神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

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巨竜ブルツァール(1)

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 三日目の夕方、ラウネス一行は王都エルヴァルドへと入った。
 住民の多くは逃げたらしく、人の姿はほとんど見られない。街のいたる所の建物が破壊されて瓦礫の山と化している。
 どこかで戦闘が繰り広げられている。地響きと、うなり声、砂塵が流れる。
「王城の方向だ」
 ブルツァールが通過したところは建物が破壊しつくされ、破壊することが目的であるかのように瓦礫の道が続いていた。
 一行が進むと、もうもうと砂塵が巻き上がるところが見えた。
 そこにブルツァール。
 時折、青い頭が見え隠れする。巨大だ。今までに見たどの生物より巨大だ。建物の五階ほどは裕にある。全身は青く固い鱗に覆われ、目はルビーのように赤い。
 背中には無数の棘が逆立ち、棘には人を数秒で跡形もなく溶かす猛毒があると言われる。
 鼻先に一本と頭上に二本、そして長い尻尾の先にも二本の角。背中には巨大な翼。広げると三十メートルはあろうかという翼は一度の羽ばたきで建物を吹き飛ばす。
 エルンは息を呑んだ。あんな化け物とどう戦えばいいのか見当も付かない。
 魔法衛兵隊が攻撃魔法で応戦しているが効果があるようには見えなかった。攻撃魔法が弾かれている。
「エルン、行けそうか?」
 ラウネスはエルンの表情を窺った。
「いや、ちょっと無理かな……」
「おい、エルン。やってみないでどうする。お前らしくもない」
 ガルディの叱責。
「ややややってみます」
 エルンの言葉には力がなかった。
「先回りするぞ」
 ラウネスの言葉に一行は速度を上げた。
 しばらく馬車は速度を上げて砂塵の中を走る。
 すると、急に視界が開けブルツァールの前へと出た。
 ブルツァールの全身がエルンの目に飛び込んだ。圧倒される迫力だ。
「ダメ元で、とにかくやってみるしかない。降りましょう」
 エルンの声にバヒム、ガルディ、アルが馬車を降りた。
「でも、俺たち何も出来ねえよ」とバヒムが言った。
「僕とアルが魔法で力の限り攻撃します。もし、力尽きて倒れたらその時は抱えて逃げてください」
「よし、わかった。後のことは任せろ。エルンもアルも思う存分やれ。死んでいても運んでやる。立派な墓を建ててやる」とガルディ。
「よ、よろしくお願いします……じゃあ、僕らがどこにいるか見ていてください。アル、行こう」
 さすがのアルも恐怖に怯えている。
「アル、しっかり」
「わかってるわよ」と言いながらも涙目になっている。
 来るんじゃなかったと今では思っているはずだ。
 エルンはブルツァールの進行方向へと走ると足場のよいところを探し、そこで構えた。
 そして、両手を突き出すと、ブルツァールの頭に精神を集中させ、渾身の攻撃魔法ブランド・ブリッツを放つ。
 攻撃は命中するが、ダメージはなさそうだ。
 弾かれた印象があった。
 当たった瞬間に分散し、周囲へと飛び散った。
 アルも攻撃魔法を放ち、ブルツァールの脇腹、腹へと命中させるが効果はない。
 魔法衛兵隊も絶え間なく攻撃している。
 巨大なボウガンのような武器バリスタでの攻撃や槍、弓矢での攻撃も続けられているが効果はみられない。ただ、数本の矢は脇腹には刺さっていた。物質による攻撃は多少の効果があることはわかる。
——どうしたらいい?——
 エルンは自分に問いかけるが答えは出ない。
「ダメよ。攻撃が弾かれちゃう」
 アルが泣きごとのように叫んだ。
「弾かれる……」
 いくら魔法の攻撃をしても効果がない。
 ひょっとするとブルツァールに反射魔法が掛けられているかもしれないとエルンは思った。では、どのようにすれば解除できるか。
 時間を掛けて解析すれば別だが、基本、掛けた魔法使いでなければ解除はできない。
 解除は不可能とエルンは判断した。
「どうしよう……」
 エルンは悩んだ。
 反射魔法を反射するのは魔法だけ。
 エルンはピンときた。バヒムに向かって叫んだ。
「バヒムさん、この剣をあのブルツァールまで投げられますか」
「この剣をか……」
 エルンはザリーグラネットの剣を抜くと、バヒムに渡した。
——協力してよね、ザリーグラネット——
「この剣をか……ああ、できると思うが」
 バヒムは剣を受け取ると、柄を握り、構えると大きく上体をのけ反らせ、振りかぶった。そして、ヒュッという音とともにザリーグラネットの剣を投げた。
 さすがバヒムの怪力。
 剣はまっすぐにブルツァールの胸の辺りへ飛び、そして突き刺さった。
 しかし……。
「刺さったが、浅いぞ。大して利いてない」
「構いません。あの剣で反射魔法があそこだけ破れたんです。後は任せてください」
 エルンは、両手を構えて呼吸を止め、すべての力を集中させると渾身の力で攻撃魔法ブランド・ブリッツを放った。
 光球は閃光となってブルツァールの胸へと突き進んだ。
 そして、刺さった剣から吸い込まれるようにブルツァールの内部へと入った。
 一瞬にしてブルツァールの胴体が風船のように膨らんだ。
 次の瞬間、轟音とともに爆発した。

 ボーーーン……

 目の前にいた巨竜ブルツァールは跡形もなく消えた。
 いや、細かくなった肉片が雨のように降ってきた。
 後片づけが大変だ。
 しかし、
「やったぞ!」
 周囲から怒涛のように歓声が湧き上がった。
 エルンはその場にへたり込んだ。
 静かになった。
「エルン、なんて奴なんだ」
 ガルディが駆け寄ってきて小さな体を抱きしめた。
「何があった。どうして……」
 駆けつけたラウネスがエルンに聞いた。
「……後で説明します」
 エルンは、ぐったりとその場に倒れ込んだ。
 たくさんの人たちが集まってきてエルンを取り囲んだ。
「どいてくれ、俺が運ぶ」
 ガルディはエルンを抱きかかえると歩き出した。
「こんな小さな体で過酷な運命を背負い、それに応えるエルンを抱き抱えることができて俺は幸せだぜ」 ガルディの目に涙が溢れた。「最後までお前に付き合ってやる。お前がどんな大人になるか見届けてやる」
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