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第二章 幸せな領地生活
第十話 聖なる水源と、伝説の白銀獣
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実家からの使者を追い払ってから数日。私はアレクシス様に連れられて、公爵領の最奥にある『精霊の森』へと向かっていた。
ここには領地すべての飲み水を司る大きな湖があるのだが、アレクシス様の呪いの影響で、長年その水はどす黒く濁り、生き物さえ住めない「死の沼」と化しているという。
「……レティシア、無理はしなくていい。だが、もし君の力がこの水源に届けば、領民たちは冬を越すことができる」
アレクシス様の言葉通り、目の前に広がる湖は、鼻を突くような腐敗臭が漂い、水面には不気味な油膜が浮いていた。かつては精霊が住むと言われた清らかな場所が、今はただの掃き溜めのようになっている。
(……なんて悲しい場所。ここを綺麗にすれば、きっとみんなが笑顔になれる)
私は湖の岸辺に立ち、大きく深呼吸をした。実家で毎日毎日、凍える指先を動かして床を磨いていたあの頃の、何百倍もの魔力を指先に集める。
(汚れも、悲しみも、全部流して……。ここは、命が生まれる場所なんだから!)
「――天地浄化!!」
私の叫びと共に、視界が真っ白な光に包まれた。城の時とは比較にならない、圧倒的な浄化の奔流。光の柱が天まで届き、どんよりと垂れ込めていた雲を吹き飛ばして、鮮やかな青空を切り拓く。
シュアァァァァッ!
光が湖面に触れた瞬間、真っ黒だった水が、一瞬にして透き通った水晶のような輝きを取り戻していく。底に溜まっていた泥は消え去り、そこには数百年ぶりに太陽の光が届いた。
「な……っ!? 湖が……生き返った……?」
アレクシス様が驚愕に目を見開いた、その時だった。
湖の底から、眩い銀色の光がせり上がってきた。大きな飛沫と共に姿を現したのは、全身が白銀の毛並みに覆われた、巨大な一角獣――この地の守護獣である。
聖獣は、ゆっくりと私に歩み寄ると、その長い角を私の額にそっと触れさせた。
『……待っていたぞ、穢れなき聖女よ。貴殿の祈りが、永き眠りについた我を目覚めさせた』
頭の中に直接響く、清らかな声。聖獣は、信じられないことに、私に対して深い敬意を示すように膝を折ったのだ。
「レティシア……君は、本当に……」
アレクシス様が、震える手で私を抱き寄せた。その顔には、驚きを通り越して、もはや手放したくないという深い執着と愛情が滲んでいる。
「城だけでなく、この地の精霊までも君に傅くというのか。……君を我が妻にできたことは、俺の人生で唯一の、そして最高の奇跡だ」
聖獣に見守られながら、アレクシス様は私の髪に優しく口づけをした。一方で。伯爵領の水源は、今や完全に枯れ果て、泥水さえも出なくなっていた。 「水よ! どうして水が出ないのよ!」と叫ぶミランダ。だが、どんなに叫んでも、彼女たちの元に清らかな水が届くことは二度とない。
なぜなら、この地の『水』の加護は、すべてレティシアを追ってヴォルフェン公爵領へと流れていってしまったのだから。
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ここには領地すべての飲み水を司る大きな湖があるのだが、アレクシス様の呪いの影響で、長年その水はどす黒く濁り、生き物さえ住めない「死の沼」と化しているという。
「……レティシア、無理はしなくていい。だが、もし君の力がこの水源に届けば、領民たちは冬を越すことができる」
アレクシス様の言葉通り、目の前に広がる湖は、鼻を突くような腐敗臭が漂い、水面には不気味な油膜が浮いていた。かつては精霊が住むと言われた清らかな場所が、今はただの掃き溜めのようになっている。
(……なんて悲しい場所。ここを綺麗にすれば、きっとみんなが笑顔になれる)
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シュアァァァァッ!
光が湖面に触れた瞬間、真っ黒だった水が、一瞬にして透き通った水晶のような輝きを取り戻していく。底に溜まっていた泥は消え去り、そこには数百年ぶりに太陽の光が届いた。
「な……っ!? 湖が……生き返った……?」
アレクシス様が驚愕に目を見開いた、その時だった。
湖の底から、眩い銀色の光がせり上がってきた。大きな飛沫と共に姿を現したのは、全身が白銀の毛並みに覆われた、巨大な一角獣――この地の守護獣である。
聖獣は、ゆっくりと私に歩み寄ると、その長い角を私の額にそっと触れさせた。
『……待っていたぞ、穢れなき聖女よ。貴殿の祈りが、永き眠りについた我を目覚めさせた』
頭の中に直接響く、清らかな声。聖獣は、信じられないことに、私に対して深い敬意を示すように膝を折ったのだ。
「レティシア……君は、本当に……」
アレクシス様が、震える手で私を抱き寄せた。その顔には、驚きを通り越して、もはや手放したくないという深い執着と愛情が滲んでいる。
「城だけでなく、この地の精霊までも君に傅くというのか。……君を我が妻にできたことは、俺の人生で唯一の、そして最高の奇跡だ」
聖獣に見守られながら、アレクシス様は私の髪に優しく口づけをした。一方で。伯爵領の水源は、今や完全に枯れ果て、泥水さえも出なくなっていた。 「水よ! どうして水が出ないのよ!」と叫ぶミランダ。だが、どんなに叫んでも、彼女たちの元に清らかな水が届くことは二度とない。
なぜなら、この地の『水』の加護は、すべてレティシアを追ってヴォルフェン公爵領へと流れていってしまったのだから。
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