(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

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番外編

辺境で 10(ルイス視点)

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※ 今回はルイス視点となります。



どうでもいいことばかり言う兄上に俺は怒っていた。

アリスの一大事にのんきに雑談している場合か!?
この間にも、アリスが不安で泣いていたらどうする!?

やはり一刻も早く部屋へ戻り、俺がアリスにかわり辺境へ行く準備をしないと!

俺は無言で立ち上がり、早足でドアのほうへと歩いていたら、マークに馬鹿力でひきもどされ、無理やり椅子に座らされた。

その乱暴な動作に文句を言おうとしたが、鬼気迫るマークの表情を見て、心配になった。

「おい、マーク! どうした……?」

聞いてもマークは答えず、兄上を必死の形相で見ている。

そんなマークにむかって、兄上が黒々した笑みをうかべて、うなずいた。
あからさまにほっとした様子のマーク。

その顔は、兄上のなんらかの命令をなしとげて安堵している顔だとしか思えない。

が、いつ、マークへ兄上が命令を伝えたんだ? 
もしや、兄上とマークは言葉じゃないところでつながっているのか?

そう思って見ると、マークの首からリードのようなものが見え、その先を兄上が握っているような幻覚が見えた。

ということで、俺を無理やりひきとめたマークではなく、裏であやつる兄上のほうへ、「どういうつもりだ?」という意味をこめて、きつく見据えた。

が、何故だか、俺に向かって嬉しそうに笑い返してきた兄上。

「ルイスのそのきりっとした目! 小さくて愛らしかったルイスが、こんなに頼もしくなって、兄様は感動……」

ドンッ!

気がついたら、にぎりこぶしをテーブルにたたき落としていた。

即座にウルスが口を開いた。

「気持ちはわかる。だが、とりあえず落ち着け、ルイス……。それと、フィリップ! そんなことばっかりいってないで、いい案があるんだろ? とっとと全部言え!」

「でも、ルイスを見てると気持ちがどんどんあふれでて、勝手に口が動くんだもん」

不満そうにウルスに言い返す兄上。

「もういい」

俺は立ち上がった。

「あ、待って、ルイス! 言う! 今すぐ言います! だから、座って、ルイス!」

次の瞬間、横から手がのびてきて、俺の腕をつかまえて、またもや無理やり座らされた。
そう、すっかり兄上の使い魔と化したマークの仕業だった。


そして、やっと、本題に入った兄上。

「じゃあ、改めて最初から言うね。まず、アリス嬢には予定どおり母上の用意したプランで辺境に行ってもらう」

「つまり、アリスに一人で辺境に行けと……?」

問い返した俺の声は、思った以上に冷え切っていた。

「こわっ……」
と、つぶやくウルス。

が、兄上は自信満々といった感じで俺に笑って見せた。

「ルイス、肝心なのはここからだよ! ルイスの頼れる兄様だから提案できるスペシャルな方法だからね! ということで、ついに発表! ルイスには、アリス嬢を間近で常に見守れるように、母上の城へ行ってもらいまーす!」

「……ん? いや、待て、フィリップ。王妃様の招待にアリス嬢と婚約者のルイスが仲良く一緒に行けるのなら、とっくにそうしてるだろ。アリス嬢といまだ仲良くなれていないルイスだから、王妃様もアリス嬢だけ招待したんじゃないのか?」
と、ウルスが言った。

グサッ……。

ウルスの言葉が俺の心に突き刺さり、思わず、その痛みに胸をおさえた。

「あ、悪い、ルイス。仲良くなれていないは言い過ぎた。なんというか……、まだ色々距離が遠すぎるんだな」
と、言い直したウルス。

が、その言葉が更に俺の心を容赦なくグサグサと突き刺した。
痛みに耐える俺を見て、兄上の瞳に狂暴な炎が灯った。

「ねえ、ウルス。ルイスを傷つける言葉を吐くなんて、よほど頭がぼやけてるの? 暇すぎたのかな?  あ、そうだ。ルイスを傷つけた分、ルイスのために全身全霊で動いてもらうことにしようっと。色々頼むから、よろしくー」

あからさまに、(しまった)という顔をするウルスと、自分事のように身震いするマーク。

「兄上、俺は大丈夫だ。それより、続きを言ってくれ」

俺は胸をおさえたまま、兄上を見る。

「もう、本当にルイスはどんだけ優しいの? はあー、兄様はまたまた感動……」

「兄上!」

「あ、ごめん、ルイス。また、心の声があふれだしちゃった……。じゃあ、続きを話すね。最初は、アリス嬢のかわりに、ルイスが辺境に行くなら僕も一緒にって思ったけど、行った先には母上がいるだろう? せっかくルイスと一緒に旅行に行くなら、母上がいないところがいいいよね。で、この案はボツ。で、次に思いついたのは、アリス嬢が自然と辺境へ行けなくなるように手をまわすこと。……あ、もちろん、アリス嬢にはなんの害もない方法でだよ。でも、相手が母上だからね。僕であっても、ちょっと時間が足りない。で、この案もボツ」

「行けなくなるように手をまわすってなんだ? 腹黒がもれすぎてるだろ……」

眉間にしわを寄せて、ぶつぶつとつぶやくウルス。

「まあ、脳筋母上の牛耳る城だから、アリス嬢の身の安全は心配ない。それより、僕としては、アリス嬢を心配しすぎるルイスの心が心配なんだよね。だから、ここはシンプルに、ルイスも辺境の城に行けば、アリス嬢を直接見守れて、ルイスが安心できるかなって思ったの。でも、アリス嬢が一人で行くと言っている以上、とんでもなく心優しいルイスのことだから、アリス嬢に気を遣わせたくないと思って、一緒に行くなんて言いそうにない。それよりは、すぐにかけつけられる場所で、ひっそりと見守るほうを望むと思うんだよね。だから、僕のとっておきのルートで母上の城にもぐりこませてあげる。もしもの時のために、母上にばれないように辺境の城にもぐりこめるルートを用意してたんだよね。ルイスの役に立てそうで良かった……フフ」

「待て待て待て、フィリップ! どんどん話がおかしくなっていくんだが!? それに、そもそも王妃様は敵じゃない! なんでそんなルートを用意してる!? 必要ないだろう! 息子で王太子なんだから、用があれば普通に訪ねて行けばいいだろうが! ああ、やっぱり、面倒な未来しか見えない! 絶対にやめろ!」

ウルスが文句を言うのを俺は手で制し、兄上のほうへ身をのりだした。

「兄上、続きを」

「ただね、僕の極秘ルートだから、ルイスには変装をして城に入ってもらうことになるけどいい? そこまでして、アリス嬢のそばにいたい?」

「ああ、もちろんだ。アリスの近くにいて、アリスを見守れるのなら、俺はなんでもする」

「もう、さすがはルイス! なんて、一途な天使なの! じゃあ、すぐに手配するから、楽しみに待ってて。あ、そうだ。僕もあとで行こうかなあ。……フフ」

「だから、やめろって! 頼むから、ルイスもフィリップの変な提案にのるな! 冷静になってくれ!」
と、叫ぶウルス。

が、俺の心は決まっていた。

アリス、大丈夫だ。
俺がそばで見守っている。
アリスのことは、なにがあっても俺が守るからな! 





※ 更新がまたまた遅くなりました! 
不定期な更新のなか、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
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今回で王太子の執務室での場面は終了。次からは辺境にうつります。
どうぞよろしくお願いします!
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