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19 まさかの聖女?
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今夜も通常運転ーー
無理やり寄せたガラクタ山の谷には、ふかふかのお布団が敷かれていた。
秘書官のトミー、リン、そして俺、魔王。
三人は仲良く川の字で就寝スタイルだ。
「……おやすみなさい」
リンは、俺の顔をちらっと見る。
そして、毛布にくるまり、コトンと寝息を立てはじめた。
え?……三秒で寝落ち。
「……あんなことのあとでも寝られるのね」
ウンディーネが呆れたように言ったが、リンは全く気にしていないらしく、いつも通りだった。
「ただ風邪をひかせるといけないと思っただけだからね。
それに、孤児院では子どもたちとくっついて寝ていたらしいから、彼女に取って隣に誰かが寝ていることに深い意味はないんだと思うよ」
――でも。
「りんちゃん、おかし~!」
布団の端っこでエアリアがくすくす笑いながら転がる。
エアリアが転がると、ふわふわ色んなものが風で飛ぶ。
「あーっ!ダメです。重要書類もゴミ山にいってしまいますから!!」
トミーが叫ぶ。
エアリアは、ぷぅーっと膨れながら、
「風の精霊に風を起こすなは無理!風を起こすためにいるのに!!」
と、色んなものを撒き散らしながら魔王城で遊んでいる。
遠くで風の音が聞こえる。
エアリアも久しぶりで、気分が高揚しているらしい。
今夜から魔王城の風通しはすこぶる良くなりそうだ。
「エアリアさん、なんでおかしいって言ったんだろう?え? なにが? どうして??」
リンは小さく首をかしげたまま、何度も俺に聞いていたが、結局はすやすやと夢の国へ行ってるんだもんな。
俺は苦笑いするしかない。
ーー
「完全に寝ましたか?」
「寝ましたね」
夜更け、そっと起き上がるトミーと俺。
万歳ポーズのリンを確認。
熟睡、夢の国にご招待されたままだ。、
二人は、顔を示し合わせて、静かに寝室を出る。
そして、台所へと向かう。
ネズミイは台所の中の鍋の中に潜り込みながら、寝床を調整中。
「うーん、せっかくだから俺の鍋も明日リンに磨き直してもらおうかな?瘴気はついてないけど、長く洗ってないんだよなあ」
くんくんと匂いを嗅ぐ。
魔界は、鬼クラスのサイズが多いから、鍋も人間が入れるぐらいでかい。
「リンに洗ってもらったら、また濡れちまうな。魔王さまが、また脱がそうとしても困るよなあ??ったく、びっくりだぜ。」
そんなことを独り言で言いながらも、ネズミイは、バッチリふかふか魔鳥の羽根布団を広げて蓋をのせる準備をする。
「瘴気があるときには、30構造の鍋蓋のおかげで助かったぜ。だけど、やっぱり一度お日様に乾かしたいよな」
そんなことをネズミイが言いながら振り向くと
ーーげっ!
「……なんだよ。夜中まで作業すんのかよ」
ネズミイはジト目で俺とトミーを睨む。
独り言、しっかり聞こえてるよ。
俺は、苦笑いしつつも、ネズミイの表情が活き活きしてきている変化に少し嬉しくなる。だが、今日はさらに気になることがある。
「いや、ちょっとウンディーネと話したいことがあるんだ」
俺の声は、めずらしく真剣だったからか、それを聞いたウンディーネも、魔石からゆらりと現れる。
「来ると思ってたわ」
ウンディーネはなぜかドヤ顔の仁王立ち。
「リンの掃除の件だけど……」
「あーー!まだあいつの服脱がしたいのか?おいおい、普通、あいつのあの掃除姿に発情しろって無理だろ!今日はびっくりしたぜ!」
即ツッコミをかますネズミイ。
「ち、ちがっ……!ハレンチだ!そういう意味じゃない!」
俺は終わったはずと思っていたところのカウンターパンチに、珍しくうろたえて耳まで真っ赤になってしまう。
今まで長く生きてきても、こういうツッコミを受けたことはない。
「ただ否定すればいいんです。あなたの言い訳っぽい発言がハレンチなんですよ」
トミーが冷静に刺してきた。
ぐはっ!
ハレンチって!!
「まあまあ、茶化すのはそこまでにして」
ウンディーネが腕を組む。
「話したいこと、私も察してるわ」
俺は小さく息をのむ。
「やっぱり……そう、なんだね」
リンを見て、まさかと思っていたが、可能性としたらそれしか考えられなかった。
そうだ!それもあって、余計にあんな突拍子もない行動をとってしまったんだ。
あんな小さな子の服を脱がそうなんて!
そんないい大人がしてはならない。
俺は再び思い出し真っ赤になる。
「?」
「???」
ネズミイとトミーが、挙動不審な俺の様子に、揃って首をかしげた。
ウンディーネはふんっと鼻で笑い、冷静な顔でみんなに告げた。
「彼女――リンは、聖女よ。しかも、相当な力を持ってる」
「ええええええええ!?!?!?」
ネズミイとトミーの声が、廊下に響きわたった。
「マジかよ! もっとこう……聖女って聖女な感じかと思ってたぞ!?」
ネズミイは意味なく、小さな手で聖女を想像するようなシルエットを作る。
「でもよく考えると、リンさんが掃除したあとって、空気が澄んでるんですよね」
トミーは、顎に手を置いて、そういうことかと頷いた。
「初日に会った時、あれって思ったの。台所、カビや汚れだけじゃなく瘴気まで消えてた」
ウンディーネが部屋の瘴気だまりがあったところを指さす。
「……ハタキのせいじゃなかったのか?」
ネズミイは思わずごくんと息を呑む。
「だったら全員パタパタしてるわよ」
ウンディーネがパタパタするふりをする。
「だけどよぉ!こんな台所に聖女がはたきを手にしてるのおかしいだろうよ。でも...今日の噴水や小川も、リンの掃除のあと瘴気が消えたんだったな」
流石に、ネズミイも嘘だろと言いつつ、今日の紫の瘴気が抜けていくのを見ているだけに次の言葉が続かない。
「でも、紫ぃー!って歌ってたぞ。あれが浄化なのか?」
ネズミイの聖女像が崩れていくようで、意味なく手で聖女の形を作っていたシルエットが、リンの背丈ぐらいのところを手で示す形に変わっていく。
「絨毯がねを踏んだ瞬間に、瘴気がじわっと抜けてったじゃない。普通の魔族があれやったら死ぬって」
ウンディーネが、そんなネズミイにため息混じりに話しかける。
「えーっ!ウンディーネとエアリアのスペシャルクリーニングのおかげじゃなかったのかよ」
「ちがうよぉ。私は風を通しただけ~」
エアリアも一通り魔王城で風を吹かせて満足したらしい。
台所に戻ってきて話に参戦し始めた。
ふわっと登場して、クリーニングを表すように、指先で空気をくるくる撫でる。
「リンちゃんが瘴気をほぐしてくれてたおかげで、廊下もスイスイだったよ」
天然、無自覚、でも最強クラスの浄化能力。
リンは――まぎれもなく
「聖女!」
みんな台所は重苦しい雰囲気になり、呆然としている。
「これ……大変なことになるぞ……!」
トミーが真顔になる。
「聖女って、本来は魔王を浄化するために召喚される存在じゃないですか……!」
「つか、“嫁候補”になった前例なんかねえだろ……」
ネズミイが頭を抱える。
「……でも、大義名分になるわ」
ウンディーネが肩をすくめる。
「瘴気を消してくれる存在が魔王のお嫁さんですもの。国民みんな大喜び。」
「いや、わたしは……そんな打算じゃ……」
俺は視線をそらして、今日のこともあり、耳まで染めて口ごもる。
トミーはあえて何も言わないが、俺がリンと今後どう関わればいいか迷っていることを見抜いているようだった。
そのとき――
ドンカラガッシャーーン!!
寝室から、轟音が響く。
「しまった……リンは!!」
俺は真っ青な顔になる。
「寝相が悪いんだったーーー!!」
深夜の魔王城に、俺の全力ダッシュが響き渡る。
あのゴミ魔窟は、曰く付きだらけだ!
無理やり寄せたガラクタ山の谷には、ふかふかのお布団が敷かれていた。
秘書官のトミー、リン、そして俺、魔王。
三人は仲良く川の字で就寝スタイルだ。
「……おやすみなさい」
リンは、俺の顔をちらっと見る。
そして、毛布にくるまり、コトンと寝息を立てはじめた。
え?……三秒で寝落ち。
「……あんなことのあとでも寝られるのね」
ウンディーネが呆れたように言ったが、リンは全く気にしていないらしく、いつも通りだった。
「ただ風邪をひかせるといけないと思っただけだからね。
それに、孤児院では子どもたちとくっついて寝ていたらしいから、彼女に取って隣に誰かが寝ていることに深い意味はないんだと思うよ」
――でも。
「りんちゃん、おかし~!」
布団の端っこでエアリアがくすくす笑いながら転がる。
エアリアが転がると、ふわふわ色んなものが風で飛ぶ。
「あーっ!ダメです。重要書類もゴミ山にいってしまいますから!!」
トミーが叫ぶ。
エアリアは、ぷぅーっと膨れながら、
「風の精霊に風を起こすなは無理!風を起こすためにいるのに!!」
と、色んなものを撒き散らしながら魔王城で遊んでいる。
遠くで風の音が聞こえる。
エアリアも久しぶりで、気分が高揚しているらしい。
今夜から魔王城の風通しはすこぶる良くなりそうだ。
「エアリアさん、なんでおかしいって言ったんだろう?え? なにが? どうして??」
リンは小さく首をかしげたまま、何度も俺に聞いていたが、結局はすやすやと夢の国へ行ってるんだもんな。
俺は苦笑いするしかない。
ーー
「完全に寝ましたか?」
「寝ましたね」
夜更け、そっと起き上がるトミーと俺。
万歳ポーズのリンを確認。
熟睡、夢の国にご招待されたままだ。、
二人は、顔を示し合わせて、静かに寝室を出る。
そして、台所へと向かう。
ネズミイは台所の中の鍋の中に潜り込みながら、寝床を調整中。
「うーん、せっかくだから俺の鍋も明日リンに磨き直してもらおうかな?瘴気はついてないけど、長く洗ってないんだよなあ」
くんくんと匂いを嗅ぐ。
魔界は、鬼クラスのサイズが多いから、鍋も人間が入れるぐらいでかい。
「リンに洗ってもらったら、また濡れちまうな。魔王さまが、また脱がそうとしても困るよなあ??ったく、びっくりだぜ。」
そんなことを独り言で言いながらも、ネズミイは、バッチリふかふか魔鳥の羽根布団を広げて蓋をのせる準備をする。
「瘴気があるときには、30構造の鍋蓋のおかげで助かったぜ。だけど、やっぱり一度お日様に乾かしたいよな」
そんなことをネズミイが言いながら振り向くと
ーーげっ!
「……なんだよ。夜中まで作業すんのかよ」
ネズミイはジト目で俺とトミーを睨む。
独り言、しっかり聞こえてるよ。
俺は、苦笑いしつつも、ネズミイの表情が活き活きしてきている変化に少し嬉しくなる。だが、今日はさらに気になることがある。
「いや、ちょっとウンディーネと話したいことがあるんだ」
俺の声は、めずらしく真剣だったからか、それを聞いたウンディーネも、魔石からゆらりと現れる。
「来ると思ってたわ」
ウンディーネはなぜかドヤ顔の仁王立ち。
「リンの掃除の件だけど……」
「あーー!まだあいつの服脱がしたいのか?おいおい、普通、あいつのあの掃除姿に発情しろって無理だろ!今日はびっくりしたぜ!」
即ツッコミをかますネズミイ。
「ち、ちがっ……!ハレンチだ!そういう意味じゃない!」
俺は終わったはずと思っていたところのカウンターパンチに、珍しくうろたえて耳まで真っ赤になってしまう。
今まで長く生きてきても、こういうツッコミを受けたことはない。
「ただ否定すればいいんです。あなたの言い訳っぽい発言がハレンチなんですよ」
トミーが冷静に刺してきた。
ぐはっ!
ハレンチって!!
「まあまあ、茶化すのはそこまでにして」
ウンディーネが腕を組む。
「話したいこと、私も察してるわ」
俺は小さく息をのむ。
「やっぱり……そう、なんだね」
リンを見て、まさかと思っていたが、可能性としたらそれしか考えられなかった。
そうだ!それもあって、余計にあんな突拍子もない行動をとってしまったんだ。
あんな小さな子の服を脱がそうなんて!
そんないい大人がしてはならない。
俺は再び思い出し真っ赤になる。
「?」
「???」
ネズミイとトミーが、挙動不審な俺の様子に、揃って首をかしげた。
ウンディーネはふんっと鼻で笑い、冷静な顔でみんなに告げた。
「彼女――リンは、聖女よ。しかも、相当な力を持ってる」
「ええええええええ!?!?!?」
ネズミイとトミーの声が、廊下に響きわたった。
「マジかよ! もっとこう……聖女って聖女な感じかと思ってたぞ!?」
ネズミイは意味なく、小さな手で聖女を想像するようなシルエットを作る。
「でもよく考えると、リンさんが掃除したあとって、空気が澄んでるんですよね」
トミーは、顎に手を置いて、そういうことかと頷いた。
「初日に会った時、あれって思ったの。台所、カビや汚れだけじゃなく瘴気まで消えてた」
ウンディーネが部屋の瘴気だまりがあったところを指さす。
「……ハタキのせいじゃなかったのか?」
ネズミイは思わずごくんと息を呑む。
「だったら全員パタパタしてるわよ」
ウンディーネがパタパタするふりをする。
「だけどよぉ!こんな台所に聖女がはたきを手にしてるのおかしいだろうよ。でも...今日の噴水や小川も、リンの掃除のあと瘴気が消えたんだったな」
流石に、ネズミイも嘘だろと言いつつ、今日の紫の瘴気が抜けていくのを見ているだけに次の言葉が続かない。
「でも、紫ぃー!って歌ってたぞ。あれが浄化なのか?」
ネズミイの聖女像が崩れていくようで、意味なく手で聖女の形を作っていたシルエットが、リンの背丈ぐらいのところを手で示す形に変わっていく。
「絨毯がねを踏んだ瞬間に、瘴気がじわっと抜けてったじゃない。普通の魔族があれやったら死ぬって」
ウンディーネが、そんなネズミイにため息混じりに話しかける。
「えーっ!ウンディーネとエアリアのスペシャルクリーニングのおかげじゃなかったのかよ」
「ちがうよぉ。私は風を通しただけ~」
エアリアも一通り魔王城で風を吹かせて満足したらしい。
台所に戻ってきて話に参戦し始めた。
ふわっと登場して、クリーニングを表すように、指先で空気をくるくる撫でる。
「リンちゃんが瘴気をほぐしてくれてたおかげで、廊下もスイスイだったよ」
天然、無自覚、でも最強クラスの浄化能力。
リンは――まぎれもなく
「聖女!」
みんな台所は重苦しい雰囲気になり、呆然としている。
「これ……大変なことになるぞ……!」
トミーが真顔になる。
「聖女って、本来は魔王を浄化するために召喚される存在じゃないですか……!」
「つか、“嫁候補”になった前例なんかねえだろ……」
ネズミイが頭を抱える。
「……でも、大義名分になるわ」
ウンディーネが肩をすくめる。
「瘴気を消してくれる存在が魔王のお嫁さんですもの。国民みんな大喜び。」
「いや、わたしは……そんな打算じゃ……」
俺は視線をそらして、今日のこともあり、耳まで染めて口ごもる。
トミーはあえて何も言わないが、俺がリンと今後どう関わればいいか迷っていることを見抜いているようだった。
そのとき――
ドンカラガッシャーーン!!
寝室から、轟音が響く。
「しまった……リンは!!」
俺は真っ青な顔になる。
「寝相が悪いんだったーーー!!」
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