盲目公爵の過保護な溺愛

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
4 / 4

しおりを挟む




 しばらくして騒ぎを聞きつけた父と母がやってきた。
 
 『いったい何の騒ぎだ』

 『お父さま!お姉さまが意地悪するの!』

 『違うでしょう!?お父さま!エミリアがわたしのドレスとアクセサリーを勝手に持ち出したの!』

 父は、わたしたちを交互に見たあとため息をついた。

 『なんだ、そんな事か』

 『え……?』

 予想もしなかった父の言葉に、わたしは耳を疑った。
 
 『ミレーヌ、おまえが我慢すればいい話だろう?まったく……姉だというのに優しさの欠片もない』

 『そうよ、ミレーヌ。あなた妹をこんなに泣かせて恥ずかしくないの?』

 『お母さまぁ!!』

 エミリアは泣きながら母に抱きついた。
 しかしその顔に涙のあとは見られない。完全な嘘泣きだ。
 エミリアは自分に有利な状況なのがわかると、泣いているフリをしながらわたしを見て、馬鹿にしたように笑った。
 
 結局わたしのドレスとアクセサリーは、エミリアが飽きるまで遊んだあとに返却された。
 戻ってきたドレスはシワだらけで、ところどころほつれて糸がとび出ていた。
 アクセサリーにいたっては細かい傷が無数についていて、金具も曲がっていた。
 せっかくのドレスを台無しにされたことはもちろんだが、それよりも両親がわたしの味方をしてくれなかったこと、わたしへのプレゼントをあっさりエミリアに譲ったことの方がつらくて悔しくて切なかった。
 その後も両親から慰めの言葉はなく、わたしの扱いはさらに雑なものへと変わっていったのだ。


 あれから九年の時が経ち、さすがに色々なことに諦めがついた。
 今さら両親の愛情が欲しいなんて思わないし、エミリアと仲良くしようとも思わない。
 今日だって『体裁が悪いから』という理由でパーティーへの出席を許されたけれども、両親もエミリアも、本音ではみすぼらしい姿のわたしが招待客の目に触れるのが嫌でしょうがないのだ。

 ──それなら、安くてもいいから新しいド
レスを買ってくれればいいのに

 わたしだってエミリアと同じ、アシュトン伯爵家の娘。
 けれど両親は、ドレスだけの話ではなく、新しい物をわたしに買い与えることを頑なに拒む。
 おそらくわたしの容姿では運よく嫁ぎ先が見つかったとしても、望むような結納金が貰えないと踏んでいるのだろう。
 だから投資するだけ無駄だと思っているに違いない。
 おまけに家族から今日のような日はいつも『目立たぬように』と念を押されているため、会場では家族の輪に入ることも許されず、いつもバルコニーの隅に隠れるようにして時間が過ぎるのを待つ。

 ──今日もまた、息を殺して長い時間をやり過ごさなければならないのか
 
 わたしは重い足取りで会場へ向かった。

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

沙吉紫苑
2026.02.04 沙吉紫苑

新作ありがとうございます。

寒いですがご自愛くださいませ。

2026.02.04 クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

沙吉様、お久しぶりです〜ʕ•ᴥ•ʔ
早速のコメント本当に嬉しいです✨️
昔からの読者様のお名前を見ると感動です!

解除

あなたにおすすめの小説

わたしたちの庭

犬飼ハルノ
恋愛
「おい、ウェスト伯。いくらなんでもこんなみすぼらしい子どもに金を払えと?」 「まあまあ、ブルーノ伯爵。この子の母親もこんな感じでしたが、年ごろになると見違えるように成熟しましたよ。後妻のアリスは元妻の従妹です。あの一族の女は容姿も良いし、ぽんぽんと子どもを産みますよ」 「ふうん。そうか」 「直系の跡継ぎをお望みでしょう」 「まあな」 「しかも伯爵以上の正妻の子で年ごろの娘に婚約者がいないのは、この国ではこの子くらいしかもう残っていませんよ」 「ふ……。口が上手いなウェスト伯。なら、買い取ってやろうか、その子を」  目の前で醜悪な会話が繰り広げられる中、フィリスは思った。  まるで山羊の売買のようだと。  かくして。  フィリスの嫁ぎ先が決まった。 ------------------------------------------  安定の見切り発車ですが、二月中に一日一回更新と完結に挑みます。  ヒロインのフィリスが自らの力と人々に支えられて幸せをつかむ話ですが、  序盤は暗く重い展開です。  タグを途中から追加します。   他サイトでも公開中。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。

星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」 涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。 だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。 それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。 「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」 「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」 「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」 毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。 必死に耐え続けて、2年。 魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。 「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」 涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

婚約者の心が読めるようになりました

oro
恋愛
ある日、婚約者との義務的なティータイムに赴いた第1王子は異変に気づく。 目の前にいる婚約者の声とは別に、彼女の心の声?が聞こえるのだ。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。