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番外編
閑話 フィリップのクリスマス、再び 前編
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※ ご無沙汰しています。しばらくお休みしていましたが、今年も、フィリップのゆるゆるしたクリスマス話をウルス視点で書いてみました。前後編になります。
王宮へ通う道のり、冷たい風から守ってくれるあたたかいマフラー。
去年の冬、異世界では神の子の誕生を祝う日があり、神の子=天使だから、この世界の天使であるルイスを祝う日でもある……とかなんとか、おかしなことを言いだしたフィリップ。
その日はプレゼントをする習慣があると言って、もらったものだ。
フィリップがルイスの髪色に似た色を選んだというだけあって、見事な金色のマフラーは、今年の冬もその輝きを少しも失ってはいない。
異世界の神どころか、自分にとったら異世界くらい縁のないド派手なマフラーだが、俺は今年の冬も使っている。
あまりに上質であたたかく、一度使い始めると手放せなくなったからだ。
使い始めたころ、このマフラーをまいた俺を見た王宮で働く人たちは一様にぎょっとしていた。
いつも暗い色の服しか着ない俺が首だけ金色だからな。
「ウルス、その首元はどうした……? 何があった……?」
と、恐る恐る聞いてきた同僚もいた。
王太子からの贈り物だ、と説明すると、「ああ、なるほど。さすがは王太子様。まぶしいくらい金色で美しいマフラーだな」と、納得したように、マフラーだけを褒めて立ち去った。
そういえば、同僚が連れていた小さな女の子が「マリアンナみたい!」と言ったこともあったな。
不思議に思い、「マリアンナって誰なのかな?」と聞けば、「マリアンナは、まっくろでピカピカした首輪をしてるの!」と嬉しそうに答えた。
どうやら、真っ黒の犬の名がマリアンナで、夜でも光る首輪をつけているらしい。
その時の俺の服装はシンプルな黒のロングコートに金色のマフラー。
なるほどな……と、妙に納得していると、犬にたとえられて俺が怒ったと思ったのか、親である同僚があわてたように変なフォローをしはじめた。
「でも、マリアンナはすごいお屋敷に住んでいる、とても高貴で美しい犬なのよ。それに、光る首輪は夜でも光ってとても目立つから。ウルスさんもそのマフラーをまいていたら、夜道も安全なんじゃないかしら」
俺のマフラーは確かに金色だが、さすがに夜道では光らない……。
ともかく、使い始めたころは、そんな反応ばかりだったが、羞恥心は一時だ。
慣れる。
それよりも、疲れた俺を寒風から守ってくれる快適さを俺は選んだ。
そんなことを考えながら、俺の仕事場であるフィリップの執務室に着いた。
ふと、嫌な予感がよぎる。
そういえば、このマフラーをもらったのは去年の今日じゃなかったか……?
まさか、今年も、今日は異世界のルイスの誕生日だから、「メリールイス!」とか、馬鹿なことを言ってはしゃいでないよな……。
この年末の忙しい時に面倒なことはやめてくれ。
きっと、あのときフィリップのブームだっただけで、さすがに1年たてば忘れているか。
俺の思い過ごしだ。
そう思いつつ、ドアをノックする。
すると、扉があいた。顔をだしたのは、モーラさんだ。
「おはようございます、ウルスさん。そして、メリークリスマス! メリールイスさま!」
「モーラさん……。何を言って……」
と言いかけた時、後ろから上機嫌のフィリップの声が。
「もしかして、モーラはしっかり覚えていたのに、ウルスは忘れてた? 今日は異世界での神の子の誕生を祝う日。つまり、異世界でのルイスの記念すべき誕生日……」
「いや、いい。それ以上は言うな。忘れてしまいたかったが覚えてるから……」
がっくりくる俺に、モーラさんがリボンのかかった小さな包みを手渡してきた。
「これは……?」
力なく聞く俺に、モーラさんが満面の笑みで答えた。
「異世界でのルイス様のお誕生日ですから、プレゼントです。去年、フィリップ様に素晴らしい贈り物をいただいて、とてもうれしかったので、私も今年はささやかですが、みなさんにプレゼントを配ってるんです。甘いものが苦手なウルスさん用に塩味の焼き菓子をやいてきたので、どうぞ」
「それはどうも……」
力なく答えながらも、食料になるものはもらっておく。
が、……ん?
「あの、モーラさん。さっき、このプレゼントをみなさんに配ってると言いましたか……?」
「ええ」
「まさか、今日が異世界では神の子が生まれたことを祝う日で、異世界でのルイスの誕生日だとかいう、変な説明付きで……?」
「もちろんです! そうでないと、意味がないじゃないですか」
「いやいやいや、意味がないどころか、異世界の記念日であって、ルイスはなんの関係もないし! そんな変なことが王宮の中にひろまるのはやめたほうが……」
「そんな変なこと? 何言ってるの、ウルス? 神の子は天使。天使はルイスだよね? 異世界だろうが、どの世界であっても、ルイスは生粋の天使だよ?」
いやいや、生粋の人間だろう!
「モーラがそんな異世界でのルイスの誕生日を祝って、王宮で焼き菓子を配ってくれていることは称賛こそすれ、やめたほうがいいなんてどの口が言ってんの? 間違っても言うことじゃないよね? ねえ、ウルス」
フィリップの冷たい声が響いた。
見ると、恐ろしいほどに笑顔なのに、目が一切笑っていない。
ルイスが絡むと一気に思考がおかしくなり、異常なほど沸点が低くなるフィリップ。
こんな状態のフィリップを止められるのはルイス本人しかいない。
残念ながら、ルイスはここにいない。
そんな状況で、俺が反論していいことは何ひとつないことは、長年フィリップのそばにいて、痛いほど身に染みている。
ルイス天使論に俺が反論した途端、ルイスがどれだけ天使かということをフィリップがノンストップでしゃべり続ける未来しかない。
俺は反論するのは即座にあきらめた。
が、これだけは伝えておかねば。
「今年はフィリップからの贈り物はいらない」
その途端、フィリップがぷっと笑った。
「そんなに毎日、ルイスの髪色のマフラーしてきてるのに? 僕のプレゼント、ものすごく気に入ってるみたいだけど、いらないの?」
うっ……。
確かに、悔しいが、今日も金色のマフラーをしてきている。
このあたたかさを知った以上、他人からどれだけ好奇の視線にさらされようが、物理的な寒さに弱い自分は使ってしまっている。
だが、さすがにこれ以上、ルイスの髪色のプレゼントを身に着けて、寒々とした視線をのりこえる自信は俺にはない。
だからいらん!
そうはっきり断言しようとフィリップをきっと見返したら、フィリップが俺の考えを見すかしたように笑った。
「でも、残念。今年はウルスにはプレゼントはないんだ。期待してたかもしれないのに、ごめんねー」
プレゼントがないと聞いてほっとするが、フィリップの言い方、腹立つな……。
「今年は、ルイスへのプレゼントの用意に全力投球だったからね」
そう言って、フィリップは満足そうに笑った。
※ 読んでくださった方、ありがとうございます! 明日中に、後編を更新したいと思っています。よろしくお願いします!
王宮へ通う道のり、冷たい風から守ってくれるあたたかいマフラー。
去年の冬、異世界では神の子の誕生を祝う日があり、神の子=天使だから、この世界の天使であるルイスを祝う日でもある……とかなんとか、おかしなことを言いだしたフィリップ。
その日はプレゼントをする習慣があると言って、もらったものだ。
フィリップがルイスの髪色に似た色を選んだというだけあって、見事な金色のマフラーは、今年の冬もその輝きを少しも失ってはいない。
異世界の神どころか、自分にとったら異世界くらい縁のないド派手なマフラーだが、俺は今年の冬も使っている。
あまりに上質であたたかく、一度使い始めると手放せなくなったからだ。
使い始めたころ、このマフラーをまいた俺を見た王宮で働く人たちは一様にぎょっとしていた。
いつも暗い色の服しか着ない俺が首だけ金色だからな。
「ウルス、その首元はどうした……? 何があった……?」
と、恐る恐る聞いてきた同僚もいた。
王太子からの贈り物だ、と説明すると、「ああ、なるほど。さすがは王太子様。まぶしいくらい金色で美しいマフラーだな」と、納得したように、マフラーだけを褒めて立ち去った。
そういえば、同僚が連れていた小さな女の子が「マリアンナみたい!」と言ったこともあったな。
不思議に思い、「マリアンナって誰なのかな?」と聞けば、「マリアンナは、まっくろでピカピカした首輪をしてるの!」と嬉しそうに答えた。
どうやら、真っ黒の犬の名がマリアンナで、夜でも光る首輪をつけているらしい。
その時の俺の服装はシンプルな黒のロングコートに金色のマフラー。
なるほどな……と、妙に納得していると、犬にたとえられて俺が怒ったと思ったのか、親である同僚があわてたように変なフォローをしはじめた。
「でも、マリアンナはすごいお屋敷に住んでいる、とても高貴で美しい犬なのよ。それに、光る首輪は夜でも光ってとても目立つから。ウルスさんもそのマフラーをまいていたら、夜道も安全なんじゃないかしら」
俺のマフラーは確かに金色だが、さすがに夜道では光らない……。
ともかく、使い始めたころは、そんな反応ばかりだったが、羞恥心は一時だ。
慣れる。
それよりも、疲れた俺を寒風から守ってくれる快適さを俺は選んだ。
そんなことを考えながら、俺の仕事場であるフィリップの執務室に着いた。
ふと、嫌な予感がよぎる。
そういえば、このマフラーをもらったのは去年の今日じゃなかったか……?
まさか、今年も、今日は異世界のルイスの誕生日だから、「メリールイス!」とか、馬鹿なことを言ってはしゃいでないよな……。
この年末の忙しい時に面倒なことはやめてくれ。
きっと、あのときフィリップのブームだっただけで、さすがに1年たてば忘れているか。
俺の思い過ごしだ。
そう思いつつ、ドアをノックする。
すると、扉があいた。顔をだしたのは、モーラさんだ。
「おはようございます、ウルスさん。そして、メリークリスマス! メリールイスさま!」
「モーラさん……。何を言って……」
と言いかけた時、後ろから上機嫌のフィリップの声が。
「もしかして、モーラはしっかり覚えていたのに、ウルスは忘れてた? 今日は異世界での神の子の誕生を祝う日。つまり、異世界でのルイスの記念すべき誕生日……」
「いや、いい。それ以上は言うな。忘れてしまいたかったが覚えてるから……」
がっくりくる俺に、モーラさんがリボンのかかった小さな包みを手渡してきた。
「これは……?」
力なく聞く俺に、モーラさんが満面の笑みで答えた。
「異世界でのルイス様のお誕生日ですから、プレゼントです。去年、フィリップ様に素晴らしい贈り物をいただいて、とてもうれしかったので、私も今年はささやかですが、みなさんにプレゼントを配ってるんです。甘いものが苦手なウルスさん用に塩味の焼き菓子をやいてきたので、どうぞ」
「それはどうも……」
力なく答えながらも、食料になるものはもらっておく。
が、……ん?
「あの、モーラさん。さっき、このプレゼントをみなさんに配ってると言いましたか……?」
「ええ」
「まさか、今日が異世界では神の子が生まれたことを祝う日で、異世界でのルイスの誕生日だとかいう、変な説明付きで……?」
「もちろんです! そうでないと、意味がないじゃないですか」
「いやいやいや、意味がないどころか、異世界の記念日であって、ルイスはなんの関係もないし! そんな変なことが王宮の中にひろまるのはやめたほうが……」
「そんな変なこと? 何言ってるの、ウルス? 神の子は天使。天使はルイスだよね? 異世界だろうが、どの世界であっても、ルイスは生粋の天使だよ?」
いやいや、生粋の人間だろう!
「モーラがそんな異世界でのルイスの誕生日を祝って、王宮で焼き菓子を配ってくれていることは称賛こそすれ、やめたほうがいいなんてどの口が言ってんの? 間違っても言うことじゃないよね? ねえ、ウルス」
フィリップの冷たい声が響いた。
見ると、恐ろしいほどに笑顔なのに、目が一切笑っていない。
ルイスが絡むと一気に思考がおかしくなり、異常なほど沸点が低くなるフィリップ。
こんな状態のフィリップを止められるのはルイス本人しかいない。
残念ながら、ルイスはここにいない。
そんな状況で、俺が反論していいことは何ひとつないことは、長年フィリップのそばにいて、痛いほど身に染みている。
ルイス天使論に俺が反論した途端、ルイスがどれだけ天使かということをフィリップがノンストップでしゃべり続ける未来しかない。
俺は反論するのは即座にあきらめた。
が、これだけは伝えておかねば。
「今年はフィリップからの贈り物はいらない」
その途端、フィリップがぷっと笑った。
「そんなに毎日、ルイスの髪色のマフラーしてきてるのに? 僕のプレゼント、ものすごく気に入ってるみたいだけど、いらないの?」
うっ……。
確かに、悔しいが、今日も金色のマフラーをしてきている。
このあたたかさを知った以上、他人からどれだけ好奇の視線にさらされようが、物理的な寒さに弱い自分は使ってしまっている。
だが、さすがにこれ以上、ルイスの髪色のプレゼントを身に着けて、寒々とした視線をのりこえる自信は俺にはない。
だからいらん!
そうはっきり断言しようとフィリップをきっと見返したら、フィリップが俺の考えを見すかしたように笑った。
「でも、残念。今年はウルスにはプレゼントはないんだ。期待してたかもしれないのに、ごめんねー」
プレゼントがないと聞いてほっとするが、フィリップの言い方、腹立つな……。
「今年は、ルイスへのプレゼントの用意に全力投球だったからね」
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※ 読んでくださった方、ありがとうございます! 明日中に、後編を更新したいと思っています。よろしくお願いします!
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