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7 あなたも勇者?
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とりあえず、魔王さんは――いい人だった。
私はほっとする。
ガブリエル神父とか比べたら月とスッポン、よっぽどあいつの方が魔王!
「とりあえず、寝るところを作るからね」
魔王がそういい、トミーが、崩れそうなゴミの山をちょっとだけどけたスペースを作る。
そこに、魔王、トミー、そして元・勇者の私の三人は川の字になって寝ていた。
そこはゴミ山の谷だ。
今地震が来たら、圧死する。
それなのに、このゴミ屋敷の中で、布団だけはふかふかで、お日様の香りがするのが逆にすごい。
もはや布団が神。
魔王の力を発動させているそうだ。
その魔王さまはというと...
「よしよし……どこにあったっけな……あ、これかも」
ガンガラガッチャーーン!
夜になっても、魔王はゴミ山の発掘作業をやめない。
そして、救急セットを引っ張り出してきたかと思えば、
「……あ、使用期限、五十年前だった」
さらっと恐ろしいことを言いながら、私の傷に消毒液をトン。
え? 使っていいの!?
心の中のツッコミは……そっとスルーしておく。
魔王さんは、本当に優しい。
そのやさしさ、まるで良心の塊だ。
魔王って初めてみたな。
こんな人なんだ。
こんな温かいお布団で眠ってるんだ。
魔王は悪い人だと思っていた。
会っても、話してもいないのに思い込みで人?を判断してはいけないっていつも、孤児院の子供達には言い聞かせているのに。
もし、話すことがあれば、魔王さんはいい人だと布教するからね!
「そういえば、魔王さんって……やっぱりツノあるんですね」
たしか、魔王討伐の時に、前の勇者が倒した証明にツノを持って帰るんだよね。あれは確か、どこかの博物館に飾ってあるって聞いたことがある。
でも、ここには2本ツノがみえるんだけど...
私は、目の前に見えているものはなあに?と誰かに聞きたくなる。
「そうなんだよねー。これ取っちゃうと毛が生えなくてさ~」
って、私にそう言いながら魔王さまは、ぼきっ!!
「わあああああ! ツノが! ツノがああ!!」
慌てるのは、元勇者リンの私!
折れたよ!
どうしよう!!
「鏡で見ると円形脱毛っぽくなるんだよな~」
と本気で悩むのが魔王さま。
なんかイメージが違う。
いや、なんちゃって勇者の私も大概イメージと違うんだろうけど。
「翌日には再生するんだから気にしないでください」
と冷静に言うのが狐のトミーさん。
そんな調子だから、
「前回の魔王討伐のとき、マクライアにはこのツノを土産に渡したんだ」
と魔王さんは言う。
「えっ、ギルド長さんって……元勇者だったんですか!?」
「うん、まあ、リンと同じで――間違われたタイプの勇者だったけどね」
魔王は懐かしそうに目を細める。
勇者ってなんですか......?
私は卒倒しそうななる。
「グループでやってきて、剣を振り回して、魔法ぶっぱなして……勢いだけで来た5人組のひとりだった。ちょっとオイタが過ぎた上に、彼は怪我しちゃってね」
「それで……一緒に暮らしてたんですか?」
「うん、しばらく魔王城に居候してね。なんか気が合うというかね.......今は人間界の事情、ちょくちょく教えてくれる友人、ってとこかな」
「それで、ツノを?」
私は恐る恐る聞いてみる。
私は、とんでもない話を知ってしまった次回の勇者ってことじゃないの?
「そう。“魔王を倒した証”ってことでね。まあ、メンツってやつだよ」
……うーん。
これ、いわゆる“前回の魔王討伐”の話……ですよね?
伝説とだいぶ……ちがうような……?
そんなピロートーク(?)を繰り広げていると、気づけば私はとっくに眠りかけていた。
聖女認定試験があったのは、たった今朝の話。
それが、もう何日も前の出来事のように遠い。
わたしはなぜか聖女になれず、勇者になって、追い出されて、魔王さまと眠っている。
がんばったのにな。
生まれたときから、いらない子だったのかな……。
未来のことが、不安になる。
でも――睡魔には勝てなかった。
⸻
ぐーすか寝てしまったリンを見て、魔王はそっと布団をかけ直した。
「泣きながら寝ちゃったな」
「身体、すごく小さいですね」
トミーがリンの寝顔を見て呟く。
「髪もパサパサ、肌も乾燥してて、爪まで……きちんと食べてない証拠ですよ。こんな子を、金なし武器なしで放り出すなんて」
「さすがに、ツノだけ渡して“はいおしまい”は無理があるか……」
魔王は深く息をついた。
「ここに置いてあげたほうが、よっぽど幸せだな。ただ、魔界に住む大義名分はつけないとな」
「ですね。人間がずっとここに住むには理由がいります。さすがに“保護者は魔王です”じゃ通らないでしょうし」
しばらく静かな夜が続いたあと――
「……やっぱ、マクライアの時の勇者とは違うな。少し勇者復活と聞いて焦ったけど...」
魔王がぽつりと笑った。
「マクライアさんもいろいろあった人ですけど……“勇者だから掃除したい”とは、さすがに言わなかったですね」
「……うん。勇者にボインも必要ないな」
魔王はくすりと笑って、リンの寝顔をもう一度見てポツリと言った。
「こんな純粋な子が、今の俺たちを救ってくれる女神になってくれると嬉しいんだけどな」
私はほっとする。
ガブリエル神父とか比べたら月とスッポン、よっぽどあいつの方が魔王!
「とりあえず、寝るところを作るからね」
魔王がそういい、トミーが、崩れそうなゴミの山をちょっとだけどけたスペースを作る。
そこに、魔王、トミー、そして元・勇者の私の三人は川の字になって寝ていた。
そこはゴミ山の谷だ。
今地震が来たら、圧死する。
それなのに、このゴミ屋敷の中で、布団だけはふかふかで、お日様の香りがするのが逆にすごい。
もはや布団が神。
魔王の力を発動させているそうだ。
その魔王さまはというと...
「よしよし……どこにあったっけな……あ、これかも」
ガンガラガッチャーーン!
夜になっても、魔王はゴミ山の発掘作業をやめない。
そして、救急セットを引っ張り出してきたかと思えば、
「……あ、使用期限、五十年前だった」
さらっと恐ろしいことを言いながら、私の傷に消毒液をトン。
え? 使っていいの!?
心の中のツッコミは……そっとスルーしておく。
魔王さんは、本当に優しい。
そのやさしさ、まるで良心の塊だ。
魔王って初めてみたな。
こんな人なんだ。
こんな温かいお布団で眠ってるんだ。
魔王は悪い人だと思っていた。
会っても、話してもいないのに思い込みで人?を判断してはいけないっていつも、孤児院の子供達には言い聞かせているのに。
もし、話すことがあれば、魔王さんはいい人だと布教するからね!
「そういえば、魔王さんって……やっぱりツノあるんですね」
たしか、魔王討伐の時に、前の勇者が倒した証明にツノを持って帰るんだよね。あれは確か、どこかの博物館に飾ってあるって聞いたことがある。
でも、ここには2本ツノがみえるんだけど...
私は、目の前に見えているものはなあに?と誰かに聞きたくなる。
「そうなんだよねー。これ取っちゃうと毛が生えなくてさ~」
って、私にそう言いながら魔王さまは、ぼきっ!!
「わあああああ! ツノが! ツノがああ!!」
慌てるのは、元勇者リンの私!
折れたよ!
どうしよう!!
「鏡で見ると円形脱毛っぽくなるんだよな~」
と本気で悩むのが魔王さま。
なんかイメージが違う。
いや、なんちゃって勇者の私も大概イメージと違うんだろうけど。
「翌日には再生するんだから気にしないでください」
と冷静に言うのが狐のトミーさん。
そんな調子だから、
「前回の魔王討伐のとき、マクライアにはこのツノを土産に渡したんだ」
と魔王さんは言う。
「えっ、ギルド長さんって……元勇者だったんですか!?」
「うん、まあ、リンと同じで――間違われたタイプの勇者だったけどね」
魔王は懐かしそうに目を細める。
勇者ってなんですか......?
私は卒倒しそうななる。
「グループでやってきて、剣を振り回して、魔法ぶっぱなして……勢いだけで来た5人組のひとりだった。ちょっとオイタが過ぎた上に、彼は怪我しちゃってね」
「それで……一緒に暮らしてたんですか?」
「うん、しばらく魔王城に居候してね。なんか気が合うというかね.......今は人間界の事情、ちょくちょく教えてくれる友人、ってとこかな」
「それで、ツノを?」
私は恐る恐る聞いてみる。
私は、とんでもない話を知ってしまった次回の勇者ってことじゃないの?
「そう。“魔王を倒した証”ってことでね。まあ、メンツってやつだよ」
……うーん。
これ、いわゆる“前回の魔王討伐”の話……ですよね?
伝説とだいぶ……ちがうような……?
そんなピロートーク(?)を繰り広げていると、気づけば私はとっくに眠りかけていた。
聖女認定試験があったのは、たった今朝の話。
それが、もう何日も前の出来事のように遠い。
わたしはなぜか聖女になれず、勇者になって、追い出されて、魔王さまと眠っている。
がんばったのにな。
生まれたときから、いらない子だったのかな……。
未来のことが、不安になる。
でも――睡魔には勝てなかった。
⸻
ぐーすか寝てしまったリンを見て、魔王はそっと布団をかけ直した。
「泣きながら寝ちゃったな」
「身体、すごく小さいですね」
トミーがリンの寝顔を見て呟く。
「髪もパサパサ、肌も乾燥してて、爪まで……きちんと食べてない証拠ですよ。こんな子を、金なし武器なしで放り出すなんて」
「さすがに、ツノだけ渡して“はいおしまい”は無理があるか……」
魔王は深く息をついた。
「ここに置いてあげたほうが、よっぽど幸せだな。ただ、魔界に住む大義名分はつけないとな」
「ですね。人間がずっとここに住むには理由がいります。さすがに“保護者は魔王です”じゃ通らないでしょうし」
しばらく静かな夜が続いたあと――
「……やっぱ、マクライアの時の勇者とは違うな。少し勇者復活と聞いて焦ったけど...」
魔王がぽつりと笑った。
「マクライアさんもいろいろあった人ですけど……“勇者だから掃除したい”とは、さすがに言わなかったですね」
「……うん。勇者にボインも必要ないな」
魔王はくすりと笑って、リンの寝顔をもう一度見てポツリと言った。
「こんな純粋な子が、今の俺たちを救ってくれる女神になってくれると嬉しいんだけどな」
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