ダイハード(超一生懸命)なおっさん in 異世界

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

文字の大きさ
17 / 60

ラミアと料理番と領主 その4

しおりを挟む
「……あ、あれ?」

 目を覚ました僕の目の前には……最近毎朝見ている天井が広がっていました。
 ……つまり、今の僕は自分のベッドの上って事なのでしょう……

 周囲を見回すと……うん、間違いありません。
 ここは、僕が彼女の好意で使わせてもらっている部屋の中にあるベッドの上で間違いないようです。

 来ている衣服は……いつも寝間着にしている服になっています。
 額がやけに冷たいな、って思い手を伸ばしてみると、濡れたタオルがおかれていました。
 そのタオルを手で掴んで、上半身を起こしていったのですが、

「あぁ、クマ様よかったぁ」

 部屋の中から女の子の声が聞こえてきました。

「え?」

 シャルロッタ……ではありません。この声は……

 そこに立っていたのはピリでした。
 ピリは、ちょうど僕のタオルを交換に来てくれたところらしく、その手に新しいタオルを持っていました。

「あ、ピリ……って、あ、あれ?……僕はどうしたんだっけ……」
「クマ様ってば、森の中でいきなりぶっ倒れて気絶しちゃったんですよ。みんなで担いで帰って来るの、大変だったんだからね」
 ピリはそう言いながら笑っています。

「倒れたって……あ」

 ピリの言葉で僕はすべてを思い出しました。
 森の中で、ミリュウっていうラミアの女の子を助けて……そこにシャルロッタが現れて……そこで……

 ……そこで……

 僕の頭の中に、額の髪をかき分けながら近づいてくるシャルロッタの顔がどアップで再生されていきまして……

 僕は、真っ赤になりながら額に手を当てていました。

 そうだった……ぼ、僕はついさっき、永遠に縁がないと思っていたリア充だけのイベント、『おでこで体温測定』を体験してもらったのでした……し、しかも、シャルロッタに……

 その事を思い出した瞬間に、他の記憶が全てぶっ飛んでしまい、心臓が早鐘をならすようにどっくんどっくんと鼓動し始めてしまいました。

「ちょ、ちょっとクマ様!? 顔が真っ赤じゃない! ほら、早くベッドに横になって!」

 そんな僕を横で見ていたピリは、慌てた様子で僕をベッドに押し戻していきました。

「もう、クマ様! 村のみんなのために頑張ってくださるのは本当にありがたいですけど、無理はしないでくださいよ。ここ数日、寝る間も惜しんで流血狼を狩ってくれてて、そのお疲れが出てしまったんでしょう?」

 いつも快活で、笑顔を振りまいているピリなのですが、今のピリはすごく真剣な表情で僕を見つめていました。

「え、あ、う、うん、そうだね……」

 ピリの言葉に対して、少しどもりながら頷いた僕なのですが……さ、さすがに『シャルロッタにおでこで検温されたせいで倒れてしまいました』なんて、本当の事を言えるはずもありません。

 すると、ピリはベッドの端に腰を下ろしました。

「……もう……プロポーズのお返事もまだお返ししてないんですから……死んじゃったら許しませんからね……」
「え?」

 ピリの言葉に、僕は目が点になってしまいました。
 そんな僕に、ピリはその頬を赤くしながら僕へ視線を向けているではありませんか。

 ……え?……ぷ、プロポーズ? お返事?

 僕の頭の中をいくつものクエスチョンマークが飛び交っています。
 そんな僕の目の前で、頬を真っ赤にしています。
 真っ赤なのですが、その表情はすっごく真剣です。

「ほら、あの時……『ピリ、結婚しよう』って……言ってくださったじゃないですか……」

 そんなピリの言葉を聞いた僕は、自分の顔が真っ赤になるのを感じていました。

 これがマンガでしたら、おそらく鼻・耳・そして脳天からとんでもない量の湯気が噴き出していたに違いありません。

 あの時の、『ピリ、結婚しよう』って言葉って……ピリの料理の美味しさに感動して、反射的に頭の中に思い浮かんだ言葉だったはずなのですが……今のピリの様子を見るにつけ……ど、どうやら僕はあのとき、その言葉を無意識のまま口に出してしまっていたみたいなのですが……じ、自分がそんな事をしていたなんて、これっぽっちも思っていなかったもんですから、僕はただただ目を丸くする事しか出来ませんでした。

 そんな僕の前で、ピリは僕にゆっくりと体を寄せて来たのです。

「……クマ様……私、料理以外に取り柄のない女ですけど……クマ様にいっぱい美味しい物を食べて頂けるようにこれからも頑張ります……だから……」

 さらににじりよってくるピリ。
 その顔を見つめながら、僕はさらに真っ赤になっていました。

 バン!

 その時、部屋の扉が開け放たれ、

「おぉ、クマ殿!目が覚めたようじゃな!」

 シャルロッタが入ってきたのです。

 相変わらずシャルロッタはノックをしません。
 まぁ、ここは彼女の邸宅の中なんだし、それはそれで仕方がないとはいえ……心臓に良くないことこの上ありません。

 心臓が飛び出したかのような錯覚を感じながら、ピリから離れる僕。
 顔が赤くなっているのを感じているものですから、無意識のうちに右手で顔を隠していました。
 ピリの方も、大慌てしながらベッドから立ち上がっています。
 真っ赤な顔をしたまま、僕用に持って来ていたタオルを自らの顔に押し当てています。
 おそらく、ピリも顔が赤くなっている自覚があるのでしょう。
 そのタオルで、シャルロッタに赤くなっている顔をみられないようにしているみたいです。

「うん? 2人ともどうかしたのかの?」

 そんな僕とピリを交互に見つめながら、ベッドに歩み寄ってくるシャルロッタ。
 えっと……僕達が慌てている様子にまったく気がついていないみたいです……シャルロッタってば、こういう事に鈍感なのでしょうか?
 ……い、いや……ただ単純に、僕なんかに恋愛イベントが発生しているなんて思ってもいなかったに違いありません。
 
 そんな事を考えている僕の側へ歩みよってきたシャルロッタは、

「クマ殿よ、森の中でいきなりぶっ倒れた時には肝を冷やしたのじゃが、ともあれ、大事なさそうで何よりじゃ」

 満面の笑みでそう言いながら、僕に向かって笑いかけてくれました。

「じゃ、じゃあアタシはこれで……」

 そんなシャルロッタの横に立っていたピリは、そそくさと部屋を後にしていきました。

「うむ、ピリよ、クマ殿の看病世話になったの」

 そんなピリを笑顔で見送ったシャルロッタは、改めて僕へ視線を向けました。

 ただ……今の僕は、その笑顔というか、シャルロッタの額に目が釘付けになっていました。

『あ、あの額が、僕の額に……』

 そんな事を考えながら、再び心臓がばっくんばっくんし始めるのを感じていました。

「うん? どうかしたかのクマ殿? 妾の顔を見つめておるようじゃが、何かついておるかの?」
「え? い、いえ、そ、そう言うわけじゃあ……」

 シャルロッタの言葉に、あたふたしながら返事を返す僕。
 そんな僕の様子を、見つめながら、シャルロッタはクスクス笑っています。

「ふふ、おかしなクマ殿なのじゃ。でも、元気になったみたいで安心したのじゃ」
「え、えぇ、し、しっかり休ませてもらいましたので、もうバッチリです!」
「うん……クマ殿がそう言ってくれるのはありがたいのじゃが、また村のために無理をしていそうで若干心配なのじゃが……」

 口元に手を当てながら、少し思案していた様子のシャルロッタは、しばらくすると、意を決したように口を開いた。

「あの……クマ殿、起きたばかりのところ申し訳ないのじゃが、手を貸してもらえぬかの……」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...