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17.王城
①
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三週間ぶりに王都に戻ることができた。
私が戻ったことは、実家の家族も含めほとんどの人が知らない。
リュシアン様は私を連れて帰るなり令嬢たちが嘘の証言をしたと公にするつもりだったらしいのだけれど、私が実際に毒を盛っていたため、期間が終わる前に私の幽閉を解いたことが広まるのはまずいと判断したらしい。
リュシアン様の部下のトマスさんと、信頼できる使用人数人にだけこっそり私のことは知らされた。
屋敷の管理者であるルナール公爵には言わないわけにはいかないので、うまくごまかしておくとリュシアン様は言っていた。
そういう事情で、私はリュシアン様の部屋の隣にある小さな隠し部屋に匿われて残りの幽閉期間である一週間を過ごすことになった。
「リュシアン様の隣の部屋……! 私はなんて幸せなのでしょう!」
ついはしゃいだ声が出る。
ここは王宮に侵入者が現れた場合に隠れられるよう作られたもので、用意してもらった簡易ベッドを置いてしまえばほとんど埋まってしまうような狭い部屋だ。
しかし、すぐ隣の部屋にはリュシアン様がいると思うと、私には楽園のような場所に思えた。
「お前、本当に反省してるのか? 今から裁きの家に戻してもいいんだぞ」
はしゃぐ私を氷のように冷たい目で見つめて、リュシアン様は言う。
私は慌てて姿勢を正し、反省しておりますと言った。
隠し部屋でこっそり身をひそめて過ごしていると、リュシアン様の元に手紙が届いた。
私は隠し部屋の扉の隙間から、臣下の方から手紙を受け取るリュシアン様をじぃっと見つめる。
「ついに来てしまったのか……」
手紙を受け取ったリュシアン様は頭を抱えている。私はそろりそろりと近づいて、リュシアン様の後ろから手紙を覗き込んだ。
「それ、誰からの手紙ですか?」
「うわっ! 勝手に出て来るなと言っただろう!」
「ちゃんと臣下の方が出て行ったのを確認してから出てきました。誰からのですか?」
「叔父上……ルナール公爵だ。三日後に会えないかと。以前から俺が毒を盛られた件について聞きたいと言っていたんだが、約束が延期になっていてな」
「ルナール公爵ですか……。お会いして大丈夫でしょうか。王位簒奪を目論んでいる疑惑があるのに……」
「俺もあまり会いたくはないんだが。言っとくがお前のせいだぞ。お前が毒なんか盛るから、公爵が事件の話をしたいなんて言ってきたんだ」
「そ、そうですよね、ごめんなさい」
リュシアン様に睨まれ、私は慌てて謝る。
「そういうわけで俺は二日後に出かける。お前は隠し部屋で大人しくしていろ」
「はい、大人しくしています。リュシアン様の留守中にお部屋を探ったりとか、お洋服のにおいを嗅いだりなんてしません!」
「……本当に大人しくしてるよな?」
私が元気に返事をしたら、リュシアン様に疑わしそうに見られてしまった。リュシアン様はしばらく不安げに私を見た後、諦めたようにうなずいた。
***
二日後、私はそわそわした気分でリュシアン様の帰りを待った。
ルナール公爵と会って大丈夫だろうか。いや、公爵だって人目のあるところでリュシアン様を傷つけるようなことはしないはずだ。
けれど、公爵が王位を狙っていることを知ってしまった以上、彼とリュシアン様が顔を合わせるのはどうしても不安になる。
その面会の原因を作ってしまったのは私なのだけれど……。
隠し部屋の中でひたすら待った。
無事に帰ってきてくれるだろうか。
すると、リュシアン様の部屋のドアの開く音がして、私は急いで扉の隙間から向こうの部屋をのぞく。
しかし、そこにいたのはリュシアン様ではなく、部下のトマスさんだった。彼は扉をしっかり閉めると、迷いなくこちらに歩いてくる。
「ジスレーヌ様、いらっしゃいますか」
「はい。ここにいます」
「一旦開けてください。リュシアン様がまずいことになっています」
「え?」
私は急いで扉を開ける。トマスさんは沈痛な面持ちをしていた。
「トマスさん、リュシアン様がどうかしたんですか……?」
「いえ……その、間違いだとは思うのですが」
「は、はい。早く仰ってください」
気が気ではない思いで尋ねると、トマスさんは憂鬱そうに言った。
「リュシアン様がオレリア様を暴行しかけたと、騒ぎになっているんです」
「……え?」
私はぽかんとしてトマスさんを見る。彼はただ苦々しい顔をするばかりだった。
私が戻ったことは、実家の家族も含めほとんどの人が知らない。
リュシアン様は私を連れて帰るなり令嬢たちが嘘の証言をしたと公にするつもりだったらしいのだけれど、私が実際に毒を盛っていたため、期間が終わる前に私の幽閉を解いたことが広まるのはまずいと判断したらしい。
リュシアン様の部下のトマスさんと、信頼できる使用人数人にだけこっそり私のことは知らされた。
屋敷の管理者であるルナール公爵には言わないわけにはいかないので、うまくごまかしておくとリュシアン様は言っていた。
そういう事情で、私はリュシアン様の部屋の隣にある小さな隠し部屋に匿われて残りの幽閉期間である一週間を過ごすことになった。
「リュシアン様の隣の部屋……! 私はなんて幸せなのでしょう!」
ついはしゃいだ声が出る。
ここは王宮に侵入者が現れた場合に隠れられるよう作られたもので、用意してもらった簡易ベッドを置いてしまえばほとんど埋まってしまうような狭い部屋だ。
しかし、すぐ隣の部屋にはリュシアン様がいると思うと、私には楽園のような場所に思えた。
「お前、本当に反省してるのか? 今から裁きの家に戻してもいいんだぞ」
はしゃぐ私を氷のように冷たい目で見つめて、リュシアン様は言う。
私は慌てて姿勢を正し、反省しておりますと言った。
隠し部屋でこっそり身をひそめて過ごしていると、リュシアン様の元に手紙が届いた。
私は隠し部屋の扉の隙間から、臣下の方から手紙を受け取るリュシアン様をじぃっと見つめる。
「ついに来てしまったのか……」
手紙を受け取ったリュシアン様は頭を抱えている。私はそろりそろりと近づいて、リュシアン様の後ろから手紙を覗き込んだ。
「それ、誰からの手紙ですか?」
「うわっ! 勝手に出て来るなと言っただろう!」
「ちゃんと臣下の方が出て行ったのを確認してから出てきました。誰からのですか?」
「叔父上……ルナール公爵だ。三日後に会えないかと。以前から俺が毒を盛られた件について聞きたいと言っていたんだが、約束が延期になっていてな」
「ルナール公爵ですか……。お会いして大丈夫でしょうか。王位簒奪を目論んでいる疑惑があるのに……」
「俺もあまり会いたくはないんだが。言っとくがお前のせいだぞ。お前が毒なんか盛るから、公爵が事件の話をしたいなんて言ってきたんだ」
「そ、そうですよね、ごめんなさい」
リュシアン様に睨まれ、私は慌てて謝る。
「そういうわけで俺は二日後に出かける。お前は隠し部屋で大人しくしていろ」
「はい、大人しくしています。リュシアン様の留守中にお部屋を探ったりとか、お洋服のにおいを嗅いだりなんてしません!」
「……本当に大人しくしてるよな?」
私が元気に返事をしたら、リュシアン様に疑わしそうに見られてしまった。リュシアン様はしばらく不安げに私を見た後、諦めたようにうなずいた。
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二日後、私はそわそわした気分でリュシアン様の帰りを待った。
ルナール公爵と会って大丈夫だろうか。いや、公爵だって人目のあるところでリュシアン様を傷つけるようなことはしないはずだ。
けれど、公爵が王位を狙っていることを知ってしまった以上、彼とリュシアン様が顔を合わせるのはどうしても不安になる。
その面会の原因を作ってしまったのは私なのだけれど……。
隠し部屋の中でひたすら待った。
無事に帰ってきてくれるだろうか。
すると、リュシアン様の部屋のドアの開く音がして、私は急いで扉の隙間から向こうの部屋をのぞく。
しかし、そこにいたのはリュシアン様ではなく、部下のトマスさんだった。彼は扉をしっかり閉めると、迷いなくこちらに歩いてくる。
「ジスレーヌ様、いらっしゃいますか」
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「一旦開けてください。リュシアン様がまずいことになっています」
「え?」
私は急いで扉を開ける。トマスさんは沈痛な面持ちをしていた。
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「いえ……その、間違いだとは思うのですが」
「は、はい。早く仰ってください」
気が気ではない思いで尋ねると、トマスさんは憂鬱そうに言った。
「リュシアン様がオレリア様を暴行しかけたと、騒ぎになっているんです」
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私はぽかんとしてトマスさんを見る。彼はただ苦々しい顔をするばかりだった。
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