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297話 ガーベラさんのお家に一泊するのでございます……!
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「ど、どうぞ」
「お、お邪魔します……」
入った瞬間にガーベラさんの匂いが鼻をくすぐる。前に来た時と大きくは変わってない。ただ、壁に掛けてあった槍と盾がなくなってるくらい。
「あそこにあった武器はどうしたのですか?」
「最近スペーカウの袋をかなり拡張したから、そっちに入れたよ」
「そうですか」
私の体を使った武器が部屋に飾られてなくて少し寂しい。ただそのことを正直に口に出すわけにはいかない。変態みたいになってしまう。ガーベラさんはお茶を入れるから待っていてといい、私はソファに座らされる。そしてすぐに温かいレモンティーを運んできてくれた。
「……はい」
「ありがとうございます」
「本当に泊まっていくんだよね?」
「はい」
「あの、この家、ベッドが一つしかないんだ。悪いんだけどアイリスはそっちを使ってよ」
「ガーベラさんは?」
「俺はほら、ソファで寝るし」
そういう提案を自然とできるガーベラさん、本当に好き。たぶんそういうこと言い出すとは予想がついていたから私も準備はしてある。
「私、寝袋を持ってきているので必要ありませんよ」
「えっ、ああ……いやでも、彼女を地べたに眠らせて、自分はベッドを使うというのはやっぱり気がひけるな……。それなら俺も寝袋使おうかなぁ」
「………」
この家に泊まることにしたのは……無理やり目的を持たせるなら、ガーベラさんを励ます会というか、頑張れ会というか、応援をするため。ただガーベラさんと私の様子次第なら、お互い寝袋を使わずに一つのベッドで……なんてこともありえるかもしれない。
私がなんて考えてるかわからないであろうガーベラさんは、私が数秒黙ったのをみて怒ってるか何かと勘違いしたのか、申し訳なさそうな表情を浮かべて話を始めた。
「あのアイリス……その、改めてもう一度言うよ。ごめん」
「え? いえ、ガーベラさんが謝る必要はありませんって」
「いや、でも、ほら……泣かせちゃったのは……」
国王様の前では堂々としてたけど、ガーベラさんにとって私を泣かせると言うことはやっぱりかなり大きいことらしい。でもあの場面、やはり私は泣くのを我慢すべきだったと思ってる。
「私こそ、泣いてしまって申し訳ありませんでした。せっかくこの国の英雄に任命されたというのに、後味が悪いですよね」
「そんなことないよ、むしろ、すごく嬉しかった」
「そうですか……?」
ガーベラさんは本当に嬉しそうに、なおかつ照れ臭そうに自分の頬をかいた。なぜかガーベラさんはたまに可愛らしさを感じることがある。ふと、夜のギルドで知り合いのマッチョな彼氏を持つ人が「一見オークみたいだけど可愛いとこあるのよ」と言っていたのを思い出した。今ならその気持ちが分かる気がする。
「うん、グライドさんとジーゼフさんも言っていたけれど、俺のこと本当に大事に思ってくれてるんだなって」
「それは、その通りですよ。私にとってガーベラさんはすでにかけがえのない存在です」
「……ありがとう」
喜ぶことを期待してかけがいのない存在だなんて言ってみたのだけれど、ガーベラさんはなぜか少し遠い目をした。私に告白してきた日の私の態度と今を比較したりしてるのかもしれない。あの頃と比べたら確かに私はガーベラさんにデレデレしてる。ここに泊まろうと思ったのだって、今の仲まで発展していなかったらありえないこと。
ガーベラさんは死なないし行方不明にもならないと約束してくれた。こうして二人きり、周りの目もない状況だし、私の、今のガーベラさんに対して思っていることを正直に伝えたら、その約束がより強固なものになったりしないかしら。
「そうです、ガーベラさん」
「なんか急に改まった様子になったけど、どうしたの?」
「私、ガーベラさんのことがとても好きです」
「えっ! ありがとう!」
「……正直、私にこんな感情を抱かせたことに驚きですよ。まさか私が異性のことをこんなに好きになるなんて」
「……うん」
「だからあの約束はぜーったいに守ってくださいね?」
「うん」
ガーベラさんは元気よく返事をした。なぜかまだ不安だけれど、こうして伝えておくに越したことはない。
好きだと言ったから心を許してくれたのか、私の隣にガーベラさんが座ってきた。なんだか喋りづらそうにソワソワしてる。
「実はSランクになったらプロボーズしようと思っていたんど、俺。アイリスに」
「ええ、知っていますよ。ですが過去形に……?」
「あ、知ってた……。ま、まあいいや。でね、勇者になったってことはSランクにされるのは確実なんだ。だからもう条件は満たしてしまったことになる。その、知ってるなら、その考えはAランクからSランクになるのに二年はかかると予想して発言したものなんだけど」
「それがもう実現しそうになったから、プロボーズの条件を変えたいということでしょうか?」
「そう、その通り。……魔王を倒して無事に帰ってきたらにしようと思うんだ」
なるほど、確かにそれは大きい一つの区切りかもしれない。ただ、かなり欠点がある。やっぱりガーベラさんも冷静じゃないのかしら。
「ガーベラさん、私がじっくり付き合ってから結婚したいと理解してくれていて、だから告白に歳月をあけたいということですよね」
「うん」
「しかし魔王はすでに復活して、ガーベラさんもそれに敵う強さになっていると思うので、おそらく決着も一年経つか経たないかぐらいだと思うのですが……」
「あー、いい節目だと思ったのに」
「……あと、ガーベラさんは勝ちます。私にそう約束しました。となるとプロボースするとはっきり言った、今この瞬間が実質プロボースということになるのではないでしょうか」
ガーベラさんは目を点にした。しばらく長いこと呆然とした様子で黙ってしまう。私の体感で五分くらいして、やっと体の硬直が解けて私の言動に対する答えを言ってくれた。
「確かにそうなるかもしれない。でもいまのはプロボーズとしてカウントしないでくれると嬉しい。きちんとした時にきちんとする。でもそんな日が経たないことに関しては……あの、プロボーズの返事を二年後にするとか、そういった感じにしてくれれば……」
プロボーズ……私は初めて聞いた時から一日に一度は考えていた。私の中で、まだ迷いはあるものの答えは出ている。二人きりだし、どれだけ甘えることを言っても弄られたりはしない。惚気るなら、全力で惚気てしまいたい。だから、言うの。
「別に、私。もう考え変わりましたから」
「どういうこと?」
「が、ガーベラさんとなら……その、お付き合いして一年経ってなくても、け、結婚をしてもいいかな……なんて。が、ガーベラさんだからこそそう思ってるんですよ! 結局惚れやすい安い女だったとかじゃありませんからね!」
「ほ、ほんと?」
「ほんとです。しっかりイメージできるんです、貴方とずっと一緒に過ごすことが」
昔の私じゃ絶対に考えれない言動。確実に、そうね、今より半年前までの私なら今の私を軽蔑していた。でも仕方ない、仕方ないなんて負けて折れてしまったようで言いたくないけど、仕方ないものは仕方ない。人の心なんて変わるものなのね。
「いいの?」
「はい」
「……じゃあ、魔王を倒し終わったら俺は、アイリスに求婚するよ」
「男らしく言い切りましたね」
「アイリスはその方が好きかなと思って」
「……はい」
「こうなったら尚更死んでなんかいられないな。勇者、実はちょっと不安だったけど……その先に待っているものがアイリスなら、いくらでも頑張れるよ」
「……お、応援になりましたか?」
「十分」
それならよかった。……ところで目的の一つは意図せず達成できたけど、お泊まりするというイベントは残ったままなのよね。これからが長くなるわね……。
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「お、お邪魔します……」
入った瞬間にガーベラさんの匂いが鼻をくすぐる。前に来た時と大きくは変わってない。ただ、壁に掛けてあった槍と盾がなくなってるくらい。
「あそこにあった武器はどうしたのですか?」
「最近スペーカウの袋をかなり拡張したから、そっちに入れたよ」
「そうですか」
私の体を使った武器が部屋に飾られてなくて少し寂しい。ただそのことを正直に口に出すわけにはいかない。変態みたいになってしまう。ガーベラさんはお茶を入れるから待っていてといい、私はソファに座らされる。そしてすぐに温かいレモンティーを運んできてくれた。
「……はい」
「ありがとうございます」
「本当に泊まっていくんだよね?」
「はい」
「あの、この家、ベッドが一つしかないんだ。悪いんだけどアイリスはそっちを使ってよ」
「ガーベラさんは?」
「俺はほら、ソファで寝るし」
そういう提案を自然とできるガーベラさん、本当に好き。たぶんそういうこと言い出すとは予想がついていたから私も準備はしてある。
「私、寝袋を持ってきているので必要ありませんよ」
「えっ、ああ……いやでも、彼女を地べたに眠らせて、自分はベッドを使うというのはやっぱり気がひけるな……。それなら俺も寝袋使おうかなぁ」
「………」
この家に泊まることにしたのは……無理やり目的を持たせるなら、ガーベラさんを励ます会というか、頑張れ会というか、応援をするため。ただガーベラさんと私の様子次第なら、お互い寝袋を使わずに一つのベッドで……なんてこともありえるかもしれない。
私がなんて考えてるかわからないであろうガーベラさんは、私が数秒黙ったのをみて怒ってるか何かと勘違いしたのか、申し訳なさそうな表情を浮かべて話を始めた。
「あのアイリス……その、改めてもう一度言うよ。ごめん」
「え? いえ、ガーベラさんが謝る必要はありませんって」
「いや、でも、ほら……泣かせちゃったのは……」
国王様の前では堂々としてたけど、ガーベラさんにとって私を泣かせると言うことはやっぱりかなり大きいことらしい。でもあの場面、やはり私は泣くのを我慢すべきだったと思ってる。
「私こそ、泣いてしまって申し訳ありませんでした。せっかくこの国の英雄に任命されたというのに、後味が悪いですよね」
「そんなことないよ、むしろ、すごく嬉しかった」
「そうですか……?」
ガーベラさんは本当に嬉しそうに、なおかつ照れ臭そうに自分の頬をかいた。なぜかガーベラさんはたまに可愛らしさを感じることがある。ふと、夜のギルドで知り合いのマッチョな彼氏を持つ人が「一見オークみたいだけど可愛いとこあるのよ」と言っていたのを思い出した。今ならその気持ちが分かる気がする。
「うん、グライドさんとジーゼフさんも言っていたけれど、俺のこと本当に大事に思ってくれてるんだなって」
「それは、その通りですよ。私にとってガーベラさんはすでにかけがえのない存在です」
「……ありがとう」
喜ぶことを期待してかけがいのない存在だなんて言ってみたのだけれど、ガーベラさんはなぜか少し遠い目をした。私に告白してきた日の私の態度と今を比較したりしてるのかもしれない。あの頃と比べたら確かに私はガーベラさんにデレデレしてる。ここに泊まろうと思ったのだって、今の仲まで発展していなかったらありえないこと。
ガーベラさんは死なないし行方不明にもならないと約束してくれた。こうして二人きり、周りの目もない状況だし、私の、今のガーベラさんに対して思っていることを正直に伝えたら、その約束がより強固なものになったりしないかしら。
「そうです、ガーベラさん」
「なんか急に改まった様子になったけど、どうしたの?」
「私、ガーベラさんのことがとても好きです」
「えっ! ありがとう!」
「……正直、私にこんな感情を抱かせたことに驚きですよ。まさか私が異性のことをこんなに好きになるなんて」
「……うん」
「だからあの約束はぜーったいに守ってくださいね?」
「うん」
ガーベラさんは元気よく返事をした。なぜかまだ不安だけれど、こうして伝えておくに越したことはない。
好きだと言ったから心を許してくれたのか、私の隣にガーベラさんが座ってきた。なんだか喋りづらそうにソワソワしてる。
「実はSランクになったらプロボーズしようと思っていたんど、俺。アイリスに」
「ええ、知っていますよ。ですが過去形に……?」
「あ、知ってた……。ま、まあいいや。でね、勇者になったってことはSランクにされるのは確実なんだ。だからもう条件は満たしてしまったことになる。その、知ってるなら、その考えはAランクからSランクになるのに二年はかかると予想して発言したものなんだけど」
「それがもう実現しそうになったから、プロボーズの条件を変えたいということでしょうか?」
「そう、その通り。……魔王を倒して無事に帰ってきたらにしようと思うんだ」
なるほど、確かにそれは大きい一つの区切りかもしれない。ただ、かなり欠点がある。やっぱりガーベラさんも冷静じゃないのかしら。
「ガーベラさん、私がじっくり付き合ってから結婚したいと理解してくれていて、だから告白に歳月をあけたいということですよね」
「うん」
「しかし魔王はすでに復活して、ガーベラさんもそれに敵う強さになっていると思うので、おそらく決着も一年経つか経たないかぐらいだと思うのですが……」
「あー、いい節目だと思ったのに」
「……あと、ガーベラさんは勝ちます。私にそう約束しました。となるとプロボースするとはっきり言った、今この瞬間が実質プロボースということになるのではないでしょうか」
ガーベラさんは目を点にした。しばらく長いこと呆然とした様子で黙ってしまう。私の体感で五分くらいして、やっと体の硬直が解けて私の言動に対する答えを言ってくれた。
「確かにそうなるかもしれない。でもいまのはプロボーズとしてカウントしないでくれると嬉しい。きちんとした時にきちんとする。でもそんな日が経たないことに関しては……あの、プロボーズの返事を二年後にするとか、そういった感じにしてくれれば……」
プロボーズ……私は初めて聞いた時から一日に一度は考えていた。私の中で、まだ迷いはあるものの答えは出ている。二人きりだし、どれだけ甘えることを言っても弄られたりはしない。惚気るなら、全力で惚気てしまいたい。だから、言うの。
「別に、私。もう考え変わりましたから」
「どういうこと?」
「が、ガーベラさんとなら……その、お付き合いして一年経ってなくても、け、結婚をしてもいいかな……なんて。が、ガーベラさんだからこそそう思ってるんですよ! 結局惚れやすい安い女だったとかじゃありませんからね!」
「ほ、ほんと?」
「ほんとです。しっかりイメージできるんです、貴方とずっと一緒に過ごすことが」
昔の私じゃ絶対に考えれない言動。確実に、そうね、今より半年前までの私なら今の私を軽蔑していた。でも仕方ない、仕方ないなんて負けて折れてしまったようで言いたくないけど、仕方ないものは仕方ない。人の心なんて変わるものなのね。
「いいの?」
「はい」
「……じゃあ、魔王を倒し終わったら俺は、アイリスに求婚するよ」
「男らしく言い切りましたね」
「アイリスはその方が好きかなと思って」
「……はい」
「こうなったら尚更死んでなんかいられないな。勇者、実はちょっと不安だったけど……その先に待っているものがアイリスなら、いくらでも頑張れるよ」
「……お、応援になりましたか?」
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