盲目公爵の過保護な溺愛

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 ひとり取り残された部屋で、わたしは大きなため息をついた。
 わたしたちは正真正銘血の繋がった家族だが、エミリアが生まれてからというもの、いつでも、どんな時でもわたしだけが蚊帳の外だった。

 金髪碧眼で母親譲りの美貌を持つエミリアと、父親にそっくりな赤みがかった茶色の髪にヘーゼルの瞳という平凡な容姿のわたしは、日常的に比べられ、差別されてきた。

 我が家がこんな風になってしまった理由の一つとして、この国の結婚制度が挙げられる。

 この国では結婚に際し、花嫁の価値に見合うだけの金額を生家に支払う事が定められている。
 金額については婚約時に両家の話し合いで決まるのだが、貴族間の相場は高額で、嫁ぎ先の家格によっては一生食べるのに困らないだけの額が支払われる。
 中には手の届かない美女をなんとしてでも妻にしようと、婚家に法外な金額を支払ったのだと自慢する者もいる。

 お喋り好きな使用人から聞いた話だが、わたしが生まれた日、両親は生まれた赤ん坊のあまりに平凡な容姿に落胆したそうだ。
 しかし二人にとっては初めての子で、この先子宝に恵まれるとも限らない。
 高額な結納金は望めないが、せめて将来嫁ぎ先に困る事のないように、立派な淑女に育てようと考えてくれていたらしい。
 おぼろげな記憶しか残ってはいないが、この時確かにわたしは両親から愛されていた。

 しかしそんな幸せな日々も、エミリアの誕生を機に一変する。

 両親は美女と評判だった母に瓜二つの特徴を持った赤子を見るなり『これでアシュトン伯爵家は安泰だ!』と声を上げて大喜びした。
 それから両親の関心はもっぱらエミリアにばかり向けられるようになった。
 わたしはどうして急に両親が構ってくれなくなったのか理解できず、泣き叫んだり駄々をこねたりして周囲を困らせた。
 しかし、両親はわたしを心配するどころか疎ましげな視線を向けるだけ。
 最初こそわたしを慕ってくれていたエミリアだったが、両親からの関心の差が意味するものに気付く年頃になってからは、すっかり馬鹿にした態度をとるようになった。

 「お姉さまのお顔は地味だから、こんな華やかなものは似合わないわ」と言って、わたしの持ち物を勝手に持ち出しては自分の物のように使って壊すを繰り返した。
 耐えかねて抗議をすると、父は「おまえは姉なんだから我慢しろ」と言って怒り、母は「あなたはなんて心の狭い子なの」と言って、隣で嘘泣きするエミリアを慰めた。
 それでもわたしは、いつか両親が自分を見てくれるのではないか、エミリアのわがままを叱ってくれるのではないかと淡い期待を持ち続けていた。そう、あの日までは。






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