【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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20 わたしの寝相問題

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わたしは――
いま、大きな山に挑んでいた。

登っても登っても足場は脆い。
それでも私は、登らねばならぬ!

「なぜ山に登るの……?」
「だって、そこに山があるからぁああああ!!」

……言い切った瞬間。
岩が崩れる。足元が沈む――!

うわああああああ!!

※ ※ ※

「リン! リン!!」

誰かの声が遠くで聞こえる。
……あれ、魔王さま?

「あと少しで頂上なんです……っ」

「いや、もう超えてるから!起きて!!」

魔王さまの焦っている声が聞こえる。
聞こえる??
あれ?私、目は??

ぱち、と目を開けた。
そこには、魔王さまの心配そうな顔。

その後ろから声が!!

「お前、どこまで行ってんだよ。寝相わるすぎだろ」
ナイトキャップ姿のネズミイが、童話みたいに下で仁王立ちしていた。

あれ……ここ、どこ? 

私はキョロキョロ周りを見回す。

あれ?なぜネズミイさんを見下ろしているんだ。
ネズミイさんが、スモール化している。

……って、えええ!?

(私、呪われたゴミ山のてっぺんにいる!?)

しかも手には――

メイド初日に見た、トミーさんが貼った封印の結界シールが貼られた曰くつきの手鏡が!

「……あれ? これ、普通に私の顔映ってない?」



魔王さまと一緒にそろ~りと山を降りる。
下で待ち構えていたトミーさんが目ざとく気づく。

「その鏡……呪いの鏡です! 自分が一番美しいと思いながら死んだ怨念が中に――」
「でも、いませんね?」
リンは何度も入念に鏡の中を覗き込む。

えいっと結界シールも剥がしてしまえ!!
「うわあああ」
トミーさんが驚く。だけど??何もない。

「鏡に映った人を、引き込もうとするんですけどね」
「いないね? 前はもっと鏡も黒っぽかった気がするけど……」

私も首をかしげる。
どういうこと……?

「えーっと……」

魔王さまが視線を泳がせながら、もごもごと。

「えっ!もう彼女に言ってしまうんですか!」

息を呑むトミーとネズミイ。
言ってしまう?
なんのこと?

「たぶんだけど……」
「たぶん?」
「その……リンの顔見て、びっくりして、成仏してもいいかなって思ったんじゃないかなって!」
「…………」

え、どういう意味それ?
 
「……つまり、私が……“美しさ”とかけ離れてて?」

がーんっ!
わたしに寝起きに言いたいことってそれ??

「お前ひどっ!? 俺より毒舌!」

ネズミイが思わずドン引き。

「違う違う違うっ!!そういうことが言いたかったんじゃない」
魔王さまが慌てて前に出る。

「その、あまりにもかわいかったから……存在を前にして、負けたと思って浄化されたとか! ねっ!」

それはそれで――

「な、なに言ってるんですか魔王さまっ……!」

私、真っ赤。
思わず顔を手で覆う。

「……魔王さま、それは世のロリ……ゲフン、また誤解を招きますよ。心の声は、心の中に」

トミーの視線が刺さる。

「というか、リンさん、本当に寝相問題のほうが大変です。
 私と魔王さまで毎晩“土手”を築いてるんですよ。私、連日連夜、リンさんの夜の進撃から何度もカウンターフックやられましたからね。」
「そ、そんなに!?」
「ええ。今日なんて土手がないからてっぺんまで登られました。まさか呪いの鏡を制覇するとは」
「ううっ、ごめんなさい……」

違った!
魔王さまは言いにくかったんだ。
きっと、言いたかったことは、お前の寝相、なんとかしろや!だった。
魔王と臣下に寝相を心配されるとは...

「いえ、そんなに気にしなくても大丈夫です。これからはむしろこのゴミ山を解放してあげてください」

満面の笑みのトミーさん。
キランと目が光る。
なんか思いついたらしい。
狐特有の細目がさらに細くなる。

うう、17歳にもなって恥ずかしい
わたしは真っ赤になってうつむいた。
今日は恥ずかしいことが多すぎる。

「リンさんには、最高の適職がありますからね。無理なく、いや、無理強いしてでもやってください」

トミーは嬉しそうに微笑んだ。
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