【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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16 瘴気の成分は?

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「やっぱり、空気が澄んでると仕事がはかどるねぇ」

トミーさんが大きく伸びをしながら、鼻先に珈琲の香りを通す。
その手には猫マグ。隣では魔王さまが、ドクロ模様のマグを片手にドヤ顔でデスクワーク中だ。

……場所は、なぜか台所の作業台の上。

「リンが淹れてくれる珈琲、朝がしゃきっとするなぁ」

「ありがとうございます……」

狐の秘書官とツノつき魔王が、メイドが磨き上げた厨房でカフェごっこ。
ついでに私も、ノリノリでメイド、じゃなかった食堂のおばちゃんのようにコーヒーを注ぐ

なかなかにシュールな絵面だが、雰囲気だけは本格派である。

私が魔王城に来てから、ちょうど一週間。
あの婚約騒動の件で二人は人間が魔王城にいることと、婚約者と言ったことでお偉いさんたちからお叱りを受けているらしいけど――優しいから、わたしの前では何も言わない。

台所には清涼な空気が流れ、磨かれた床はぴかぴか。

……が、その快適さの中に顔をしかめる者も、いる。

「はあ~……やっと空気がマシになってきたのに」

その声はネズミイ。今日もモップ磨きを忘れない。
だが、拭ける範囲は限られている。

その理由はーー

「作業台占領すんなっての! モップかけできねーだろ!」

そう、先日から、なぜか魔王とトミーは、朝食からそのまま台所で執務をしていて、一日そこから全く離れないからだ。


「執務室でお仕事しないんですか?」

恐る恐る私が尋ねると、魔王さまがあっさり答える。

「廊下が瘴気まみれでね。向かう気力も削がれるんだ」
「従業員も、あれさえなければ出勤するんですけどね!」

トミーがバン!と机を叩いて悔しがる。

「魔界の門がこの城にあるせいで、この魔王城が一番瘴気が濃いのよ」

ウンディーネさんがため息混じりに説明する。

「瘴気かぁ...」

人間のリンにとってはそこまで深刻ではないけれど――
念のため様子を見に行ってみると......

廊下は人の目でも紫の霧に飲まれて視界ゼロ。
なんだったら奥まで歩いたら吸い込まれそうなお化け屋敷感満載。

さらに床を見れば...
絨毯は紫になり、ドロドロと溶けかけている。
もはや原型を留めていなかった。
本当の絨毯の色は何色なんだろう?

「うわ……蜘蛛の巣じゃなくて、コレが瘴気だったんだ。コレはちょっとやそっとじゃ無理そう……」

生活に支障が出るのも納得だ。
というか、このドロドロの成分はなんだろう?
瘴気っていってたけど、体には良くなさそうな感じ

ドロドロ絨毯に足跡をつけてみる。
しばらくは足跡が残る
10秒ぐらいするとじわーーーっと消える

結構、粘着系?
触ると濡れてるわけでもない。
不思議...

「……あの絨毯、洗える場所ってありますか?」

尋ねると、ウンディーネさんが顎に指を当てて考える。

「あるにはあるわ。洗う場所じゃなくて魔王城の前にある白い噴水と小川。物がデカい上に瘴気となると、クリーニングもできないしね。私の魔石を持って行けば、水で清められるはずよ」

魔王城の前にあるお城の象徴じゃないですか!
あの本来なら美しい庭園があってその中で、噴水が出てるアレですよね。
お貴族さまとかのおうちにあるアレでしょ。

いやいや、いくら汚れてても洗濯場には...
その瞬間――ガタン!

「オレも行くぜ!!」

ネズミイが椅子を蹴飛ばし、怒りのモップを肩に担いで立ち上がった。

「どうせこいつらが居座ってる限り、仕事なんてできねーしな!」

台所の守護神、怒りの掃除魂!!フル稼働である。
いや、まだそこで洗うとは...言ってないけどもう洗わないとは言えない

(……二人とも、本当に台所好きだよね)

私の内心も虚しく、彼らの圧力はますます高まっていく。

その一方――問題の二人はというと。

「ここにお布団持ってきて寝たいですね」

「目覚めたとき、料理の音が聞こえるって……なんか新婚さんっぽくない?」

……完全に現実逃避モードだった。
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