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第3章 友人とネズミ色
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夏音は、奏に言われたビルに駆け込んだ。いくつかの会社が入っている周りのビルよりは数階分高いビルだったが、もう日が落ち掛けている時間のため、営業時間は過ぎており、ほとんどの会社には人はいないようだった。
夏音は、エレベーターを見たが最上階で止まっていたため、すぐ横の非常階段の扉を開けて、屋上目指して駆け上がっていった。
息を切らしながら、階数を数えてはいなかったが、恐らく7階分くらい駆け上がったところで、行き止まりの扉が現れた。屋上への扉だ。
夏音は、ゆっくり扉を開けて外に出た。
辺りを見回すと明かりが少なく、知らぬ間に日がすっかり落ちていることに気が付いた。
「か、神楽さぁん?」
夏音の小さめの声で神楽の名前を呼びながら、ゆっくりと歩き始めた。
薄暗い中を彷徨う様に歩いていると、貯水槽と思われる建造物に背中を付け、体育座りで顔を伏せている人影が見えた。
「…神楽さん?…紫…。」
神楽は咄嗟にイロカゲを見た。すると、正に環奈が死ぬ前に見たイロカゲと同じ色をしていた。環奈の件で、自殺願望を表す色だと認識していた夏音は、焦りを隠せなかった。
夏音はすぐに事態を理解した。きっと、神楽は電話かメールで奏に自殺を促す内容を告げたのだと。
夏音が恐る恐る近づくと、人の気配を感じた人影が顔をゆっくり上げて夏音の方を見た。
「…奏?」
どうやら、向こうからも夏音の姿が良く見えていないらしい。
「…違います。三嶽です。神楽さんですよね?」
夏音の言葉に、神楽はゆっくり立ち上がった。
「奏は?どうして、三嶽ちゃんが?」
神楽は質問しながら、魂が抜けたように力なくゆっくりと夏音に近づいてきた。
夏音は、直ぐに神楽に駆け寄り強く抱き締めた。
「………へ?」
神楽は驚いたが、抵抗はしなかった。
「分かる、分かるわ。神楽さん。何も言わないで。…奏も直ぐに来るわ。」
夏音は、さっきのイロカゲを見て感じていた。自分が来るのがあと数分遅かったら、神楽はビルから飛び降りていただろうと。
夏音は、良かったという感情と、もし間に合っていなかったらという恐怖が入り交じって、知らぬ間に涙を流していた。夏音が流した涙が神楽の頬に触れた。
「…三嶽ちゃん。何で泣いてるの?」
「ツラかったよね。分かる、分かるわ。あなたは悪くない。悪くない。」
夏音は、金髪に近い色をした神楽の髪を優しく撫でながら、励ますように優しく呟いた。
「う、う、うわぁぁぁぁああああ。」
すると、神楽もギュッと夏音を強く抱き締め、子どものように声を出して泣いた。大きな声で泣いた。溜まっていた思いが涙に変わって体内から溢れだしたように、大粒の滴を流した。
雲が切れたのか、綺麗な月明かりが二人を包み込むように降ってきた。
「…ありがとう。」
落ち着きを取り戻した神楽を見て、夏音は抱き締めていた両の手を離し、神楽の手を引いて貯水槽に繋がっている太いパイプに腰を下ろした。
「………。」
神楽は何をどう話したらよいのか分からない表情で、無言のまま下を向いていた。
夏音も、何をどう聞いたらよいのか分からずに、無言のまま下を向いていた。
困った夏音がふと神楽を見ると、自分と同じく話す内容に困っているであろう表情でいる神楽が、自分の鏡を見ているようで、何故か急に可笑しく感じてしまい、クスリと笑ってしまった。
笑い声が聞こえた神楽は夏音の顔を見て、何で笑ってるんだろうと首を傾げた。
「ご、ごめんなさい。何か、今まで神楽さんとは余り接点がなかったなぁって。ま、まぁ、神楽さんは今時の女子高生って感じだから、私みたいなのとは仲良くはならないですよね…。」
「…違うわ。私は外見で誤魔化したいだけ。強く見せたかったの。…奏に聞いてない?私、小学生の頃は、デブでダサくて苛められてて、いっつも奏に助けられてたの。」
初めて聞く話に夏音は、少し驚いた。
「はぁ、はぁ…神楽…。」
突然、声がした方に二人が目を向けると、息を切らした奏が月明かりに照らされて立っていた。
夏音は、エレベーターを見たが最上階で止まっていたため、すぐ横の非常階段の扉を開けて、屋上目指して駆け上がっていった。
息を切らしながら、階数を数えてはいなかったが、恐らく7階分くらい駆け上がったところで、行き止まりの扉が現れた。屋上への扉だ。
夏音は、ゆっくり扉を開けて外に出た。
辺りを見回すと明かりが少なく、知らぬ間に日がすっかり落ちていることに気が付いた。
「か、神楽さぁん?」
夏音の小さめの声で神楽の名前を呼びながら、ゆっくりと歩き始めた。
薄暗い中を彷徨う様に歩いていると、貯水槽と思われる建造物に背中を付け、体育座りで顔を伏せている人影が見えた。
「…神楽さん?…紫…。」
神楽は咄嗟にイロカゲを見た。すると、正に環奈が死ぬ前に見たイロカゲと同じ色をしていた。環奈の件で、自殺願望を表す色だと認識していた夏音は、焦りを隠せなかった。
夏音はすぐに事態を理解した。きっと、神楽は電話かメールで奏に自殺を促す内容を告げたのだと。
夏音が恐る恐る近づくと、人の気配を感じた人影が顔をゆっくり上げて夏音の方を見た。
「…奏?」
どうやら、向こうからも夏音の姿が良く見えていないらしい。
「…違います。三嶽です。神楽さんですよね?」
夏音の言葉に、神楽はゆっくり立ち上がった。
「奏は?どうして、三嶽ちゃんが?」
神楽は質問しながら、魂が抜けたように力なくゆっくりと夏音に近づいてきた。
夏音は、直ぐに神楽に駆け寄り強く抱き締めた。
「………へ?」
神楽は驚いたが、抵抗はしなかった。
「分かる、分かるわ。神楽さん。何も言わないで。…奏も直ぐに来るわ。」
夏音は、さっきのイロカゲを見て感じていた。自分が来るのがあと数分遅かったら、神楽はビルから飛び降りていただろうと。
夏音は、良かったという感情と、もし間に合っていなかったらという恐怖が入り交じって、知らぬ間に涙を流していた。夏音が流した涙が神楽の頬に触れた。
「…三嶽ちゃん。何で泣いてるの?」
「ツラかったよね。分かる、分かるわ。あなたは悪くない。悪くない。」
夏音は、金髪に近い色をした神楽の髪を優しく撫でながら、励ますように優しく呟いた。
「う、う、うわぁぁぁぁああああ。」
すると、神楽もギュッと夏音を強く抱き締め、子どものように声を出して泣いた。大きな声で泣いた。溜まっていた思いが涙に変わって体内から溢れだしたように、大粒の滴を流した。
雲が切れたのか、綺麗な月明かりが二人を包み込むように降ってきた。
「…ありがとう。」
落ち着きを取り戻した神楽を見て、夏音は抱き締めていた両の手を離し、神楽の手を引いて貯水槽に繋がっている太いパイプに腰を下ろした。
「………。」
神楽は何をどう話したらよいのか分からない表情で、無言のまま下を向いていた。
夏音も、何をどう聞いたらよいのか分からずに、無言のまま下を向いていた。
困った夏音がふと神楽を見ると、自分と同じく話す内容に困っているであろう表情でいる神楽が、自分の鏡を見ているようで、何故か急に可笑しく感じてしまい、クスリと笑ってしまった。
笑い声が聞こえた神楽は夏音の顔を見て、何で笑ってるんだろうと首を傾げた。
「ご、ごめんなさい。何か、今まで神楽さんとは余り接点がなかったなぁって。ま、まぁ、神楽さんは今時の女子高生って感じだから、私みたいなのとは仲良くはならないですよね…。」
「…違うわ。私は外見で誤魔化したいだけ。強く見せたかったの。…奏に聞いてない?私、小学生の頃は、デブでダサくて苛められてて、いっつも奏に助けられてたの。」
初めて聞く話に夏音は、少し驚いた。
「はぁ、はぁ…神楽…。」
突然、声がした方に二人が目を向けると、息を切らした奏が月明かりに照らされて立っていた。
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