ない危ない。
 危うくパーティ内セクシャルハラスメントをするところだった。
 冒険者の間でたびたび問題になるんだって。
 誘惑に負けてはいけない。
 難しいかもしれないけれど、誘惑に負けてはいけない。

 お風呂から上がった後は、部屋を暗くして眠るんだ。
 だけど______。


【あの、なんで二人とも真ん中にベットを寄せているんですか?】
「だってアイリスちゃんと一緒に寝たいし…」
「そう、ぼく達どっちもアイリスちゃんと寝たいの。だから、ほら…アイリスちゃんは私達の真ん中に来て!」


 そう言って、リンネちゃんは幼体化した私のサイズの隙間をロモンちゃんとの間に開け、そこを手で叩く。
 私がメスでよかった。
 男だったら、こんな状況は耐えられるはずがない。
 

【はぁ…仕方ないですね】
「できる限り毎日、一緒に寝ようね」
「お風呂もねー」


 私は手を肩まであげ、肩をすぼめ、やれやれと言いたげなポーズをとった。
 内心、とても嬉しいです。
 寝てる間にあんなことやこんなこと………いや、それは流石にいけない。

 私は二人の美少女の間に滑り込んだ。


「ふふ、おやすみ」
「おやすみ、お姉ちゃん、アイリスちゃん」
【おやすみなさいませ】


 私はゆっくりと、瞼を閉じた。


◆◆◆


 午後10時半。
 私はベットから二人を起こさないように出て、自分の袋をひっつかんで身支度をする。

 私達は10時にベットに入った。
 この双子はどちらも20分で寝てしまうことは把握している。
 ちなみに起きる時間は朝の7時。
 だから、私は6時40分あたりに起きて、ベットに再度、潜り込んでおけばいい。

 私は鍵をあけ、部屋から出た。
 そして、『魔流の気』鍵穴に流し込むように使い、鍵を外側からしめる。
 最近では、『魔流の気』を実態化できるようになったおかげで、こんな事もできるんだ。

 そして、宿屋もすでに戸締りをしているから、私は部屋と同じように、この宿屋の入り口の戸を開け、外側から閉めた。


【特技『隠密』を習得しました!】


 正直助かる。
 今からすることは、ばれないことは必須だからね。
 いくら夜だと言っても、城下町の門前や城前などの要所に見張りが居るし、ギルドや冒険の店は1日中やっている。

 つまり、本来ならば魔物である私が城内から出ることはできないし、仮に出れたとしても入ることができない。

 だから私は……空を飛んで行こうと思う。

 実は、幼体化のまま、手の大きさだけをリトルリペアゴーレムのままにできるんだ。
 それに『手腕完全操作』の効果は自分の目で見える範囲で、重力とか関係なく自由に手を操作できる。

 つまりは、私は自分を掴んで、空を飛べば良いんだよ。
 なにせ、自分を掴んでるんだから、ずっと見ていることにもなるしね。
 そしたら、目的地にも早く着く。
 『手腕完全操作』はMP消費しないしね。

 でも、飛ぶ場所が問題なんだよ。
 あんまり街中では飛べないもの。

 ゆえに私は城下町を囲んでいる壁の真下まで行き、その影の下で身体のみを幼体化させ、空を飛んだ。

 難なく外に出られた私は、空を飛んだまま店主さんに教えてもらった森まで向かう。

 おおよそ、10分程度でついた。
 本来ならば馬車で30分程、歩きで1時間はかかかるらしいんだけどね。
 空だから障害物がなかったってのと、スフェアラで素早さを上げたことが要因かな。

 それに、空から地上を見てたわけだから、森の中を散策しなくても例の天の道のダンジョンを、探知で見つけることができた。

 私はその入り口付近に降り立った。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...