colors -イロカゲ -

雨木良

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第3章 友人とネズミ色

(3)

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「神楽……良かった……。」

奏は、生きている神楽を見て安堵に包まれたのか、力が抜けて地面にペタリと座り込んだ。

神楽は、直ぐに立ち上がって奏に駆け寄り、強く抱き締めた。

「ありがとう、奏。……ごめんね。」

「ううん。いいの、神楽が生きててくれれば。」

奏も両の手を神楽の背中に回し、ギュッと抱き締め、神楽の耳元で励ますような言葉を何度も呟いた。

夏音は、美しい友情に感動していた。奏のお蔭で神楽の気持ちも大分変化しただろうと考え、イロカゲを確認しようとした。

「……え?」

夏音は、驚きを隠せずに思わず声を出してしまった。神楽のイロカゲは、確かに自殺願望を表す暗い紫色が、安心を表す淡いピンク色に変化していたのだが、奏のイロカゲは嘘を表すネズミ色をしていた。

(奏…。どういうこと?)

夏音は、奏本人に真意を確かめたかったが、その術などあるはずもなく、黙って見つめているしかなかった。

奏は、ゆっくり神楽を抱き締めていた手を解くと、優しく神楽の頭を撫でて立ち上がった。

「…神楽。やっぱりこの場所だと思ったのよ。」

奏はそう言うと、フェンスまで歩いて景色を見回した。周りのビルよりも少しだけ高いこのビルからは、ライトアップされた小田原城が見えていた。

神楽もゆっくりと奏に近付いて、一緒に景色を見回した。

「この場所は、奏との一番の思い出の場所。奏なら来てくれると思ってた…。」

夏音は、二人の思い出話よりも、さっき見た奏のイロカゲの方が気になったが、会話に着いていけないのも寂しく感じて、二人の背後から質問を投げ掛けた。

「ねぇ、この場所って二人にとってどういう場所なの?」

夏音の言葉に景色を見ていた二人は振り向いて、神楽が答えた。

「ここは昔、私が苛めにあって嫌な思いをすると必ず来る場所で…私を励ます為に奏もいつも一緒に来てくれてたの。」

「このビルは神楽のお祖父さんが所有しててね、神楽は小さい時から、この場所から見える小田原城が好きだったんだって。小学校の時に、神楽が今言ったように私も来るようになって。…中学校になると、特に理由もなく二人でこの場所に来て、絵を描いたり、くだらない話したり、ボーっとしたりして…単なるビルの屋上だけど、二人にとっては特別な場所なんだ。」

奏はニッコリしながら、神楽の話を補足した。

夏音は気になり、また奏のイロカゲを見たが、今の言葉に偽りは無かった。

(…あれ。奏も淡いピンク色になってる。…さっきのネズミ色は勘違い…だったのかなぁ。)

夏音は、さっきの奏のイロカゲさえ見なければ今の二人の言葉に感動してただろうと思いながら、作り笑顔で答えるしかなかった。 
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