37 / 95
3.元婚約者が転入してきました
③
しおりを挟む
「ブラッド様、なぜラネル魔術院に……?」
「決まってるだろ? メイベルに会いにきたんだよ」
ブラッド様はそう言いながら私の手を取る。それから両手でぎゅっと握りしめた。
「あ、あの……?」
「メイベル。俺たちまたやり直そう。少しすれ違ってしまっただけで、俺たちは元々仲のいい婚約者同士だったじゃないか。婚約し直したらきっとうまくいくはずだ」
ブラッド様は私の目をまっすぐ見つめて言う。
仲のいい婚約者同士だったっけ……? と私は困惑してしまった。婚約者だった頃のブラッド様は、私といても大抵つまらなそうな顔をしていた気がするんだけれど……。
私がブラッド様に手を握られたまま戸惑っていると、突然その手を引きはがされた。顔を上げると、そこにはにっこり微笑むレナード様がいた。
「お久しぶりです、ブラッド殿。メイベルさんとは正式に婚約解消なさったのではありませんでしたっけ? 一度解消した婚約を結び直そうなんて、気軽におっしゃらないほうがいいですよ」
「あっ! お前はパーティーでメイベルと一緒にいた……!」
「レナード・ラスウェルと申します。メイベルさんとは魔術院で仲良くさせてもらってます」
レナード様はにこやかに言う。
ブラッド様は苛立たしげにレナード様を睨んだ。
「気安くメイベルに近づくなよ。メイベルはすぐにまた俺の婚約者に戻るんだからな」
「本人が承諾してくれればいいですね」
レナード様とブラッド様は、ぴりぴりした空気で睨み合っている。
その時、夜間クラスの先生が教室に入ってきた。
「ブラッド・カーク君。なぜこの教室にいるんだ。放課後に魔術院について説明をすると伝えておいただろう」
「すみません、先生。魔術院に知り合いがいるもので、どこにいるのか気になってしまって……。すぐに戻ります」
ブラッド様は先生に向かって爽やかな笑みで言い、教室を後にする。
去り際、彼は振り返って私のほうを見た。
「メイベル、また来るよ。君がまた婚約してくれると言うまで諦めないからな」
「え、ちょっと、ブラッド様……」
私の返事も聞かず、ブラッド様は行ってしまった。
レナード様が横で、なんなんだあの人と怒っている。
嵐は過ぎ去ったけれど、教室中はまだざわめいていた。みんな興味津々な様子で私を見ている。
私はもうブラッド様と関わりたくないのに……。
突然の事態に、私は途方に暮れてしまった。
***
翌日から、何かとブラッド様は私の前に現れるようになった。
休み時間に放課後、果ては帰り道にまで現れる。一週間が経つ頃には、私はすっかり疲れ果てていた。
「疲れた……ブラッド様、一体どういうつもりなのかしら……」
私は訓練場の壁際で思わずへたり込む。
「決まってるだろ? メイベルに会いにきたんだよ」
ブラッド様はそう言いながら私の手を取る。それから両手でぎゅっと握りしめた。
「あ、あの……?」
「メイベル。俺たちまたやり直そう。少しすれ違ってしまっただけで、俺たちは元々仲のいい婚約者同士だったじゃないか。婚約し直したらきっとうまくいくはずだ」
ブラッド様は私の目をまっすぐ見つめて言う。
仲のいい婚約者同士だったっけ……? と私は困惑してしまった。婚約者だった頃のブラッド様は、私といても大抵つまらなそうな顔をしていた気がするんだけれど……。
私がブラッド様に手を握られたまま戸惑っていると、突然その手を引きはがされた。顔を上げると、そこにはにっこり微笑むレナード様がいた。
「お久しぶりです、ブラッド殿。メイベルさんとは正式に婚約解消なさったのではありませんでしたっけ? 一度解消した婚約を結び直そうなんて、気軽におっしゃらないほうがいいですよ」
「あっ! お前はパーティーでメイベルと一緒にいた……!」
「レナード・ラスウェルと申します。メイベルさんとは魔術院で仲良くさせてもらってます」
レナード様はにこやかに言う。
ブラッド様は苛立たしげにレナード様を睨んだ。
「気安くメイベルに近づくなよ。メイベルはすぐにまた俺の婚約者に戻るんだからな」
「本人が承諾してくれればいいですね」
レナード様とブラッド様は、ぴりぴりした空気で睨み合っている。
その時、夜間クラスの先生が教室に入ってきた。
「ブラッド・カーク君。なぜこの教室にいるんだ。放課後に魔術院について説明をすると伝えておいただろう」
「すみません、先生。魔術院に知り合いがいるもので、どこにいるのか気になってしまって……。すぐに戻ります」
ブラッド様は先生に向かって爽やかな笑みで言い、教室を後にする。
去り際、彼は振り返って私のほうを見た。
「メイベル、また来るよ。君がまた婚約してくれると言うまで諦めないからな」
「え、ちょっと、ブラッド様……」
私の返事も聞かず、ブラッド様は行ってしまった。
レナード様が横で、なんなんだあの人と怒っている。
嵐は過ぎ去ったけれど、教室中はまだざわめいていた。みんな興味津々な様子で私を見ている。
私はもうブラッド様と関わりたくないのに……。
突然の事態に、私は途方に暮れてしまった。
***
翌日から、何かとブラッド様は私の前に現れるようになった。
休み時間に放課後、果ては帰り道にまで現れる。一週間が経つ頃には、私はすっかり疲れ果てていた。
「疲れた……ブラッド様、一体どういうつもりなのかしら……」
私は訓練場の壁際で思わずへたり込む。
2,137
あなたにおすすめの小説
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう
楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。
目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。
「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」
さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。
アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。
「これは、焼却処分が妥当ですわね」
だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。
婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のミレナは、双子の妹キサラより劣っていると思われていた。
婚約者のルドノスも同じ考えのようで、ミレナよりキサラと婚約したくなったらしい。
排除しようとルドノスが突き飛ばした時に、ミレナは前世の記憶を思い出し危機を回避した。
今までミレナが支えていたから、妹の方が優秀と思われている。
前世の記憶を思い出したミレナは、キサラのために何かすることはなかった。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。
ふまさ
恋愛
──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。
彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。
ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。
だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。
※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる