聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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6 まだ17歳でした

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「すいません……お掃除したいです。いえ、させてください!私、きっと特技は掃除です」

魔王城という名のゴミ屋敷を見たリンはもう半泣きだった。
私は魔王さまの手をぎゅっと握りしめて頭を下げた。 

「いやいや……ギルド長のマクライアから“至急対応”って連絡だったし。こっちも慌てて飛んできただけなんだ」

魔王は頭を掻きながら、明らかに困った顔をしている。

「数日中には綺麗にするつもりだよ。君みたいな小さな子にそんなことはさせられない」
「いえっ!わたし、こう見えても十八歳なんですっ!」

勢いよく顔を上げた私の目には、決意と涙が混じっているはずだ。ここにそのまま暮らすのは無理!

「こう見えても間違えてても、勇者らしいんです! だから、お掃除……させてください!そしてここで仕事ください」

「……仕事??」

魔王とトミーが揃って固まり、お互い顔を見合わせてどうしようと目を彷徨わせている。
我ながら言ってることが支離滅裂だと思う。

「でもさ……」

魔王は私の全身をじっと見つめ、首をひねる。

「人間の十八歳にしては、あまりに小柄すぎる気がするんだけど……なぁ、トミー?」
「しっかりしたお嬢さんだとは思いますけどね。けど確かに、体つきがちょっと――」
「違うんですっ!」

リンはぴょんと一歩前に出て、胸を張った。

「ボインじゃないだけなんです!!」
「……は?」
「勇者に必要なら、ボイン、頑張って目指します!!だから、お掃除だけでも……!」

勇者にもカレンみたいなすり寄りと体つきが必要とは思わなかった!
私は心で舌打ち、いや違った。
心からここで生きていきたいというアピール手段を最大限とるべく、胸を張ってみる。

だが...
「いやいや、ボイン関係ないからね……」
魔王は片手で顔を覆いながら、深いため息をついた。

やっぱり、胸を張り上げるだけでは、カレンにはなれなかったか......
ガブリエル神父に対するカレンのやりとりを真似てみたが、付け焼き刃ではなかなかあの色気は出せない。
ぐぬぬ。

私は心で歯ぎしり、いや違った。
心から悲しい気持ちになる。

しかし、魔王は、ふと....まてよと顔を上げる

おっ!これは脈あり!
私の目も輝く。

「この中に何かあったはずだ!」

だが、私の体になんて目もくれず、唐突に魔王が思い出したように叫んだかと思うと、突然、ゴミの山へと突撃する。

「え? ちょっ、魔王様!? 三種の神器まで投げてるじゃないですか!」
狐のトミーが慌てて声をかける。
私も目の前で、ゴミが、いや、三種の神器が降ってくるのでどうしようとオロオロする。

「これは違う、これはゴミ! ……いや、これは神器! これは……ゴミ!」

ドンガラガッシャン!

ガラクタが飛び出す。
トミーが慌てて外に放り出された神器を拾って中へ投げ返す。

投げ返すの!!
その神器?無事ですか!
私は心の中で悲鳴を最大限に上げる。

「いやいや!だめです! 出す! 分ける! 減らす! しまう!が片づけの基本なんです!すぐ戻しちゃだめなんです!」

私はとりあえず、投げる二人を止めるべく、手をぶんぶん振りながら、掃除ガチ勢のテンションで割り込んでみる。
だが、魔王は全く気にしない。

神器ってなんですか.....


「……あ、あった! これだ!」

魔王が埃まみれの水晶玉を取り出した。

「これに君の血を……その傷、ちょうどいいな。ちょっとつけてくれる?」
「えっ、血を!?」

魔王と水晶玉というのは、ビジュアル的にこうもオシャレに見えるのかという感じだけど......

血が欲しいなんて言われたら、なんか怪しげじゃない?
思わず後ずさる。
その私の姿を見て魔王は苦笑いをする。

「大丈夫、怪しい儀式じゃないから。ただの年齢確認用」

ああ、年齢詐称を疑われたのか。
どうぞどうぞ!私は18歳ですとも。

私はおそるおそる、黒い鳥を追って転んだ時にできた指先の傷からにじんでいた血を水晶に垂らした。

ぼわっ!

水晶が淡く一度水色に光ったかと思うと、じわじわっと紫色に光り、今度は柔らかく周囲を照らす。

「……おお、やっぱり」

魔王が覗き込みながら頷いた。

「一歳違うな。君、18じゃなくて、17歳だ」
「えっ!? わたし17歳なんですか?」

え?どうして私、17歳なんだろう??
というより、どうして18歳なんだと思った?
私は、過去を思い出してみる。

「いまあ、どっちでも変わらないけど……体格的にはやはり小さいが、勇者認定が誤認だったことは納得だな」
「たしか、教会の聖女認定は18歳だよね。どうして18歳前に聖女認定試験を受けようとしたんだい?」

魔王さま、人間の聖女認定のことよく知ってらっしゃる。
そうか、18歳以上の認定試験を17歳が受けたから間違えて勇者が出たのか。

どうして18歳だとおもったかって??
それはやはり孤児だからよね。

「私捨て子だから、大体のところの正月が誕生日になるんです。だから18歳だと思い込んでました」

捨て子という話を聞き、トミーの顔は曇る。

「てっきり教会の水晶が壊れてるのかと……。聖女認定試験の前の日からチカチカ光ってて、おかしかったんです」

「チカチカ?」

「はい。光がついたり消えたり……。それで、今回の聖女認定試験は大量に聖女が発掘されて。まるで“聖女のバーゲンセール”でした」

私の話に、魔王とトミーが目を合わせた。

「教会の“聖”の力が落ちてきているのかもしれないな」

魔王は自身の顎の下に手を当てて、少し考えこむ。
トミーも、眉をひそめながらも思い当たることがある口ぶりで話している。

「ギルド長のマクライアさんからも、同じような話が来てました。だから……きっと今、魔界との門が不安定になってるんですよ」
「……え?」

リンの目が点になる。

「それって……つまり……」

たしか伝説のような話だが、かつて聖女が自らの命と引き換えに国を清め、勇者が魔王を倒し、魔界の門を閉じたという話だったけど......

「そう。“魔王復活”が近いってことだよ」

魔王はがらくたの山にどかっと腰を下ろし、ぽつりとつぶやいた。

「別に復活したくてするわけじゃないんだけどね……」
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