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断罪と奈落の出会い
第2話:裏切りの婚約破棄
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神殿の冷たい石畳の上に、私は崩れ落ちていた。右腕からは、いまだに焦げた肉の臭いが立ち上っている。だが、それ以上に私の胸を抉ったのは、最愛の婚約者と、命を懸けて守ったはずの妹の言葉だった。
「カイル様……そんな、嘘です……。私が……どうしてセリナを……」
掠れた声を絞り出すが、私の言葉を遮るように、カイル様の冷徹な怒声が響く。
「黙れ! 言い訳など聞きたくない。その無惨な姿こそが、貴様が不浄な術に手を染めた動かぬ証拠ではないか」
カイル様は、私の焼け爛れた腕を指差した。黒く変色し、ひび割れた皮膚からどす黒い魔力が漏れ出ている右腕。それは確かに、聖なる神殿にはふさわしくない、不吉な様相を呈していた。
「聖なる儀式を汚し、未来の王妃となるべきセリナに恐怖を与えた。その罪、万死に値する。本来ならこの場で首を跳ねてやりたいところだが、慈悲深いセリナが貴様を庇ってくれたことに感謝しろ」
「庇って……?」
私は、カイル様の胸に顔を埋めているセリナを見た。彼女は肩を震わせ、か細い声で啜り泣いている。
「いいのです、カイル様……。お姉様はきっと、私への嫉妬に狂ってしまっただけなのです。どうか、命だけは助けてあげてください……っ」
嘘だ。セリナ、あなたは知っているはずだ。私の【星の楔】という力が、あなたの放つ「光」が撒き散らす歪みを肩代わりするためのものだと。代々、我が公爵家では、光を放つ者の影で、その毒を食らう「器」が必要だった。それを教えてくれたのは、他ならぬ私たちの両親ではなかったか。
「セリナ、あなた……どうしてそんな嘘を……」
私が這い寄ろうとすると、カイル様は私の手を払いのけるように、セリナを抱き上げて背を向けた。
「近寄るな、不浄の女。……これより、エレナ・ローウェルとの婚約を白紙に戻す。新たな婚約者には、真の聖女であるセリナ・ローウェルを迎えることとする」
周囲の神官や貴族たちが、一斉に感嘆の声を上げた。昨日まで私の婚約を祝っていた人々が、今はまるで英雄を称えるかのようにカイル様とセリナを見つめている。一方で、私に向ける視線は、ゴミ溜めを見るような蔑みに満ちていた。
「不浄な姉と、清らかな妹か。公爵家の格差はこれほどだったとはな」 「あんな呪われた腕を持つ女が王妃にならなくてよかった」
そんな罵詈雑言が雨のように降り注ぐ。激痛で震える右腕を抱え、私は絶望の淵に立たされていた。
カイル様に抱かれ、神殿を去っていくセリナ。その瞬間、彼女は私の目を見つめ、声を出さずに口の形だけでこう言った。
『――お疲れ様、ゴミ箱さん』
その顔に浮かんでいたのは、弱々しい聖女の面影など微塵もない、暗く、澱んだ邪悪な微笑みだった。
私の世界は、音を立てて崩れ去った。右腕を焼いて、心を削って、それでも守りたかった絆のすべてが、偽りの光によって焼き払われていく。
「……う、あああああ……っ!」
私は、誰にも届かない悲鳴を上げながら、冷たい石畳に額を擦り付けた。
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「カイル様……そんな、嘘です……。私が……どうしてセリナを……」
掠れた声を絞り出すが、私の言葉を遮るように、カイル様の冷徹な怒声が響く。
「黙れ! 言い訳など聞きたくない。その無惨な姿こそが、貴様が不浄な術に手を染めた動かぬ証拠ではないか」
カイル様は、私の焼け爛れた腕を指差した。黒く変色し、ひび割れた皮膚からどす黒い魔力が漏れ出ている右腕。それは確かに、聖なる神殿にはふさわしくない、不吉な様相を呈していた。
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「庇って……?」
私は、カイル様の胸に顔を埋めているセリナを見た。彼女は肩を震わせ、か細い声で啜り泣いている。
「いいのです、カイル様……。お姉様はきっと、私への嫉妬に狂ってしまっただけなのです。どうか、命だけは助けてあげてください……っ」
嘘だ。セリナ、あなたは知っているはずだ。私の【星の楔】という力が、あなたの放つ「光」が撒き散らす歪みを肩代わりするためのものだと。代々、我が公爵家では、光を放つ者の影で、その毒を食らう「器」が必要だった。それを教えてくれたのは、他ならぬ私たちの両親ではなかったか。
「セリナ、あなた……どうしてそんな嘘を……」
私が這い寄ろうとすると、カイル様は私の手を払いのけるように、セリナを抱き上げて背を向けた。
「近寄るな、不浄の女。……これより、エレナ・ローウェルとの婚約を白紙に戻す。新たな婚約者には、真の聖女であるセリナ・ローウェルを迎えることとする」
周囲の神官や貴族たちが、一斉に感嘆の声を上げた。昨日まで私の婚約を祝っていた人々が、今はまるで英雄を称えるかのようにカイル様とセリナを見つめている。一方で、私に向ける視線は、ゴミ溜めを見るような蔑みに満ちていた。
「不浄な姉と、清らかな妹か。公爵家の格差はこれほどだったとはな」 「あんな呪われた腕を持つ女が王妃にならなくてよかった」
そんな罵詈雑言が雨のように降り注ぐ。激痛で震える右腕を抱え、私は絶望の淵に立たされていた。
カイル様に抱かれ、神殿を去っていくセリナ。その瞬間、彼女は私の目を見つめ、声を出さずに口の形だけでこう言った。
『――お疲れ様、ゴミ箱さん』
その顔に浮かんでいたのは、弱々しい聖女の面影など微塵もない、暗く、澱んだ邪悪な微笑みだった。
私の世界は、音を立てて崩れ去った。右腕を焼いて、心を削って、それでも守りたかった絆のすべてが、偽りの光によって焼き払われていく。
「……う、あああああ……っ!」
私は、誰にも届かない悲鳴を上げながら、冷たい石畳に額を擦り付けた。
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