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しおりを挟む「エミリア、なんて愛らしいんだ。おまえを見たら皆が夢中になってしまうに違いない」
「まあ、あなたったら。でもエミリア、今日のあなたは本当に綺麗よ。婚約の申し込みが殺到したらどうしましょう」
両親から贈られる賛辞の言葉に、わたしの妹──エミリアは頬を薔薇色に染め、満足そうな微笑みを返した。
波打つ豊かな金の髪は複雑に編み込まれ、ドレスは両親が今日のために奮発した流行のデザイナーの一点物。
エミリアの装いを見れば、彼女が両親からいかに愛されているのか一目瞭然だろう。
「お父さま、お母さま、こんなに素敵なドレスをありがとう。でも……お姉さまは本当にあれでいいの?」
エミリアは部屋の隅に立つわたしに目を向けた。
「ちょっと地味過ぎじゃない?いくら主役がわたしだからって、あの人が姉だなんて思われたら恥ずかしいわ」
ここは王都に建つアシュトン伯爵邸。
今日は次女エミリアの十六歳の誕生日パーティーが開かれる事になっていた。
両親も今日のために新調した盛装に身を包んでいる。
一方、長女のわたしは落ちつきのある紺色のドレス。
ちなみに新品ではなく、フォーマルな場にはいつもこのドレスで出席している。
理由はいたってシンプル。
両親はいつも自分たちやエミリアが優先で、わたしに予算を割いてくれないのだ。
「ミレーヌのドレスは確かに地味だが、生地は上等なものだ。元が取れるまでは着てもらわないとな」
このドレスはわたしが十六歳の誕生日に用意してもらったものだが、既製品を取り扱う店のセールで半額で売られていたものだ。
父は『良い買い物をした』と自慢気に言い、わたしに向かって値札が付いたままのドレスを放り投げてよこした。
あれからもう三年の月日が経ち、ドレスには糸引きやほつれが目立つようになった。
しかし父の口ぶりからすると、このドレスの元が取れるのはまだまだ先なのだろう。
「さあエミリア、そろそろ会場へ向かうとしよう。今日はおまえのために国中から貴族の独身男性を集めたのだ。なあに、心配する事はない。いつも通り愛らしいおまえの姿を存分に見てもらえばいい。ただ、相手選びは慎重にな」
念を押すように言う父に続き、母も口を開いた。
「エミリア、お父さまの言う通りよ。結婚は女の幸せと言うけれど、それもお相手次第ですからね」
「わかっているわ。地位と名誉、そして財力のあるお方を選ぶのよね?」
物分かりのいい答えに父と母は満足気に頷いた。
「そうだ。ミレーヌではろくな家に嫁げないだろうから、おまえだけが我が家の希望だ」
「こんなに美しい娘ですもの。きっと素敵な殿方に見初められるに違いないわ」
両親とエミリアは、わたしを一瞥もせずに部屋を出て行った。
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