36 / 95
3.元婚約者が転入してきました
②
しおりを挟む
「新しく入ってきた転入生、見た? すごくかっこよかったわね!」
「見た見た! 金髪に赤い目の人でしょう?」
「夜だけのクラスに入ったらしいわね。合同授業か何かで会えないかしら!」
彼女たちはきゃっきゃと騒いでいる。
「転入生が来たみたいですね」
「そうみたいだね。どんな人なんだろう」
正式な学園よりも人の入れ替わりの激しいラネル魔術院なので、中途半端な時期に新しく学生が入ってくることは珍しくない。というか私もそれに当てはまる。
ラネル魔術院は私塾的な場所なので転入生という言い方がふさわしいのかはわからないけれど、私たち生徒は九月の正式な入学時期以外に入る生徒以外を、便宜的に転入生と呼んでいる。それにしても……。
「金髪に赤い目かぁ……」
私はぽつりと呟いた。
元婚約者のブラッド様がまさに金髪に赤目だった。なんだかブラッド様を思い出してしまう。
彼の婚約者だった頃が今はもう随分昔に感じる。婚約解消したのはたった数ヶ月前のことなのに。
「え、あの、メイベルさん、金髪赤目が好みだったりする……?」
「いえ、特に。元婚約者のブラッド様が同じ髪と目の色をしていたので懐かしいなと」
「そ、そっか。そうだよね、元とはいえ婚約者だった人だし懐かしいよね……」
「そうなんです。ブラッド様のことはもう何とも思ってないのですが、数年間婚約者だったせいか無意識に記憶と紐づいてしまって」
「そっか! 何とも思ってないけれど紐づいてしまっただけなんだ!」
浮かない顔をしていたレナード様がぱっと笑顔になる。
私は首を傾げてしまった。
転入生のことは気になったけれど、特に彼と出くわすこともなく、その日も普段通りに授業を終えた。
夜間クラスの人らしいので、この先も会う機会はないかもしれない。授業の時間帯はいくつか被っているものの、校舎自体が違うから。
そう思いながら帰り支度をしていると、教室の扉の辺りが突然ざわめきだした。
なんだろうと視線を向ける。
「メイベル、メイベル! 大変よ!」
「リタさん。どうなさったんですか?」
クラスメイトのリタさんが慌て顔で駆け寄ってきたので、私は不思議に思いながら尋ねる。
彼女は扉の方を指さして言った。
「転入生がメイベルを探してるのよ!」
「え?」
私は思わず扉に視線を向ける。すると女の子たちの向こうに、見慣れた金色の髪の人物がいるのが目に入った。
彼は私と視線が合うと、にこやかにこちらへ近づいてくる。
「メイベル! このクラスだったんだな。ようやく会えて嬉しいよ!」
「ブ、ブラッド様……?」
私は呆気に取られてしまった。
ブラッド様が、ラネル魔術院の制服である黒いローブを着て目の前にいる。彼は魔法に興味がなかったはずなのにと、信じられない気持ちになる。
「見た見た! 金髪に赤い目の人でしょう?」
「夜だけのクラスに入ったらしいわね。合同授業か何かで会えないかしら!」
彼女たちはきゃっきゃと騒いでいる。
「転入生が来たみたいですね」
「そうみたいだね。どんな人なんだろう」
正式な学園よりも人の入れ替わりの激しいラネル魔術院なので、中途半端な時期に新しく学生が入ってくることは珍しくない。というか私もそれに当てはまる。
ラネル魔術院は私塾的な場所なので転入生という言い方がふさわしいのかはわからないけれど、私たち生徒は九月の正式な入学時期以外に入る生徒以外を、便宜的に転入生と呼んでいる。それにしても……。
「金髪に赤い目かぁ……」
私はぽつりと呟いた。
元婚約者のブラッド様がまさに金髪に赤目だった。なんだかブラッド様を思い出してしまう。
彼の婚約者だった頃が今はもう随分昔に感じる。婚約解消したのはたった数ヶ月前のことなのに。
「え、あの、メイベルさん、金髪赤目が好みだったりする……?」
「いえ、特に。元婚約者のブラッド様が同じ髪と目の色をしていたので懐かしいなと」
「そ、そっか。そうだよね、元とはいえ婚約者だった人だし懐かしいよね……」
「そうなんです。ブラッド様のことはもう何とも思ってないのですが、数年間婚約者だったせいか無意識に記憶と紐づいてしまって」
「そっか! 何とも思ってないけれど紐づいてしまっただけなんだ!」
浮かない顔をしていたレナード様がぱっと笑顔になる。
私は首を傾げてしまった。
転入生のことは気になったけれど、特に彼と出くわすこともなく、その日も普段通りに授業を終えた。
夜間クラスの人らしいので、この先も会う機会はないかもしれない。授業の時間帯はいくつか被っているものの、校舎自体が違うから。
そう思いながら帰り支度をしていると、教室の扉の辺りが突然ざわめきだした。
なんだろうと視線を向ける。
「メイベル、メイベル! 大変よ!」
「リタさん。どうなさったんですか?」
クラスメイトのリタさんが慌て顔で駆け寄ってきたので、私は不思議に思いながら尋ねる。
彼女は扉の方を指さして言った。
「転入生がメイベルを探してるのよ!」
「え?」
私は思わず扉に視線を向ける。すると女の子たちの向こうに、見慣れた金色の髪の人物がいるのが目に入った。
彼は私と視線が合うと、にこやかにこちらへ近づいてくる。
「メイベル! このクラスだったんだな。ようやく会えて嬉しいよ!」
「ブ、ブラッド様……?」
私は呆気に取られてしまった。
ブラッド様が、ラネル魔術院の制服である黒いローブを着て目の前にいる。彼は魔法に興味がなかったはずなのにと、信じられない気持ちになる。
2,392
あなたにおすすめの小説
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる