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しおりを挟む忘れもしない、あれはわたしが十歳の誕生日を控えた日のこと。
あの頃はまだ、両親もわたしのために毎回ドレスを新調してくれていた。
部屋に置かれたトルソーに飾られた新しいドレスと、それに合わせたネックレスとイヤリングに髪飾り。
身に着ける日が楽しみで楽しみで、毎日うっとりと眺めては誕生日が来るのを待っていた。
そして誕生日を三日後に控え、家庭教師のレッスンを終えて自室に戻ったわたしは、ドレスとアクセサリーが部屋から消えていることに気付いた。
『ない……ない、ない、ない!わたしのドレスとアクセサリー……どこにいったの!?』
すぐにメイドを呼び、わたしが不在の間に部屋に入った者がいないか確認した。
するとメイドは気まずそうな顔をして口ごもった。
必死に問いただしてようやく聞き出すことができた答えは、信じられない内容だった。
『エミリア様が、ミレーヌ様のドレスとアクセサリーを部屋まで持ってくるようにと──』
頭に血が上ったわたしは、メイドの言葉を最後まで聞く前に部屋を飛び出していた。
エミリアは成長するにつれ、だんだんとわたしの物を欲しがるようになった。
あまりに駄々をこねるものだから、見かねた両親が同じ物を買い与えたのだが、エミリアは新品には一切興味を示さなかった。
わたしの使っている物じゃないと嫌だと泣き喚くのだ。
それでもまだこの時は、なんだかんだいって両親はわたしの味方であると信じていた。
それに今回はいつものぬいぐるみやリボンなどではない。
父と母が、わたしの誕生日のお祝いに用意してくれたドレスとアクセサリーだ。
いざとなったらふたりに言えば、必ずミレーヌを叱ってくれるだろう。
しかし期待はあっさり裏切られる事になる。
ノックもそこそこに、エミリアの部屋へ入ったわたしが目にしたのは、信じられない光景だった。
エミリアは、わたしが今日までずっと大切に、見るだけで我慢してきたドレスとアクセサリーを我が物顔で身に着け、無邪気に笑いながら鏡の前でくるくると回っていたのだ。
『何してるのよ!』
わたしに気付いたエミリアは、自分が悪い事をしている自覚があるのか、打って変わって顔を引きつらせた。
わたしはドレスとアクセサリーを取り返そうと、エミリアに近寄った。
『返しなさい!それはわたしの物よ!』
『ちょっとくらい、いいじゃない!お姉さまばっかりずるいわ!』
エミリアだって毎年誕生日にはドレスとアクセサリーを新調してもらっている。
わたしのよりも明らかに豪華なそれを羨ましいと思った事はあるが、だからといって無断で持ち出して身に着けようなんて思わない。
『早く脱ぎなさいったら!』
『いやっ、いやだったら!!お父さま!お母さま──っ!』
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