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アンリエッタとエゼキエル、十三歳
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その光景が目に飛び込んで来た時、
アンリエッタは今まで感じた事がないような感覚を胸に抱いた。
読み終わった本を返しに図書室を訪れると、
エゼキエルが見知らぬ令嬢と魔導書を広げて楽しそうに歓談しているのだ。
どちらかというと口数は少ない分類に入るエゼキエルが、饒舌になって魔術の事をあれやこれやと話していた。
相手のご令嬢もアンリエッタでは理解出来ないような難しい魔術の見解を口にしている。
「…………」
その様子に何故かショックを受けたアンリエッタは本を返すのも忘れて図書室を後にしようとした。
が、エゼキエルに声を掛けられてしまう。
「あれ?アンリ?」
なんで気がつくのよ!
と心の中で文句を言ってから、笑顔を貼り付けて振り向いた。
「あらいたの?エゼキエル」
「アンリはどうした?ああ、本を返しに来たんだ」
「ええ。まぁそうなの」
アンリエッタはそう言いながら、この本の書架へと向かう。
ーーなんだかいつも通りでいられないわ。不自然な歩き方になってないかしら。
そう思いながら本を書架に戻していると、
ふいに声を掛けられた。
「もしや……あなたがアンリエッタ様ですかっ?」
え?と振り返ると、エゼキエルと魔導談義をしていた令嬢がアンリエッタのすぐ後ろに来て目をキラキラさせていた。
「え……?あ、はい……アンリエッタは私ですけれど……?」
しどろもどろになりながらそう答えると、
令嬢は感極まった様子でアンリエッタの手を取った。
「きゃー♡お会い出来て光栄です!あ、申し遅れました、私はモリス侯爵家のユリアナと申します!あぁ…どうしましょう!とうとうアンリエッタ様にお目に掛かれましたわっ!なんてお可愛らしいのっ!妖精?妖精なのっ?あの強面のベルファスト辺境伯のご令嬢とは思えない愛くるしさっ!感激ですわっ……!」
と一気に捲し立てられ、アンリエッタは若干…いや大いに引きながらも返事を返した。
「あ…モリス宰相閣下のご令嬢ですの?は、はじめまして。アンリエッタです、どうぞよろしく……?」
「きゃーーっ♡やっぱり無理やりお父様にくっついて登城して正解でしたわっ!生アンリエッタ様にお会い出来るなんて!今まではまだ早いから駄目だと散々言われてきましたけれども、十三歳になってようやく登城が許されましたのっ!アンリエッタ様っ、是非とも私とお友達になってくださいませ~~っ!」
「えっ?え?え?」
またまた一気に詰め寄られ、アンリエッタは更にタジタジになる。
その時、不意に目の前に壁が出来た。
十三歳になって差が開きつつある身長。
自分よりも少し高い位置にある頭を見て、アンリエッタはその名を呼んだ。
「エル……」
エゼキエルはアンリエッタとユリアナの間に割って入り、アンリエッタをその背の向こうに隠した。
「ユリアナ、落ち着いて。モリス侯爵から色々とアンリエッタの武勇伝を聞かされて憧れていたのは分かるけど、勢いがよすぎてアンリが引いてるから」
ーー私の武勇伝ですって?
宰相閣下はご令嬢に何を話したのっ?
そこのところを深く掘り下げたいアンリエッタだが、とりあえずは気になった事を訊いてみる。
「えっと……あの、二人は以前からお知り合い?」
アンリエッタがそう尋ねると、エゼキエルが答えてくれた。
「親同士が仲が良くてそれでね。父上が亡くなる前から何度か顔を合わせていたんだ。幼馴染という奴なのかな?でも会うのは随分久しぶりだな。ユリアナも魔道学を学んでいるのを知って驚いたよ」
「そうなのね……」
幼馴染か……幼馴染……まぁいい。
とりあえずは先ほどユリアナ嬢に言われた事への返事をしなくては。
アンリエッタはそう思い、エゼキエルの後ろからひょっこり姿を表して告げた。
「ユリアナ様、私でよろしければ是非お友達になってくださいませ」
そう言った瞬間、ユリアナは素早い動きでアンリエッタの手を取った。
「ありがとうございます!!アンリエッタ様とお友達になれるなんて感激ですわっ!嬉しすぎて今晩は絶対に眠れません!きっと月に向かって吠えますわーーっ!」
「うふ。眠ってくださいませ」
「無理ですわーっ!父からアンリエッタ様が誰もいないのを見計らってこっそりと階段の手摺りを滑り降りていたというお話や、気難しく御し難いと評判の若駒になりかけている子馬を見事に乗りこなされ、ベルファスト辺境伯から「このじゃじゃ馬がっ!」と叱責されても物ともしなかった話を聞いてから、もうお会いしたくてお会いしたくて堪りませんでしたのー!」
「……え?」「ぶはっ」
ユリアナのその言葉にアンリエッタは固まり、エゼキエルは吹き出した。
ーーちょっと!?宰相閣下っ!何でそんな事を自身の娘さんにお話になりますのっ?
……というか手摺りを滑り降りていたのを見られていたのね……
まぁ王宮に来て間がない時だからオッケーだ。と、自分で勝手にセーフにしておいた。
これがアンリエッタにとって生涯の友となるユリアナ=モリス(13)との出会いだった。
エゼキエルの元に嫁いで三年目にしてようやく出来た、同性の友人である。
ユリアナは魔力保有量が高く、
エゼキエルと同じように魔道学を学んでいるらしい。
どうりでエゼキエルと難しい魔導談義が出来る筈である。
それがちょっぴり羨ましいアンリエッタであった。
アンリエッタは今まで感じた事がないような感覚を胸に抱いた。
読み終わった本を返しに図書室を訪れると、
エゼキエルが見知らぬ令嬢と魔導書を広げて楽しそうに歓談しているのだ。
どちらかというと口数は少ない分類に入るエゼキエルが、饒舌になって魔術の事をあれやこれやと話していた。
相手のご令嬢もアンリエッタでは理解出来ないような難しい魔術の見解を口にしている。
「…………」
その様子に何故かショックを受けたアンリエッタは本を返すのも忘れて図書室を後にしようとした。
が、エゼキエルに声を掛けられてしまう。
「あれ?アンリ?」
なんで気がつくのよ!
と心の中で文句を言ってから、笑顔を貼り付けて振り向いた。
「あらいたの?エゼキエル」
「アンリはどうした?ああ、本を返しに来たんだ」
「ええ。まぁそうなの」
アンリエッタはそう言いながら、この本の書架へと向かう。
ーーなんだかいつも通りでいられないわ。不自然な歩き方になってないかしら。
そう思いながら本を書架に戻していると、
ふいに声を掛けられた。
「もしや……あなたがアンリエッタ様ですかっ?」
え?と振り返ると、エゼキエルと魔導談義をしていた令嬢がアンリエッタのすぐ後ろに来て目をキラキラさせていた。
「え……?あ、はい……アンリエッタは私ですけれど……?」
しどろもどろになりながらそう答えると、
令嬢は感極まった様子でアンリエッタの手を取った。
「きゃー♡お会い出来て光栄です!あ、申し遅れました、私はモリス侯爵家のユリアナと申します!あぁ…どうしましょう!とうとうアンリエッタ様にお目に掛かれましたわっ!なんてお可愛らしいのっ!妖精?妖精なのっ?あの強面のベルファスト辺境伯のご令嬢とは思えない愛くるしさっ!感激ですわっ……!」
と一気に捲し立てられ、アンリエッタは若干…いや大いに引きながらも返事を返した。
「あ…モリス宰相閣下のご令嬢ですの?は、はじめまして。アンリエッタです、どうぞよろしく……?」
「きゃーーっ♡やっぱり無理やりお父様にくっついて登城して正解でしたわっ!生アンリエッタ様にお会い出来るなんて!今まではまだ早いから駄目だと散々言われてきましたけれども、十三歳になってようやく登城が許されましたのっ!アンリエッタ様っ、是非とも私とお友達になってくださいませ~~っ!」
「えっ?え?え?」
またまた一気に詰め寄られ、アンリエッタは更にタジタジになる。
その時、不意に目の前に壁が出来た。
十三歳になって差が開きつつある身長。
自分よりも少し高い位置にある頭を見て、アンリエッタはその名を呼んだ。
「エル……」
エゼキエルはアンリエッタとユリアナの間に割って入り、アンリエッタをその背の向こうに隠した。
「ユリアナ、落ち着いて。モリス侯爵から色々とアンリエッタの武勇伝を聞かされて憧れていたのは分かるけど、勢いがよすぎてアンリが引いてるから」
ーー私の武勇伝ですって?
宰相閣下はご令嬢に何を話したのっ?
そこのところを深く掘り下げたいアンリエッタだが、とりあえずは気になった事を訊いてみる。
「えっと……あの、二人は以前からお知り合い?」
アンリエッタがそう尋ねると、エゼキエルが答えてくれた。
「親同士が仲が良くてそれでね。父上が亡くなる前から何度か顔を合わせていたんだ。幼馴染という奴なのかな?でも会うのは随分久しぶりだな。ユリアナも魔道学を学んでいるのを知って驚いたよ」
「そうなのね……」
幼馴染か……幼馴染……まぁいい。
とりあえずは先ほどユリアナ嬢に言われた事への返事をしなくては。
アンリエッタはそう思い、エゼキエルの後ろからひょっこり姿を表して告げた。
「ユリアナ様、私でよろしければ是非お友達になってくださいませ」
そう言った瞬間、ユリアナは素早い動きでアンリエッタの手を取った。
「ありがとうございます!!アンリエッタ様とお友達になれるなんて感激ですわっ!嬉しすぎて今晩は絶対に眠れません!きっと月に向かって吠えますわーーっ!」
「うふ。眠ってくださいませ」
「無理ですわーっ!父からアンリエッタ様が誰もいないのを見計らってこっそりと階段の手摺りを滑り降りていたというお話や、気難しく御し難いと評判の若駒になりかけている子馬を見事に乗りこなされ、ベルファスト辺境伯から「このじゃじゃ馬がっ!」と叱責されても物ともしなかった話を聞いてから、もうお会いしたくてお会いしたくて堪りませんでしたのー!」
「……え?」「ぶはっ」
ユリアナのその言葉にアンリエッタは固まり、エゼキエルは吹き出した。
ーーちょっと!?宰相閣下っ!何でそんな事を自身の娘さんにお話になりますのっ?
……というか手摺りを滑り降りていたのを見られていたのね……
まぁ王宮に来て間がない時だからオッケーだ。と、自分で勝手にセーフにしておいた。
これがアンリエッタにとって生涯の友となるユリアナ=モリス(13)との出会いだった。
エゼキエルの元に嫁いで三年目にしてようやく出来た、同性の友人である。
ユリアナは魔力保有量が高く、
エゼキエルと同じように魔道学を学んでいるらしい。
どうりでエゼキエルと難しい魔導談義が出来る筈である。
それがちょっぴり羨ましいアンリエッタであった。
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